風太郎と三玖の初体験
二つの影が重なる。
風太郎と三玖は、一つの生き物になった様に同じ鼓動を刻んでいた。
「ん……あっ……フータロー、好き……大好き」
キスの合間に愛の言葉が溢れる。心の堤防の遥かに上まで気持ちが高まり、言葉となって飛び出させないと愛に溺れて死んでしまいそうだった。
「三玖……好きだ、愛してる」
それは風太郎も同じだった。破裂しそうな心臓を、三玖への愛で縛り付けておかないと、どうにかなってしまいそうだった。
赤い顔をして蕩けそうな瞳をした三玖を見つめると、風太郎はたまらない気持ちになった。この子を抱きたい。めちゃくちゃにしたい。自分のすべてを受け止めてほしい。鼓動の度に膨れ上がるような、自分でも経験ないほどに勃起した陰茎を今すぐに三玖の中にねじ込みたかった。
そういった荒々しい気持ちを何とか押し殺し、風太郎はゆっくりと三玖を布団に押し倒した。
「フータロー……」
彼女の、愛しさで濡れたような色っぽい瞳が、キスをちょうだいとねだっている。
ああ、なんて可愛いんだ。こんな女の子がこの世にいたんだ。そしてこの子は自分の恋人なのだ。
風太郎は愛のもたらした奇跡に祈るような気持ちで三玖にキスをした。
「んっ……ちゅっ……フータ……ロー」
三玖はそのキスをゆっくりと噛みしめるように味わう。
彼女は風太郎のギラギラと輝く瞳にぞくぞくする不思議な心地よさを覚えた。この人はこんなに私の事を求めているんだ。そう思うと自分でも知らない心のどこかが満たされるように感じる。
「フータロー……きて」
熱くて色っぽい三玖の言葉に己を失いそうになるが、なんとか堪え、彼女の着ているシャツのボタンに手をかけた。
一つ。二つ。
白い胸元が露わになる。この前の様な事はもう無いだろうか。
三つ。
可愛らしい水色の下着が現れる。もし仮に姉妹の誰かが帰ってきてしまったら、自分を抑える事ができるだろうか。
四つ。五つ……
すべてのボタンを外して前をはだけさせる。
ごくり、と風太郎は三玖の美しさに唾を飲み込む。
ほっそりとした首筋からしみ一つない白い胸元。大きな胸の双丘がその存在を強烈に放っている。何度もこの胸に触れる妄想をした。それが今現実のものとなって自分の前にある事に、彼の陰茎はさらに血を集めて固くなった。
一旦三玖を起き上がらせて、その間にシャツの袖から腕を抜く。
彼女は胸元を守るものが下着一枚になった心もとなさから腕でかばうように胸を隠す。風太郎は三玖のそんないじらしさが更に愛しく思えて、それを伝える様に唇を重ねた。そのまま彼女を抱き寄せる。唇を離すとそのまま肩口から覗き込むように背中を見た。見ながら風太郎は三玖の下着のホックがどこか探す。脱がされると分かった三玖は身を固くする。
パチン
引っかかっていたホックが外れる。風太郎は体を離しながら肩紐をとった。そうすると下着がすとんと落ちて胸が露わになる。
「あっ……フータロー、恥ずかしいよ……」
三玖は恥じらいに顔を真っ赤にして胸を隠す。両手を使っても零れそうな大きな胸に風太郎は興奮を抑えきれない。
「三玖……綺麗だ」
彼はキスをしながらもう一度三玖を押し倒す。胸を隠していた三玖の両手を取ると、彼女はすんなりとそれに従った。
風太郎は今度こそ露わになった三玖の胸を見下ろした。
その時の心の震えを言葉にしたら、どんな詩人の言葉も安っぽくなってしまうだろう。風太郎はそう思った。
白い大きな胸が重力に従ってつぶれる。それだけでどんな柔らかさをしているかが分かった。桜色の乳首が小さく自己主張して、その完璧さと生生しさに破裂しそうなほどに血が陰茎に集まるのを感じた。
「いいよ……フータロー」
ふるふると涙と不安で揺れる三玖の瞳を見ると、暴走しそうな気持に何とかブレーキがかかる。
「三玖」
名前を呼んで頬に軽くキスを落とす。不安に固くなっていた三玖の顔が少しほころびる。
「覚えていてくれ。この手で三玖の体を触る事を」
彼女の目の前に手を出して、そしてゆっくりと頬に触る。その手は顎のラインをつつと流れて三玖の唇に指を置いた。
「はっ……あむっ……」
三玖はうっとりした目で風太郎の指を甘噛みした。指の長さも、節々の男っぽさも、綺麗に切りそろえてくれた爪さえも、すべてを覚えるように噛みつき、舐める。指を口から話す時、指と三玖の唇にかかる唾液の橋という光景が、何とも煽情的でさらに鼓動が早まった。
噛まれた指は許可を得たかのように、三玖の白い肌を滑り落ちていく。
首筋の滑らかさに、鎖骨を経て、胸の双丘に入って行く。ふわりと柔らかい心地が指から伝わり、風太郎の期待は否応なしに高まる。女性の神秘の丘の上に手が来ると、その一山を手の全てでつかんだ。
「やっ……あん」
三玖の口から甘い声が零れる。その時の感動をどう言葉にしたらいいだろう。風太郎は考えた。
温かい皮で覆われたぬいぐるみの様な? 温かい水風船の風船部分が柔らかい物に変わった物の様な? ハンバーグの肉だねが温かい皮で覆われた様な?
何を考えてもピンとこなかった。それだけ三玖の胸がふわりと軽やかさすら感じるほどに柔らかくて、しかししっかりと手にかかる重量があって、どくんと心臓を掴んだかのように温かく震えて、手を離さないでと訴えるかのように手に吸い付いてきて、こんな幸福を言葉にできるはずがなかった。
「フータロー……ぎゅってしないで……」
夢中になっていた風太郎の意識を、三玖の声が引き戻した。
「すまん三玖。痛かったか?」
震える瞼が少し開いて風太郎を見つつ、質問に小さく頷いた。興奮で力が入りすぎていたのだろうか。反省しながら、羽に逃げられないような、風さえ起こさないような動きでもう一度三玖の胸に触れた。
「んっ……あっ、やっ……」
掌いっぱいに感じるこの柔らかさと温かさに、風太郎は愛の印を立てるようにキスをした。
「やっ……フータロー」
三玖は揺らめく瞳で風太郎を見る。彼はその意味を正確にくみ取り行動する。つまり『こっちにもキスして』だ。
唇を触れ合わせながら、風太郎は上着を、シャツを、捨てるかのように荒々しく放り投げた。
三玖は露わになった彼の体を見る。シャープで無駄な肉がなく、少し割れた腹筋に男を感じて、彼女の体の奥が熱くなった。
風太郎の手は最後の砦に手をかけた。スカートと、そしてショーツである。しかしスカートの腰回りを手で一周させても、どこから脱がせばいいか分からず、内心焦っていると、
「もう、ここ」
と言って三玖が自分でスカートに手をかけた。留め金が外れ、チャックを下す。スカートを取り去るとあとはその小さな水色のショーツを残すのみとなる。
風太郎は図書館に置いてある本や雑誌から得た知識を動員し、優しくそのショーツのうえから三玖の恥部に触れる。
「やっ!……あっ……ぁん」
三玖はびくりと体を震わせると、今までにない甘美な喘ぎを漏らす。風太郎はその耳を貫き脳髄を揺らめかす甘い響きにやられた。三玖と繋がりたい気持ちがむらむらと湧き上がってくる。ショーツに手をかけると三玖は足を固く閉じてしまった。
「ふ、フータロー……恥ずかしいよ」
不思議なもので、そういう柔らかい拒絶の言葉はストッパーになりえず、むしろ興奮の火に薪をくべる結果になる。口付ける風太郎の唇が先ほどまでより熱く感じる事を三玖も理解していた。
「三玖……」
熱い声が三玖の鼓膜を震わせて、心まで震わせる。その声の熱さが、三玖の恥ずかしさの鎧を溶かした。足の力を抜き、風太郎のなすがままに任せた。
風太郎は再びショーツに手をかける。今度は抵抗なくするりとそれは脱げた。
「うぅ……見ないで……」
三玖はやはり見られる事が恥ずかしいらしく、手で女性の恥部とその上にある少しの茂みを隠した。風太郎は彼女の白く柔らかい太ももに手を当て、ゆっくりと上に行く。軽く爪をたてるそのむずがゆさに三玖の体が震える。
「んっ……ふっ……ぁ……」
閉じた口の隙間から、喘ぎの様な息が漏れる。風太郎は顔を赤らめて唇をきゅっと結び、もたらされる快楽に耐え忍んでいる三玖を見るとくらっときた。太ももを這う手をそのままに、胸にある丘の桜色の頂に口付けた。
「きゃっ!……あん……ふ、フータロー……」
三玖は驚きに目を開き、そして咎めるように風太郎を睨みつける。彼の瞳はギラリと輝いてその目を見つめ返す。プラズマ状態の金属が、炎色反応でスペクトルを放射しながら輝くようだ、と三玖は風太郎から聞いた話を思い出した。その熱くて焼けつくような瞳に自分は映りたいと思った。
「フータロー……キスして……」
恋人からの甘い言葉に風太郎は一も二もなく飛びついた。唇を触れ合わすだけでは足りず、さらに深く繋がっていく。熱い炎のように赤い舌がちろちろと触れ合う。歯をなぞり、上あごに下あごに全てを知るように舌を交わす。
風太郎は薄く目を開けた。すぐに大きく目を開ける。三玖と目が合ったからだ。
三玖は目が合うと嬉しくなり、痺れるような快感が体を走る。
「フータロー……」
「三玖……」
唇を離して息を整えながら風太郎は呟く。彼は自分の着ていたズボンとパンツを脱ぎ捨てた。
「え、わ、うわ……」
三玖は初めて見る陰茎に目が釘付けになる。普通なら小さいころ父親と一緒に風呂に入った際に見るといった経験があるのだろうが、三玖は、というか彼女達五姉妹は父親がいた事など遥か昔で、母が再婚した時は自分たちは十二歳ごろで父親と一緒に風呂という年齢でもない。男性器を見るのは初めてで、ましてや勃起したものなど保険の教科書に載っている文面でしか知らない。半ばファンタジーの様な存在だったが、今目の前に圧倒的な存在感をもって屹立していた。
風太郎は三玖の手を取り自分のモノに触れさせた。三玖の柔らかい手が触れた快感にビクリと陰茎が跳ねた。
「わ……熱い」
三玖の口から素直に思った言葉が放たれる。不思議な物で、自分の股間が褒められると誇れるような、胸のすくように気持ちが良かった。それが愛する恋人からならなおさらだ。
その陰茎の根本からするすると先に滑って行き、裏筋をくすぐり亀頭をこすり上げた。
「え、わ……うわ、おっきい」
「うっ」
「え、フータロー大丈夫? 痛い?」
「いや、逆だから困るというか……」
風太郎は覚えてしまうほどに見た夢の中の三玖が言った言葉と同じ言葉を、現実の三玖に言われて危うく射精しかけた。射精感が引くのを待って持ってきたコンドームを装着した。風太郎は、やはり思い立った時に買いに行って良かったと思った。
「三玖、行くぞ」
「う、うん……フータロー」
三玖が広げた足の間に入り、痛いほど勃起したモノを彼女の恥部の割れ目にあてがう。
「ふっ、はっ……はー」
緊張のせいか三玖の息は浅く短くなっていた。
「三玖、力を抜いて」
風太郎は三玖の頬に触れて口付けた。三玖はふぅと息を吐いて目の前の彼に笑いかけた。
「私は大丈夫だから、フータロー」
風太郎はそっと唇にキスを落とす。三玖は彼の背中に手を回した。
ぐっと力を込め、腰を突き進める。強く押し返すような力がかかりすんなりとは進めない。息を一つ吐いてもう一度腰に力を入れた。何かを切ったような感触と共に根元まで突き入れた。熱い肉に包まれる気持ちよさは、しかし少しすると背中に突き刺さる何かの痛みが勝った。目の前の恋人を見ると、息が浅く、耐える様に口を堅く結んでいた。
「い……痛い、よ、フータロー……」
「おい、三玖、大丈夫か?」
彼女の閉じた瞼の間から涙がつうっと流れ落ちた。
「いたい、よ……フータロー……やめて……」
風太郎は慌てて彼女の中から自分のものを引き抜いた。
「うぅ……はぁ、はっ」
三玖の息が落ち着いて、普段のような深い息になる。
そして三玖は、自分の体が風太郎を受け入れなかった事に深いショックを受けた。
「ふ、フータロー……ご、ごめん……」
三玖の口元がわななく。彼女は何ら疑うことなく描いていた風太郎との未来絵図が、他でもない自分の体によって踏みにじられたような絶望感を抱いた。
「うぅ……ひっ……」
体の芯を通ったような悲しみに押し出されるように、涙がとめどなく溢れてくる。
私は何てダメな女なんだろう。
「ご、ごめん……うぅ……ひっ、ふ、フータロー……」
風太郎に好かれる女性になるために積み上げてきた努力や、その過程で自分に芽生えたなけなしの誇りが、足元からグラついて崩れていくような深い悲しみだった。たかがセックスの一回でと言われるかもしれない。でも三玖にとって初めてで、そして全てだった。
「ふ、ひっく……フータロー……ごめん、うぅぅ」
私は変わったと思っていた。でも違うんだ。なんでこんなに弱い女なんだろう。
服を着ていない事など頭から抜け落ちていた。自分が抱いていた愛や誇りが失われることの方が、何倍も辛くて、苦しくて、そしてこんなに悲しいんだと心が引き上げられないほど深く沈んでしまう様に三玖は思った。
「す、好きなのに……愛してるのに……フータロー、だ、ダメな女なんだ、ひっく、私……」
言葉が喉元で詰まった様に出てこず、言葉にならない息は嗚咽になって空気を感情を震わせた。
風太郎は泣いている三玖の体を抱いて子供をあやすように背中を軽く叩いた。いつもの三玖なら目を細めて笑っただろうが、今の三玖は優しさをかけられると自分のダメな所が浮き彫りにされるように思って、ますます涙が止まらなくなった。
「落ち着いたか? 三玖」
「……うん」
三玖は今更ながら恥ずかしくなり、風太郎がかけてくれたブランケットで顔を隠した。さすがに風太郎もイチモツをぶらぶらさせておく気にはならず、パンツをはいている。
「フータロー……」
三玖は隣に座る風太郎の手を取った。
「ごめんねフータロー」
真っ赤に泣きはらした目からまた涙がこぼれそうになる。
「私、我慢するから。頑張るから、嫌いにならないで……フータロー」
いつものいじらしさも、今ではどこか空々しい。
風太郎は三玖の震える手を両手で取った。
「三玖、我慢なんかしなくていい」
「でも……」
「どちらかが無理して我慢する関係なんて長続きする訳がない」
三玖の顔が驚きに歪んだ。ブランケットを胸に当てたまま起き上がり、風太郎に訴えかける。
「嫌……フータロー、嫌だよ。私は平気だから……だから一緒にいて……」
「三玖、聞いてくれ」
「嫌、フータローと別れるなんて嫌……」
三玖は不安でいっぱいになった心から、どうしてもネガティブな言葉が口をついて出てしまう。風太郎は三玖の不安を拭い去る様に頬に手を当て、涙で濡れている目元を指でなでる。
「俺が悪かったんだ、三玖。女の子の始めては痛いって調べたのに、頭でっかちで役に立たない彼氏で」
そんなことない、と三玖は首を振って否定する。
「でも男は馬鹿で身勝手だから、女の子が痛くても気持ちよくなるんだ。だから三玖とまたしたいって思うし、だからこそ三玖に気持ちよくなって欲しい」
風太郎は片手を空けて、その手で三玖の頭を優しくなでた。少しだけ不安に塗りつぶされた心に明るい色が差した気がして三玖は嬉しくなる。
「三玖、好きだ」
不安に揺れて、悲嘆にくれる三玖の心に訴えかけたくて、風太郎はゆっくりと唇を重ねる。三玖は冷えていた心に温かい火が灯ったように感じた。
ああ、優しいな。好きだな。やっぱりこの人を愛しているんだ。と三玖は思った。
「これは嫌か? 三玖」
風太郎は微笑みかけながら彼女の頭をなでた。
「ううん、好き。大好き」
三玖は涙で枯れた心の泉が湧き上がるような心地良さを覚えた。風太郎は次に、首筋に甘く噛みつくようにキスをした。
「これは嫌?」
「フータロー」
「何だ?」
「嫌かじゃなくて、好きかって聞いて」
どうして、と彼女の頭をなでながら風太郎は聞いた。
「フータローに、たくさん好きって言ってほしい」
三玖は少しはにかんで、照れながら言う。
風太郎はそのいじらしい願いを叶えた。
彼は心のこわばりをほぐすように三玖の体のあちこちに触れ、そしてそこにキスをする。裸の肌が触れ合うたびに、頑なになった心にも血が通うように熱を帯びていく。
首筋に触れて肩を伝い、腕を通って手をとり、指にキスをする。触れるか触れないか髪一重の手つきで胸に当て、ゆっくりと円を描くように動かす。三玖はそのこそばゆさに小さく息が漏れた。
「あっ……ん……」
「これは好きか?」
「ん……よく分からない……」
戸惑うような初めての感覚に、三玖ははっきり答えることができず言葉を濁す。風太郎は触れずにいた胸の頂の桜色の乳首をなでるように触れた。
「あっ! やっ……」
三玖の口から艶っぽい声がする。風太郎はその柔らかさにかしづくような気持ちでキスをした。
「あん……フータロー……」
さきほどの悲しみを上書きするように、三玖は風太郎に触れられる嬉しさでいっぱいになった。
キスの雨は終わらない。風太郎はそのまま下に行き、、腹に指をつうっと滑らせてゆっくりと口付ける。そういうことを足に、また戻って首筋に、腕に、胸に、ゆっくりと器に水を注ぐように愛を込めてキスを落とした。
繰り返されるうちに三玖の体は白い肌に朱がほんのり差して、汗ばむように熱を帯びてきた。体の奥からこみ上げるような熱さを三玖も自覚した。
風太郎は三玖の股に手を当てた。彼女の裸体がびくんと一際大きく跳ねた。
「あっ……んんっ……やん」
彼は三玖からもっと喜びを引き出したくなり聞いた。
「どう触られるのが良いんだ?」
「え……フータロー、えっと」
三玖の顔が触れられて血色が良くなった以上に赤くなる。恥ずかしさの赤が差したのだ。
ときたま耽る自慰行為の際に妄想する風太郎が言うことと同じ事を現実の風太郎にも言われて、三玖は自分の浅ましさというかいやらしさというかを突きつけられた様な気がした。
「こ、ここ……」
「三玖?」
彼女はまともに風太郎の目を見られなかった。妄想のように意地悪に笑っていたら恥ずかしさで死んでしまいそうだったからだ。現実の彼は本当に分からないから聞いたのだが。
「フータロー……」
三玖は風太郎の手を取り、自慰の際に触れる快楽の核に彼の手を当てた。
「っ! あっ! んっ! ふあっ……」
今までで一番大きな嬌声が風太郎の耳朶を打つ。その艶めいた音色に彼の陰茎が挿入した時よりも大きく膨れ上がった。三玖の柔肌に思い切りこの陰茎をこすりつけて射精したい欲望がむらむらと燃え上がる。しかしそれでは先ほどの二の舞を演じる羽目になるだろう。まずは彼女の心と、そして風太郎を拒絶した体を開かなければと思った。
ゆっくりと三玖が示してくれた快楽の中心をなでる。
「あんっ、やっ……フータロー……」
風太郎からもたらされる快楽に震えながら、うわごとのように彼の名前を呼ぶ。
「ふ、フータロー……フータロー……」
三玖の目は物欲しそうに潤んで彼を見つめた。
「三玖……」
「あっ! ……フータロー、キスして……」
風太郎はすぐに望みを叶えてやった。舐るようなキスをゆっくりと唇にした。その粘つくようなキスに、三玖の気持ちが昂り、快楽が怒涛の様に体の内側から訪れた。
「フータローっ! あっ! やんっ! っ~~~!」
三玖の体が弓なりにそれて、快楽の波が心の堤防の関を切ったように溢れて、溢れただけ口から零れた。体を走る快楽に頭が真っ白になり、目は見ることすら忘れたように虚ろになって波が収まることを待った。
「はあ……はぁっ」
「三玖、大丈夫か?」
「はあ……えへへ、イッちゃった」
そのらしからぬ言葉に不思議と興奮が高まり、もう一度その言葉を言われたら風太郎は射精してしまっていたかもしれない。
「ねえ、フータロー、もう一回いれて」
「でも三玖、痛かったんだろ」
「うん。でも、やっぱり私フータローと一緒になりたい。そうしないと、心から愛してるって言えない気がする」
虚ろ気味だった瞳に光が宿り、強い決意となって煌めいた。
風太郎はその強い瞳に対して頷くと、いきり立つ陰茎にコンドームを着けた。
「いくぞ」
「フータロー」
三玖は風太郎の頭をかき抱いた。
「キスして……」
覚悟はしても忍び寄る不安に負けないように勇気を分けて、と揺れる瞳が訴えてくる。
風太郎は目を瞑らずに、三玖と見つめ合いながらゆっくりキスをした。そして腰に力を込めて、三玖の中に入っていく。
「うぅ……いっ……」
「三玖……」
「へ、平気……」
彼女の口元は痛みに少し震えて、しかし大丈夫だと笑顔をつくる。風太郎はそんな痛みを変わってあげられたらいいのにと思いながらも、どうしようもないほどに快感に襲われた。
「くっ」
「あっ、くぅ……フータロー、フータロー……」
更に力を込めて一突きする。彼の陰茎は三玖の中に根本まで入った。
「うぅ、いっ……」
三玖は未だ慣れない痛みに耐える様に身を震わせる。風太郎の体も小刻みに震えだした。ただし、彼女とは逆の理由で。
「うっ、三玖……三玖……」
風太郎は、三玖の痛みの涙で保っていた理性の糸がぷつりと切れてしまった。そんな彼が、陰茎全体を襲う三玖の中の、肉の快楽に勝てる訳がない。
風太郎は入れただけで射精してしまった。
陰茎が震え、快楽を開放する。今まで感じたことのないほどの長い射精だった。精液が尿道を駆けて、鈴口を押し広げながら勢いよく飛び出す。睾丸にある全ての精子を吐き出すかのように、痛いほど収縮した。コンドームを突き破らんとするほどの激しい射精で、風太郎はその度に背筋を雷が走るような強烈で抗いようのない快楽を感じた。
この美しい恋人に、全てを注ぎこむ。という、それは本能だった。
「フータロー、大丈夫?」
三玖はいきなり苦しそうに震え、そして自分の名前を呼ぶ風太郎を案じて声をかける。
「すまん、三玖」
「どうしたの?」
「我慢できなかった……」
射精が収まると、三玖からもたらされる快楽に後ろ髪引かれるような感覚を覚えながらも、陰茎を引き抜いた。
「あんっ……ん」
引き抜く際に三玖の口から出た甘い響きに、全てを吐き出したと思っていた陰茎が震え、最後の一滴を放った。
「うあっ……はっ……はぁ」
凄まじい快楽の中で吐き出された精液は、風太郎自身でも信じられないほどコンドームを膨れさせていた。陰茎からゴムを外し、中身が飛び出ないように口を縛った。
「え、え? 何これ?」
三玖は初めて見る精液に戸惑いを隠せない。
「何って精子だよ。保険で習っただろ」
「え……フータロー、見せて」
自分の体から出たものを差し出すのは抵抗があったが、風太郎は大人しくその言葉に従った。三玖が差し出してきた手に精液で膨れ上がったコンドームを置いた。
「わ……すごい、あつい……」
風太郎は自分の精液で遊ぶ三玖を見ていると、また陰茎に血が集まってきて三玖としたい気持ちが抑えられなくなると思い、コンドームを取り上げてティッシュにくるんでごみ箱に捨てた。
「あ……どうして?」
「またアレを作りたくなるからだ」
それを聞くと三玖は小首をかしげたが、自分が何で手遊びしていたか思い出して赤面した。風太郎の視線から逃げる様に倒れこんで枕に顔をうずめた。
そのすぐ横に彼も体を横たえた。射精した疲れで瞼が重くなり、今にも寝てしまいそうだった。
「なあ三玖」
枕で顔が見えない恋人の頭をなでながら風太郎は聞いた。
「こういう事は好きになれそうか?」
三玖は枕から顔を上げて彼を見る。今日の喜びと、痛みと悲しみを思い出しながら答えた。
「えっと……あの、フータローの……ち……ちんちんをいれるのは痛いから嫌」
風太郎は三玖の口から男性器の俗称が出てきた事に、それこそちんちんが固くなりそうだったが何とか我慢することにした。
「でも、いっぱい触ってくれて、いっぱい好きって言ってくれて、いっぱいキスしてくれる所は、好き……かも」
赤い顔で可愛いことを言う三玖に、たまらず風太郎はキスをした。
「ありがとう、三玖。頑張ろうって思ってくれて、拒絶しないでくれて」
ふふっと三玖は小さく笑うと、
「フータローだって男の子だもんね」
そう言って意地悪な顔をした。
「はは、なんだよそれ」
「だって、ずっと胸ばっかり見てた」
「それは……三玖の胸が綺麗だったから……」
風太郎の言葉に膨れっ面になって三玖は言う。
「胸だけ?」
そんないじらしい質問に、彼は心がくすぐられた様に笑ってキスをして答えた。
「三玖、綺麗だ。その細くて柔らかい髪も、俺を見つけてくれる瞳も、俺の事を呼んでくれる唇も、俺への恋を秘めてくれている心も」
そこまで言うと、三玖の頬が緩んで風太郎の額にキスを落とした。
「許してあげる」
二人は笑いあって抱きしめあう。裸の胸から相手の鼓動が伝わる。
光の射すこの部屋に、影は一つだけになった。