凡そ十二億年ぶりに生まれ故郷の世界に帰還した。思い返してみれば殆どセックスのことだけ考えていた気がする。
はっきり言ってこの世界のことは既に俺の記憶には何も残っていないが、初期に残した記録が故郷の状況を教えてくれる。デモンベインの世界で九郎たちと過ごした時より凡そ80年の時差がある。近年はアーカムシティに住んでいたためあまり違和感はないが、それでもやはりこちらの世界の方が全体的には進んでいる。
あちらの世界は特定の技術は進んでいるが、全体で見ればまだまだ発展途上の世界だった。
俺の人生で1%にも満たない時間を過ごした賃貸マンションがひどく懐かしい。先ずは記録を頼りに状況の確認をしていくが、そういえば俺は童貞のエロ同人作家だったことを思い出す。
机の上には新刊の原稿を試し刷りしたものが無造作に置かれ、作業中のまま消さずにいたパソコンに表示された少女は既に記憶に無い。記録と原稿の内容によるとどうやらゲームに登場する擬人化した戦艦の陵辱の果てに快楽堕ち(撃沈)するというありふれた内容のようだ。当時は流行っていたらしい。いや、今もだが、なにせ億年単位で時間が過ぎているので、再び適応するには時間が必要だ。
そして驚くことに、なんとこの頃の俺はまだロリコンでは無かったらしい。
久しぶりに同人誌を描くのも良さそうだ、と思いリハビリがわりに早速ノンフィクションでデモンベイン同人誌のネームを書き上げる。しかし其処から先が難関だった。
億年単位でペンをとっていなかったため、どう見てもペンのノリが違う。
もちろん悪い意味で。
これでは描きかけの原稿すら冬の〆切りに間に合いそうにない。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
まぁ、結果的には短期間でリハビリは終了したが、明らかに以前と画風が変わってしまった。
魔術によって時間を圧縮して一年ほどその空間に篭り、過去の記録を追体験し、只管絵を描き続けていた。魔力があれば食事は既に嗜好品に過ぎない、所謂捨虫捨食の法のような状態となっており、本当に絵のことだけに集中していた。その間のケフィの役割はデッサンモデルだった。
専属のモデルに好きな格好をさせることができ、どんな要求も聞いてもらえるので、幼い少女を描く分には困らない。幼い少女を描く分には。
そう、全方位に性癖を発揮していた中出紳士は、変態ロリコン同人作家となってしまった。
これはダメだ。
どちらかというと豊満な肉感と汁物の描写に定評があった中出紳士の新刊が、時を経てつるっつるろりっろりな児ポ対象になりそうな陵辱本になってしまう。
これは、ダメだ。
いや、自分は紳士だ。たとえ変態でも変態という名の紳士でなければいけない。
今からでも遅くはないはずだ。このロリ作風を否定する気はないが、なんとしても過去の作風を取り戻して見せなければ。
なぜなら……この世界を発った時点で既に、カラー表紙は入稿済み、イラストサイトでは宣伝済み。そしてその表紙は豊満な姦娘なのだから。
原稿を纏めて本にしたのは言ってみれば学生時代のテスト期間の掃除のようなものだ。総集編という感じで纏めたクトゥルフ本を作ることになり、修正作業をデジタルで済ませて気付けば新刊の締切が近かったから、現実逃避としてエ□ボンの書精言語版がうまれたのだ。いちいち外出して専門の店で道具一式から購入したのはいい思い出だ。まぁ、それがきっかけで長いモラトリアムとなってしまったが。
このままでは「え、別人が描いたの?」「誰これ?」「表紙詐欺だわ」なんて事態にもなり得てしまう。
そうして、さらに一年の強化合宿により過去の作風を取り戻し、二つの画風を使い分けることが可能となったのだ。
デモベ世界から帰還した時点で、この世界では数日の時間が経過しており、カレンダーに描かれた赤丸は三日後の水曜日。
ある意味これまでのセックス三昧のループより追い詰められる三日間となった。
そこも圧縮時間でやれば良いと思うかもしれないが、これまでの同人歴十二年、一度も原稿を落としたことがなかったらしいので、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ。
たとえ他人には負けても、自分にだけは負けられない。アチャー。
だが、それ以外にも問題があった。
そう、それは――本業を数日の間無断で休んでしまったことと、すっかり仕事内容を忘れていたことだ。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
いろいろあった年末をなんとか乗り切り、久しぶりに実家に帰省することになった。サークル参加は当然のように三日目の男性向け枠であり、打ち上げもせずに午後の比較的早い時間に新幹線で帰省する。立ち乗りになってしまったが、昔の不健康な体ならともかく、今の体はそんなことで疲れることはない。
問題はこの少女をどうやって家族に紹介するか、だ。
もちろんケフィのことであり、今は本になってもらっているがどう見ても十歳以下でしかも外国人。戸籍も当然ありはしない。
この世界で暮らすには色々と問題が多い。
調査の結果、この世界には魔術の存在は確認できなかった。まぁ、魔術結社等は過去に存在したようだが、どれも魔術と呼べるモノを成してはいない。そんな世界で、不滅の存在になってしまった俺は、もはや歳を重ねることはなく永遠を生きる人外だ。
やはりケフィの進言の通り、仕事をやめて別の世界へ渡ることにしたほうが良いかもしれない。両親もいるのでたまには戻ってくるつもりだが、仕事は続けられないだろう。
ループを抜けて気付いたことだが、俺にはこの世界以外に帰還すべき世界があった。広大な土地以外何もない世界で、ケフィ曰く俺の世界だという。わかりやすく言えば、神の座が一番近いだろうか。
その世界は“紳世界”と名付けた。
今はこちらの世界の自然を持ち込んで根付かせる作業をしている。ただ、本当に何もないので紳世界に定住する予定は今のところ無い。
暫くは戸籍を気にしないでいい世界へ渡って、自由に旅をして生きようと思っている。
「あれ、紳くん?」
「……ん? ……ッ!?」
その女性の顔を見て、追体験した記憶と重なった瞬間、心臓の鼓動が大きく跳ねた。
地元へ帰る為に電車の乗り換え待ちをしていると声をかけてきた女性は、俺の人生を変えてしまった女だった。彼女が悪いわけではないが、確かにあの日、俺の人生は変わった。
ケフィと出会った今ではそのことに感謝すらしているが、やはり心のどこかで彼女の事を苦手に思ってしまっているのだろう。記憶ではなく魂が訴える。
「あ、あぁ。今は綾野さんだったかな。久しぶりだね。えーっと……結婚式以来かな?」
「そうだね。えーと、紳くんは実家に帰るの?」
「ああ、……久しぶりにね」
本当に、久しぶりだ。まぁ何年ぶりかと言っても誰も信じないだろうが。
彼女に関する記録を掘り返してみたが、もう俺と同じ三〇なのはずなのに未だに若々しい少女のようなひとだ。俺は完全に若返っているが、高くみれば二十四、五歳には見えるだろう。仕事とイベント以外でほとんど人と会っていなかったので久しぶりに会っただけでは若返ったとは気づかないだろう。
綾野さんとも大体六年ぶりくらいだから、近年の俺は知らないし若返ったとは思わないはずだ。
「そうなんだ」
「綾野さんはなにしてるんだ? 実家はこの辺りじゃないし」
「お蕎麦を買いに来てたの。今はこの近くに住んでるんだ。だから三つ隣の駅まで」
「そうか」
俺の生まれ故郷と彼女の実家は、此処からだとそれなりに遠くて新幹線に乗ったほうが早い。
結婚してこの辺りに引っ越してきたのか、旦那の実家がこの辺りなのかは知らないが、旦那さんはルポライターだったかフリーターだったか。
記録でも適当でよく覚えていない。フリーのルポライターか? まぁどうでもいいけど。
「……ん? 大丈夫か? 顔が赤いが……熱でもあるのか?」
「んッ……、ぁ」
失礼かとは思ったが、おデコに手を当てて熱を測る。高くはないが少々火照っているようだ。
(マスター、マスターの魔力にあてられたのかと)
(ケフィ? 魔力は漏らさないようにしているはずだが……)
(……)
(ケフィ?)
(……)
と、ケフィと話していると手をあてたまま彼女を見続けていた事に気づいた。
「おっと、すまん」
「ぁぁっ……」
謝ってから手をひくと、彼女は体を細かく震わせて体を傾けた。
「うおっと、……大丈夫か?」
「ひゃぁッ!」
手の中に収まる彼女は赤面し、小さく体を震わせている。この震え方はよく知っている。そして微かに漂い始めたこの匂いも。
間違いない。彼女は発情している。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「……ぁあッ! んッ……はぁ……はぁ……」
ガチガチに勃起した息子を彼女の膣は締め付ける。
幼い少女たちとは違う、成熟した大人のそれだ。既に魔力の発散は完全に抑えているのだが、それでも彼女との情事は止まらない。
「はぁ、はぁ……いいのか? こんなことしていて」
「あぁ、ん、はぁ、んんッ……だ、ダメだけど。でもっ……!」
六年と幾億年ぶりに再会した元カノで人妻な女性とセックスにおよんでいる。
駅で発情した彼女は、触れただけでイってしまっていたらしく、そのまま駅に併設されているデパートの喫茶店へ連れて行った。トイレに行きたいと言うので連れて行くと、そのままの流れで障害者用トイレでことに及ぶに至った。
彼女は既に結婚していて、六年という時間を考えるとおそらく子供も居るだろう。そんな彼女とセックスしているのだが、俺としては僥倖だった。
どうやら初体験未遂はおれのトラウマになっていたようで、これを機会に過去を克服、いや、切り捨てることにした。
おそらく当時の彼女は俺の勃起チンコを見て恐怖を覚えていたのだろう。先ほど目の前に晒した時も、目には微かに怯えがあった。当時より更に大きくなったペニスは彼女にはどう見えているのだろうか。
「子供もいるだろうに……、母親がこんなことをしていると知ったら悲しむぞ?」
「ああっ……だめ……。けい、こには教えないで」
「ケイコちゃんか。今いくつ?」
「ぁ、んッ……ご、五歳に、ん、なったわ、ぁん」
「そうなんだ。……旦那さんは家で待っているの?」
「は、はぃ。彼、フリーのルポライターだから……、ぁぁ……ッ! 大き、すぎる……」
子供を産んだとは思えない程キツイ締めつけは、俺が大きいからか、彼女のそこが小さいからか。必死に声を抑えながらも乱れる彼女には悪いが、ここは外へ音が漏れないようにしたので心配はいらない。
「旦那さんのチンコと比べてどうかな?」
「ぁぁ、おおき、すごい、わ」
自分でも人外チンコだと思うが、これまで他人と比べたことはないので心配だったが、やはり大きいようだ。初めてのひとに認めてもらえたのは素直に嬉しい。
お礼に目一杯イカせてあげることにしよう。もう旦那のモノでは満足できないように、旦那とシテいても俺を思い出すように。少しばかり意趣返しも含んでいるのは語るべきでは無いか。
「おおッ!」
「ぅぐぅ……。奥に……入って……」
一度彼女の娘が誕生した場所へ今度は俺の息子がたどり着いた。それと同時に彼女の肢体が大きく震え、膣が肉棒を絞るように収縮を繰り返す。
相性にもよるが子宮にたどり着くコツが勝手に身についていた。大きすぎるペニスで奥まで突くと、子宮口に入らなければ行き止まりを突き上げることになり、別の痛みが女性を襲う。それならと、ギリギリまでつくか子宮を目指すかの二択で俺はペニスを挿入している。
ケフィとするときは専ら後者で、無理やり広げられることに快楽を感じているようだった。
何度も子宮内を亀頭が往復し、暴れまわる。次第に彼女の声も抑えが効かなくなっていき、艶声をトイレ内に響かせる。
「……外に聞こえるかもな」
「ひっ、ああッ、ん、だめッ!」
「そろそろイクか」
「ああ、また、イクッ、いっちゃ――」
彼女の中で俺のモノが爆ぜる。
「んんんんんんッ!」
「っ……!」
声を我慢するための苦肉の策か、彼女は抱き合って顎を載せていた俺の肩に噛み付いていた。甘噛み程度にしか感じなかったが、独特の感触に一瞬動揺する。
暫くの余韻のあとに息子を引き抜くと、子宮に直接注がれた精液が勢いよく逆流する。
「あぁ、膣に……、は……んっ……はぅ……」
こぼれ落ちる精液を見ながら、絶頂の余韻に浸る彼女に俺は宣言する。
「それじゃあ、今度はそこに手をついて……」
彼女への種付けは、彼女が気を失うまで永延と続いた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
偶然ではあったが、過去にけじめをつけることができたので、俺は清々しい気分になっていた。
この世界を本当に出て行くことに、ここではじめて決心を付けられた気がする。出て行かざるを得ないのだが、どこかでこの世界に執着があった。その執着が初めての彼女であったことは俺自身にはわからなかったが、魂まで深く繋がっているケフィは何処かで察していたのかもしれない。
今日ここで、俺は本当に彼女と別れることが出来たのだろう。
なんて、いいこと言っているみたいにまとめているが、実際にやったことはただの不倫なので、全然良い事なんかでは無かった。
ということで今年の締めとして投稿。
今年も残り一日となりました。来年もよろしくお願いします。
次からは他の世界へ行ったりします。
ケフィ視点で書き始めていますが、しばらく書いてみてダメなようならまた主人公視点になったりするかも。
次回(予定)。
▼第八話。マスターでオナニーします
良いお年を。