※この作品はR-18です。

Fate/zero × MTG のクロスでも書こうかなと   作:栗鼠科.aka.メスガキ撲滅委員会

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遅投稿です…
遅れてすいません! 許してください、何でも(


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――うおおおおっっ!!!

 

 喝采。称賛。そして栄光。そのすべてを手にする者だけが許される、至高にして至福、絶頂の中心。

 

――わあぁーーっ!!!

 

 鳴り止まぬ拍手。止まらぬ歓声。そのすべてが快感となる。そのすべてが愉悦となる。

 

「見たか、ものども――これがヴィザラ様の力さ!!」

 

 

 "オタリア"。ドミナリアという次元の、とある大陸の名である。ここが彼女の生まれ故郷。

 オタリア大陸は広大な海の存在によって、他の大陸から隔絶された位置にある。そのため、独自の文化を形成し、それを発展させてきた。

 さて、そんなオタリア独自の文化の中には、最も過激(デンジャラス)で、最も熱狂的(ホット)で、最も感動的(エキサイティング)な場所がある。それは闘技場(ピット)。闘士達による、闘争と殺戮の賭博場である。

 闘技場として知られる中でも、五大闘技場と呼ばれる、大きなものがあった。遊牧の民が所有する競技場。軟体種族(セファリッド)が建てた円形競技場。陰謀団が所有するピット。蛮族達が集まるリング。半人半馬種族(ケンタウルス)の庭園。それぞれが日夜、たいへんな賑わいを見せており、常に活気付いていた。

 そして、ピットには五人の、偉大にして絶対な、最強の名を冠するに相応しい、頂点たる存在が居た。

 

 光のチャンピオン、「獅子面のタイタン、ジャレス」――見上げようとすれば首を痛めてしまう程の巨体、石膏のような石のような肌を持つ、凛々しくも気高い巨人(タイタン)。しかし、その顔は他の巨人種のものとは似ても似付かぬ、獅子(ライオン)の顔。白の最強。

 

 未踏の地よりの帰還者、「全能なる者、アルカニス」――眼に見える程に濃い魔力を漏らす人型。とはいうものの、人間(ヒト)であるかどうかも分からない、謎に包まれた神秘の魔術師。青の最強。

 

 不可避なる死の化身、「戦慄をなす者、ヴィザラ」――漆黒の翼。うねる触手。鋭い爪。おぞましい眼光。誰もが恐れる怪物の中の怪物。恐怖のゴルゴン。視線だけで人を殺せる、空飛ぶ悪魔。黒の最強。

 

 シヴ山の気高き咆哮、「刃の翼、ロリックス」――巨大で、尊大で、暴力的なドラゴン。全身余す所無く殺傷兵器、そんな怪物。ドラゴン族の誇りを取り戻すため、その力の証明に来た者。赤の最強。

 

 クローサの森を追われた者、「悪辣な精霊、シルヴォス」――物心つく前に住処(すみか)を追われ、存在の目的と意味を見失った。しかし、そのどちらもをピットの中で見出した。そして闘争の中で、栄光を手にした者。緑の最強。

 

 この五人の最強が勝利の王座に座っていた。それぞれの闘技場で頂点に立ち、それぞれの最強となった五人。しかし…、観客の誰もがこう考えていた、「あの五人が戦ったら、いったい誰が最後に立っているだろう?」…と。

 主催者の指示により、五人は戦う事を許されなかった。その理由は単純、ただの戦いでは済まないからだ。最強対最強、観客の誰もが夢見た組み合わせ(カード)。しかし、それは許されない。そんな事をすれば、ピットはたちまち崩壊してしまう。観客も巻き添えになる。最強と最強が戦った時、そこに残るのは主催者の赤字。そのため、五人は決して、同ランクの者と戦う事は許されなかった。

 

「よぉ、獅子面ァ」

 

 しかし、いくら禁止されているとはいえ、血が騒ぐものはどうしようもない。

 黒のチャンピオン、ヴィザラ。彼女は挑戦者(ザコ)との戦いに飽きていた。「次はもっと強い奴を用意しろ」、そう言って取締役を困らせた事などは数え切れない。そんな彼女は、どうしても、同じ強さの者と戦いたがった。

 

「……ヴィザラか」

 

 彼女が目を付けたのは、光のチャンピオンとして名高いタイタン、ジャレスであった。

 ヴィザラはジャレスの周りを飛びながら言う。

 

「なあオイ、アンタもそろそろ……飽きて来ちまってんだろ?」

「…何の事だ?」

「トボケてンじゃないよ! …見たよ、今日のアンタの試合。何だあ、あれは。戦車三台に騎兵三十……バッカバカしい! そんな雑魚、いくら掻き集めたってなあ、アタシ達にゃあ敵わねえってんだよ!」

「そんな話がしたいのなら、荒くれ者(シルヴォス)のところへ行くんだな。俺は気にしていない」

「嘘こけ! アタシは知ってんだからな! テメェが今までで一番の黒魔術師と戦(ヤ)ってる時、えらく(・・・)楽しそうな面(ツラ)してたのをよお!」

 

 その言葉を聞いて、今まで通り表情は一切変わらぬままに、ジャレスは黙った。

 

「なあ…戦い(ヤり)たいンだろ…? 強え奴とよお、殺し合いがしてぇんだろ?」

「俺はお前とは違う」

 

 ヴィザラの挑発的な言葉を、ジャレスはきっぱりと断った。「お前と戦うつもりはない」、そう言い残し、彼はヴィザラに背を向けて歩き出した。

 その背中を見定めつつ、ヴィザラは言った。

 

「そうかいそうかい、ならいいさ――……でもな、これだけは覚えとけ。いいか、アタシ達はな、いつか戦う運(・)命(・)にあるのさ。これだけは間違いない、絶対に…だ。その時は……せいぜい楽しもうや。…なぁ?」

 

 そして月日が流れ…、ピットに終わりが来た…。

 とある大事件を切欠に、ピットを含む町の大部分が瓦礫と化し、賭け勝負は見られなくなってしまった――かに思えた。が…しかし、ピットを運営する陰謀団は、とある沼地に本拠を移しており、同時に、そこに新たなピット、大闘技場を建設していた。

 ピット・ファイトは終わらない。それを喜んだのはヴィザラだけではなかった。

 

「フム…広いな…」

「しっかし、陰謀団ってのは金を持ってるねえ…。こんなバカでかい闘技場、どうやって建てたんだか…」

「そう詮索するものではない。……詮索屋は嫌われる」

「アンタはいつもそればっかりだな」

「何にせよ、この広さなら、もっと派手な魔法も使えるというものだ。……悪くない」

 

 正体不明の大魔術師、アルカニスである。そしてもう一人が…

 

「こ、ココ…なら、暴れても、いい。好きな、だけ、暴れられ、る…」

 

 戦うことが存在意義。勝つことが存在理由。暴力という概念が受肉した存在、精霊(エレメンタル)のシルヴォスであった。

 そんな戦う意欲に満ち溢れた三人を見下ろす二つの影。赤き最強のドラゴン、ロリックス。白き最強のタイタン、ジャレス。二人は何も言わなかった。

 

 そして、大闘技場の開演式が行なわれる前日、ヴィザラの夢が叶う。五人の頂点同士による殺し合い(サドンデス)。第一戦のカードは、ジャレス対ヴィザラ。その組み合わせが発表されたのだ。ヴィザラはこの日、興奮で夜も眠れなかった。

 そして始まる殺戮の宴。二人のチャンピオンは大闘技場に立ち、向かい合った。

 

「ああ…、なんて…なんて……素晴らしいっ!!――さあ、殺し合おうっ! 納得の行くまで、満足の行くまで、本能のままに殺し合おうじゃないか!!」

 

 歓喜、今のヴィザラの胸にはそれしかなかった。狂喜、今のヴィザラを表現するにはそれしかなかった。雑魚は食い飽きた、もっと強い敵を。その飽くなき闘争心が、破壊欲求が、殺意が、その全てが満たされていく…。

 

 闇のピットの闇のチャンピオン、戦慄をなす者、ヴィザラ。彼女の生涯は、闘争の一色によって表現される。

 

―――――

 

 苦渋に満ちた表情で、セイバーが唸る。契約によって形成された回線(パス)を通じ、衛宮切嗣(マスター)の窮地を知った今、すぐにでも助けに行かねばならないのに…。

 焦燥に駆られて廊下を走るセイバーの足を止めたのは、窓の外から響く強力な霊体の気配と、壁から生えた豪腕であった。

 

「邪魔をするなっ!!」

 

 鋭い爪が壁を貫き、セイバーの喉を目掛けて伸びた。しかし、いくら壁を隔てているとはいえ、実体化した状態で、気配遮断スキルも無いのなら、セイバーほどの戦士の嗅覚の前では、奇襲なぞ成功する筈がなかった。セイバーは即座に膝を折り、前に倒れ込むようにして屈み、姿勢を低くする事で攻撃を避けた。

 セイバーが受身を取り、前転の要領で、加速しながら前方へと逃れようとする。その時、セイバーが左手を床に付けた……その時。黒い触手が、窓を突き破って、廊下に侵入してきた。

 

――何(・)故(・)だ(・)!? ど(・)う(・)し(・)て(・)今(・)な(・)の(・)だ(・)!?

 

 セイバーは、この突然の猛攻に、疑問を覚えた。『タイミングがおかしい。あまりにもおかしい』。好機(チャンス)ではなかったハズだ。誰がどう見ても、何処をどう見ても、アーチャー(アサシン)にとっての好機とはならなかったハズなのに。例えそれが衛宮切嗣の窮地を知っての事だとしても、今仕掛けるのは間違っている。仕掛けるとするならば、セイバーが衛宮切嗣(マスター)と合流した後だ。そうすれば、セイバーは瀕死の衛宮切嗣(マスター)を庇いながらの戦いを強いられ、アーチャー(アサシン)は隙を見て魔眼を使い、衛宮切嗣(マスター)を庇うセイバーに致命的なダメージを与える事が可能になる。その筈だ、それがアーチャー(アサシン)にとっての最善の戦略であり、セイバーにとっては最悪の状況(パターン)だったハズ。――だというのに、アーチャーへの擬態を解きもせず、真っ向から挑んできた。その真意を読み取れず、セイバーは困惑した。

 

 頭上から降り注ぐようにして迫る黒い触手を、セイバーは実体化させた宝具――『戦争と平和の剣』で斬り払う。そして、前転から跳躍し、空中で一回転し、前後の向きを入れ替える。まったく隙を見せない完璧な対処だった。

 

「ま(・)だ(・)そ(・)の(・)姿(・)の(・)ま(・)ま(・)な(・)の(・)か(・)、……"アサシン"よ」

 

 セイバーは言う、『お前の正体は分かっている』と。それを聞いてか、腕と触手が引っ込み、壁の外へと消えた。

 セイバーは感じている、壁の外で、今もまだ実体化したままの、アーチャーの姿でいるアサシンの存在を。

 

「……ここで死ね、セイバー」

 

 その声は震えていた。まさしく、それはあの夜に戦った、あのアーチャーの声。しかし、その言葉に込められた感情は、あの夜に感じたような、闘争を楽しむ喜の感情ではなかった。

 その声を聞き、即座にケ(・)リ(・)を付けねばならない、とセイバーがそう考えた瞬間。三階に位置する高さから、神聖なる魔力の波動が響いた。それはランサーが交戦状態に入ったという証拠。

 

――こやつ……まだ手があるのか…!

 

 ランサーが神聖魔法を行使する程の、それほどの脅威が現れたという事。それはセイバーにとって――ランサーにとってもそうであるはず――驚愕の事実であった。

 他のサーヴァントへの完全な擬態。不意打ちとはいえ、セイバーに傷を付ける程の魔術。高位のランクである筈の気配遮断スキル。分身の作製、または分裂。そして今回のランサーへの攻撃。この手数、手段の豊富さ、間違いなく最凶の敵である。

 

 冷酷な殺意が壁から漏れ出していた。それはもう、決定的なまでに、"アーチャーのものではなかった"。

 セイバーはまだ、それを憶えている。本物のアーチャーが放った殺気は、その殺意は、とても熱く、そして健(・)全(・)であった…と。――闘争の世界に生きる者の中でも、その世界で長くを生き、多くの事を悟った者達は、真に好ましい闘争とは、下劣さも、卑劣さも、そして悪意も無い、健全な殺意のぶつかりあいだと知っている。全ての武器を捨てて裸で殴り合うような、そんな、言うなれば『漢(おとこ)』の戦い方とでもいうものか…。正々堂々とした、…と言うのは少し違うが。何にせよ、闘争の中に生きた過去を持つ者にとっては、そういう英霊にとっては、騎士道精神にも通ずる、包み隠さずの、自らの全てをぶつけ合う戦いこそが好ましいのだ。それはセイバーでさえも理解出来る事である。そして、今はもう消えてしまったアーチャーからすれば、それは最も欲したものであっただろう。そして、本物のアーチャーであれば、そういった健全な殺意を魅せた筈だ。――しかし、今のアーチャーは……。

 

「彼女(アーチャー)の誇りを汚すでない。薄汚れた暗殺者めが…」

 

 アーチャーは確かに反英霊、人類の敵であった。しかし、その本質がどうあれ、セイバーから見れば、その闘い方はとても純粋で、とても好ましいものだった。少なくとも――それはたった一夜限りのものでしかなかったが――、あの夜の遠坂邸での戦い、あの戦いの中でセイバーが感じた中には、アーチャーから発せられた悪意は無かった。

 どこで道を間違えたのか、どこかで手段と目的が入れ替わりでもしたのか、反英霊として召喚される程の怪物が、純粋に闘争を楽しむだけの、――戦場においては――立派な武人であったという事実。そこに、セイバーは好感を抱いていた。 

 セイバーは武人ではない。武に生きた人間(オーリック)ではない。生き残るため、生かすため、そして救うために、必要に駆られて武を身に付けた者である。故に、セイバーは結局、どこまでいっても、ただの戦士でしかなかった。

 しかし、なればこそ、一人の戦士として、これ以上は、我慢がならなかった。

 

――切嗣……すまぬ…。今少し……あと少しの辛抱だ……、耐えてくれ…!

 

 背を見せる事は出来ない。戦わねばならない。一瞬の決着を…。

 セイバーは大上段に構え、壁の外から向けられる殺気を、正面から待ち構えた。

 

 

―――――

 

 

 ケイネス・エルメロイ・アーチボルトは既に、一人ではどうにもならないほどに、終わりかけていた。

 選択を誤った。ケイネスは判断を間違えた。アサシンがその姿を見せたと知って、即座に、短期決戦という戦略を取った。が、しかし…、アサシンだったものは、実はただの分身。本体は別の場所に居た。努力と決断は空振りに終わったのだった…。

 手段を誤った。ケイネスは方法を間違えた。パートナーであるソラウとの並列回路があっても、ランサーという魔力をバカ食いするサーヴァントは運用しきれなかった。それを一気に解決できるのが、魔力炉である。しかし、それは遠い遠いホテルの最上階に設置してあり、アサシンやライダーの奇襲を考えれば、手が届かない位置にあった。しかし、ライダーの消滅、アサシンの出現、奇襲の危険性が無くなった事で、魔力炉への道が開かれた。が、またここで、別の問題がある。時間が足りなかった。マナをオドへと変えるためには、魔術師が持つ魔術回路を通すか、または専用の変換器を通す必要がある。だが、変換器などというものは用意していなかった。ならば、一刻を争うこの事態、方法が一つしか無いのなら、そうするしかなかった。ケイネスは全身の魔術回路をフル起動し、そこに直接、魔力炉からの配線を引き、並の魔術師であればショック死する量のマナを引きこんだのだった…。

 

 他の誰が見ても、今のケイネスは、無茶無謀の体(てい)であった。

 

「ラ…、ラン……サー…!! はっ…早ぐっ…、決着(カタ)を……付け―――ぐぅぅおおっっ!! がっ…! あァッ……」

 

 赤熱化する魔術回路が、体温を急上昇させ、全身の神経に、針を突き刺すかのような痛みを生み出す。毛細血管のいくらかが、溢れんばかりのマナに耐え切れず、損傷し、破裂し、内出血を作っている。眼孔の端から血のすじが垂れて、鼻孔からも鼻血が垂れて、口内では歯茎から血が出ている。そして、それを治す――治してしまう、治癒魔術の自動詠唱。破壊と修復、自傷と治療、その同時進行は、ただの拷問でしかなかった。

 

「……、………」

 

 ケイネスは、自分の耳にさえ届かないような、小さな声で、治癒魔術を詠唱している。大量の魔力があるのだから、この程度の消費は、誤差の範囲内だ。

 絶望が込み上げる程の激痛だが、気を失う事はできない。今優先すべきなのは、ランサーへの魔力を十分に供給できる、自分(ケイネス)自身だ。死ぬ事は許されなかった。もしも、ここでケイネスが倒れれば、アサシンは目的を果し、残る邪魔者の排除へと移るだろう。それは、アインツベルン城に置いてきた、婚約者(ソラウ)の命が無くなるということ。死ぬわけにはいかなかった……。

 

――ソラウ……

 

 この時、ケイネスの中にあったのは、最後に残ったものとは、婚約者への想いだけだった。死なせたくない。死んでほしくない。助けたい…。今あるのは、それだけだった。

 激痛が絶え間なく全身を襲い、意識が遠のく感覚を覚える。しかし、全てが消えてしまいそうになる時、ケイネスの脳裏には、ソラウの顔が浮かぶのだった。そうすると、終わりの見えない痛みにも勝る、底の無い勇気と、天井知らず希望が胸に溢れてくるのだ。「これさえあれば、どこまでも戦える」、体と脳がそう言っているようだった。

 そしてケイネスは、またも意識を明らかにすると、必死になって悲鳴と呻きを堪え、治癒魔術の行使を再開するのだった。

 

 

―――――

 

 

 「ハァァアアッッ!!」

 

 ケイネス(マスター)の意志に呼応するかのように、ランサーが槍を揮う。限界値で注ぎ込まれる魔力を惜しみなく使い、あらゆる手段を講じて、一刻も早くこの戦いを終わらせるべく、全力で挑んだ。――しかし……

 

――いったいどれだけの…!

 

 単体戦力では敵わぬと見てか、アサシンがランサーへと差し向けたのは、大量の使い魔による物量攻撃だった。それは奇妙奇怪な怪物。コウモリのような耳が生えた、髑髏の頭部。これまたコウモリのような、大きな羽。ムカデのような胴体。これもまたムカデのような、何本もの足。気味の悪い使い魔だった。

 既に、ランサーが斬り払った数でさえ、ゆうに50を越える。だが、一向に減る気配を見せない。一体一体は脆弱で、腕に覚えのある魔術師なら、とくに苦労もせず倒せるようなものだ。しかし、その大きさは、大の人間程もあり。空を飛んでいるため、逃げ場が無かった。

 

「舞弥さん! そこを離れないでください!」

 

 最早意識も無くし、生命活動の八割近くが停止したアイリスフィール。アサシンの使い魔との戦闘で自衛手段も底を尽き、ただただアイリスフィールの傍を離れる事が出来ない久宇(ひさう)舞弥(まいや)。この二人を守らねばならないため、必然的に、ランサーは防戦一方を強いられていた。

 

「アヴァシン様っ! また増えましたよ!」

「堪えなさい! 絶対に通してはなりませんよ!」

「はいっ!」

 

 だが、勝機は見えていた。

 既に、その傍には、熾天使の姿がある。大量の魔力があるのだから、宝具の真名解放ですら、躊躇う必要はなかった。新たな戦力の追加によって、ランサー達が使い魔を押し始める。しかし、それはまたも増えた使い魔によって、最初の状態と同じに戻される。

 それでも、マスターであるケイネスの苦痛とは違い、この戦いには終わりが見える。なぜなら、アサシンの持てる魔力には、限界が存在するからだ。ランサーは考える、おそらくは『魂喰い』による魔力補充。一度作ってしまえば、使い魔は独自に活動を始め、自分で魔力を取り込み始める。魔力供給はほぼ必要無い。それを利用しての、魂喰いによる補充と、使い魔のストック。まず間違いなく、ライダーに殺させた市民達から、魂を奪い、それを喰らって、使い魔を作ったのだろう。それが故の、この数。二日という猶予があれば、数を用意するのも楽だっただろう。

 

――非道なまねを…! 許しはしませんよ、アサシンッ!!

 

 ランサーが怒りを手に篭め、槍を揮う。

 

「ハァァーッッ!!」

「せいっ…やあっ!!」

 

 本体さえ叩ければ…、ランサーと熾天使が、同時に、そう考えた。その瞬間、それが叶ったのか、思いが届いたのか、二人は、聖なる魔力の顕現を感じた。それは二種の栄光の光を放つ、高位の概念武装。異次元の聖剣、『戦争と平和の剣』の波動だった。

 

「……!! セイバー! 本体(アサシン)を見つけたのですねっ!?」

 

 次の瞬間、二人は同じ考えに到る。…そして、熾天使は言う。

 

「……アヴァシン様、ここは、私(わたくし)にお任せを……――行ってくださいませ。どうか、非道と悪逆に……正義の鉄槌を!!」

 

 熾天使の言葉と信頼に応え、静かに頷いたアヴァシンが魔法を放つ。それは『神聖なる報い(Divine Reckoning)』の魔法。聖者生存を必とする、正義の一撃。ランサーが槍を掲げると、その先端に白光が集まる。そしてそれは、向けられた先の使い魔たちの尽(ことごと)くを貫き、光で以て粒子へと変え、完全に抹消した。

 

「これで、少しは時間が稼げるでしょう…――後は任せましたよ」

「はいっ! 必ずや、守り通してみせます!」

「頼もしいかぎりです。ですが、安心なさい。もう、長くはありませんから」

 

 熾天使に「この戦いも、もう終わりが近い」という希望を残し、アヴァシンは窓から飛び出した。

 ランサーが飛び出した外の景色は、宝具『月銀の槍』の真名解放の影響で、様変わりしていた。まだ日も高い昼間だったはずが、太陽は消え失せ、代わりに、妖しく光る銀色の月が浮かび、薄暗い夜空となっていた。

 

――セイバー……、私が行くまで…どうか持ち堪えてください…!

 

 向かう場所は一階、そこにはセイバーの魔力の波動が感じられる。そして、忘れもしない、あの夜、ランサーを撃ち落とした、アーチャーの存在を感じている。

 ランサーは疾風となって飛んだ。ケイネスも、その婚約者も、死なせたくはなかったから。セイバーも、そのマスターも、死んでほしくなかったから。だが、逆にアサシンの死を願っているわけではない。倒さねばならないから、倒すべきだから、…だから戦うしかない。

 

 ランサーは駆けた、空を駆けた。それはセイバーと同じ、人を救うために。

 

 

 

 




(続きは)無いです。これにて未完です…
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