「お前は誰なんだ!」
一人の男が悲痛に叫ぶ。ここはある事務所の地下。男の眼前に広がっていたのは、その男の部下らしき人間の遺体と血で染められた一匹の人間だった。その姿はまるで飢えた怪物が餌を探し求めるようなおどろおどろしいものだった。
「儂の名は旧《キュウ》 。仕事は何でも屋をしている。今回は復讐を頼まれてきた」
旧は顔についた血を拭いながら話を続けた。
「貴様の名はアンドリクセン。犯した犯罪は町娘を攫ったあと強姦し、殺害。 あと違法魔導兵器の製造。間違いないな?」
「あぁそうだよ。で?俺をどうするつもりだ?殺すのか?」
「依頼主からは殺せとのことだ。という訳で死んでもらうぞ」
旧は胸からハンドガンを抜くとアンドリクセンの前に突きつけた。と同時にアンドリクセンも旧の前に銃を突きつけた。その形状は外見でもわかるような禍々しいものだった。
「死ぬのはお前の方だ!怪物!」
そう言うと同時に光線が放たれ地下内に轟音が響いた。アンドリクセンの眼前には何も残っていなかった。
「ふははははははは!!!!所詮は口だけだったか!あの怪物も俺の武器にかかりゃ蟻みたいなもの「さらばだ」」
ハンドガンの乾いた銃声がアンドリクセンの真横で鳴り響いた。アンドリクセンの側頭部には綺麗な風穴が空いていた。念入りにもう5発側頭部に弾を撃ち込んだ。
「死んだかと思ったか。戦った年季が違うんだよ年季が。ともあれ依頼は完了した」
旧は風穴の空いた肉の塊に背を向け、階段を登り拠点《アジト》へ戻ることにした。
ここは魔法が飛び交う世界カルマンド。旧は7年前にこの世界に来た。というのも7年前、旧は脳卒中で倒れ死亡した。気がつくとこの世界に来ていたという訳だ。この時点で85歳だった旧は腰を悪くしており、歩くのがやっとだった。近くに洞窟があり休むことにした。湧き水が湧いていたので、飲んだところどうやら若返りの水だったらしく、飲むたびに5歳づつ若返っていったようだ。とりあえず60歳まで体を戻し、街へと出向いた。しかし、そう簡単に外から来た人間を受け入れるはずもなく、街の人々は旧を異界人と呼び毛嫌いしていた。姿を見つければ石を投げられ、罵声も浴びさせられた。
「こいつら、いつか酷い目に合わせてやる」
そんな憎しみや怒りを溜めること1年。空腹で死にそうな旧の前に一匹の悪魔が舞い降りた。姿は幼い少女のようだった。
「力が欲しいか?爺さん?」
「そんなものいらん。あったって儂の取り巻く環境は変わらん。あとお前に何が出来る?悪魔ってことはわかったが」
「その憎しみと怒り、私にくれよ。くれたら絶対に死なない能力あげる」
「話を聞けよ。まぁ欲しいならやるが」
「ありがと!爺さん!」
というようなやりとりがあり、旧は絶対に死なない能力を手に入れた。能力名は<寄生>だった。使い方を聴くとそれくらいは自分で考えろと一蹴され、悪魔はどこか行ってしまった。
この能力を活かし、何でも屋を開いたところ、僅かではあるが人は来るようになった。
「依頼は完了した。対象は完全に死んだぞ」
「ありがとうございます。こちら報酬金です」
依頼主であるその町の町長がテーブルの上に金の入ったバッグを置いた。その顔は対象が完全に死んだことに対する安堵による笑みと、異界人である旧に金を払うといった行動に対する屈辱が入り混じった表情をしていた。
「では失礼します」
「またのご贔屓に〜」
依頼主が帰ると旧は客人用のベッドに寝そべり、金を数えていった。
「ひいふうみいと。これで当分は暮らせるな」
下卑た笑みを浮かべながら旧はまた金を数え始めた。この物語は草原の隅に立った小屋で営業している金の為なら老若男女問わず殺しを行う男の物語を淡々と綴ったものである。
不定期ですがちょこちょこ更新していこうかと思います