※この作品はR-18です。

Fate/zero × MTG のクロスでも書こうかなと   作:栗鼠科.aka.メスガキ撲滅委員会

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少しレイアウトを弄ってみた
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今回ちょっとシリアス
たまにはこんな回があってもいいよね

てか熱が乗ってんなぁオイ! 文字数どんどん増えてんじゃーん!



09

 冬木の聖杯戦争を始めた御三家の一角、間桐(まとう)。その屋敷の一室で、死人(おとこ)が目覚めた。

 男の名は間桐(まとう)雁夜(かりや)。一度は家を出た雁夜であるが、懇意にしていた女性の娘が間桐に加えさせられたと知ると、大急ぎで実家へと帰った。そして事の詳細を掴むと、一人の少女を助けるために、自身の命を差し出した。他者を救おうとする雁夜の自己犠牲、それは人道的には素晴らしいのだが。その結果、現在の雁夜は死にかけていた。

 

「もう…朝か…」

 

 雁夜の口から出たのは、どうということはない、そのままの台詞だった。それが、驚きでもあった。一晩掛けて生死の境をさまよい、泥の様に眠っていたのに。いざ目が覚めると、とても今までの自分からは想像も出来ない、日常的な言葉が自然と出たのだから。

 身体が重たい。酷く消耗しているのか、喉は渇いているし、頭もはっきりとしない。そんな状態の雁夜であったが、心の中はとても爽やかだった。

 暗雲立ち込めた未来が、明るく開けたのだ。死を覚悟して、行動に移した甲斐があった。そう思うと、雁夜は自然と嬉しくなるのだ。これで桜(さくら)ちゃんが救われる。そう考えると、雁夜は自然と笑顔になってしまうのだ。

 

「アーチャー、居るんだろ? 出てきてくれ」

 

 お礼を言いたい。そう思って、雁夜は"命(・)の(・)恩(・)人(・)"に声を掛ける。

 その瞬間。とても重たい空気が部屋に充満し、黒い意思が形を成す。霊気が満ち、霊体が個と成り、実体と化す。此度の聖杯戦争で召喚された英霊(サーヴァント)が一人、三騎士が一角、アーチャー。その実体化が終わると同時に、張り詰めた空気が消えた。

 

「・・・・・・・・・」

 

 異形が間桐雁夜を見下ろす。

 異形というのは確かだ、これでも女性なので、失礼かもしれないが。なにせ、まるで悪魔か何かかという風貌なのだ。その大きな胸はとても魅力的だし、裾がボロボロであるが、黒いドレスも腰から上は似合っている。だが、それらを帳消しにしてなお余りあるマイナス。頭はハゲ上がっていて、髪の代わりに黒い触手が生えている。背中には大きな翼があって、その黒い羽はまるでカラスの様で不気味だし。白く濁った眼球は、目を背けたくなる程に気味が悪い。そして目蓋は黒塗りで、唇も気色の悪い青紫色だ。一言で言い表すなら、怪物。そう、怪物だ。これを怪物と呼ばずしてなんと言ったものか。人に仇なす存在であることは、見ただけで解(わか)る。それがアーチャー(ヴィザラ)というサーヴァントだった。

 だが、見下ろされる間桐雁夜は笑顔だった。見下ろすアーチャーは不機嫌そうだったが。

 

「…すまないな。どうやら、あれからずっと寝ていたらしい」

「・・・・・・・・・・」

 

 未だ、体力が回復していないのだろう。雁夜は身体を起こせないまま、自分のサーヴァントに声を掛ける。

 しかし、アーチャーは不機嫌そうだった。胸元で腕を組んで、ただ間桐雁夜を見下ろすばかり。

 

「布団は…桜ちゃんが? それともアーチャーが?」

「・・・・・・・・・・、アタシだよ」

「そうだったのか、ありがとう」

「あの小娘(ガキ)がうるさいからやったんだ」

「でも…ありがとう…」

「…フン」

 

 やっと口を開いたアーチャーは、まだ不機嫌そうだった。どうやら納得がいかないという風で、少し苛立っているようにも見える。

 その理由はハッキリしている、間桐雁夜が原因だ。自覚はあるのだろう。雁夜は、少しばつが悪そうな顔をして照れた。だが、言ってもしょうがない事だと分かっているのか、アーチャーは直接的な不満を口にしない。ただ、不機嫌そうでいるだけだ。

 

「桜ちゃんはどうしてる?」

「…寝てるよ」

「…そうか、無事で良かった…。助けてくれてありがとう、アーチャー」

「令呪を使っておきながら、よくもまぁいけしゃあしゃあと…」

 

 間桐雁夜にとって、アーチャーは命の恩人である。もっとも、それはアーチャーの望んだ事ではない。それは今のアーチャーの言葉通り。間桐雁夜がアーチャーのマスターである証拠、その手にある令呪が一画欠けていた。それは、間桐雁夜の命令によって、『アーチャーは無理矢理、二人の命を救わされた』という事を意味する。それが、アーチャーの不満の原因。

 しかし、アーチャーもなにか思うところがあるのか。不満たらたらな態度だが、こうして間桐雁夜の傍を離れない。実際のところは、間桐雁夜がマスターとして致命的に終わっているため、魔力供給がまるで届かないので離れられず、ただ困っているだけなのだが。

 

「そのまま寝てろ、お前はさっさと体治すんだよ。…こっちが困るんだから」

「す…すまない…」

 

 怒られた間桐雁夜は体の力を抜いて、静かになった。

 その様子を見て、アーチャーがぽつりと漏らした。

 

「あのジジィを食ったからね、小娘(ガキ)の中で暴れた蟲も。ひとまず、今日一日実体化するのに困らない程度には魔力がある」

 

「だけど、そのせいでお前が駄目になった。ジジィの魂を食い尽くしたら、お前の体ン中の蟲が暴れて死んで、途端に魔力の供給が縮みやがった。…あの蟲が魔力を作ってたって知ってたら、アタシはこんな事しなかったね。おかげで明日からは実体化するだけでも精一杯だ」

「…悪かった」

 

 それは酷い冒険だった。間桐雁夜は、令呪を一画用いてまで、『遠坂(とおさか)桜(さくら)を助けるために、間桐(まとう)臓硯(ぞうげん)を殺せ』と命令した。アーチャーは訳も解らぬままに動き、直死の魔眼で臓硯の仮の身体を見、射殺した。すると遠坂桜の様態が一変した。それが体内の蟲が暴れた事によるものだと分かると、彼女の体内に本体が居るのだと知る。そして、アーチャーは本体を引きずり出して、食らった。そして今に至る。

 結果は散々だった。間桐雁夜は体内の蟲が暴れた事で昏倒し、意識を失った。間桐桜も同じく倒れ。アーチャーは魔力供給が減った事で、間桐雁夜の傍を離れる事が出来なくなった。二人を縛りつけた諸悪の根源を消し去ったのは確かだが、代償は大きかった。

 それを悪いと思ったのか、間桐雁夜が謝る。しかし、返ってきたのは怒鳴り声だった。

 

「そう思うんならとっと体治しな!! 治らないってんならお前とあの小娘(ガキ)を食い殺して新しいマスターを探しに行くからね!!」

 

 思いやりのある台詞にも聞こえるが、それは気の迷いで、間違いだろう。ヴィザラ(アーチャー)は本当に実行する。間桐雁夜が立ち上がれないと分かれば、本当に二人を食い殺して、ここを出て行くだろう。それは、マスターである間桐雁夜の目にも、明らかだった。

 マスター権限という視覚情報がある、自身または他のマスターの、サーヴァントの情報を読み取れるというものだ。自身のサーヴァントであれば多くの情報が公開され、妨害や抵抗が無いのなら、スキルや宝具といった項目まで知る事ができる。

 だが、間桐雁夜の目に映るのは、酷く恐ろしい情報ばかり。読み取れるアーチャーの属性は『中立・悪』。ここで言う属性とは精神的な傾向の事であり、前者が社会的に重んじる善悪の方針を指し、後者は性格的・個人的な善悪の方針である。ここで問題となるのが、悪という性格的方針。社会的方針が中立であるということは、社会秩序に対して、不平不満が無いという事を表すのか、乱す訳でもなく守ろうとする訳でもない積極性の無さを表すのか、まはたま完全にどうでもいいと思っているのか、それが分からない曖昧な表現だ。しかし性格的・個人的方針が悪であるのなら、話は変わってくる。個人的方針が悪という事は、『手段のためには目的を選ばない』といったような、酷く利己的で自己中心な者であるという証拠。つまり、自分のためなら法も破るし、目的のためなら秩序を乱す事も気にしない。アーチャーがそんな存在だという事だ。

 恐ろしいのはそれだけではない。スキルの欄に目を移せば、見えるのは恐ろしい単語。『怪物:A』。最早人間ですらない、人間じゃないのは見ただけでも分かるが。こうもハッキリと『怪物』と記されると、同じ部屋に居るだけで寒気がしてくるというものだ。そのうえ、意識して視界に収めるだけで対象を殺害可能とするスキル、『魔眼:A++』の存在。正に、文字通りの怪物である。

 しかし、だからこそ間桐雁夜は無茶な冒険をしたのだ。アーチャーの力があれば、聖杯戦争を生き残るまでもなく、間桐臓硯を抹殺して遠坂桜を助ける事が出来る。そう考えたからこそ、間桐雁夜は令呪を使って命令したのだ。そして、その考えは正しかった。アーチャーは見事、間桐臓硯を抹殺し、間桐雁夜と遠坂桜の両名を救った。

 

 これで良かったんだ。そう思い、安心したのか、間桐雁夜は静かに目を閉じた。

 アーチャーは実体化を解き、霊体になることで魔力の消費を抑えるつもりで、消えてしまった。

 

 後に残るのは、間桐雁夜の静かな呼吸、そして朝の日差しのみである。

 

 

―――――

 

 

 目が覚めた時。遠坂(とおさか)時臣(ときおみ)は、奇妙な違和感を捨てられないでいた。

 顔を洗い、服を着替え、部屋を出る。朝食は後回しにして、違和感の正体を探りに行く。サーヴァントを召喚する際に使った地下室。そこへ下りれば、確かに居る。違和感の正体が。

 

「―――」

 

 日が昇り光が射(さ)す、朝から昼にかけては人間の時間だ。だから、吸血鬼は寝るのだろう。実体化を解きもせず、そこにドラーナ(キャスター)が居た。

 静かな寝息を立てて、器用にもワイングラスを持ったまま、キャスターは眠っていた。美しい寝顔だった。雑誌の一面を欲しいままに出来るだけの美貌だ。

 寝顔はありのままを映す。それは自然体だから。ならば、なぜキャスターの寝顔は美しいのか。傍若無人、自己中心、酷く利己的なこの女がなぜ美しいのか。遠坂時臣は疑問を覚えた。その答えは、夢の中で見た違和感なのだろう。

 さっきまで、遠坂時臣は夢を見ていた。それは暴力的で、陰惨で、破滅の夢。パスでサーヴァントと繋がる事が原因である。繋がった事で流入現象が起き、夢という形で、サーヴァントはマスターの過去を、マスターはサーヴァントの過去を見る。そして見たものは…。

 

―

 

 ゼンディカー。豊富なマナで満ち、豊かな自然があり、様々な種族が暮らす次元。それは昔の話だ。ドラーナが知るゼンディカーとは、荒廃し、流動し、崩れながらも形だけは保っている世界だ。大地は抵抗の意思を持ち、独りでに動き出す。空に漂う面晶体が不気味で。マナは時々ほつれるし、場所によって爆発する。唯一、人間の血肉だけはどれだけ時が経とうとも美味しいまま。

 そんな世界で、ドラーナは、女王の地位を欲しいままにしていた。なにもしなくていい。腹が減ったと言えば、僕(しもべ)が食事を用意する。喉が渇いたと言えば、すぐに人間の首が刎ねられ、グラスに新鮮な血が注がれる。湯浴みをしたいと言えば、侍女が服を脱がせてくれるし、湯舟にはいつでも温かい湯が張られる。幸せな生活だった。

 そんな世界が、ある日突然、一変した。"神が現れたのだ"。

 神はゼンディカーを守護する存在ではなかった。伝承とはまるで違う。それは破壊神だった。半魚人(マーフォーク)や放牧民(コー)に信仰され、崇められた三柱。風の女神、エム。ペテン師の神、コーシ。海の女神、ウーラ。その三柱が突如として復活し。世界に、そして全ての生命に牙を剥いた。

 神の本当の名前は、エルドラージというらしい。それが世界に現れてからというもの、混乱と死と荒廃だけが広がるようになった。

 勇敢に立ち向かった者もいた。だが、神とよばれる程の存在を前にして、全ては無力だった。大地も、空も、全てが消える。エルドラージはマナを食らう。その飽くなき消費は、まるで止まるところを知らず、全てを消し去ってしまうかに思えた。

 そんな中、吸血鬼が立ち上がった。グール・ドラズの吸血鬼が、皆一様に立ち上がった。偉大なる五つの血脈が、世界の抹消者に立ち向かわんと、その腕に食らいついたのだ。その中心には、ドラーナの姿もあった。

 ドラーナは女王だ。自ら動くような事はない。だが、それは平時の話だ。世界の危機、ひいては全ての吸血鬼の存亡に関わる事態となれば、いくらドラーナでも腰を上げる。そして、夜の支配者が剣を揮った。

 吸血鬼の戦力は凄まじいものだった。活動出来るのは日が沈んだ夜間のみと言えども、他の人型生物とは比べ物にならない身体能力があるのだ。そこに魔法や血魔術が加わり、剣や槍が加わり、そしてシャーマンであるドラーナの激励が加われば、誰一人として挫ける事も恐怖する事もなくなった。

 戦いは続いた。何日にも、何週間にも、何ヶ月にも及ぶ戦争。生き残るため、吸血鬼達は戦った。それでも、エルドラージは退かない。

 犠牲者は増えるばかりだった。中には、エルドラージの手下になってしまった吸血鬼もいた。そうなった時、ドラーナは涙を零した。

 

「私の…私の子供達が…! ああっ…、どうしたらいいの…!」

 

 自身の血を分け与え、自ら眷属へと引き入れた者達が、次々と倒れていく。死体は残らない。日の光に晒されれば、吸血鬼は灰と化す。そうでなくとも、エルドラージの先兵に食われてしまうか、血肉をマナへと変換されて、粒子となってしまうかだ。それが耐えられなかった。

 やがて、ドラーナは決意する。必ずや、この償いをさせてやると。

 

『かつての我らの支配者が我らを再びひざまずかせようとするなら、我らの反逆の傷をその皮膚に感じることになるだろう。』

 

 ドラーナは宣言する。吸血鬼の肩にある突起が、かつて、エルドラージの道具でしかなかった時代の名残だとしても。今、我々は確固たる魂を持ち、自らの意志で動く存在なのだ、と。そして涙を拭いて、ドラーナは立ち向かった。世界の抹消者たる、エルドラージを相手に。

 

―

 

 

 『鬼の眼にも涙』、日本にはそんな諺がある。だからどうと言う事はないのだが。遠坂時臣は、もどかしいような、胸の痞(つか)えが取れないような、奇妙な違和感が拭えないままだった。

 彼女は吸血鬼だ。人の生き血を啜り、命を食らう存在。人間からすれば、まぎれもなく悪であるハズだが。そんな彼女でさえも、自分の子供の死を知った時には、心の底から悲しんで、涙を流した。そして世界を守るために、彼女は折れる事なく立ち向かった。勝てないだろうと、分かっていたハズなのに。それでも彼女は立ち向かい、死ぬまで戦い続けた。

 

「・・・・・・・・・」

 

 言葉に出来ない。それが遠坂時臣の、今の感情だ。どう言い表したものか、まるで考えつかない。優しさを持ち、思いやりを持ち、感情も、魂もある。家族が死ねば涙を流す。それは人間と同じ。だが、吸血鬼である事は確かなのだ。その食い違いが、どうにも言葉に出来ない、もどかしさの原因だった。

 

「あなた…? ここに居たのね。もう朝食の時間よ? 凛が急かしているわ、早く来てくださる?」

 

 地下室の入り口から、妻の声が聞こえる。その中にあった娘の名前が、遠坂時臣に答えを示した。

 

『娘(りん)が死んだとき…、私は…彼女のように、涙を流す事が……できるだろうか…?』

 

 そう自問した瞬間。遠坂時臣は、頭の中が真っ白になった。

 それが、答えだった。

 

「…ぁ、……ああ、いま…いくよ…」

 

 違和感の答えを得て、その心理の意味を知った。後に残るのは空虚な心だけ。

 気が抜けた遠坂時臣は、掠れた声で返事をし、ゆっくりとその場を後にした。最後に一度だけ、キャスターの方を振り返ってから。

 

 

 




アーチャーのこれはツンデレちゃうで! 勘違いしたらアカンで!

さてさて…
キャスターの過去が見えたところで、とっきーは何を思い、どう行動するつもりでしょうかね。

あ
お昼パートは"ほんわかふわふわ"したものになると思うよ
多分またジョーさんとかアヴァシン姉貴が飯食いに行くんじゃないかな
わかんないけどね

次からは設定集が入るので、見たくない人は一度タイトルに戻ってね。

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