◆ ◆ ◆
麗一との初デートの翌日。普段通りに放課後の練習に参加した真姫に、メンバー達は「おお~!」と歓声を上げていた。
ウォーミングアップに行っている柔軟体操。これが得意なのは、バレエ経験のある絵里は勿論、ことりも柔軟性を発揮していた。
その2人にも引け取らないほどの柔軟さを、真姫が見せつけたのだ。
ちなみにそれまでの真姫は、可もなく不可もなく、程度の柔軟性を発揮する程度であった。
「凄い凄い、真姫ちゃん!
どうしちゃったの!?」
穂乃果が尋ねると、真姫はフフン、と普段通りに高飛車な鼻息を吐く。
「まぁ、これが私の本当の実力ってことかしらね」
そこへ希が、ニヤニヤ笑いながら、からかい半分で語る。
「これが恋の力ってやつやね~?
それに、"アッチ"を経験してイくと、体が柔らかくなるって聞くしな~」
すると、花陽を先頭にして、1、2年とにこがズズイッと真姫に顔を寄せる。
「ええっ! 真姫ちゃん、もうそんな関係になっちゃったんですか!
そう言うスキャンダルは、アイドル生命を一気に断っちゃうよぉ! なんてことしちゃったのぉ!?」
「真姫…あなたは冷静で大人っぽい性格だからと信じていたのに…! そんなふしだらな事を…!」
「は、ハラショー…。会って二度目でなんて、思い切ったものね…!」
詰め寄るメンバー達に対して、真姫は大きく両腕をブンブンと回して抵抗する。
「そ、そんなに詰め寄んないでよっ!
ち…違うんだからっ!」
最後の否定の言葉に少し迷いが滲んでしまったのは、麗一と及んだ"行為"が、実際に"ふしだら"と評されても仕方のないものだったからだ。
(で、でも、嘘じゃないわよ!
あれはヴァーチャルな体験であって! 本当じゃないんだから! 処女も失ってないし!)
そう必死に自分に言い聞かせ、顔が赤くならないようにと努力する――努力してどうにかなるものではないが、幸いにして顔色が極端に紅潮にすることはなかった。
「じゃあ、真姫ちゃんは昨日、麗一さんとどんな事したの!?」
穂乃果が目を輝かせながら尋ねてくる。
「
ことりがニッコリと笑いながらも、表情の裏側に圧力を込めてくる。
真姫はモジモジと体を揺すりながら、唇を
「研究室を見せてもらってから、夕食を食べて…それで終わり、よ」
嘘は言っていない。事実、夕食が済むと麗一は別の何処かへ連れ込むような事はせず、真姫をまっすぐに自宅へと帰してくれた。
メンバーは真姫の言葉の内、"夕食"と言うキーワードに反応して、内容を掘り下げてくる。どんな場所で食べたのか、どんな料理だったのか、どんな事を喋ったのか…等々、だ。研究室については小難しそうなイメージも手伝ってか、何一つとして話題を振られなかった。
真姫としては、ディナーでは何一つ疚しい事はしていないので、落ち着いて内容に答えることが出来た。
第一、ディナーのレストランはとても雰囲気の良い場所だったし、料理の内容も素晴らしく、研究室での淫靡な時間を水に流せるほど穏やかで楽しい時間を過ごせていたので、話すことに何の抵抗も覚えなかったのだ。
――こうして
◆ ◆ ◆
寝床に入るのが相応しい時間帯に至った、夜半。
入浴を済ませ、可愛らしいパジャマ姿になった真姫は…。
「んはああぁぁんっ!」
広い自室の床に仰向けに寝転び、嬌声を上げて身悶えしている。
彼女はパジャマのズボン、そしてパンツをもすっかりと脱ぎ捨てて下半身を露わにすると、秘部に緑の肉塊――小型のティペロをあてがい、よがり乱れている。
「もっと、もっとぉっ!
奥まで、奥まで突いてぇっ!」
ティペロが作り出す架空の麗一のペニスによるピストン運動の感覚に、真姫はだらしなく
相手の居ないその行為は、完全に自慰の様相を呈している。
だが、そんな客観性などかなぐり捨てて、真姫は性的快楽をひたすらに貪る。
「もっと、掻き回してぇ!
グチャグチャにしちゃってぇっ!
もっと、もっとぉっ!」
嬌声は自室を揺るがすかのように声高だ。だが、真姫の自宅の大きさが幸いして、嬌声は両親の耳には全く届かない。
「ん…っはあああぁぁぁんっ!」
真姫が目を見開き、思い切り仰け反ると、絶頂に達する。ティペロによるトロトロの肉の感触の中に、粘性の生暖かい体液を思い切り放出した感覚を得る。そのヌルヌルした感触が、秘部に絡みついて離れない。
真姫はその感触をも楽しみながら、絶頂の余韻に浸っていたが――やがて、眉を
――何か
ティペロは相手の男性が膣内で噴出する精の奔流まで再現する。なので、胎内が液体の感覚で埋もれるのは理解出来る。だが、絡みつく粘液質は、何だ?
愛液の噴出かとも思ったが、それにしては重量感があり過ぎる。
「どうしたの…かしら…」
まだ夢見心地を引きずりながら、不安というより好奇心に駆られて、秘部を覆うティペロを掴んで、引き剥がしにかかる。
ティペロは触手のような外見通り、吸着力の強い物体である。活きの良いタコには到底及ばないが、引き剥がすには少々力が入る。
「ん…っ」
甘い掛け声と共に、クニュリ…とティペロを引き剥がす。すると、愛液とは全く違う、見たことのない粘性の強い汚らわしい白の液体がベチョリ、と幾筋もの糸を引く。
――いや、"見たことがない"というのは、嘘だ。真姫はこれを見知っている。麗一と猥褻な時間を過ごした研究室の中で、彼のそそり立ったイチモツの先端から滴り落ちていた液体にそっくりだ!
「え…ま、まさか…!」
真姫はざわめく不安に夢見心地を塗り潰されながら、露わになった股間へと視線を向ける。するとそこには、驚愕の存在が堂々たる姿を露わにしている。
天を
「嘘ッ!」
真姫は食い入るように己の股間を見つめる。
男根は麗一と同様、皮に包まれていない亀頭を持った、立派なイチモツである。しかし麗一と明らかに違うのは、先端の色が初々しいピンク色に染まっているということ。使い込まれていない証だ。
ペニスは女性の陰核があるべき部分から延びている。それは――常識的には到底受け入れられはしないが――医学的には理解出来る。男性のペニスと女性の陰核とは対応する部位なのだから。
しかし、ペニスの下にブラリと垂れ下がる陰嚢には、酷く困惑してしまう。
真姫は陰嚢に軽く触れてみる。生暖かな感触の中に、2つの楕円の肉塊――睾丸の感触が確認できる。つまり、真姫は完全な男性器を手に入れたことになる。
(そんな…それじゃあ、私の女性としての能力は…!?)
睾丸、ひいては精巣は女性の卵巣に対応する部分だ。精巣を得たという事は、卵巣を失ったという事になるのではないか!?
見慣れぬ男性のグロテスクなイチモツへの驚愕よりも、自身の女性能力に対する不安から、真姫は下半身に衣類を纏うこともせずにスマホへと飛びつく。連絡先は勿論、麗一である。
数コールの後、麗一が普段通りの柔和な声で応答した。
「どうしたんだい、こんな夜中に。
ひょっとして、下半身が寂しくなってしまったのかい?」
最後の言葉は、イヤらしいネットリとした蠱惑的な響きを持っていたが。真姫は感じ入る余裕もなく、噛みつくように本題に入る。
「どういう事!?
ティペロってヤツを使ってたら…そ、その…お、男の人の性器…が、生えて着たんだけど!」
すると麗一は、満足そうに鼻で笑う。
「ああ、ちゃんと使ってくれていたんだね。気に入ってくれたようで嬉しいよ。
どうだい、僕のペニスの感触は? 気持ち良かったかい?」
「そんなこと、どうでも良いのよ!
私の体の変化について答えてほしいのよっ!」
真姫は恥ずかしさを感じることなく、叫ぶ。
「私、男の人になっちゃったわけ!? もう女性としての能力はなくなってしまったわけ!?
そもそも、なんでこんな事するような機能が付いてるのよ!」
がっつく真姫に対して、麗一はあくまでペースを崩さず、微笑みの気配を漂わせながら答える。
「順を追って話そうか。
まず、ティペロを使って男性器一式が出来てしまった件だけどね。これは、実験なんだよ」
「実験!? 何のよ!?」
「女性に敢えて男性の要素を付与することで、男性を否定しようとする作用が働き、女性の性的活動が活発になるのではないか…というのが、僕の持論でね。
それを確かめるためのものさ」
「そんな実験を、わざわざ私に対して試したって言うの!?」
麗一が肩を
「確かに試す意味合いもあったけどね。
これは、君へのプレゼントのつもりだったんだよ。
男性器は女性器と違って、処女性に当たるものはない。だから、何をも気にすることなく存分に
それに、ティペロを使えば、君自身のペニスが君自身の
…そうそう、君の女性としての能力は失われていないよ。卵巣も子宮も無事だ。ただ、クリトリスが男性器一式へ変わってしてしまった、と考えれば良い。
つまり、君は今、男性と女性、両方の性的快楽を同時に味わえる立場を得たワケだ」
「両方の、快楽…」
自分の女性能力が失われていない事を告げられて安心した故か、真姫の関心は直ぐに快楽へと向かう。
確かに、今回の自慰は凄く気持ち良かった。特に絶頂した時の放出感――射精の感覚だろう――と来たら、脊椎が痺れるかのようだった。
この感覚と、膣による絶頂が加わったのならば。一体どうなってしまうのだろう。
「…ねえ」
ゴクリと固唾を飲んでから、真姫が尋ねる。
「ティペロをどんな風に調整すれば、そういう事が出来るの…?
つまり…自分のペニスを、自分の
麗一は、ふむ、と一息入れてから答える。
「そのティペロは機能特化しただけのものだからね。調整能力はないんだ。
別に造る必要がある。
明日、君に差し上げよう。
それまでは…男性器の感覚に慣れるつもりで、思い切りペニスを
「…分かったわ。
放課後、前と同じ時間帯に迎えに来て。研究室に取りに行くから…」
麗一は、フフフ、と言う笑いを残して電話を切った。
通話を終えた真姫は、剥き出しの股間に視線を落とす。
ペニスは幾分か落ち着いてきており、剛直は萎えて情けなく亀頭をうなだれている。
「これに、慣れる…か」
真姫は、恐る恐るといった手つきで、自身のペニスに触れてみる。血管が浮き上がった、色黒の竿を細い指で掴んでみる。
ピクンッ…ペニスが敏感に震えると。
「あふぅっ!」
真姫が嬌声を上げる。同時に、萎えていた肉竿の血管がクッキリと浮き上がり、ムクムクと天を目指して
「凄い…これが、男の人の感じてる感覚…」
膨張して張りつめた亀頭を指で触りながら、竿の奥…尿道を締め付けるような切なさに困惑しつつも、感触を楽しむ。
このまま思い切り指でシゴいたり、床か何かに擦りつけたくなる…が。ティペロの中にブチ撒けた精が、何にも遮られることなく放出され、室内が汚れてしまう事を考えると、グッと堪える。
(明日…明日になれば、麗一さんが、持ってきてくれるんだから…!)
耐え忍ぶからこそ、より素晴らしい快楽が得られるのだと自分に語り聞かせると。真姫は眠る準備に入るのだった。
◆ ◆ ◆
翌日の練習においては、真姫の動きは前回と打って変わって、動きが非常にぎこちなかった。
発声練習は全く問題ないのだが。ダンスとなると、モーションではない別の何かを気にした様子で、眉をひそめながら不器用な動きを繰り返す。
特に酷いのは、足の運びだ。他のメンバーのように元気よく開閉することが出来ず、始終内股気味でモジモジしている。
「ちょっと、真姫!
やる気ないの!?」
見かねた絵里が眉を怒らせて指摘すると。真姫は心底居心地悪そうに伏し目を作ってポツリと答える。
「…ごめんなさい…」
何時になくしおらしい様子に、
直後、花陽が絵里と真姫の間に割って入り、真姫を庇う。
「真姫ちゃん、体調がおかしいんだよ!
今日一日見てたけど、ずっと溜息吐いてるし、どこか上の空の様子だし…」
「ひょっとして…! 例の許嫁さんと別れてしまったのかにゃー!?」
凛が叫ぶと、メンバーたちは血相を変えて真姫に詰め寄る。
真姫は苦笑いを作ってパタパタと手を振り、「いや、そんなんじゃないから、ホントに…」と否定する。
真姫の言葉は、事実である。彼女の憂鬱の正体は、そんなものではない。
昨夜から股間に生えてしまった男根。それこそが、彼女の苦悩の正体である。
(何なの、男のモノって…!)
真姫は困惑と共に苛立ちを感じている。
授業中、ぼーっとしているだけでも、急に勃起してしまう。練習中は、メンバーたちの健全な動作に股ぐらに熱が入り、ビッキビキに勃起するだけでなく、先端からヌルリとした生暖かい粘液まで出てしまう。
下手に動けば股間の隆起が目立ってしまうので、何とか誤魔化そうと努力していた…その結果が、モジモジとした動きなのである。
(早く麗一さんに、なんとかしてもらわないと…)
とは考えるものの。昨夜麗一と話し合った内容は、どうしたら男根を無くせるか、ではなくて。男根を使って如何に更なる快楽を得るか、に始終してしまった。
練習後、麗一は約束通り来てくれるだろうが…男根を無くすための装置か何かは持ってきてはくれないだろう。
(…仕方ない。今日、麗一さんに相談しておこう…。
そして、このおちんちんは…)
熱を帯びた股ぐらの切なさに負け、短絡的な思考に陥る。
(一度ぐらい…使ってみても良いわよね…)
身の入らない練習をどうにか終えて、帰路に着く真姫たち。
正門の所へ行くと、麗一の真っ赤な車が待ち構えていた。
勿論、メンバー達は色めき立つ。が、真姫は手を振って彼女らを制すると、小走りで車へと向かう。
そんな真姫の背中を眺めながら、穂乃果が腕を組しながら首を縦に振りながら語る。
「そんなに許嫁さんと早く会いたかったんだねー!
うん、そんな真姫ちゃんの恋、応援するよ!」
そんな穂乃果の応援とは別に…。
車の助手席に乗り込んだ真姫は、運転席に涼しい顔で座る麗一に、情欲で潤んだ瞳を向けて、桜色の唇から甘ったる吐息をはきながらせがむ。
「早く…早くなんとかして…!
このおちんちん…ずっとビクンビクンしてて…! 爆発しそうなのっ!
それに、子宮も…! おちんちんが疼く度に、挿入して欲しいって、叫んでるのぉ!」
男根を無くす方法を聞くこともせず、情欲のままに貪るように言葉を語る。
麗一はニヤリと笑う。
「随分とメスの面が成長したね。やはり、ペニスを植えるのは正解だったみたいだ。
じゃあ…研究室で、また楽しもうか」
そして車は一路、郊外の大学へと走って行く…。
- 続 -