獣人が現れた、この知らせを聞いて城の人間が驚いたのは当然だろう。
人間以外の生き物というと亜人の奴隷、魔物以外は殆ど見たことがなかったのだ、王、側近、貴族達は集まり、詳しい事を聞いた。
人間の言葉を理解し、話すだけでなく、見たことのない衣服を着ているなど、あまりにも荒唐無稽、いや、信じられないという意見が大半だった。
城に呼び出されたカヴァルは自分の見たことを何度も繰り返し説明したが、その話を聞いた物達の反応に正直、戸惑い、呆れてしまった。
昼間から夢でも見たのでは、人の言葉を理解する獣人など聞いたこともないと言われては自分には反論のしようがない。
早く、この場から去りたいと思ったとき、その獣人を城に連れて来る事はできないのかと言い出したのは王だ。
一部の貴族達も賛同したが、意義を唱えたのは宰相のスネークだ。
王の信頼こそあるが、周りの貴族達からは何を考えているかわからない、名前の通り蛇のように気味の悪い男だと噂されていた。
もし、その獣人が人ではない術など使うことができたら、いや、使役する獣がいた場合、この城で暴れたりして王に危害を加えるような事があればどうするのかと言われて広間はしんとなった。
「未知なる者に対して用心するにこしたことはありません、城に呼ぶといいますが、素直に応じるでしょうか、不祥事が起きた場合、王の威厳にもかかわります、民だけでなく、これが諸外国に知られたら我が国は侮られる事になりますが」
「それは、だが、スネーク、黙って見過ごせというのは」
「勿論、ですが、何事も準備が必要です」
宰相の言葉に周りの貴族達は互いに顔を見合わせ無言になった、ここで迂闊なことを口にして、それが原因となれば周りからどんな目で見られるか分からないからだ。
女は体を湯に沈め、窓の外を眺めていた、とてもいい気分なのだ。
ただ、少し問題があるとすれば、この浴槽だ、自分一人が入るには大きすぎるのだ。
「なるほど、いいタイミングだな」
突然、ドアが開き、入ってきたのは獣人だ。
「どうしたの、帰ったんじゃ」
女が浴槽から出ようとするのを、相手は手振りで押しとどめ、ゆっくりとした足取りで近づきながら浴槽に足を踏み入れた。
女が呆れたのも無理はない。
「服を着たまま入るの」
「脱ぐ時間さえもったいないと思ってね」
浴槽に体を完全に沈めた黒豹は女の体を自分の上に乗せて、両腕をしっかりと回し、引き寄せた。
「こちらへ来ると彼から連絡が入ってね」
「もしかして、ブラッドが、来るの」
「ああ、すると、二人の時間が短くなるだろう、そうだ、ベッドを広げる必要があるな」
「わざわざ来なくても」
「ああ、そう言ったんだが、気になるらしい」
「体調はいいのよ、あたし」
黒豹は女の首筋に顔を埋めると、直接、会いたいんだよといいながら赤い舌をゆっくりと動かしはじめた。