Fate/zero × MTG のクロスでも書こうかなと 作:栗鼠科.aka.メスガキ撲滅委員会
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アスファルトの地面が揺れるのを感じた、地響きが聞こえた、セイバーはそれが戦車か何かだと思った。走り来る
「なっ…なんだあれは…!?」
それは馬…、らしきものだった。胴で繋がった二頭の馬、頭部の肉は無く、赤熱の頭蓋骨が剥き出しで、
大好物の砂糖漬けの手と甘い心臓をたらふく食べ、元気いっぱいの地獄馬。それが、全速力で突進してきた。
「さあっ! 祭りの始まりだあっ!」
セイバーとの鍔競り合いから飛び退き、ライダーが跳躍する。左手に持つ鎖を投げ伸ばし、走り寄ってきていた地獄馬の首に巻き付けると、それを手繰って、地獄馬の背に飛び乗った。
既に、ケイネスは路上から離れ、周囲一帯に人除けの結界を張り、難を逃れていた。セイバーも横っ飛びの側転で、その突進を避けた。空を飛ぶドラゴンやドレイクを相手にしていたセイバーである、いくら巨体であろうと、突進しか能が無いのであれば、この戦馬は、まだやりやすい相手と言えた。しかし、戦術的な問題はともかく、表面的な問題はまた別だった。
「まだ昼間だぞ!? こんなっ…!」
凄まじい勢いで走り抜けた地獄馬とライダーを見送り、困惑と苦渋が混じった表情で、ケイネスは理解し難いという声を上げた。ケイネス・エルメロイ・アーチボルトは生粋の魔術師である、ゆえに、『魔術は秘匿されるもの』という前提で動く。それが、こうも無茶苦茶な破られ方をしたために、非常に困惑している。事態の収拾や破損した公共物の修復などは、主に教会側の仕事だ。が、既に周知の通り、監督役が死亡しているため、迅速な収拾活動は望めない。これ以上の混乱は避けないと、このままでは、聖堂教会は元より、魔術協会からも、事態を収拾するため、
「これ以上、奴を野放しには出来んぞっ! 殺せッ! 殺すのだ、セイバー!」
「ああ、そうだな。―切嗣は強い男だ…、
セイバーの言葉は信頼からくるものではなかった、だが、頼りにしているのは確かだった。これ以上、ライダーを野放しには出来ない、それはセイバーも同じ考えだった。しかし、"周囲にはライダー以外の気配は無いのだ"。ライダーが単独で居るという事は、つまり、残りの敵は、アインツベルン城に向かったはず。
「"
それでも、衛宮切嗣という男を、その身を預けた仲間を信じ、セイバーは戦闘続行を決めた。マスターに念話でそれを伝えると、加速しながら突進してくる敵を見定め、強く剣を握り、構えを取った。
奇妙な構えだった、姿勢は低く、左手を前に出し、剣を握る右腕は折りたたんで引いていた。まるでビリヤードのキューを構えたかの様な、奇妙な構えだった。セイバーは動かない、地響きを立てて地獄馬が迫っているが、微動だにせず、それを待ち構えた。
「ブッこめェェッ!!」
距離20メートルまで迫り、ライダーが手綱の鎖を引いて叫んだ時、セイバーが踏み込んだ。ライダーとて一サーヴァント、その動体視力は尋常ならざるものである、ゆえに、セイバーの左足が深く沈み込むのを見て、飛び掛りながら斬り込み、地獄馬の頭部を切り落とすか、もしくは
「な…!?」
ライダーは困惑した、セイバーは深く沈み込ませた左足を
だが、ラクドスの血魔女は止まらない。玉砕
イクサヴァは吼えた、叫んだ、この一合が負けると悟ってもなお、全力でぶつかろうとした。
「アアアアァッ!!」
二人の剣は同時に放たれた、だが、その速度は桁が違った。空中で回転するセイバーは、その回転によって、右腕のタメが効果を失う直前に、渾身の力で聖剣を振り抜いた。その練りと筋力から放たれた一閃は、まさに光速、神速の一太刀であった。その聖剣は地獄馬の右の首を刎ね、迎撃にきたライダーの剣を弾き返し、それでもその勢いは止まらず、残った左の首に
セイバーの攻撃は終わらない。地獄馬の突進の勢いはまだ残っている、それを利用するべく、セイバーは両足を上げた。
(乗り上がるつもりか!? まずっ…)
ライダーがそう思った時には、もう、切り落とした方の首元に左足を、ふたつの首の合間に右足を掛け、セイバーが地獄馬に乗り込んでいた。
ライダーの剣は凄まじい勢いの剣閃に弾かれ、その右腕には痺れがあり、反撃が出せない。窮地、ライダーは、心の臓が凍りつく感覚を感じ、それと同時に、逆境に昂る精神の熱を覚えた。
「ブゴオオォォ!!」
恐るべきは地獄馬、右首を切り落とされ、左首には中ほどまで剣が刺さり、戦争と平和の剣の炎によって、その傷口が焼かれているにも関わらず。なおを歩みを止めないどころか、傷口が広がるのも構わず、首を捻って、セイバーに噛み付こうとしていた。しかし、セイバーは、上体を持ち上げようと、突き刺さった剣を頼りに、右腕に力を入れて体を持ち上げる。すると、地獄馬からすれば、剣を押し込まれた形になり、首の捻りを押し返され、その反撃は潰されてしまった。
「くっ…!」
地獄馬の雄叫びを聞いて突き動かされたのか、ライダーは剣を手放し、腰にある肉切りナイフへと震える右手をやった。そして、即座にそれを突き出した。セイバーの異常な耐久力を知るライダーは、胸でも首でもなく、直接顔面を狙った。が…、それは顔を掠めるどころか、大きく左へそれて、セイバーの顔の右横へと流れた。それがセイバーの左手で受け流されたのだと判ったとき、同時に、胸の中の冷えた感覚が、熱く燃え上がるのを感じた。
「終わりだ。滅びるがいい、血濡れた魔女よ」
その言葉を聞いて、ようやく、ライダーは己の身に何が起こったのかを知った。胸に深々と突き刺さった剣、炎を纏った赤い刃、光輝く白い刃、戦争と平和の剣がライダーの胸を貫いていた。
「あ…あ…? っ…あああアアァァッッ!!」
『一撃でケリをつける』などと言っておきながら、そんなつもりは毛頭無く、実際にはニ撃であり。真っ直ぐ飛び掛ってくるとしか思えない体勢だったのに、それは見せかけだけで、実際には後方に跳んでいて。つまり、ライダーは完全に出し抜かれていた。最初から最後まで、セイバーの手の平の上で、踊らされていたようなもの。そんな悔しさか、それとも、新しい弟子である、
「ぬうっ!?」
その瞬間、"ライダーの実体が消えた"。それが霊体化ではなく、令呪による強制転移であると見ると、セイバーは止めの一撃を見送った。そして、その止めの一撃は、代わりに、地獄馬に残った最後の首に放った。
―――――
「はあ…はあ…、くそっ。衛宮切嗣ッ! いつまで逃げ続けるつもりだ! 私はただ、お前に聞きたい事があるだけなんだ!」
声が通り抜け、しんと静まりかえる廊下。残念ながら、言峰綺礼には―今のところ―交戦の意思が無くとも、衛宮切嗣はそうではないらしい。
「話を聞きたい…、いや、聞かせてほしいのだ。お前は答えを得たんじゃないのか!? どうしてアインツベルンなぞに手を貸した? ホムンクルスとの間に、子供を作ったのはなぜだ? 聞かせてくれないか?」
こうなってはもう、まっとうに話し合う事は出来ないと思い、言峰綺礼は質問を投げ掛ける事にした。
「お前は私と同種の人間であるハズだ! そうだろう!? 私は、自分が何者であるか、どういう人間であるか、何も知らないまま、ただ、周りに言われた通りに、妻と結婚し、子供を儲けた。今は違うぞ、今なら、そんな事は絶対にしない。私は、自分が、どんな存在であるか、ハッキリと理解したからな! ―だが、衛宮切嗣、お前はいったいどうして? 自分がどういう人間なのか、どんな存在なのか、解っていないのか? なのに、なぜだ…? なぜ、あんなことを…?」
言峰綺礼の言葉は空間に消えるばかりで、肝心の相手の耳に届いているのかどうかも判らない。
衛宮切嗣からの返事が無い事、念話で伝えられたライダーの窮地、疲労と急性的なストレスで若干磨り減った神経、それらは言峰綺礼を苛立たせた。
「私は諦めんぞ! 衛宮切嗣!」
最後に一言、大きな声で、決意を叫んだ。その瞬間、胸にチクリと刺さる、死の危機感が言峰綺礼を襲う。自分の身に降りかかったものではない、それは
「ライダー!! 今すぐここへ来いッ!!」
三画しかない令呪のうち、二画を同時に消費して、更に効力を上げた強制瞬間転移。その命令が廊下に響き始めたと同時に、突然、言峰綺礼の目の前に、ライダーが現れた。
ライダーは胸に大穴が開いており、もう助からないと判断出来てしまう程だった。それを見ても、それでも、ライダーを受け抱えようと、言峰綺礼は腕を伸ばした。次の瞬間、その傷口から炎が上がった。
「アギィぁぁぁああーっ!!!」
ライダーは叫び悶え、言峰綺礼の腕の中で、今にも消えてしまいそうになっていた。体の末端は既にほつれ、赤黒い粒子となって立ち上り、次々に消えていく。
自然と、涙が溢れていた。言峰綺礼は、まったく自覚の無いまま、知らず知らずのうちに、泣いていた。
「消えるなッ! 消えないでくれッ!! ライダーー!!」
「あ…あ……、き…きれ…い」
胸の傷より上がった炎が消えても、その致命傷は絶対的なものだった。既に、ライダーの下半身は消えてなくなっており、手先すらもがほつれ、どんどん消えていく。もう助からない、ライダーには、セイバーほどの耐久値も無く、キャスターのように減った生命力を補うものも無く、ましてや、死を免れる再生スキルも無いのだ。他にもっといいやりようはあった、こんな事にならない方法が、どこかにあったハズなのに。悔しさと後悔の中、二人は涙を流した。
「ごめ…んよ…、もっと…色々…教えてあげたかった…のに…」
「ライダー…! 頼む…死なないでくれ…、私を…、私を一人にしないでくれ…」
「うふっ…ふふ…、むりっぽいなぁ…。アタシは先に逝くよ…」
「ライダーっ! ライダァァー!!」
言峰綺礼の慟哭と同時に、その手にある最後の令呪が輝いた。『死なないでほしい』、その願いが激情をスイッチとし、命令として成立したのだ。が、それも、ほんの十数秒の猶予を作るに過ぎなかった。しかし、ライダーはそれを感じた事で、最後にひとつだけ、この世界に呪いを残していく事にした。
「前に、教えたよな…? 『放火。流血。愉悦。』…、これはね、我らがラクドス教団の導き石に刻まれた、銘文なんだ…」
イクサヴァの体が崩壊していく中、最後の令呪による命令で、その速度が落ちた。残されたわずかな時間を使い、最後の弟子に、もっとも大切な事を教えるべく、彼女は続けた。
「後先考えて行動するなんざ…、ゴホッ…、バカのやることさ。周りの事なんか気にするな、自分の…、やりたいようにやればいいのさ」
「ライダー…」
「いいかい、綺礼。お前はね、すごく優秀なんだよ、アタシが見てきた中でも、とびっきり…ね、だから自信を持ちな」
最後の令呪が、その効力を失った。崩壊のスピードが元に戻り、ライダーの体は、もう、胸より上しか残っていない。そして、それすらも、十秒後には消えてしまうだろう。
ライダーは最後に、消えて無くなった左腕を伸ばすように、言峰綺礼の顔を撫でようとした。
「アタシの意思を…継いでくれるかい?」
言峰綺礼は何も言えなかった、ただ涙だけが溢れ、嗚咽だけが零れるのだ。それでも、彼は頷いた。
「ここはラヴニカじゃないけどさ…、きっと…、ラクドス様の教えは…、受け入れられる…ハズなんだ…」
「ライダー…!」
「アタシは幸せだよ…、こんな立派な弟子を持ててさぁ…」
「ライダーッ!!」
言峰綺礼が最後にその名を叫んだ時、ライダーに残った頭部までもが、赤黒い粒子となってほつれて消えた。
ラクドスの血魔女、イクサヴァ。彼女は、最後の最後まで、苦痛と愉悦の伝道者であった。
「ぅぉぉおおおおおおっっ!!!」
雄叫びにも似た慟哭が響く、消えて無くなったイクサヴァに言わせれば、それは、産声であると言うのだろう。
そこに怨みはない、復讐の念も無い、ましてや、怒りの感情すら無かった。またも孤独に追いやられた言峰綺礼に残ったのは、衛宮切嗣という希望、そして、亡きイクサヴァに捧げる新たな愉悦の始まり、義務感だけであった。
生まれついての狂気、言峰綺礼。彼の人生は、今ようやく、自身が認められる、完全な形となった。
んじゃまた
もうそろそろ、このお話も終わりですねぇ…
いやぁ…なんともまあ…