新キャラ登場です。
遅い、出かけてから数時間が過ぎた、そして夕方にらるというのに、まだ帰ってこない。
何かあったのではないかと思ってしまう、子供相手なら、いくら心配しても静着るということはない、だが彼女は大人なのだ。
こんな事は珍しくはなかった、だが、それは昔のことだ、そして今、ここは自分たちが暮らしていた場所ではない、違う世界。
ブラッドは一見、ドラゴンに見えるが、実際はそうではない。
街中を歩いていると驚きと畏怖の視線で見られたりするが、そのことにも最近では慣れてきた。
カーラン国のアルデバランという人間の話によると国によって異種族、亜人と呼ばれる者達の待遇は場所によって差があるらしい。
そしてアシャン国という国は他国からの人間が自分たちとは違う考えや
意識を持っている事に関して、とても・・・・・・。
その話を聞いたとき、ブラッドは、なら外出するときはなるべく、一人は避けるようにしよう、自分も彼女もと考えていたのだ。
ところが、ここ最近、彼女は一人でふらふらと出歩くようになった。
街の市場で買い物をしたり、店をふらふらと見て回ったり、ここで使える通貨は渡してあるし、多少、言葉が通じないことがあっても身振り、手振りで何とかなると話をしていたので、なら大丈夫だろうと思っていたのだ。
そんなときにだ、不安になるのも当然だろう。
この女は、どこから来た、何者だ、何故、ドラゴンと一緒だった、目の前で、こうして会うまでは色々な疑問が頭の中にあった。
ところが、今、それをひどく後悔していることにスネークは気づいた。
部屋の中には自分と女、そしてカヴァルがいる、万が一、女の正体が、見た目通りの者でなかったら、用心の為だ。
「許可証は持っているのに、何故、悪いことなんてしていないけど」
女の言い分に確かにとスネークは頷いた、だが、それは問題ではないのだ。
「一緒にいた獣人だが、どういう関係なのかね」
男の表情、その話し方は端から見ていても怒っているのは一目瞭然だ、普通ならこんな時には少しでも相手の感情を損なわないようにするものだが。
そばで見ていたカヴァルは不安になった。
女はスネークの顔をじっと見ていたが、口元をゆるめるとくすくすと笑い出した。
「あなた、知り合いに似てるわ、そっくりよ」
女の言葉にスネークの顔が固まった、だが、それはすぐに別の表情、この男にしては珍しい、笑顔に変わった。
これに驚いたのはカヴァルだ、お世辞にも好意的にとるには難しいかもしれない、ましてや女性なら、怪しいと思っても不思議はないだろう。
ところが、女は突然、吹き出した、はははと笑った後、窓の外を見た。
「もう、帰らないと遅くなってしまったわ」
この言葉にスネークが慌てたのも無理はない、聞きたいことの半分も聞き出せていないのだ。
「心配していると思うの」
言葉が出てこないスネークから視線をそらし、女はカヴァルを見ると同意を求めるように帰ってもいいでしょうと声をかけた。
カヴァルはスネークを見た、そのとき、ドアの向こうから足音のような、いや、声が聞こえてきた。
明らかに怒っているような声で、ハル・キザクラと呼ばれた女は、がっくりと肩を落とした。
「どうして、ここに、ディアン、あなたが」
「何かあったのかもしれないと司政管に言われて来たまでだ」
「元、司政でしょう」
「どちらでもいい」
「怒らなくても」
「怒ってなどいない」
ドラゴンではない、いや、リザードマンか、しかも人語を喋っている。
スネークとカヴァルは言葉が出てこず、ただ、呆然と入ってきた相手を見た。
緑色の鱗、白く光沢のある布の衣装はどこの国の衣装なのかわからない、いや、それよりも何故、ここに来ることができたのか、そう思ったのは当然だろう、城の中には見張りの兵がいるのだ。
リザードマンは開いた扉へ向かって歩き出したが、その足が止まったのは駆けつけてくる足音のせいたろう。
「宰相殿ーっ、ご無事ですか」
「こちらへ怪しい者が」
「獣人、いや、リザードマンです」
兵達だけではない、駆けつけてきた者達の中には魔法使いもいた。
屈強の兵士達がリザードマンと女に向けて剣を向け、視線を向けるが、それは殺気だけではない、畏怖をも含んでいる。
だが、それを向けられたリザードマンは気にする様子もなく、一言、どけと呟いた、その声に皆が驚く、人間の言葉を話すとは思わなかったのだろう。
「なんだ、言葉が通じないのか、それとも」
明らかに侮蔑を含んだ言葉に騎士達は腰の剣に手をかけた、万が一の眼だ、ところが。
「おまえ達」
その声に、皆が振り向いた。
それは夢のような一時だった、最初は現実だとは思えなかった。
少年だった自分は一人の異国人に出会った。
自分が、どこから来たのか、自分の名前も何も覚えていない女性のことを少年は秘密にした、というのも、異国人、余所者に対してアシャン国は厳しいからだ。
女性の為にマント、帽子などを用意して日が暮れかけた頃に街へ出た、二人で。
露店の食べ物、商品を見て、街の景色や建物を見ながら、酒場は人目があるので素焼きの入れ物に入った蜂蜜入りのエールを歩きながら飲んで。
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。
「僕が王位についたら、余所から来た人も自由に暮らせるようにするつもりだよ」
「それは嬉しいことね」
即位式を迎えるには、あと三年は確実にかかるだろう、厳しい父親は許してくれないだろうし、説得する事はする事は難しい、だが、周りが自分を認めれば少しは、一年は確実に縮めることができるかもしれない、それだけでも、だが、それは叶わなかった。
ある日、女の様子がいつもともと違うことに気づいた。
初めて会ったときから女のそばにはドラゴンがいた。
だが、そのドラゴンは今は女の体を抱きしめたまま離そうとはしない。
嫌な予感が、した。
自分に、いや、彼女にも良くないことが起こるのではないかと。
そして、不安は現実となったが、それは昔、随分と昔のことた。
「おまえ達、何をしている」
声の主は一人の男だ、この場にはそぐわない夜着のままの男は青白い顔で兵達を睨みつけていた。