デートと一口に言ってもその形は様々だ。食事に行ったり映画を観たり、中には自宅デートというのもあると思う。形は違っても、どれも男女の関係をより親密にさせるという目的を達成できる、れっきとしたデートだ。
では、果たして今の状況はデートと言えるのだろうか?
「いらっしゃいませ」
正面にあるガラス扉が開き、中へと入ってきた客を店の制服姿でカウンターに立ったまま出迎える。今回の来客は俺と同い年くらいの四人の少女だった。四人中三人が楽器ケースを背負い、そのうちの一人が先頭に歩み出てきた。ふんわりとした髪をおさげにした子だ。
「あの、予約していた
恥ずかしそうに言いながらもじもじとしている上原という少女。可愛い子だ。人懐っこそうな雰囲気と、ゆったりとした服の胸元を押し上げる豊かな膨らみ。燐子並みの結構なボリュームに視線が行ってしまうけど、すぐに軌道修正してカウンターに置かれたディスプレイを見た。
今日、この時間に予約を入れている人の中に『上原ひまり』という名前があることを確認すると、俺は再び上原さんの顔を見た。
「はい、承っております」
できるだけ愛想が良いと思える声を意識して出すと、上原さんの顔に赤みが広がった。うっとりという表現が似合う。俺と夜を共にする女がよく浮かべる雌の顔だった。
食べてあげたい。騎乗させて腰を振らせれば、胸が上下に大きく揺れるいい光景が拝めるだろう。その乳房を手で鷲掴みにするのもいい。そのまま上下に扱かれて、金玉の精子を放出してスッキリとしたい。しかし、今はそのようなことができる状況ではない。
今はアルバイト中なのだ。ここ、ライブハウス『CiRCLE』で、受付スタッフを任されている。
「場所はBスタジオになります」
「はい……」
「お時間になりましたらご連絡いたします」
「はい……」
「設備に不備等ございましたら、部屋に備え付けられている電話から受付へとご連絡ください」
「はい……」
終始心ここにあらずといった様子で相槌を打つ上原さん。ちゃんと聞いているのだろうか。上原さんの肩越しに見える三人の少女たちは呆れたといった顔で上原さんを見ていた。
「ひまり、完全に骨抜きにされちゃったな」
「……意識しすぎじゃない?」
「そういう
「はぁ? べ、別に、普通だから……」
「うーん、そうかなー? モカちゃんの目には、今の蘭は前にアダルトビデオを貸したときと同じ目をしていたような。あの、騎乗位高速ピストンで男の人の精液を延々と搾り取るやつ。他にも体に落書きとかしてさー、カメラ目線でダブルピースさせてたよね」
「モカ! こんなところで変なこと言わないで!」
「えー? 女子高生なんだからこれくらい普通でしょ」
「おーい、店内であんまり暴れるなよ?」
「
上原さんの向こう側でじゃれ合う少女が二人。黒い前髪の一部に赤メッシュを入れた気の強そうな子。名前は蘭というらしい。彼女をからかうゆったりとした空気感をしたショートヘアの少女は、モカと呼ばれていた。
そんな二人を楽しげに見守る長い髪の少女。巴という名前のようだ。大人びな顔立ちと雰囲気で、他の四人に比べると背も高い。姉御肌といった感じだ。
どれも美味しく頂けそうな美少女たちだった。特に目の前で幸せそうに破顔している上原さんと、顔を真っ赤にしてモカさんを追いかける蘭さんがチョロそうだ。前者は言わずもがな、後者の蘭さんもチラチラと俺へ視線を向けている。ためしに頑張って微笑みかけてみると、蘭さんの顔がさらに赤く染まった。
「あの人に絶対誤解された……。最悪……」
蘭さんはモカさんをようやく捕まえると、モカさんの口を手のひらで塞いでいた。もはや遅い。蘭さんが男に強い興味を持っているのがわかった。少し接触して誘惑すれば、すぐにベッドインできるだろう。
食べたい子リストに新しい候補を加えると、ひとまず今は仕事に集中することにした。なぜか俺の手を取って握っていた上原さんの暖かな手を優しく振りほどき、普段働かない表情筋を働かせ、先程よりも明るい笑顔を振り撒いた。
「それではごゆっくりどうぞ」
その瞬間、四人の身動きが止まり、強い視線が集中した。上原さんはその場でゆっくりと後方へ倒れ始め、他の三名と比べて早めに我に帰った巴さんが上原さんの肩を掴んで支えていた。冷静に見える巴さんも顔を赤くしていて、俺の顔を見た後でごくりと生唾を呑んでから上原さんを牽引していった。
「おマンコうずうずしてきた」
蘭の手から逃れてモカさんが放った下品極まりない言葉。にやにやと笑みを浮かべてもいる。そんなことを言えば蘭さんに再び口を塞がれそうなものだと思ったが、蘭さんは叱責の声を上げず、むしろ首を縦に振っていた。
「犯したい……」
モカさんよりも直球で犯罪的な言葉を口にし、欲望を湛えた瞳で俺を見続けていた。
「つぐは、今日来られなくて勿体なかったね」
「店が忙しいらしいから仕方ないよな」
「それにしても、あの人恰好良かったなぁ」
「いや、可愛い系じゃないか?」
「……あとでこっそり写真撮れないかな?」
「蘭のスケベー」
「別に、オカズに使うなんて一言も……」
「あたしも、そこまでは言ってないけどー?」
「あっ……」
四人の少女が俺の前から離れ、部屋の奥へと向かっていった。
それを確認して、俺は小さく息を吐く。
前世で社会人としていろいろな経験を積んできた俺だが、そんなことは関係なく俺の今の体は少し接客が苦手だった。気を抜くとすぐに表情は普段の無表情に戻ってしまう。それはそれでクール系といった評価を客から得られるのかもしれないが、人によるだろう。俺のせいで客足が遠のくなんてことにはなってほしくない。
誰もいないときを見計らってこっそりと顔を両手で覆い、顔面のマッサージをする。表情筋は決して衰えていないというのに、いざ人前に出ると無愛想になって、口数も減ってしまうのが不思議だった。
「やっほー、勇希君。ごめんね、遅くなって」
顔のマッサージ中、背後から声を掛けられて少しビクリと肩を震わせる。軽く驚いてしまったことを相手に悟られないよう、俺は声の聞こえてきた後ろへとゆっくり向き直った。
「お疲れ様です。まりなさん」
そこにいたのは、黒い髪を肩まで伸ばした優しい雰囲気の年上の女性、
まりなさんと俺は昔からの付き合いだ。今は亡き父さんの年の離れた友人で、俺が小さい頃から知っている間柄だ。そして、燐子と同じくらい俺の体のことを知っている関係でもある。この人には性欲処理で何度もお世話になった。
「接客は順調?」
「はい」
「良かった。助かるよー。新人のスタッフが風邪で来られなくなっちゃってね。勇希君が声かけてくれなかったら、今ごろ一人でてんてこ舞いだったかも」
「本当はデートしたかったんですけどね」
朝電話をかけたときもデートをしたいとはっきり言ったはずだが、待ち合わせをして連れてこられた先がここ、ライブハウス『CiRCLE』だった。誰か目をかけている出演者でもいるのかと思い、のこのこやって来た俺が状況に違和感を覚えたのは、このライブハウスの制服を手渡されたときだった。そう言えば、まりなさんがスタッフを務めるライブハウスが『CiRCLE』とかいう名前だったなということを思い出して。
『これに着替えてね?』
更衣室でそう言われ、素直に着替えてしまった。さすがに気づくのが遅すぎたと思いながら今さら問い詰めるのも恥ずかしく、まりなさんの指示に従ってカウンターに立って客の出迎えを行っていたわけだ。
今日は特にイベントはなく、楽器を嗜む人たちに練習スタジオを貸し出すだけだった。
俺が客の案内をしている間、まりなさんは慌てて外へと出掛けていた。足りない備品の調達を急遽行っていたようで、その間の店番が必要だったようだ。そんなときに俺が電話をかけたものだから、ちょうどいいと思って俺をライブハウスに連れてきたらしい。
やはり、この状況はデートではない。ただのお手伝いだ。もう少し早めに気がつくべきだったと、察しの悪い我が身が恨めしい。
「それでまりなさん、デートは?」
「あぁ、うん。そんなに怒らないで?」
俺が詰め寄ると、まりなさんは少しひきつった笑みを見せながら後ずさった。そんなまりなさんを追いかけるようにさらに接近し、壁際に追い込む。そして、伸ばした左手をまりなさんのすぐ背後にある壁に突き、退路を塞ぐ。
「美少年の壁ドン……」
まりなさんが何やら嬉しそうにしていたので、俺はまりなさんの下腹部に手を伸ばした。少し懲らしめてやろうと思っての行動だったのだが、その手は思わぬことを確認して止まることになった。
まりなさんのズボンの股間部に手を這わせると、中で振動する何かを感じた。それの中心はどうやらまりなさんの体の外ではなく、中のようだった。
もしかしなくても、そういうことなのだろう。
「まりなさん」
「うん。ローター二つ入れてるの」
俺の反応を見て気がついたようで、まりなさんは俺の聞きたいことに答えてくれた。
まりなさんの言う通り、二つのローターがまりなさんの膣内に入れられて、激しく振動している。今この瞬間も、まりなさんは快楽を得ているのだろう。思えば確かに、今日会ったときから普段よりも少しだけ顔が赤かったような気がした。
「どうして?」
「決まってるでしょ?」
まりなさんは可笑しそうに笑って、俺の耳元に顔を寄せた。
「お仕事が終わった後、勇希君のお疲れおチンポをおマンコで寝かしつけてあげるためだよ」
囁かれる声に、俺は身動きを止めた。普段繋がっている少女たちとは違う、大人の女が発することができる色気。それを間近で感じて、欲を刺激させられて俺は、まりなさんの口に向かって舌を伸ばした。
「んっ……んふっ、あっ、ちゅるっ……」
そんな俺を舌で受け止めて、まりなさんは俺の目を見ながら舌を擦りつける。自分のために体の準備を整えてくれて、欲望を受け止めてくれる便利な雌。早く味わってやりたい。その気持ちを抑えて、今はキスだけで満足しようと舌を動かし続けた。