シュルリと布ずれの小さな音まで気になるのは、風呂場にいて音がちょっと大きく響いて聞こえるからだ。そうだ。そうに違いない。
お湯が出てくるのに時間がかかるシャワーの、いまだ冷たい水を頭に無理やり被りながら、風太郎はそう結論付けた。
三玖から一緒にお風呂に入ろうと言われて、風太郎の心中は荒れに荒れた。
一つ屋根の下にいるという状況だけで落ち着かないものがあるのに、肌を晒して二人で風呂に入るなんて。そこまで考えて、何で俺の方が緊張しているんだと思った。女子か。
「あっつ!」
頭にかかる水がいきなり熱くなったことに驚きながら、三玖の柔肌の事を考えて温度を下げた。下げながら、どうしてもあの三玖の白い肌の事が脳裏にチラついて落ち着かなくなる。
「大丈夫? 何か叫んでたけど」
「ああ、いや、大丈夫だ。うちのおんぼろボイラーが牙をむいてきただけだ」
「それは大丈夫なの?」
温度の目盛を丁度いい所に合わせて、入ってきた三玖の方を見た。見て、その滑らかな首筋にさっきのキスの痕が付いている事に、風太郎は不思議な征服感を覚えた。
降って積もった雪のまっさらな表面に、一番最初に足跡をつける子供じみた感情。そのまま見続けているとどうにかなってしまいそうなほどだ。
「じゃあ先に洗っててくれ。俺は湯船で温まっておくから」
なるべく不自然にならないように目線を反らしながら、湯船に身を沈めて顔を俯かせる。溜めたお湯はらいはが貰って来た試供品の入浴剤で乳白色に濁っている。これなら男の情けない下半身事情を悟られることはないだろう。三玖が入っている時にも、その艶めかしい肢体を隠してくれるのは、こちらにとって都合がいいと思っていた。
「そう?」
三玖はそんな風太郎を変に思ったが、それを言ったら恋人同士とはいえ一緒に風呂に入っている状況も相当に変だ、と心の中でこっそり笑った。
上杉家の風呂にはボディーソープといった上等な物はない。石鹸置きにごろんと一つ石鹸が置いてあるのみで、それで頭からつま先まで洗っている。
「近所でシャンプーでも買って来ればよかったな」
「ううん、大丈夫だよ」
風太郎の申し訳なさそうな物言いに、三玖はおかしくなった。洗う場所によって細かく使う物を分けるなんて不合理の極み、くらい言っていてもおかしくなさそう、と言ってみたかった。というか言った。
「正直良く分からんが」
と前置きしたうえで、風太郎は言葉を続けた。
「そうやって肌や髪に気を遣っているのは、思い上がるなとか言われそうだが、俺の為にしてくれてるのかと思うと、嬉しい」
そう言うと風太郎の三玖を見つめる目に愛おしいという色が増して、それを受ける三玖はその目線に体がかっと熱くなった。彼の目の前に行って、その熱を間近で受け止めたくなるような衝動が体を駆け抜ける。
自分の奥からじわりと何かが溢れ出すようないけない感覚を、誤魔化すように石鹸を泡立てて髪を洗い始めた。
その光景に風太郎は生唾を飲み込んだ。髪を洗い、頭皮を洗う細かな手の動きの度に、三玖の大きな胸がふるふると震えている。濡れて艶めく肌の乳房が、誘うように揺れると、男の情欲をこれでもかとかき立てる。衝動のままに湯船から立ち上がると、ざぶんと大きな水音をたてたので、三玖は不思議そうにその方へ顔を向けた。
「どうしたの?」
「え、ああ、いや……」
真っすぐ見上げる恋人の目に、色っぽく揺れる胸に触りたくなったなどとは言えず、こう誤魔化した。
「背中流してやろうか」
口から出まかせ気味の言葉だったが、今の状況に沿っているなと風太郎は考え無しの言葉を、その場しのぎに使う事にした。
裸を見せあった仲なのに、いまさらだろ。早く済ませてしまおう、と思う。
「フータロー……じゃあ、お願い」
そう言って背中を向ける三玖の背中が、真っ白でしみ一つなく、真珠の様に妖しく輝いていなければ、彼の心中はもっと穏やかに事を済ませれたのだろうが。
石鹸を取り、泡立てネットで泡立てる。一つかみほどの泡を掌に掴んで、おずおずと言った様子で背中に触れようとした。
「いくぞ」
「うん……きて」
そんな受け答えが、なぜだかいやらしく感じられて、二人は顔を赤くする。裸を突き合わせて一緒に風呂に入っている時点で相当いやらしい事態だが、そんな事は二人の頭から抜け落ちていた。
「ひゃっ……!」
風太郎の手が、三玖のきめ細やかな肌を滑って行く。肩から背中を伝って降りて行く。ぬめる泡の一助もあるが、三玖の肌が何の引っかかりもない程になめらかだから、するすると下り落ちていく手はどこか物足りないとすら感じる。ずっと触っていたくなる感触が手に伝わってきて、興奮の火に絶えず薪をくべるような物で、どうも落ち着かない。
「はっ……」
風太郎の口から熱い吐息があふれ出て、三玖の背中を撫ぜる。熱い男の欲望にそそのかされるように、三玖は自分の体温が跳ねあがるのを感じていた。
ああ私、今からフータローとしちゃうんだ。
家に来た時から期待していたことが、すぐ目の前に形となっていることがどうしようもない程に嬉しくて、お腹の下の方からせりあがってくる甘い疼きを抑えきれない。
「三玖、終わったぞ」
三玖の小さな背中は、洗うのにさほど時間のかかるものでもない。しかし、あまりにもあっさり終わってしまった、もはや愛撫と言って差し支えない、洗うというお題目の下にあって遠慮なく触る好意が終わってしまうのは名残惜しい。
「フータロー」
「前は自分で洗えよ。それは、さすがに……」
三玖は顔だけ後ろに向けて風太郎を見た。背を向けて、肩を落とすように深くため息をついて、そんな素振りは勇気を出して風呂に誘った三玖としては面白くない。つんつんと背中を突いてこちらを見て欲しいとアピールする。風太郎は一瞬だけ振り返って、僅かばかり見つめ合うと、逃げるように浴槽に浸かった。
それに文句を言う気も、もう三玖に無かった。何も見逃さないというような、瞬きの少ないような鋭い目が、自分を求めている証である事を理解したから。
バツの悪いように三玖はさっさと体を洗い終わって、浴槽を占拠する風太郎と入れ替わった。
溜まったお湯に肩まで浸かりながら、雑に体を洗っていく風太郎を眺めていた。たくましい、とは言えないかもしれないが、大好きな風太郎の筋張った男の体に、劣情を催されるように感じて、三玖はそんな自分の欲求に苦笑を一つした。
「どうした?」
小さく漏らした声も、風呂場という場所にあっては何倍にも大きくなって響いてしまう。三玖のおかしそうな笑い声に、見てはいけないと言い聞かせている風太郎は、顔を向けずに声だけかけた。
「ううん。私もフータローの背中流してあげる」
言うやいなや、三玖は勢いよく立ち上がって湯が波打ち、ざぶんと音をたてた。彼女の珠のような肌に纏っていたお湯が、肌の滑らかさに負けたように流れ落ちて行く。ぺたっと濡れた足元がたてる音を聞きながら、風太郎は動揺を悟られないように努めて冷静を装った。
「気を遣わなくていい。先に出てろよ」
「さっきのお礼にしてあげたい。……だめ?」
きっといつものように、不安そうな目をしながら小首をかしげて可愛らしく言っているんだろうな、と思うと跳ねのける気力は湧いてこない。
「好きにしてくれ」
「うん。ありがと」
それを言うのは俺の方だ。と言うのは止めておこう、と風太郎は思った。口を開けばどんな事を言うか、それに内心ドキドキなのを悟られるのはカッコ悪いしな。
そう結論付けて、口をつぐんで三玖が背中を流してくれるのを受け止める腹を決めた。
「フータローの背中、大きいね」
泡に覆われた手で、三玖が優しく風太郎の背中を撫でる。くすぐったさに身じろぎしながら耐えていると、不意に三玖がそんな事を言った。
「そうか?」
「うん。広くて、大きくて、力強いみたいな、フータローもやっぱり男の子なんだね」
「あ、当たり前だろ」
「そうだよね」
三玖はシャワーをかけて風太郎の全身を覆う泡を流してあげながら、その広い背中に見惚れていた。思いが溢れるような、突き抜ける恋の心地よい感情のままに、彼の裸の背中に抱き着いた。
「三玖!?」
背中に三玖の裸の胸が触れる。その豊かに実った二つの乳房がふにゃりと押し潰れると、背中から始まる気持ちよさに、風太郎の下半身は反応を示してしまう。
「あんまりくっついてくるな」
止めろとも言えずに、かと言ってもっとしてくれとも言えずに、三玖が自発的に離れてくれるようそんな事を言った。
しかし、三玖は抱き着いて巻き付けている腕の力を更に込めて、少し体を上にずらして肩口から風太郎の顔をのぞき込もうとした。
「どうし……え……わ、フータロー、これ……」
体の前をちらりと一瞥した三玖は、ある一点に釘付けになって、唾を飲み込みながらそれを見ていた。
風太郎の陰茎が勃起する瞬間だった。
垂れさがった小さなそれが、どくん、どくんと感じる彼の鼓動の度に大きくなり、上を向いて、更に大きくなり、ついには刀の様に反り返った。
三玖はむしろ平常時の物を見た事がなかったので、勃起したモノと比べるとあんなに小さいんだ、と本人に言ったら落ち込みそうな事を思った。けれどあれがこんなに大きく膨れ上がるんだ、と人体の不思議に感動のような感情すら湧いてきていた。
「さ……触っていい?」
「……ああ」
三玖はすぐそばの風太郎の頬に口付けて、彼の体の前に回り込んだ。
腿の間に入り込み、そそり立つ肉の棒をまじまじと見つめる。
ふっと息を漏らすと、その息がかかった陰茎が震えて、荒ぶる一物の節操なさに三玖は戸惑う。生き物なのかと疑うほどに固いそれを優しく握ると、風太郎の口からこらえきれない快楽が空気を震わせた。
「気持ちいい?」
「うっ……ああ」
上下にしごかれて、陰茎は涙を流して喜ぶように先走りをほとばしらせる。その透明な液がつうっと糸を引いて落ち行くのを目で追いかけると、下に、女にはないもう一つの器官が目に入った。
浴室の熱さに伸びきった陰嚢と、それに覆われた二つの睾丸だ。三玖はいままではされるがままだったのと、すぐそばのそそり立つ肉棒に目を奪われて、そういえばちゃんと見た事なかったなと思い返した。
陰嚢の端からそっと、筋肉などに裏打ちされてない皮だけの柔らかさに触れて、そしてその中にある睾丸の一つを摘まんだ。
「三玖、それは、止めてくれ」
普段にない風太郎の口から焦るような物言いがされて、三玖は驚きながら手を離した。
「ごめん、痛かった?」
「いや痛くはなかったんだが」
恥じ入るように、風太郎は頬を掻いた。
「三玖は女の子だから、分からずに力を込められそうで、何と言うか……怖いというか」
「怖い?」
「ああ。情けないが、男はそこが本当に弱くてだな。三玖の力でも大男を悶絶させるなんてわけないぞ」
「そ、そうなんだ。そんなに……」
そう言われた三玖は、今度は小さな生き物を掌に乗せるように触った。優しくほぐすようにやわやわと触る手つきに、風太郎は安心したように体の力を抜いた。
不思議だな、と三玖は思う。
こんな二つで慌てたり怖がったり、そんなに痛いのかな。大事な所って事なんだろうけど。本で金玉を握るなんて例えが出たりするけど、意志の強いフータローでもこうなっちゃうんだから、きっとその例えは正しいんだろうな。
触る力を少しだけ込めると、緊張するように風太郎の体がこわばり、彼の両手がすぐ三玖の手を取り去ろうと動く。力を抜いて触ると緊張が解ける。という事を何回かすると、一つその事を納得した。
「三玖……」
熱い囁きと共に、風太郎は濡れた三玖の髪をかき上げる。我慢できないといった表情を見ると、三玖は内心いじめすぎちゃったかなと自分が悪い女になったようでおかしかった。
なにか喜ばせるようなことが出来ないかな、と少し思案を巡らせると、自分についている二つの同年代の女子と比べても大きな胸が視界に入って、以前に調べた行為を思い出してそれをしようと思った。
恥ずかしいけれど、それでフータローが喜んでくれるなら……。
ぐいっと三玖は身を乗り出して胸を反らす。そのたわわな胸が揺れるのを見て、目に毒だなと風太郎は少し目線を外した。ふわりと挟みこまれる感触に、すぐ目線を戻したが。
「どう、フータロー? 気持ちいい?」
三玖は自分の胸を寄せて深くなった谷間に、風太郎の屹立する陰茎を挟んでいた。大胆な事をしていると恥ずかしくなりながらも、挟んだ陰茎がより固くなった事にほっとした。不慣れな奉仕が間違っていなかった事に、風太郎の顔が期待するような物に変わった事に、不思議と充足感を覚えて、奉仕の続きを行う。
それを受ける風太郎は言える言葉もなく、さりとて何か出来る事がある訳でもなく、視覚からの圧倒的な暴力のような色事をただただ眺めて快楽を甘受していた。
男の欲望を挟みこんだ胸を、三玖はぎゅうぎゅうと押さえつけながら上下に動かした。柔らかく陰茎を飲み込む谷間は、茎の先からあふれ出る露のせいでべとりとぬめって淫靡な音をたてる。大きな胸でも飲み込み切れない、肉棒の先がはみ出すと、三玖は舌で裏筋をちろちろ舐めるので、風太郎はたまったものではない。
言い知れない淫らな光景に、どんどん抑えきれない欲求がせり上がってきてしまう。
はぁはぁと三玖の荒い息が亀頭を誘うようにくすぐる。寄せて上げた胸が陰茎の形を覚えてしまったかのように、滑らかに上下運動を繰り返す。
「三玖、やばい、出る」
歯を食いしばって射精欲に耐えようとしていた風太郎は、もうそんな抵抗は無意味と悟ると、射出する快楽を最大のものにしようと全身から力を抜いた。
「フータローの大きくなってる。出ちゃうの? いいよ。出して」
三玖のそんな一声と、しごき上げる乳房の柔な動きに陰茎は限界を迎えた。
「え、わ! きゃあ!」
間近で見ていた三玖がそんな叫び声をあげてしまう程に、その射精の勢いは強烈で、それに伴う快楽も強烈だった。
塊のような白濁液が飛び出すと、天井まで辿り着きそうなほど高く舞い、そこまで粘る精液の糸が続いていた。それが落ちてきて三玖の桃色がかった髪にべたりと付いた。震える欲望は、今度は噴水のように勢いよく大量に、枯れる事を知らないかのように吹き出して、それは三玖の真っ白な肌のあちこちにへばりついた。
「は……はぁ……」
最後の射精の一滴が、水をはじくきめ細やか肌をゆっくり下り降りて行くのを、放心したように風太郎は見つめていた。
「うぇぇ、べたべた……」
顔中を白い精子まみれに汚された三玖は、付いたその液を摘まんで苦々しい顔をした。
「変な味」
苦々しい、ではなくて苦い顔のようだ。顔に出された時、いくらか口に入ってしまったようで、違和感を訴えるように舌を出して見せてきた。
「う……すまん三玖」
そんな三玖を見ると、欲望を思い切り気持ちよく吐き出した男の側としてはきまりが悪い。
「変なの」
「申し訳ない」
「そうじゃなくて……」
三玖は頬に付いた精液の一塊を指でとった。そして指の間で糸引くそれを不思議そうに眺める。
「これが私の中に入ると、赤ちゃんが出来ちゃうんだなって。そう思うと、何だか変な気持ち」
そのまま、熱い精液をぬめらせて、指先につまんだそれを舐め取った。何であっても、好きな人の物を受け止めたい献身性で、どこか嬉しそうに精液を舌にのせる。
唇の間から覗いた真っ赤な舌を、白く濁った欲望の雫が染め上げる。風太郎は言い知れない征服感に、出したばかりの欲の棒が硬さを再び取り戻す。
「苦い……っていうか生臭いっていうか……。いくらフータローのでも不味いものは不味いね」
「無理しなくていい」
「したかったからしただけだよ」
ふわりと花咲く笑顔は恋する少女の天真爛漫さそのままで、それに似つかわしくない白がへばり付いている事に、風太郎はエロティックな感想を抱かずにはいられなかった。
放っておくと乾いて取れにくくなってしまう精液を、風太郎は温いシャワーで丁寧に洗い流した。もう一度洗うように髪を流して、べたつく顔に優しく触れる。あとは滴り落ちて流れた跡を刻む、体の前、もっと言えば胸を残すのみになった。
自分で洗ってもらおうと風太郎はお湯を止めたシャワーヘッドを渡すが、三玖は受け取らずに手を広げて言う。
「フータローに洗って欲しい。自分で出したんだから、責任持って処理してよ」
風太郎のせいと言われればその通りなので、もう一度お湯を出しながら、手で胸を滑らせていく。
「やっ……あ……」
胸の谷間を少し力を込めてこすると、三玖の口からそんな声が漏れる。煩悩に茹り上がりそうな頭を何とか振り払いながら、なるべく無心で終わらせてしまおうと洗う手を速めた。
息をするたびに、少し身をよじるだけで、三玖の大きな胸は男を誘うように揺れる。あまり力を込めないように、と風太郎は言い聞かせながら、そのふくらみに手を添わせる。
力を抜いて、ただ触れるだけでも柔らかさは形を変えて手に纏わりつく。流れた精液の痕を追っていくと、ふくらみの頂の桜色の突起にまで及んでいた。洗っているだけだ。そう言い聞かせて、掌でこする。
「あ……んんっ」
その刺激を、羞恥の顔をして耐える三玖は、我慢できないように喘ぎを漏らした。
全てを洗い流しても、風太郎の手は三玖から離れない。そのまま無駄な肉のないくびれを触って、更に下へ。
「フータロー……」
このままだと、その手がどこに行くか理解した三玖は、少し身を固くした。
風太郎の手はすらりと伸びた太腿を一撫でして、その付け根に広がる陰毛に分け入る。そして、その奥に欲に濡れた割れ目を見つけ出した。
「あん! フータロー、そこ、だめ……」
もたらされる快感に、回らないような舌で懸命に言葉を繋ぐ。それはすぐに、口付けて来た風太郎に飲み込まれてしまった。
「んっ、あ……んんっ!」
唾液で濡れた唇が、水音のような響きを浴室に、どこか淫らに響かせる。風太郎が指を動かす度に、くちゅりと音をたてる。その期待に濡れた自分の体に、三玖はなんていやらしい体なんだろうと思った。
「三玖」
いやらしくてもいいや。フータローとするエッチな事が、気持ちよくて、心を繋げてくれる。こんなに特別な事は、私とフータローとの間にある奇跡のような関係が生み出してくれる事なんだ。
「んっ……ふぁ……」
重ねた唇から、ゆっくりと舌を交わす。三玖と風太郎は、これは昨日できなかったキスの続きだと思うと、唾液は量を増してセックスをするために体が準備している事を理解した。
「その……もう上がらないか」
その言葉が意味する所は充分すぎるほど、互いに分かり合っていた。あの部屋に敷いた布団の上で、肌を重ねないかと言っているのと同じだ。
「うん。えっと、先に出るね」
見つめ合っているとこの場で始めてしまいそうな、そんな甘い雰囲気に流されまいと三玖は先に立ち上がって浴室を後にした。
脱衣所につながる扉にはまっている曇りガラスの前から、もぞもぞと体を拭いているシルエットがいなくなった所で風太郎も浴室から出た。
まだ裸の三玖と目が合うと、裸でいる事を是とされる浴室から出たせいか、恥ずかしくなってまともに見ていられなかった。先ほどまでと、ほんの数メートルしか違わないのに。場のもたらす心の在り方が、こんなにも違うなんてと驚く胸の内を知られないように、互いに目をそらす。
三玖の出るとこは出て引っ込むところは引っ込んでいる女性らしい体と違って、男らしい凹凸のない寂しい体だなと自嘲しながら風太郎は体をさっさと拭いた。
体を拭き終えると、下着くらい身に着けてから布団まで行こうと、自分の下着が入った棚に行こうとするが、目の前に広がる光景に思わず息を呑んだ。
三玖が手にもったショーツに足を通して、するするとお尻まで上げる動作だ。そうして、次にブラジャーは着けずにシャツだけ上に羽織ろうと、棚の上に置いたシャツに手を伸ばしている。
上を向くために、反った背中が眩しい程に白い。
姉妹は皆同じように肌が白いが、あまり外に出ない三玖は、その中でも群を抜いて白い肌をしている。
真っ白な処女雪のような、あるいは真っ新なキャンバスのような、そんな白さに、けれども血の通った艶めかしさがあって、風太郎は許可もなく三玖の背中に触れた。
「ひゃっ……もう、なに?」
三玖はいきなり触られた事に驚きながらも、風太郎に触られる事は嫌ではないので、子供のイタズラをたしなめるように軽く笑って言った。
振り返って笑った、そんな顔が愛おしくなって、風太郎は彼女の白い背中に口付けた。
「も、もう……」
止めてと言う気なんて更々なかったけれど、くすぐったい感触は慣れないものがあるから、一歩離れて服を早く着てしまおう。そう思った矢先に、一つ、慣れない感覚が背中を走った。くすぐったいだけでなく、ゾクッとするような、痺れる心地よさ。
「ふぁ……あ」
背中いっぱいに駆け巡る感覚に、戸惑いながらも心地よさに心奪われる。背中が、炎の羽でも生えたみたいに熱くなって、焼けそうな熱に肌がほんのり朱を帯びていく。
風太郎はその段々と色を帯びて行く肌に、氷菓子を舐めるようにキスをしていった。一本通った背筋のくぼみを、指で下って上って、何度も口付ける。左の肩に、噛みつくように口をつけると、証を刻もうと吸い付いた。
「んっ……んっ」
そこから全てを吸い込まれそうな口付けに、三玖は小さく息を漏らして耐えていた。
ちゅっ、と大きなリップ音が艶めかしく耳朶を打つと、そこに付いた赤いキスマークを風太郎は満足そうに一撫でした。
「フータロー」
求める声に応じて、風太郎は三玖の肩に手を回して、散々口付けた背中に自分の裸の胸を重ねた。肩口から顔を出して、こちらを見てくるすぐ傍にある三玖の顔に、そっと頬に口付けてから、「好きだ」と唇にも同じことをする。
「好き……んぅ……私も、ぁんっ、大好き……」
何度も触れ合う。唇を重ねて、舌で舐め合い、絡ませ合って、互いの口内を蹂躙するように、夢中になって二人の輪郭もあやふやになる程にキスをした。
唇の端から零れる風太郎の唾液を、三玖は愛おしそうに舐める。舐め取り切れなかった唾液が、ぽたりと大きな膨らみの胸に落ちて、てらてらと妖しく光っていた。
そうっとそれを拭うように、風太郎は指でそこに触る。指にかかる柔らかさに、それだけでは終われない。そのまま指でくすぐるように、胸の上を這いまわらせた。
「やっ」
そう短い抗議の声が唱えられても止められない。もっとも、三玖も止めて欲しいとは思っていなかったが。
風太郎は右手に右の、左手に左の乳房を収めて、持ち上げるように揉みしだいた。そのずっしりと手にかかる胸の重さで、そのまま指が柔らかいふくらみに沈んでいく。固い物を解きほぐすような優しい手つきに、三玖は切ない吐息を漏らしてされるがままになっていた。
胸に起きた変化に、風太郎は少し意地悪に笑いながらキスをした。胸の頂にある桜色の乳首がつんと上を向いて、触ってとでも言うように立っていた。
胸に沈んでいた指から人差し指を出して、突き出たそれを優しくくすぐった。
「ひゃっ! あ、あぁ……んっ」
最初の接触に、胸を駆け巡った鋭敏な所からもたらされる快感に、驚いた声を出して、けれどもすぐに甘い声に変わって、男を、風太郎を誘う。
口を舌で侵されながら、絶えず送られてくる胸からの快楽に、三玖の頭の中は桃色一色になった。
「フータロー……」
こそばゆいような小さな快楽の繰り返しに、三玖は体の奥から起こる、もっと深い快楽を求める声が無視できなくなっていた。面倒くさい女かな、と思いつつ、自分で言うのは憚られて、察して欲しいと大きな目で風太郎を見つめた。
その目に射竦められた風太郎は、息が出来ないほどに心臓が跳ねて、望みを叶える言葉を口にする。
「三玖、したい」
自分と相手の鼓動を重ねるように、抱きしめる腕に力を込めて、破裂しそうなほどそそり立った陰茎を三玖のお尻に押し付けた。
「もう、お猿さん」
「こんな綺麗なお前が悪い」
二人は小さく笑い合うとキスをして、行為に及ぶための一手間を自分に加える。
風太郎はもしもの時のために置いていたコンドームを自分のモノに着けて、三玖は唯一身に纏っていたショーツに手をかける。
先に着け終えた風太郎は、三玖の繰り広げる光景に、思わず生唾を飲み込んだ。ショーツを下ろすために身を屈めた三玖の体勢が、誘うようにお尻を突き出していた。そんな光景に我慢の限界というように、風太郎は丸いお尻に手を置いて揉んだ。
「フータロ……あっ! だ、だめ」
そのまま手を、見るだけでしとどに濡れている事が分かる女性の秘部に沿わせた。これから自分を受け入れてくれるそこを、ゆっくりと花開かせる。
「あん! フータロー……だめ、だめ、きゃっ!」
三玖の体を爪弾く度に、気持ちよさに喘ぐ声が響く。気分を良くした風太郎は、また背中に口付けながら責める手を止めない。
くちゅりと小さく鳴る水音が、三玖の体を上から下まで快楽を伴って震わせる。
「フータロー……」
そう懇願する呼び声に、風太郎はゆっくりと蜜を流す割れ目に自分の肉棒を突き入れた。
「あっ……イッ……あぁ、はっ」
ゆっくりと三玖の中が風太郎の肉によって押し広げられ、果物に舌を突き入れたように溢れた雫が、ポタリと床の上に落ちた。そのまま歓喜に泣くようにもう一雫二雫落ちて、震えるほどの喜びと、押し寄せる快楽の波に耐えられないように喘ぎ声を零した。
「あん……んっ……はっ……あぁ!」
普段は落ち着いた表情の多い三玖の乱れる様は、どうしてこう男心にぐっとくるのだろう。風太郎は抜き差しする陰茎を包む三玖の中が、知っているぞとばかりに弱い所を責めてきて、快楽でいっぱいの頭の端でそんな事を考える。
セックスの趣向を変えるイタズラを、彼は目の前の三玖の耳に甘噛みしてからそっと囁いた。
「なあ三玖」
「んっ、な……あん! ……なに?」
「この家って古いだろ。壁がどんな風になっているか、知ってるか?」
打ち付けられる腰が止まって、快楽の波が凪いでいくと、どろどろに蕩けた頭の中に理性の檻が急速に出来上がる。赤みを帯びた肌の上、汗の雫のその中に、冷や汗が一つ加わった。
きっと古くて壁が薄いから、声を出したら漏れるんだ。
三玖の顔が、恋人に裸を晒した恥ずかしさとは別の羞恥に赤くなる。夜であれば良いという訳ではないが、まだ明るさの残る夕空のうちから情事に耽って、あまつさえ喘ぎ声を聞かれてしまうかもしれないなど、平然としていろというのが無理というものだ。
三玖はゆっくりと再び動き出した腰の動きに、反りかえる陰茎が中の弱い所を突く度に、甘い喘ぎ声を漏らしそうになるのを口をつぐんで耐えていた。
そんな状況を楽しむように、風太郎は口の端に笑みを浮かべてキスをした。キスをしながら、腰の動きを円滑にするため三玖のお尻にそえていた手を離して、腰を振るたびに震える胸を鷲掴みにした。
「ふーた……ぁ、だめ、~~!」
ふにふにといつまでも飽きない感触を掌で味わうと、指先で桜色の頂をいじめる。三玖の体が大きく跳ねて、中の風太郎を締め付ける力が増した。
「三玖、声聞きたい」
「い、いじわる……ぁっ、いじわる……」
三玖はゆっくりと弱い所を突かれて、敏感になった乳首をいじくられて、甘いキスを重ねさせられて、おかしくなってしまいそうだった。
フータローがあんな事言うから、我慢しなくちゃって、それなのにフータローは……
「んっ、あ、ぁ……」
恨み言の一つ二つが頭の中に浮かんでも、打ち付けられた腰がパンッと音をあげると壊れて消えた。
風太郎は、喘ぎ声を我慢する口に変わって、物言うようにうねる膣の壁が陰茎をしごき上げる快楽に果ててしまいそうになるのを堪えながら、三玖が気持ちよくなる所を全てを攻め立てた。
「ふっ、ぐぅ」
意志の力だけではどうにも塞がりそうにない口を、三玖は両手で抑えて声が出ないようにする。
声を出しちゃダメ、声を出しちゃダメ。
そう考える思考が突然ぷつりと切れた。
「や、あっ! ダメ、だ……イッちゃ、っ~~~~~!」
風太郎と繋がった所から始まる、とてつもない快感に支配された体は、もうそれの事しか考えられない。男の何倍もの快楽をもたらす女の絶頂に、三玖の頭は明滅を繰り返すようにスパークした。
立っていた足から力が抜けて、その場にしゃがみ込んだ。しゃがんだ際に風太郎の肉棒が抜けた事に気が付かないほど、絶頂の快感で頭がいっぱいになっていた。
「はぁ……はぁ」
床にへたり込む三玖は膝を立てたまま、四つん這いの状態から腕の力を抜いたような体勢で体を投げ出すように倒れている。ヨガでいう猫の背伸びのポーズに似たその恰好は、腰を高く上げた状態で、それを間近で見せられる風太郎は耐えられないようにお尻をむんずと掴んだ。
先ほどまで交わっていた割れ目に、こすれて白く泡立つ潤滑液が流れてひくついている。射精寸前の陰茎の持ち主である風太郎の頭の中は、射精する事でいっぱいで、目の前の三玖の膣に挿入して腰を振り、思い切り射精し尽くす事だけを考えていた。そしてらしくもなく、考えた事をそのまま実行に移して、怒張した肉の棒を三玖の中に突き入れた。
「あっ! フータローやめ……きゃん!」
先ほどまでのどこか優しさを持った腰の動きとは異なり、雄が射精をするために行う本気のピストン運動に、三玖の口から我慢できない喘ぎ声が響きわたる。
「三玖、いいのか、声我慢してたのに」
「あぁダメ、ダメ、フータロー、きちゃう、おかしくなっちゃう!」
「出る、ぐっ、あぁ!」
女の最奥に射精しようという本能のままに深く突き入れた陰茎が、快楽の許容量を超えた事で絶頂して震えた。
ビュッ、と音が聞こえそうなほどの射精が始まる。
二回目とは思えないほどの精液が、膨らんだ亀頭の先から勢いよく放たれる。睾丸の奥から出てくる塊のような精液は、尿道を駆け抜けて鈴口を飛び出しコンドームにぶつかった。ドクンドクンと心臓のように脈を打つ度に白い物が溢れてきて、腰の抜けそうなほどの快感が体を包む。
「はっ……あぁ……」
風太郎は射精の虚脱感そのままに、三玖の体の上に倒れこんだ。
一呼吸おいて中から陰茎を引き抜き、コンドームを外して口を縛った。
「ばか、フータローのばか。恥ずかしい声、誰かに聞かれちゃったかも」
「え……ああ、ははは。その事か」
「笑いごとじゃないよ。フータローは人に聞かせたい趣味でもあるの?」
「何でお前の可愛い声を見ず知らずの奴に聞かせてやらないといけないんだ」
「じゃあどうして笑ってるの」
「この家って古いだろ?」
「だから壁が薄いんじゃないの?」
「雑に建てられたからか壁が厚いんだ」
事もなげに言ってのけた風太郎を、三玖はあんぐりと口を開けて見た。そのお化けでも見たような視線に、おかしくなって彼は笑う。
「もうっ! ばか! 恥ずかしかったんだから!」
「いてて、悪かった。謝る、謝るから」
三玖は真っ赤になった顔に、零れそうな涙を瞳に湛えて、風太郎の裸の胸板をぽかぽか殴った。その軽い痛みを甘んじて受け入れつつ、気が済むまで叩かれていた。しばらくして叩く力が弱まった頃に、両方の握りこぶし取ってその手を引く。つんのめるように前に出て来た三玖に、「すまなかった」と言いながらキスをした。
「キスしたら誤魔化されると思ってない?」
「違うのか」
「む……」
ぷくっと頬を膨らませた三玖が、咎める目つきで睨んでくる。どうご機嫌取りをしようか、と風太郎が頭を掻いて考えていると、その意識の間隙を縫って三玖がすぐ目の前に来ていた。
「違わないから、何か悔しい」
んっ、と鼻から小さく息を漏らして、触れるだけのキスを繰り返す。胸の内が温かくなるようなそれは、何度しても気持ちよさが衰える事なんて無くて、どちらの唾液で濡れたか分からない唇を重ね合い続ける。
早鐘を再び打ち始めた心臓が、三玖の白い肌を朱に染めて、その色っぽい姿に風太郎の劣情は燃え上がって、そんな自分に呆れたように小さく笑った。
「フータロー、お姫様抱っこして?」
三玖の差し出すように伸ばされた手が、風太郎の首に回される。可愛らしいお願いを聞いてやりたいのは山々だが、己の領分を知っている彼は困ったように眉根を下げた。
「三玖、付き合ってから結構経つのに俺の事を知らないのか?」
「自慢するような事じゃないよ。傷つくな。私、結構軽い方だと思うんだけど」
「……すまん。俺の力不足のせいです」
「次回までの宿題ね」
「次も期待していいのか?」
自然と出て来た次という言葉に、こういう事を従っているのは自分だけなのでは、という不安を拭い去ってくれるように思って嬉しくなる。
「……揚げ足取り」
「違う、嬉しいんだ」
そっぽを向いた三玖の、ほっそりとした首筋を指でなぞる。くすぐったいように吐息を切れ切れに吐いて、ぎゅっと寄せた三玖の大きな胸が震えた。
「次の機会があるって事は、こういう事が嫌じゃないって事だろ?」
「……うん」
反らしていた顔を風太郎の方に向けて、熱っぽく見つめ返す顔は息が詰まる程の美しさで、詰まった息を通すように唾を飲み込む。
こちらを向く顔にそっと手で触れて、顎先をちょっと持ち上げた。今更改まってキスをされることに、なぜだか照れくさくなって、風太郎は苦笑いをして、三玖は頬を赤くする。
「好きだよ、フータロー」
「俺もだ」
短く触れ合った唇がちゅっと音をたてて、それがまた恥ずかしいように感じてむずがゆい感覚に襲われる。それは嫌な事ではなくて、愛する気持ちがそうさせる小さなイタズラかもしれない。
二人は着替えを手に取って立ち上がると、それは身に着けずに、裸のまま布団へと足を運んだ。
敷かれてないよりはマシ程度の、綿のへたった敷布団に三玖は先に横になった。風太郎は自分が普段寝ている布団の上に恋人を寝かせているという状況に、自分の全てを許したと認めさせるようで、胸の奥から愛しい気持ちがせり上がってくる。
目を閉じた三玖にそっとキスをして、掌で彼女の体を撫でる。羽を触るようにゆっくりと優しい手つきで、首筋から手を下らせて行った。
鎖骨のくぼみをするりと抜けて、柔らかい丘を慎重に登って行く。頂にある桜色のものにちょんと指の端が当たると、三玖は甘い囁きを漏らした。
「や……あ、ぁ……」
下って行く手に合わせて、風太郎はキスする場所も下へ移動させる。首筋に口付けて、少し吸い付いた。明日には消えてなくなる程度のキスマークを残して、しかしそれを見て物足りないと言うようにもう一つ二つ、この女の子は自分のものだという証を刻んだ。
手がお腹を触って太腿へ行こうとする所で、キスする場所も胸のふくらみに変わる。ふわりと唇を沈み込ませると、くすぐったいように三玖の体が揺れる。それに合わせて震える二つの胸は、他の何も目に入らないほど男にとって強烈な光景だった。
舌で唾液の道を描きながら登って行くと、頂にある乳首も舐めつけて唾液で濡らした。そのままそこを口に含んで、飴玉のように舌先で転がす。
「ふぁ……ゃん」
舌先で乳首を弄びながら、指先は三玖の一番深くに通じる割れ目に辿り着いた。
太腿の付け根からほぐすようにゆっくりと触って、すぐに目的の場所には至らずに焦らしながら愛撫する。
一番気持ちが良い所に、触れそうで触れないもったいぶった手つきに、三玖は切なげに喘いだ。
「はあ……やん、フータロー、いじわるしないで……」
胸の辺りを口付ける風太郎の頭に触れて、訴えかけるように彼の髪をかき上げる。あげられた前髪に少し遮られていた鋭い目つきに貫かれると、胸の奥がざわめいた。
風太郎の端正な顔立ちに見つめられると、火矢に射られたように体の奥が熱くなって、どきどきと打つ器官が、その熱を増して体中に送り出していた。見ているだけで幸せだったものが、見つめ合う事を許されてより大きな幸せになる。その事が三玖はたまらなく嬉しかった。だから三玖は、思う存分見つめ合えるセックスの一時がそれだけで好きだった。
風太郎は三玖の下腹部を触っていない方の手で彼女の顔に触れた。かかった前髪をはらって、隠れていた右目の瞼にキスを落とした。
そうしてからゆっくり、ゆっくりと快楽の中心の核を撫で上げた。
「っ! あっ!」
大きな快感に、その身を弓なりに反らせて善がる。頭が真っ白になって、怖いほどの感覚に肌が粟立つようにさえ思った。
ぬめるような蜜に指先を湿らせて、風太郎は三玖の触られるのが好きな所を容赦なく攻め立てた。
「ダメ、あっ! イッ……ちゃうから……」
三玖はそのいじめてくる手を掴んで、いやいやと首を振った。ここまできて、指でくすぐられるように絶頂を迎えたくなかった。最奥まで繋がって、裸の胸を突き合わせて、息もできないほどのキスを重ねて、そうして全てが混ざったかのような状態で絶頂を迎えたいと思っていた。
「フータロー、きて……」
すうっと風太郎の目から余裕が消えて、必死さにも責任感にも似た思いが彼の脳内に駆け巡る。
この子と一緒に絶頂を迎えられたら、どんなに気持ちが良いだろう。この行為を最高の物にするかそうでない物にするかは、自分にかかっている。そう思うとやる気がメラメラと燃え上がった。どうやら自分は、物事を乗り越える方が性に合っているようだ。そして、この状況は男として試されていると思ったので、性欲の炎と使命感の炎が体を熱くするのを感じていた。
枕元に置いたコンドームを二度射精したにも関わらず固くなっている陰茎に着けて、濡れた三玖の割れ目にあてがう。
「いくぞ、三玖」
「うん。きて……」
はっ……と吐いた息が重なり、すうっと吸った息が全く同じ速さで胸を膨らませる。見つめ合った目が、瞬きすらしていないように見えるのは、瞬きするタイミングすら同じだったからだ。
その全く同じ時を体が刻んで、二人は心に同じ物を抱いていると、何も疑う事無く思った。重なる時に、唇を重ねて、ゆっくりと肌を重ね合った。
「んっ……」
繋がった下半身から頭が真っ白になりそうな快楽が押し寄せてきて、それにキスと言う行為は拍車をかける。
「はぁ……あ、ぁあ……ん」
体中を包む快楽の幸福感に、三玖は体の奥から絞り出したような喘ぎ声をあげた。
「やっぱり、フータローの顔を見ながらする方が好き」
「そうか?」
「うん、大好き。それに……」
言葉を切ると、風太郎の首に手を回し、少し力を込めて引き寄せた。目線が絡まったままキスをすると、その目が慈しむように細められて笑っている。
「こうやってすぐキスできるし」
言うと、もう一度引き寄せて愛しているよとキスをしてきた。
風太郎は腰に力を込めて、抜けそうなほどに引いて、貫くように入れるを繰り返す。パンッと汗ばんだ肌が奏でる音に、自分達のしている事を改めて自覚させられるようで、不思議と興奮がより高まった。
「あっ! あん! うぅあ……」
三玖は寄せる波に歓喜の声を喘いで、引く波に惜しむような切ない声を喘がせる。どこを切り取っても色っぽい彼女の情事に耽る姿は、俺がそうさせているんだ、と思うと、男としての征服感に満たされている事を風太郎は感じた。
腰を振る度にゆさゆさ揺れる胸を、片手に収めてふにふに形を変えさせながら、もう片方の胸のふくらみに口付ける。ぴくりと震わせる三玖の体に、もっと良くなってもらおうと緩急織り交ぜて腰を打ち付けた。
「フータロー、気持ちいいよ……あんっ……フータローは?」
「俺も、気持ちいいぞ」
腰を振る動きに息を切らしながら、どうにか絶え絶えにならないように答えた。
肉棒を包み込む肉の壁が、明確な意思を持ったようにうねり、ざらりとした感触が容赦なくしごいてくる。気持ち良すぎる事が問題だなと、贅沢な悩みに苦笑して、どうしたのと聞いて来る目に、なんでもないと唇をそっと重ね合わせる。
ゆっくりとした行為は、何回時計の針を回させただろうか。長いのか短いのか、そんな感覚がなくなる程に昂った思いをぶつけ合うこれに、終わりの時が来ようとしていた。
三玖は中を突かれる度に体中駆け巡る気持ちよさが、もう少しで解き放たれようとしている事を理解して、両足を風太郎の腰に回してより深く繋がるように力を入れた。
風太郎は風太郎で、陰茎の奥にある堰を壊すように快楽をむさぼり、出したい出したいという頭でいっぱいになっていた。
「三玖……三玖……」
うわ言のように愛する人を呼びながら、限界を超えたように腰の振りを速めていく。本気の絶頂を迎えようという動きに当てられて、三玖も焼け付くような快楽の走る頭で、絡める足に、首に回した手に、そして呼ぶ声に力を込めていった。
「フータロー……あっ……フータロー……」
息が出来ないほどに深いキスをしながら、二人は獣のように腰を振る。相手一色になった頭に、体に刻まれる快感がどうしようもないほどに動いて求めるのだ。
はっ、はっ、とお互いのすぐ傍で荒げる息が熱く頬を撫ぜる。
「あん! ふ、ふーたろー、い、いっちゃう」
どこか舌ったらずな物言いが、三玖の口から甘く立ち昇る。
「俺も、三玖、イきそうだ」
「きて、ふーたろー、いっしょに……」
最後は全部繋がって果てたい。三玖はそう思って荒々しくキスをして、裸の胸が合わさるように回した手により力を込めた。
風太郎は壊れてしまいそうなほどの快楽を、三玖の最奥に突き立てる事で絶頂で締めくくった。
「あっ! あぁ! だめ! いっ……、っ~~~~~~~~!」
「うっ……あっ、っ~~~~!」
二人全く同じに訪れた絶頂に、言葉に出来ないほどの快感が体中押し寄せ、思考を彼方に吹き飛ばしてしまった。
三度目とは思えない量の射精が、陰茎を震わせて飛び出していく。締め付ける三玖の中に誘われるように、何度も何度も精を吐き出した。
三玖は三度目の、そして最大の絶頂に、考える事を放棄したように快楽に翻弄されていた。体中を駆け巡る気持ちよさを邪魔しないためにか、息をする事さえ忘れたように体の他が動かない。頭が真っ白になって、永遠にさえ思えてくる快楽の極みの海にたゆたっていた。その怒涛のような快楽がゆっくり引いて行くと、体は思い出したかのように動き出す。体の奥から送り出された熱に、三玖の珠のような肌から一気に汗が噴き出した。どこか虚ろだった目は、目の前の恋人の顔をはっきりと見据えた。
「三玖、大丈夫か?」
「だ、大丈夫じゃないかも……」
絡めていた足を解いて、開放された風太郎は三玖の中から陰茎を引き抜いた。
たっぷりと精液で膨れ上がったコンドームを外して口を縛り、ティッシュでくるんでゴミ箱に捨てた。
「大丈夫じゃないって、どうしてだ?」
三玖のすぐ横に寝転がって、その言葉の真意を問うた。
「だって、凄すぎだもん。忘れられなくなっちゃう」
三玖は恍惚の表情を浮かべながら、隣り合う顔に優しく口付けた。
「受験だし、大変なのは分かってるけど、たまにでいいから、こういう時間を作って欲しいって思っちゃうから、だから大丈夫じゃない……かも」
はにかんだ顔は、すぐに自分の言葉を反省して真っ赤になり、逃げるように掛布団にくるまった。
「今の忘れて……」
「いや、忘れないな」
巻物のように布団に丸まった三玖が、顔だけ出して睨んでくる。こういう時間を過ごしたい、なんて色事で頭が馬鹿になりすぎじゃないのかと少し自己嫌悪の感すら覚えるのに。忘れてくれないなんて意地悪を言わなくてもいいじゃん、と三玖は勝手にちょっと怒っていた。
「確かにこうする時間ってのは頻繁には作れないが、それくらい一緒にいたいって言われるのは悪い気はしない」
布団から覗く真っ赤な顔にキスしながら、乱れた髪に指を通す。絹糸のようにさらさら指を流れる感触を楽しみながら、何を言うでもなく見つめ合った。
三玖は丸まった布団から出てきて、風太郎の胸に飛びつく。
「大好きだよ」
「俺も好きだぞ」
そばに来た三玖の、その額にキスを落とした。
「……なあ、明日は買い物にでも行かないか?」
「どうして?」
「どうしてって……恋人をデートに誘うのはおかしいか?」
「おかしくないけど、でもフータローだもん。休日は勉強するって外に出たがらないのに、どういう心境の変化なの?」
過去の自分から考えるともっともな指摘だな。風太郎は前髪をいじりながらそんな事を思う。デート一つ誘うにもこんな事を言われるのは、完全に過去のつけを払わされている。
「これから夏服に変わるだろ?」
「そうだね」
「あんまり……その、胸元が薄着になるのを他の男に見られるのは、彼氏として面白くないというか。だから、熱くて嫌と言うならそれはそれで構わないんだが、サマーセーターの一つ二つ買ってかないか?」
そんなお堅い言葉を、ぽかんと口を開けて聞いていたが、少しして可愛らしい嫉妬におかしくなって笑いだした。
「笑うなよ」
「ごめん。……あはは、何だかおかしくて」
「あんな胸を使ってアピールしてきたくせに、それを考えると笑うのはひどくないか」
あんな、とはもちろん風呂場でした胸を使った奉仕の事だ。そのせいで風太郎の胸を見る目が変わってしまったのかもしれない。そう思うとますますおかしくなった。
「どうなんだ。嫌ならそれでいいが」
「嫌じゃないけど……でもおちんちんをおっぱいで挟まれたから考えたんじゃなかったら、もっと嬉しかったな」
「うぐ……それは」
「えへへ、うそうそ、嬉しいよ。明日はお出かけしようね」
最近はバイトやイベントで忙しくて、こういったデートを出来なかったので素直に楽しみだった。
汗やセックスの際に出したあれこれでベタベタになった体を、今度は何事もなく流し合って寝間着に着替えると、人心地ついたからか、瞼が鉛のように重く感じるほどの眠気に襲われた。一度の絶頂で息も絶え絶えになるのに、三度もすれば体力の底も尽きるというものだ。
二人は一緒に布団に倒れこむと、そっと身を寄せ合ってお互いの顔を見ながら眠りに落ちて行く。
愛しさを込めて、二人は固く手を結んでいた。寝ても覚めても変わらない想いがここにあるのだと教え合うように、相手の為に変わる事を厭わない愛を抱いていると知らせるように。
二人は、この恋よ運命あれかし、と神の御前に誓う夫婦のように永遠の絆を祈った。