自分の体調の不調が毒を飲まされている結果だ、そう言われた瞬間、王である男の顔の顔は狼狽した、一体、誰がと驚きながらも、それを顔には出さず、目の前の異種族、医者である相手に尋ねた。
「この毒を知って、いや、解毒薬を作ることができるのか」
その言葉に相手は王をじっと見た。
「そんな事を聞いてどうする」
この返答に王は内心、苛立ちを感じながらも解毒薬を作ってほしいのだと頼んだ。
「かかりつけの医師がいるだろう、その者に頼めばいいのではないか、協力はできない」
この言葉に不満というよりは怒りを感じたのは王よりも周りの貴族達だろう、一人の貴族は衛兵をと叫びかけたが、それは王の一言によって止められた。
「悪く思わないでくれ、治療も助けることもしない、法律や規律を破るわけにはいかん」
その言葉に王は思案顔になった、すると一人の貴族が声を上げた、アルデバランの奥方を助けたのはおまえではないかと、臣下の奥方はよくて何故、国王が駄目なのか。
「そうだ、理由は」
「亜人のくせに、偉そうなことを」
「まったくだ」
「我々は人には関与しないことになっている、議会で決められている背けば厳重に処罰が下される、患者は処分、殺されるだろう」
「なっ、なんだと」
それを聞いて最初に言い出した貴族は青ざめた顔になった。
「よろしいですか」
女が口を開いた。
「例え、今、解毒薬が作られて治ったとしても、また新たな毒を飲まされてしまう可能性もあります、失敗したら次は強い毒性のものを、そんな事が続けば」
「王が亡くなっても跡継ぎはいるだろう」
「貴様、父上に向かってなんという」
このとき、王座の近くにいた少年が席を立ち駆け寄るように地下図いてきた。
「言葉を慎め、無礼者」
この行動に周りの者達は驚いた、だが止めようとする者はいない。
「ジャイルズ、やめるのだ」
だが、王の言葉に少年は耳を貸さず、医者である亜人の前に立った。
「父上を治せ、解毒薬を作るんだ」
医者は自分の顔を隠している眼鏡をはずすと、わずかに寄せるようにして少年の顔を覗きこんだ。医者は口をわずかに開いた。
「未来の国王か、君は」
「そ、そうだ、僕は、この国の未来の」
「無理、だな」
「なっ、なんだと」
王にはなれないと言ったのか、この僕が、少年は顔を怒りのためか赤くした。
「森の獣」
「なっっ、何を」
そのとき、医者の着ていた服、胸のあたりが赤く光った。
なんだ、一体、あいつは何を知っている、少年は不安になった。
謁見はあっという間に幕を引き、アルデバランと女、あの亜人は帰って行った、誰も引きとめようとはしない。
父上は自分が毒を飲まされていたことを知った今、解毒薬を作るように医師達に命令していたが、すぐには無理だろう。
時間はある。
部屋に戻り、少年は召使いに運ばせたお茶を飲みながら一息ついた。
あの亜人、リザードマンか、あいつに従属の首輪をつけて、どんな命令にも従うように僕の奴隷にしよう。
そんな事を考えているとふと視線を感じた、ノックの音はない、気のせいかと思ったとき。
ドアの前に、それはいた、灰色の狼だ。
いつのまに、気配がなかった、狼が自分に近づいてくる。
「誰か、来てくれええっ」
思わず声をあげて助けを呼んだ。
「どうなさったのです、王子」
助けを呼ぶ声に部屋の中に慌てて入ってきた二人の兵士は少年の慌てた様子に驚いた。
灰色狼が部屋の中にいたと言われて二人の兵士は慌てて部屋の中を見回したが、痕跡の欠片もない。
「王子、何かと見間違われたのではありませんか」
「ドアの前にいたんだ」
真剣な表情の少年に対して兵士が困惑したのは無理もない、だが、それは始まりに過ぎなかった。
「旦那様、城からの使いです」
館に戻って、ほんの少ししかたっていないというのに、送られてきた手紙に書かれていたのは王の直筆、職を辞することを許可するという者だった。
「よかったじゃない、これで自由になったんでしょう」
「ええ、ですが、ハル殿」
今まで王が自ら筆を手にしてなどなかったことだ、それに。
「実は、続きが」
「私に来いというのだろう」
「は、はい」
「それはない、それより息子をよく見ろといってやれ」
「王子を、ですか」
その頃、城では異変が起きていた。