「暑い…」
鬱蒼とした森林の中、一人の老人が歩いている。右手にはコンバットナイフ、左手には水筒を持ち、目的地である神殿を探していた。今回の依頼はギルド協会とやらからだった。話の内容によるとこの辺でゴブリンが冒険者を襲い、更には街にまで出向き、食料や金品を強奪していくとのことだ。達成目標はゴブリンの殲滅と、できたらでいいので生存している冒険者の回収だそうだ。正直気は乗らなかったが、報酬は肉と水という話を聞き承諾した。ゴブリンの根城としている神殿は事務所から約150キロあり、その途中で森林を通るので歩きで目的地に向かうことになってしまった。
「まったく、なぜ儂がこんなゴブリンとかいう腹の足しにもならない雑魚を倒さねばならぬのだ。こんな仕事ははその辺のちーと冒険者にやらせればい良かろう」
旧は愚痴を漏らしながらつるや邪魔な草をかき分け歩いていた。しばらく歩くと目の前にはゴブリンの根城としていると言われている神殿に着いた。外見はパルテノン神殿にそっくりだった。入り口には冒険者の死体らしきものが転がっていた。
「ほう。これは男の死体か。職業は…さしずめ戦士といった具合か」
死体から武器を拝借し、手を合わせた後神殿の中に入ることにした。事前に渡された地図によると地下5階まであるらしく、各階には大量のゴブリンが生息しているそうだ。
まずは地下1階を目指し、それに通じる階段を探すことにした。神殿の中は所々血にまみれていた。旧は壁についていたまだ新しめの血を指ですくい舐めた。
「この血は人間か。しかも男。男はここで殺して女だけを拉致したというわけか」
ブツブツと分析してると背後からヒュンッと何かが飛んでくる音がした。即座に振り向き真剣白刃取りの要領で飛んでくるものを掴んだ。掴んだのは矢だった。矢尻には何か青白いものが塗られていた。多分猛毒と思われるものであろう。
「チイッ!シトメラレナカッタ!」
「オレガコロス!」
二匹のゴブリンがこちらを見据えたまま弓を放つ準備をする。旧は先ほど掴んだ矢を投げ、片方の弓を引こうとしていたゴブリンの手に命中させた。
「ギャアアアアア!!!」
「騒ぐな小鬼如きが」
旧は矢が刺さった方のゴブリンにゆっくりと近づき、持っていたコンバットナイフで眼球を切りつけ、喉元にナイフを力強く刺し、絶命させた。その後すぐ近くにいた先程矢を放ったであろうゴブリンの胸ぐらを掴み質問をした。
「これはとても簡単な質問だ。これに答えたらお前の命は保証してやる」
「ナ、ナンダヨ」
「地下1階への入り口を教えろ」
「フン!シルカ!」
「そうか。ならば仕方がない」
そう答えたあと旧の人差し指がゴブリンの頭を貫いた。ゴブリンは少し呻いたあとうなだれた。この時旧の指は脳漿にまで達していた。そこにすぐ作ったものだが、指先に洗脳させるウイルスを作り注入した。
「もう一度言うぞ。地下1階の入り口を教えろ」
「ツイテコイ」
ゴブリンは素直に地下1階の階段まで案内してくれた。どうやら階段は先ほどの血を舐めた場所からかなり近かったみたいだ。道中、他にも乾いた血液の味を確かめたが、やはり人間の男性の血液しか感知できなかった。
「ココダ」
「感謝する」
別れの言葉とともに指を鳴らすと先ほどのゴブリンは空気を入れすぎた風船のように頭部が破裂した。それを見届けて旧は地下への階段を降りた。
「あぁそうだ。大事なことを忘れるところだった」
先程倒れていた死体のところへ戻ると胸元からなにか液体の入った瓶を取り出し、中身の液体を死体にかけた。すると、先程まで倒れていた男が息を吹き返し、ゆっくりと立ち上がった。
「俺は…何を…確かゴブリンにやられて」
「そこの男よ。今すぐ街に戻れ。そして、ギルド協会とやらと関係がある人間を連れてこい」
「その声は、まさか異形か!?おのれ!お前ここで何をしている!?まさか、俺のパーティメンバーに」
「早くしろ。さもないともう一回お前を葬ることになるぞ」
旧は転がっていた石を壁に投げつけた。投げつけられた石は粉となった。
「こうなりたいのか?」
「わかったわかった!行ってくる!」
「最初からそうしろ」
「だか行く前に一つ質問させてくれ」
「なんだ?」
「お前が持っているその瓶、これってイシスの涙だよな?」
「?イシスの涙とはなんだ?」
「知らないのか?イシスの涙とはな、どんな瀕死の状態、もしくは死亡してる状態でも蘇生、回復するすごく手に入りにくいアイテムなんだぞ」
「知らないな…前の仕事の報酬で大量に貰ったからただの雑魚アイテムかと思ったが」
その瓶をゆらゆらと揺らしながら旧は不思議そうに瓶の中身を眺めた。太陽に照らされた緑色の液体がキラキラと光っていた。
「質問はそれだけか?」
「あぁ。時間を取らせた」
「じゃあさっさと行ってこい。儂はここにいる小鬼<ゴブリン>と戯れてくる」
旧は男に武器を返すと、先ほど見つけた階段へと向かっていった。ポケットにある煙草に火をつけながら階段を降りていった。 男はその背中を見届けたあと走って街へ戻っていった。
地下1階層に降りると辺りは暗く5メートル先は何も見えないような空間だった。近くに木の棒が落ちていたのでポケットに入っていたライターで火をつけ松明がわりにして進むことにした。進んでいくと道は案外単調で特に分かれ道もなく、地下二階への階段へたどり着いた。しかし旧はこの状況に違和感を覚えた。
「何かくさいな。この階層にゴブリンがいないはずがない」
そう、ゴブリンが一匹もいないのである。情報によれば各階層にはちゃんとゴブリンが居るはずということだ。
「男は興味なしか。では仕方がない」
旧はおもむろに自分の胸の部分に指を突き刺した。すると、髪の色は白から黒に、胸はBカップに、目の色は灰色から澄んだ綺麗な茶色に、骨格も女性の形になった。自分の指先に細胞すら変えてしまうウィルスを流し込むことで姿形を変えることができるようになったのである。とりあえず25歳の町娘のような風貌に変身した。
「最近になってようやくこの能力を使いこなせるようになったな。まさか、骨格や性別まで変えられるとはな」
そんな独り言を言ってると後ろから荒い息遣いが聞こえてきた。ゴブリンだ。その息の数からして約30といったところだろう。
「さて、運動しますか」
旧はゴブリンに向き合うと石を拾い手前のゴブリンに全力投球をした。その行動を引き金に殺戮が始まった。石が胴体に当たったゴブリンは風穴が空いたのでその穴に手を入れ、左右に引き裂いた。次に小型剣を振り上げてきた五匹のゴブリンに対しては二匹を同士討ちさせ、残りの三匹は一匹ずつ殴り殺していった。一匹は首の骨を折り、あとの二匹は体に棘の鎧を着ていたので、一匹を掴み、その胴体に頭を叩きつけ貫通させた。残っていたゴブリンはその辺の小石を散弾銃の弾の要領で投げつけ始末した。まだ生きていたゴブリンの胸ぐらを掴み、質問をした。
「コ、コロサナイデクレ」
「じゃあ、お姉さんの質問に答えてくれたら殺さないであげる。各階層には何匹ずつゴブリンはいるの?」
「30ハイル!コレデイイダロ!」
「わかったわ。ありがと」
ゴブリンから手を離し、旧は地下二階層への階段へ向かった。
(ダマサレタナアノオンナ。コレデヒキサガルオレサマジャネエ)
ゴブリンは音も立てずに旧へと近づいた。そして棍棒を振り上げたその時、
「そう来ると思ったぞ小鬼如きが」
いつもの姿に戻った旧が振り向きゴブリンの喉を掴みそのまま握り潰した。
「全く。ゴブリンは相変わらずちょろいな」
そう吐き捨て落ちていた松明を握り直し、地下二階層へと向かった。
女騎士が犯される表現を学んだら投稿します。