Fate/zero × MTG のクロスでも書こうかなと 作:栗鼠科.aka.メスガキ撲滅委員会
聖杯戦争も終盤に差し掛かったというのに、部屋にこもってイチャイチャしてばかりのケイネスとソラウ。わざわざ念話でそれを伝えられて、ランサーの怒りが限界に達する。
「カップル死すべし!!」
エッチなことはいけないと思います! 普段からそう言っていたアヴァシンは、実は、ただのやっかみ独女に過ぎなかったのだ。
右を見れば……「アイリ、今日も綺麗だね」「やだわ、切嗣ったら」などという甘ったるい空気が存在し
左を見れば……「ああ……ソラウ、私は自分の愚かしさに眩暈するよ。君への想いを言葉にしても、愛してる、としか、そんな陳腐な表現しかできないのだ」「そんな、ケイネス……恥ずかしいわ…」というアツアツっぷり
アヴァシンは激怒した。今すぐ、このバカップルどもを、この地上から消し去ってしまいたいという欲求に駆られた。
今、アヴァシンの怒りが炸裂し、冬木は血に染まる――
組み合い。もつれあい。取っ組み合い。ゴルゴンとオーリックの、互いに骨を軋ませながらの、前後不覚になりそうな全力のもつれあい。
その最中、一瞬の乱れを見て、
「だアッッッ!!!」
あまりの踏ん張りに、セイバーの着ている服の一部が、「バリッ」と音を立てて破れる。
セイバーが
そして、
「くぅっ……」
たとえ地面に叩きつけられようと――実体化していても、奇跡が具現化した存在、サーヴァントである彼らには――何の問題にもならなかった。ただ、ひとつだけ――セイバーは、若干、転がってしまったために、体勢を崩してしまった。だが、飛行スキルを持つアーチャーは、宙に浮くことで、セイバーよりも速くに体勢を立て直し、攻撃に移っていた。
「さっさと死ねッッ!!」
左の振り下ろしを潜るように避けたセイバーが、空いた左手を相手の腹にそえて、次の攻撃を妨害すると同時に、掌から伝わる力の動きを見て、相手が次にどう動くのかを判断する。
「チィ…」
ゼロ距離を嫌がった
セイバーの左腕は、手では万力の如き握力で握りながらも、しかし、肘や肩には力が入っていなかった。――日本の武術である柔道の、現代柔道の
ゴルゴンとしての豪腕と膂力で、必死に振り解こうとするアーチャー。しかし、その動きに応じて、セイバーの腕がつられてはねるだけだった。
アーチャーの手首を握り潰さんばかりのセイバーの左手は、なおも強く締められており、そればかりか、その握力は更に強さを増し、比喩でも誇張でも無く、実際に、アーチャーの左手首から、「ぎしり」とやら「みしり」とでもいう、骨の軋む音が聞こえだした。
(勝機――!!)
セイバーの手を振り払おうと、アーチャーが全力で左腕を振るい……終わった瞬間。突如、先ほどまで脱力していたセイバーの左腕が爆発した。
それはもう凄まじい腕力で引かれ、アーチャーの体勢が崩れる。――掴んだ手首だけを引き寄せるのではなく、手首に捻りを加えて、アーチャーの肘関節を固定し、腕を一本の棒に変え、肘ごと、肩まで引き抜くような、人体工学に乗っ取った引き寄せ。更に、腕の力だけで引き寄せようとするのではなく、腰を切り、胸を開き、左半身全体の力を全部使ったものである。
手首から肘、更に肩まで引き抜かれ、アーチャーの左脇腹がガラ空きとなった。当然、ゼロ距離のままで、地に足を付けたままで、体勢も十分となれば―――加速も十分のセイバーは、左手を引くと同時に、溜めておいた右手の剣を、貫くつもりで突き出す。
しかし――先日の夜の、ランサーとの戦いでもそうであったように、アーチャーの武器は、その四肢だけではない。完全な死角に潜り込まれているため、最大の武器である魔眼は使えないが。その頭部に生える触手が、既に、セイバーの体に狙いを定めていた。
セイバーの胴を目掛けて飛ぶ黒い触手。アーチャーの胸板を目掛けて突き出される戦争と平和の剣。完全なゼロ距離での攻防は、しかし、先制攻撃という攻勢スキルによって、セイバーの剣がまず先んじた。
だが、――アーチャーもそうだったかもしれないが――暗黒街の王は、並列思考を持つ頭脳と、それを扱う能力は、アーチャーの体を写し取っていても、依然として残っている。アーチャーは既に、それが見えていないにもかかわらず、触手でセイバーを狙うと同時に、右手を差し出し、剣の先に置いておき、胴体への致命傷を避ける準備をしていた。
(勝ったッッッ!)
右手を犠牲にし、剣での攻撃を逸らし、触手で
「―――!!!???」
何が起こったのか、
ここまでとは、
「これで終わりだァッッッ!!!」
ゼロ距離から、跳ね上げるかのような、垂直の蹴り上げで、アーチャーの顎を蹴り抜いたセイバー。勝利へのカウントダウンは、最早秒読み。次の一撃で、全てが終わる。決着する。
あまりの衝撃と威力に、背筋が伸びて、完全な棒立ちになったアーチャー。それを見るまでも無く、セイバーは勝利を確信し、止めの一撃を放つ。一撃で首を切り落とす、上段狙いの、横薙ぎの一閃。これで全てが終わる。ハズだった―――
(馬鹿な……!?)
その瞬間、アーチャーの姿が―――消える。
狙った場所に、剣の通る道に、アーチャーの首は無かった。セイバーの腹に突き刺さったままの触手でさえ、消えて無くなった。セイバーの攻撃は空振りに終わり、アサシンは九死に一生を得る。
「ハッ………はっ、くうっ……うぅ……」
驚愕と焦燥、苦痛と衝撃。アサシンの口から、喘ぎと共に吐き出される、それが、セイバーの異常さを表していた。腹に穴が開いているのだ、それも、大の男の二の腕ほどもある太さの触手が開けた穴が。なのに、セイバーは反撃した。そんな事はあり得ない、あるハズがないのだ。確かに、脊髄は無事だったかもしれない、腰から下が離れてしまったわけではない。だが、内臓の多くがズタズタに……再生不可能なまでに破壊されているのだ、激痛が、衝撃が、そして理性と本能が、「身を庇う」という選択肢
を取らせて当然の一撃だった。なのに、なのに、セイバーは反撃した。
(ば…化け物が……!! 腹を貫通させたんだぞ!!! どうして立っていられる?!! なぜ反撃出来る?!!)
驚愕と困惑の表情で膝を付くのは、アーチャーへの変身をやめ、本来の、アサシンとしての身体に戻ったラザーヴであった。
「逃がしはせん…!! 貴様はッ、ここでッ、必ず潰す!!」
「セイ…バー……!!」
戦争と平和の剣の能力は半分しか発動しなかった。炎を飛ばすべき対象が、能力の発動前に、別の存在へと置き換わっていたからだ。だが、持ち主を癒す光の能力だけは、正しく効果を発揮していた。が――
(流石に……塞がり切らんか…)
セイバーの腹に開いた大穴は、傷口も塞がり切らず、内臓の殆どが破壊されたままで、とてもじゃないが、立って歩けるのがおかしい、という有様だった。それでもセイバーは立つ、歩く――そして剣を握り、命の限り戦う。戦わなければ、守らなければならないから。
他に誰が、それを出来るだろう? ジョー・カディーン以外に、いったい誰が? やらねばならない、戦わねば。
「逃がさんッッ……!!」
腹の両脇から血を流しながら――それは明らかに、常人なら昏倒していてもおかしくない出血量だった――、両足に力を篭めて、眼前のアサシンを見据えて、セイバーが進む。しかし、その歩みの遅さだが、アサシンは逃げようとしなかった。ここは逃走が最も有効な判断のハズ。だが、アサシンは、顔には逃げるべきだと描いておきながら、逃げる素振りは見せなかった。それが時間を稼いだ。
気が付けば、外は暗くなっていた。日の光りは消えて、月明かりだけが――銀色に妖しく輝く月の明かりだけが光源だった。
「く、くそ……あれだけ集めても、ランサーを止められんのか……?!」
アサシンが、膝を震わせ、屈辱の息を吐いて、立ち上がりつつ言う。そう、これは、ランサーの宝具、『月銀の槍』の真名解放の際に現れる現象。イニストラードの夜空に浮かぶ銀の月を魅せるものだ。
そして、正義の槍が振るわれ、信仰の光と共に、聖なる魔力が顕現する。
「セイバー! 逃がしてはなりません、ここで決めましょう!」
壁の影からランサーが現れた。これで、逃がしさえしなければ、セイバーとランサーは確実に勝てる状況に近づいた。それを見て、戦闘可能なまでに回復したランサーを見て、アサシンが顔を歪めた。
「終わりだ、アサシンッ!!」
セイバーが宣言する――
「輝かしき信仰よ、正しき意志よ、形を成せ! 絶対の法と成りて、邪悪の手を禁じよ!!」
ランサーが魔法を放つ――
美しき光が
アサシンにとって、これはもう、絶体絶命であった。退路は封じられ、助けも得られず、目の前には最強の戦士。終わりだ。セイバーの言う通り、これはもう、完全に終わりだった。……だった。そのハズだと、セイバーも、ランサーも、そう考えていた。
――アサシンが哂った。
宙を飛んでセイバーの元へ向かうランサーが、突如、空から降り注ぐ殺気に気が付いた。…が、遅かった。
「おめでたい奴らだ。私がこれを、想定していなかったとでも?」
「天使殿……ッッ!!?」
黒く分厚い短剣が、ランサーの胸を刺し貫いた。それはちょうど胸の中心。心臓を貫かれるのは避けたが、しかし、致命傷には違いなかった。
「がっ…!! こ、この……!!」
「この、死に損ないの天使がっ! 往生際の悪い!」
「アサ……シン………!!」
「さっさと死ねッ!!」
屋根の上から飛び、ランサーの背へと降り、落下の勢いを剣に乗せ、貫通するまで突き刺したのは、アサシンが最後に残して置いた分身だった。
ニ撃、三撃、と、アサシンの分身が短剣を突き刺す。全て背中から、胸を狙って。だが、落下の速度を利用しての威力増加が無い今回は、身体を貫通するには至らず、半ばで止まる。
そして、ランサーの反撃。上下を反転させ、分身を振り落とそうと身体を捻る。腕一本でなんとか掴みかかったままの分身が、振り落とされそうなる。完全に無防備となったそこに、柄を握り直した手で、槍を突き刺す。
「がっ、あっ! あっ……、あ…ぐ……ウゥ……」
分身の胸に槍を突き立てたはいいが、制御を失ってしまい、ランサーはもつれて墜落した。高度は取っていなかったが、衝撃はあった。そのせいで、胸の傷が更に開き、大量の血が流れ出た。
分身は倒した。だが、これでまたも、ランサーは戦闘不能に。そして、セイバーまでもが、重傷を負っている。唯一、決定的なダメージを受けていないのは、本体のアサシンだけだった。
「ぐふ……セ、セイバー…!!」
托す、と、ランサーの眼が言っていた。
「終わりだな、キサマら」
「アサシンッ! 貴様ッ!」
「初めから分かっていたことだ。私に勝てるなどと…、ただ思い上がりにすぎん――さあ、死ね」
状況は反転した。有利はアサシンへと傾いた。
(どうすればいい…!? この状況で、どうすれば
窮地。絶体絶命の窮地にて、セイバーは思考する。道を探す。抗い、生き残るための、活路を。
その時――
『………セイバー?』
――声が聞こえた。
『無事か? ……セイバー?』
その声は――頭に直接届くその声は、希望のひとつだった。
次回も遅れます。今から謝っておきます。ごめんなさい。
~次回予告~
驚くべきことに、ミラディンには塩が存在しない。それが、セイバーの味覚の問題だった。
「塩気があるって素晴らしいな」
切嗣の財布が悲鳴を上げる!
「このステーキ! 黒胡椒と粗塩のハーモニー! 肉汁の旨みで舌が溶けそうだ!」
セイバーの手は止まらない……
「お好み焼きって、男らしい味をしているんだな」
止まらない食欲。その果てに何があるのか。行き着く先はどこか。
聖杯戦争はついに、セイバーの完食という形で決着する。
次回、「セイバー、聖杯で飯を食う」にご期待ください!
未完? 何の事です?