「さすがにやりすぎ……」
蘭の呟きが、湯気で温まった浴室に響いた。俺に対する非難がほんの少し含んだそれは、しっかりと俺の耳にも届いている。その上で、俺は正面から向けられる蘭のジト目から逃れようと横に目線を逸らすが、蘭の顔が回り込んできた。
互いの顔面が視界を埋め尽くすほどの至近距離だ。
「恥ずかしかったんだから……」
「ごめんなさい」
続けて不満を口にしてきたから、俺は正直に謝ることにした。
すると、蘭は俺に抱き着いて、じっと俺の顔を見つめてきた。
お湯を張った湯船の中、向かい合う形で抱擁を交わす。蘭の体、特に胸が俺の胸板にむにゅっと密着してとても柔らかい。これだけでも十分なリラックス効果があるのだが、俺の肉棒は現在進行形で蘭の膣穴にて揉みくちゃにされている。
「まだ硬いし……」
蘭が口元を緩めて呆れたように言ったかと思えば、舌を伸ばしてきた。れろれろと左右にゆっくり揺らされる赤い舌に目を引かれ、俺も釣られて舌を口から垂らすと、蘭がそこにじゃれついてきた。
「くちゅ、くちゅ、ぬちゅ、ぬちゃぁ、ぐっちゅ、ぬちゅぅっ……」
じっくりと相手を感じ合うようなベロチュー。目を瞑ることなく相手を視界に収め続け、愛情を高めていく。数分前に膣内射精をし、蘭の子宮に新しい精液を注いだばかりの肉棒がますます強張っていき、膣肉に締めつけられる。
幸せだ。愛し合っているという実感が強く湧いてくる。
「……私もいることを忘れないでもらいたいわね」
夢中になって蘭と舌を絡ませていると、浴槽の横に立った友希那が無表情のまま俺たちを見下ろしていた。髪と体を洗い終えたらしい。タオルに妨げられずに晒された友希那の白い裸身が、浴室の光を浴びて輝いているように見えた。
「勇希、後ろのスペースを空けてちょうだい」
「うん」
浴槽にもたれかかっていた俺が蘭と繋がったまま中心に移動すると、俺の背後に友希那が肩まで湯に浸かってきた。そして、すぐに俺の背中に体を寄せ、胸を押しつけてくる。前に蘭、後ろに友希那。水も滴る美少女二人に挟まれて、幸福度がさらに跳ね上がる。二人でもこれだけ幸せになれるのだから、もっと多くの恋人と一緒に入浴をしたら、いったい俺はどうなってしまうのだろうか。
さすがに十人を超える人間を収容できるほど俺の家の浴室は広くないから無理だけど、男の夢ではある。予定なんて全くないけど、いつか皆で住むための豪邸を買うときになったら、大浴場を真っ先に検討すべきだと思った。
ほっと落ち着く温かいお湯の中で、蘭と友希那に抱かれながら快楽を貪る。蘭の腰振りでぱちゃ、ぱちゃと水面が何度も揺れて、しばらくして再び射精に導かれる。にやにやと笑う蘭の表情をドアップで眺めながら、友希那の吐息を耳穴に吹きかけられ、大量の精液を蘭の子宮に詰め込む。
「まだ余裕はあるわよね?」
射精後、蘭が俺の股から立ち上がってすぐに、友希那が俺との対面座位セックスを求めてきた。当然、肉棒はまだ元気いっぱいだ。性欲に突き動かされた俺は友希那を抱き留め、蘭と同じように正面から密着し、交合した。
「お腹の中、まだ熱い……。精液出し過ぎ……」
さっきまでの友希那のように、できるだけ俺の背中と隙間なく肌を重ねた蘭が、乱れた呼吸音と共に悦びを伝えてきた。今、蘭がどんな顔をしているのか確認しようと思い、横を向いてそのまま後ろを振り向こうとしたとき、それよりも先に蘭に唇を塞がれる。
「むちゅぅっ、ぐっちゅっ、ぁ、ふっ、んぅっ、ぢゅ、ぷっ、ぐっちゅぅ……」
さっきの続きが始まった。
「美竹さんばかりずるいわ……」
そこへ、腰を振りながらも嫉妬した様子の友希那が顔を近づけてきた。
「ぬちゅっ、ぐちゅぅっ、ぁ、は、ぬちゃぁ、ぬっちゅぅっ……」
「くちゅ、ぬりゅっ、ぐちゃぁっ、ぬちゅ、はぁ、ぁっ、くちゅぅっ……」
伸ばした俺の舌に、左右から蘭と友希那の舌が襲う。互いの唾液を俺の舌に塗って、自分の所有権を主張し合っているようだ。しばらくそれを続けているうちに、段々と境界が曖昧になって、俺たち三人の舌が一か所に集って戯れるようになった。
「んはぁ……」
「あぁ……」
数分後、蘭と友希那が舌を離すと、俺の舌との間に二本の唾液の糸が伸びた。普段よりも分厚いのは、三人分の唾液だからだろう。途切れて俺の舌にべちゃりと落ちた唾液の塊を喉に滑らせて飲み下すと、それを見た二人がムラムラしたようだ。
「もう一回しましょう……」
「あたしたちの唾液、満足するまで飲んでもらうから」
三人でするベロチューが、その後数回に亘って繰り返されることになった。
その頃には、全員の体が芯まで温まっていた。
あと少ししたら湯船から出よう。
「で、聞きたいことがあるんだけど」
その前に、忘れないうちにと二人に聞くことにした。
「ツインボーカルの件なんだけど、あれってなに?」
元々はそれが目的だったようで、二人は勝負をするために俺とのコスプレセックスを所望してきた。ただ、最終的には勝敗はあってないものになってしまったけど。蘭にやりすぎと言われてしまった通り、俺が猫になった二人を骨抜きし、ベッドの上で快楽と精液に沈めてしまったから。
「言われてみれば、ちゃんと説明していなかったわね」
俺の首に抱き着き、膣で肉棒を咥えたまま友希那が話し始めた。
「今となってはきっかけがなんだったかは忘れてしまったけれど、最初は美竹さんとの言い争いがきっかけね。勿論、口頭ではなくチャット上での話よ」
何となくそうかなと思ってはいたけど、やっぱりその件が関わってくるようだった。ただ、言い争いというよりはじゃれ合いという感じだと思っていたから放置していたけど、あまりにも長期的な争いに発展したようだ。
「経緯はともかく、話をしているうちにお互いに自分たちのバンドの優位性を主張するようになっていたわ」
音楽性の違い、というやつなのだろうか。
「そして気がつくと、今度は勇希が入るに相応しいバンドはどちらなのか、という話に発展したのよ。それと、勇希にはボーカルを任せるべきだから、元々ボーカルの私たちと一緒にツインボーカルをしてもらうのがバンドにとって一番良いということになって」
「それでツインボーカルの交渉権っていうことに?」
「ええ」
「どうしてそこからコスプレ勝負に?」
いくら白熱して冷静さを欠いていたとはいえ、この二人から猫のコスプレで勝負という謎の案が出てくるとは到底思えない。それに、このコスプレ衣装の調達先も気になっていた。
この件に関しては二人以外の誰かが裏で手を引いていたのではないだろうか。自然とその考えに至ってすぐに、その黒幕の正体が蘭によって明かされた。
「白金さんが、猫のコスプレで決着をつけてきてください、って」
うん。案の定だった。
燐子は交流サーバーの管理者として、二人の動向を見守っていたのだろう。放っておいたら、バンド対バンドによる争いになって、どちらに俺を取り入れるのか音楽で勝負、という展開に繋がってもおかしくはなかったはず。
そこへ燐子が機転を利かせたのだろう。より平和的に、かつ、最終的にどちらにも軍配が上がらずに勝負が有耶無耶になるように。白羽の矢が立ったのが俺で、燐子自身の趣味が大いに関わってきて、コスプレ衣装で俺とセックス勝負をするということになったようだ。
燐子のおかげで、可愛い二人を見ることができたわけだ。
あとで燐子にはお礼を言っておこう。
「結局、勝負はつかなかったけど……」
蘭が俺の背中に張りついて、首元に吸いついてくる。既に何か所も刻まれた接吻痕を増やすように。それが終わると今度は耳元に口を移し、舌先で耳たぶを叩くように舐め、囁きかけてくる。
「勇希としては、どうなの? ツインボーカルの話」
「俺は……」
ツインボーカル。非常に魅力的な誘いではある。恋人たちと一緒にバンドを組めたら、とても楽しいだろう。かつての父さんたちみたいに防音室に集まって、私生活でも、音楽でも、関りは今よりも深くなっていくのだろう。
でもそれは、元々のバンドの良さをなくしてまで手に入れるものではない。RoseliaとAfterglow、どちらのバンドにもそれぞれの個性がある。その個性を崩してしまったら、俺はきっと気持ち良く歌えない。
「俺は、ツインボーカルはやらないよ」
それに、そろそろ俺自身の方向性を模索する段階に来ている。以前、まりなに進路相談をしたときに思いついたことも、少しずつではあるけど進めている。それも含めてこれから本格的に活動をしていく腹積もりだった。
その他にも、こころのお母さんから要求された件もある。まだどうなるかはわからないけど、実際にやってみたらいい経験になるかもしれない。
いろいろとやるべきことが増えてきた。それに対する不安もあるけど、期待のほうが強いと感じる。これから先、今と立場が変わることはあるかもしれないが、こうして恋人たちとイチャイチャする生活だけは変わらないようにしていきたい。
俺は腰を突き上げて、友希那の子宮口に亀頭を押しつけながら精液を送り込んだ。
「っ……ぅ、ぁあっ……!?」
新鮮な精液を胎に仕込まれて友希那が背筋を伸ばし、悦びの声を上げる。それを羨ましがった蘭が横からがっつくように俺の唇を奪ってきた。幾度も角度を変えて、舌と唾液を擦りつけてくる。
喘ぎ声と接吻音は、その後も浴室で長く響き続けた。
二人の美少女を交互に抱き、快楽漬けにされながら、俺は今とは少し違う、この先の生活に想いを馳せた。