用心するにこしたことはない、だが、迂闊な事はできないと宰相の発案で見張りと万が一の為に術者が街に出た。
もし、見つけたらすぐに連絡し、可能なら城に来てくれるように、こちらが敵意を持っているなど感じさせないように騎士達も人選し、くれぐれも注意して行動するようにと言って街に出た。
探しているときに限って見つからないというのは決して珍しいことではない、そして、城直属の騎士ではないカルヴァも直接会い言葉を交わしたという事で、この探索に参加するように言われた。
街、人に何らかの被害が出たわけではないのだが、城の人間、貴族達の方が、このことに関して関心が高く苛立っているように思えるのは気のせいではないとカヴァルは思っていた。
まず最初に森の入り口付近だ、ところが、それらしき建物が見つからない、もしかして、農家、商家ではないかと考え大きな家を当たってみたが、見つけることができない。
仕方なく街中の大きな宿屋、貴族が泊まるような場所を当たってみた。
主人を呼び、城からの命令でと言ったのは万が一の為だ。
決して多くはないが、金次第で多少後ろめたい相手でも上客扱いをするところがあるからだ。
もしかして、あそこならとカヴァルは考えた、金の麦という宿屋がある、この国では比較的、新しい宿だ。
余所からの旅行者、旅人が多く利用する事で知られていた、宿の主人はこの国の人間ではない、偏見がないのか、この国の亜人を雇っているが、彼らに従属の腕輪、首輪をつけてはいない。
見た目が良くないと数年かけて自分の経営する宿屋の中で荒事、不祥事は起こさないと国の役職に意義を申し立てたのだ。
近隣の権力者が後ろ盾をしたこともあって、この宿屋は外国の貴族がお忍びで逢い引きの場所に使うこともある。
「どういった、御用件でございましょう」
主の顔を見て思ったよりも若いことにカヴァルは驚いた、言葉遣いと物腰は柔らかく丁寧だ、だが、用件を切り出すと相手は、すぐには返事をしなかった。
これはもしかしてと思ったとき、ドアが開き客が入ってきた。
振り返ったカヴァルは唖然とした、いや、息を飲んだ。
全身、赤い鱗で包まれた、まさか。
「これは、ブラッド様」
宿屋の主が丁寧に頭を下げて迎えたのはサラマンダー、いや、リザードマンではない。
ドラゴンだと、カヴァルは言葉が出ない、だが、それだけではない。
そばには一人に男が立っていた、服装からして隣国の衣装だ、どこかで見たことがあるとカヴァルは思いだそうとした。
そうだ、確か、カーラン国の宰相ではないかと。