ここ最近、俺の生活は大きく変化した。
俺とまりなの都合が合うときには必ず俺の家に集合し、ライブの準備をしている。燐子たちと会う機会も減り、必然的にまりなと顔を合わす機会が増えた。都合が悪いときでもまりなとは連絡を頻繁に取り合い、二人の音楽を少しずつ作り上げていく。
燐子たちとセックスできない分、まりなと繋がる回数も増えた。自宅の防音室で、居間で、寝室で。他の子に注げない精液を全てまりな一人に提供した結果、まりなは精液塗れのまま幸せそうに気絶することが多くなった。
「はぁっ、はぁっ……」
気絶したまりなの腰を掴み、膣奥まで肉棒を押し込む。精液でぐちょぐちょの中を掻き回し、膣口まで逆流していた精液を子宮まで戻す。結構な速度で子宮口をガツガツと突いてみたが、まりなはしばらく起きそうになかった。
やはり、足りない。俺には複数の女が必要だ。俺はまりなに抱き着いて唇を奪い、種付けプレスを繰り出す。荒く息を吐きながらまりなの舌と唾液を貪欲に堪能し、ブルリと体を震わせて膣内射精。
出したい、もっと出したい。
欲望は満たされるどころか膨らんでいる。まりな一人では受け止めきれないほどに。
燐子たちはどうなのだろうか。俺がいない状況で欲求不満になっていないのだろうか。俺ほどではないだろうが、この世界の女は性欲旺盛だ。我慢できなくなって、俺以外の男に手を出す。そんなことはないだろうが、想像するだけで辛かった。嫉妬心が煽られて、眠ったまりなを犯す速度が上がる。
早く、全員取り戻さなければ。
煮えたぎる欲望はそのままライブへの熱意に直結した。
限られた時間で、最高のパフォーマンスを提供する。ライブハウスに来た観客全員を俺とまりなの音楽の虜にする。その思いを胸に、一回一回の練習に力を注ぐ。まりなのギターに支えられながら、自分の熱意を歌に変える。
「すごいね、勇希君……」
マイクの前で歌い終えた俺を、ギターを手にしたまりなが息を呑んで見ていた。
確かに今の一曲は良かった。だが、もっと改善できるところも多い。これではまだ駄目だ。観客はこれでも十分すぎるほど湧くだろうが、全員を虜にできるかと言われると好みが分かれるだろう。
全員逃がさない。ライブを観にきた者全員を俺のファンにする。
俺は強く意気込み、マイクを手に取った。
一曲歌って、録音した音源を聞き、二人で改善点を出し合う。認識を擦り合わせた後で、もう一曲。
愚直にそれを繰り返しているうちに、一日一日が過ぎていった。ライブの日程が近づくに連れて気持ちが逸っていく。焦りは禁物。焦ったところで意味はない、それよりも次に何をどうすべきかについて冷静に考えるべきだ。
音程、リズム、声量、感情表現、などなど。言葉にすれば簡単でも、実際にやってみると簡単にはいかない。音楽は生き物だ。歌うたびに良くも悪くも想定外のことが起こることがある。その想定外をどれだけ想定の範囲に収め、いい結果に導くか。
考え、実践する。
音楽に近道なんてない。
ただひたすら、努力するのみ。
月日は巡る。一ヶ月という期間は凄まじく早く感じた。
今日、ライブが行われる。幾つかのバンドが出場予定だ。
その中に、俺の目を引くバンドの名前があった。
Roseliaの構成メンバーは、以下の五人。
ボーカル担当、
ギター担当、
ベース担当、
ドラム担当、
そして、キーボード担当、
湊さんを除けば全員俺の女で構成されたガールズバンド。その実力は高く、少し前に行われた別のライブで華々しいデビューを飾った。元々知名度のあった湊さんと紗夜に加え、燐子たちという新しい面子の参入によって表現力を向上。今日のライブでも多くの観客が彼女たちの演奏に惚れこむことだろう。
Roseliaも今頃準備を進めているはずだ。
俺は一人、宛がわれた控室にいた。
本当は今日もアルバイトとしてライブの手伝いをしようと思ったが、まりなに断られた。全力を出すためにも力を温存しておくように、とのことだ。それはそうだと納得した俺はこうして控室で最終確認を行っている。
喉の調子、問題ない。むしろ絶好調だ。
楽譜の再確認。頭に入っている。わざわざ見るまでもない。
衣装。なぜかCiRCLEの制服であるため、見直すところもない。まりなが衣装に選んだのだが、やはりまりなは自分を飾り立てるのが苦手なのだと改めて思った。今度、また服でも買ってあげよう。目を離すとすぐ似たような服ばかり購入しているみたいだし。
MCの心配をする必要はない。俺は何も話さないからだ。
俺のコミュニケーション能力は最悪だ。だが、そんなこと今は関係ない。
俺は音楽だけで勝負する。
時計の針が静かな控室に響く。俺は目を閉じて、ただのその時を待った。
今頃、Roseliaの一つ前のバンドが演奏を始めた頃だろう。Roseliaの演奏も楽しむ余裕もないだろうが、仕方がない。また別のライブイベントでじっくりと見させてもらおう。今は自分のライブに集中する。
俺は控室を出て、地下にある会場へと向かった。
観客たちが集う場所ではなく、出演者用の入口。
薄暗い通路を抜け、ステージ袖へとたどり着く。
そこにはRoseliaの姿があった。紫や黒。暗色の目立つ配色の優美なドレス。そして、黒い薔薇のついた髪飾りを身に着けた美しい少女たち。彼女たちは演奏が聞こえてくるステージの方を向いていた。
表情は見えない。が、五人のうち数人からは緊張が感じ取れた。
彼女たちに声を掛けることはしない。今、彼女たちは次の出番に備えている。邪魔だけはしてはいけない。
俺は壁に設置された待合用の椅子に腰かけ、目を閉じた。
やれることはやった。あとは意識を高めつつ、出番を待つだけ。
演奏が終わったようだ。出演者が入れ替わり、Roseliaが舞台に上がる。
「え、やば……。このイケメン誰……?」
「出演者? でも、Roseliaの次ってCiRCLEスタッフの演奏だよね……?」
「何でもいいから、とりあえず連絡先聞いておかない……?」
何かひそひそと話し声が聞こえるが、気にしない。
やがて、Roseliaの演奏が始まった。それまで黄色い声を上げていた少女たちが黙る。
他者を圧倒する力強く美しい歌声。それを支えるに相応しい、正確無比で思わず胸が熱くなるような音。一つ一つの音が重なり合って、聞く者の心を魅了する。いつまでも聞いていたい。そう思えるほどの演奏だった。
「勇希君。ごめんね、遅くなっちゃった」
目を開けると、まりなが目の前に立っていた。
見慣れた私服姿だ。青いギターを携えているが、それ以外はいつもと何も変わらない。
「今来たところです」
「ふふっ、嘘ばっかり」
まりなが小さく笑う。いつの間にか前の出演バンドの少女たちはいなくなっていた。Roseliaの演奏が聞こえる中、暗いステージ袖に二人きり。まさか、まりなとステージに立つことになるとは思っていなかった。
燐子たちの気を引くという不純な動機で出演を決めたわけだけど、まりなと一緒に練習をする日々は楽しかった。一ヶ月という短い期間。体感では一週間にも満たないような気さえする。
「緊張してる?」
「少しだけ」
実力を遥かに超えた期待を抱く必要はない。実力よりも少し上、それくらいを目指せばいい。それだけで十分と思えるレベルまで高めた。もう少し期間があればという想いはあったけど、ない物ねだりはできない。
これが俺の、俺たちの今の実力だ。それを今日、ここで伝える。
「終わったみたい、だね」
悲鳴にも似た歓声が聞こえた後、Roseliaがステージ袖へとやって来た。ステージとそこに集う観客と音楽を通じて一緒に作った熱気を纏い、顔に汗を浮かべた少女たち。やり切った様子の彼女たちに後悔の色はない。
俺はそんな彼女たちの横を素通りし、ステージへと向かった。
照明の光が眩しいステージ。正面にあるマイクスタンドへと歩く。
まりなもギターを手に準備を進める。調子は良いようだ。Roseliaに魅了された観客が驚くような超絶技巧を披露する。俺は俺でマイクの調子を確かめた。何も問題ない。これならば実力を発揮することができる。
俺はまりなに視線を送った。まりなはにっこりと微笑み、OKのサインを出してきた。
全ての準備は整った。立派なステージ、信頼できる相棒、体調も万全。
そして、ステージの前に集まって、視線を俺に集中させる観客。
始めよう。観客の心を魅了、いや、心を奪うための一声を放った。
その日、その歌声が、Roseliaを含めた想定以上のバンド少女たちの心を奪うことになった。