※この作品はR-18です。

Fem. 01 (R-18)   作:Fry-Hopper

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対象年齢 【R-18】(成人以上、精神の強い人推奨)



10 戦艦棲姫(過去)

 

「ああ駆逐ちゃん」

 

戦艦棲姫はびしょびしょのまま、少し匂うからだでキッチンへと戻ってきた。駆逐棲姫がヨロヨロと歩きながら室内へと入ってくる様子を鬼の形相で睨みつける。

 

「何ですか?死ぬんですか?」少女は片手だけで彼女の首を掴み僅かに持ち上げる。「バラスト開けときますか?」少女は大きく目を開き、薄紫色の瞳が濃縮していく。

 

「違う・・のよ・・・」彼女は一切の抵抗を示さずに全身から力を抜いた。「駆逐ち・ゃん・」彼女から匂う、少しアンモニア臭い水の匂いが決定打か。彼女の首にかかる力が強くなっていく。

 

「今度は何のプレイですか?」パキパキと首から音が出ると、彼女は大きく咳き込んだ。「せめてあそこでだけでやって下さい」少女は大きく息を吸い込み、気を落ち着かせながら、ゆっくりと吐き出した。

 

少女は鋭い目付きで、両腕両足を糸の切れた人形のように垂らし、ぐったりとしている彼女を両手で支えて、優しく床に寝かせる。

 

「まったく」少女は呆れるように腰に両手を当てながら続けた。「姉さまがそんなだから、やわらか飛行場如きにガタガタ言われるんですよ」床には少し、水溜まりが広がっている。少女は彼女の上半身を穏やかに抱き起こした。

 

「あのね」彼女はゴホゴホと咳ばらいをする。「お水掛けたら凍えちゃったみたいなの」申し訳なさそうに切り出した。「はぁーっ」少女の口から、大きなため息が吐き出された。紫色のツインテールが小刻みに震える。

 

少女は心底がっかりした。いつもはここまで酷くないのにと。少女の様子に、横になりながら髪を床に広げさせつつ、彼女も居たたまれない気持ちで目に涙を浮かべている。いつになく彼女の角が小さく見えた。

 

「ぁあーっ」

 

少女は聞こえるように、大きく2度目のため息を吐いた。そのまま、少女は何も言わず、冷蔵庫を開ける。エタノールを出して温水の準備を始めた。水を張り鉄なべをコンロに置く。

 

エタノール用に調整したお手製コンロに、エタノールを浸すと、モワモワと円状に青めの炎が出た。

 

「ねえ。駆逐ちゃん」彼女は体を起こしてアヒル座りにで水溜まりの上にちょこんと座る。お漏らししたかのように広がる鏡面に、僅かに彼女の陰毛が触れ小さく重なる波を作った。「いいかしら?」

 

「何ですかキモ様」

 

また、おマンコを見せびらかせて、どうせろくな話じゃないだろうと、少女は呆れたように鋭く即答する。しかし、彼女の口は少し躊躇うかのようにモゴモゴと居心地悪く動いている。

 

「お話があります」彼女の瞳は在りし日の眼差しをしている。少女は静かに椅子に座った。彼女もまた、イスに座ろうとしたが、汚すなといった恐ろしい眼光が刺さったので思い止まる。「何ですか姉さま」

 

彼女は何かを予感していた。もし彼女がこの言葉を知っていたならば、これはパンドーラーの壺になると表現しただろう。果たして壺の中身“エルピス”は希望なのか予兆なのか。

 

不幸にも彼女は、この件を握りつぶせるほど強くもなければ弱くもなかったのだ。

 

「彼ね」彼女は言い淀んだ。寒気が走るのは彼女が裸でいるせいだけではない。「あなたを知っていた」彼女は少し瞳を泳がせながら、小さく言葉を続けた。「みたい」コチコチと時計の秒針の動く音がリビングから聞こえる。

 

少女は透き通る瞳で、こちらをじっと見つめている。沈黙。5秒。10秒だろうか。永遠を感じさせる時間。また、永遠に感じていたいと願った時間。

 

 

 

 

 

 

彼女たちが現れて以来“2度”

世界は終わりを予感した。

 

 

 

1度目は、大本営が深海棲艦の本土上陸を緩し、“戦艦水鬼”に少女を解放されたとき。2度目は、その少女が錯乱し海上に姿を表した時だ。

 

 

戦艦水鬼が本土の内陸まで侵攻した際には、艦娘はまだ生産されていなかった。現れた戦艦水鬼と複数の深海棲艦との共同攻撃により、硫黄島近辺に錨泊中だった米帝の第三艦隊が瞬く間に“沈没”させられた。

 

その後、大本営率いる陸海合同部隊を突破して東京湾内に侵入。秘匿されていた実験施設から少女が奪還される。関東内陸部にまで上陸され、この時初めて、民間人は戦艦水鬼に気付いた。その恐ろしき能力に。

 

まさしく鬼神の如き動きに、日本中は恐怖した。最大級の天災が向かう先は全て灰塵に帰すと誰もが絶望した。しかし、少女が救出されるやいなや、それは全速で離脱を始めた。初めから人間などいなかったように。

 

 

凶事は再び訪れる。

 

南方の棲み処で、少女が義足を手にして月日が経過したとき、突如少女は暴れ始めた。黄色い瞳に怨恨をのせて。押し込めていた不遇さが、つかの間の休息により噴き出させられたのだろう。

 

少女は激情に身を任せ、単身海へ躍り出た。再編中の警戒艦隊を突破し都市に迫る。少女の後方には“あの”戦艦水鬼が追従している。地獄のような“あの日”を経験したCOMSOPACは、口にしていた葉巻を噛み切るほど戦慄した。

 

ついに奴らの報復が始まった。今日でパラオは地図から消えると。そしてそれは次々拡大すると。馬鹿馬鹿しくも、地球最後の日は本当にあっけないものだと、彼はイメージした。

 

この時、戦艦水鬼は少女をこれ以上消耗させないために連れ戻そうと海上を追いかけていた。だが少女の怨念が鬼を上回る力を発現させる。ある日突然少女は現れ、とある海岸線を歩いていた。

 

そして何も知らぬまま攫われたのだ。体を弄ばれ実験用の素体として足を切断される。理由の分からぬ不遇が少女の艤装をより強く働かせた。戦艦水鬼は少女に角を折られ四肢をもぎ取られる。

 

彼女の力は、その少女に遠く及ばなかった。戦艦水鬼は泣いた。少女と同じ痛みを分かち合えないことに。その黄色い瞳の見る先に。あるいはもう少し早く、少女を救えていたならばと、彼女の体から力が抜けていく。

 

「ごめ・ん・・なさい」彼女は後悔した。「わたし・・は・」せめて、五体満足のうちに沈んでいればよかったと。「なお・ってしま・・うの」これ以上少女を追い詰めないために。

 

涙を流し沈み始める彼女を、ついに少女は殺しきれなかった。一瞬の思考停止。それは、少女に感情の過負荷からの解脱感を与えた。少女の体が痙攣を起こし彼女にもたれ掛かるように崩れ始めた。

 

 

【【トカゲの尻尾を連想させるように回復する彼女たちの体は、体の再生時には彼女ら自身の無意識下でのイメージ力が重要になる。つまり、少女は足を忘れてしまうほど長い間強制的にその状態に晒されていたという事だ。

 

もし、自分とそっくりな者を将来見つけることがあったとしても、それは所詮よく似た他人である。脚の形は思い出せても“どう再生させる”かを思い出すきっかけにはなり得ない。ゆえに、彼女の脚はもう治せないのだ。】】

 

 

「キレイ・な・・ひと・み」

 

戦艦水鬼は少女のアメシストのような澄んだ紫の瞳を初めて見た。少女は腕のない彼女に頬を撫でられた感じを覚え、抱きそうように涙を流しながら目を閉じる。

 

二人の重みが、ついに海中へと二人を引きずり込んだ。ゆっくりと泡に包まれ沈んでいく。彼女らは鯨のように長く深く潜れるだけであって、水死しないわけではない。

 

戦艦水鬼の四肢からあふれ出る体液が捕食者を呼び、機を伺うように彼女達の周りを周回している。

 

「ねぇ・・」首を動かして、少女を起こそうとするが、反応はない。「くちく、ちゃ・・ん」時間が経つにつれて世界が暗く冷たく染まっていく。もはや回復は間に合わない。世界が暗転する。

 

戦艦水鬼は手足のないもどかしさをかみしめながら、襲い来る捕食者達に啄まれていく。体当たりされるたびにクルクルと体が回る。クルクルと回り、泡に包まれクルクルと沈んでいく。

 

「いっ・しょに・・帰ろう」

 

その時彼女は直結する艤装で、自らの背中に砲身を密着させて、自分の胴体ごと撃ち抜いた。下半身が千切れ飛び、炸裂する砲弾が捕食者たちを散らす。

 

彼女から生まれた衝撃波が、少女にもまた直撃した。錐揉み状に速度を上げ沈んでいく。捨て鉢になったような行動は彼女の賭けだった。瞬間。暗く冷たい海に光が爆発する。

 

 

【【通常であれば彼女らの再生には、触手のようにワイヤーフレームのような意識の層を必要個所に展開する。そして、必要なものを体から伸ばし肉付けしていくのだ。この時彼女は意識的に千切れ飛んだ下半身をエサにした。

 

彼女は、意識の展開と同時に周囲に存在する少女以外の全ての命を吸い上げた。溶かし、同化させる行為が巨大な光源を発生させる。それでも足り得ない分は自らを制限することによって迅速な再生を成し遂げた。】】

 

 

「さぁ、帰りましょう」

 

水上で彼女は長い黒髪を震わせて水しぶきを飛ばすと、海水でずぶ濡れの少女を抱き上げた。

 

この日、新型の深海棲艦“戦艦棲姫”が少女抱え、海上をゆうゆうと進み帰路に就く姿が観測された。世界は生体実験を含む研究を行った不都合な駆逐棲姫の存在を記憶していない。

 

全ては戦艦水鬼が扇動した事件として操作されている。大本営はこの脅威を利用して各国から基金を募り世界に先んじて艦娘の製造と運用計画、“か号計画”を軌道に乗せたのだった。

 

 

 

 

「関係者ですか?」

 

少女の鋭く刺さる視線が、僅かに黄色味を帯びていく。今の彼女では命を差し出した所で少女が暴れ出せばもう止められないだろう。内圧に弱いこの別荘も一連の騒動で失ってしまう。“あの子”も今は大西洋にいる。

 

「後から、知ったんだって」僅かに片足を下げながら、彼女の体が体がビクッと震えた。「何を、怯えて、いるんですか。姉さま」

 

少女は席を立つと、ゆっくりと近づき、彼女の顎に優しく触れる。冷たさを内包する紫のツインテールが嘲笑うかのように揺れる。無表情の少女の顔が、一層の恐怖心を煽る。少女の周りに深海が広がっていく。

 

「あの、あのね?」目を見るのが怖い。彼女は前を向いて、立ったまま硬直している。「バカな姉さま」少女は彼女へとふわっと抱き着いた。

 

「ちょっと」少女は息を浅く吐きながら感情を整える。「からかっただけですけど?」一瞬、確かに怒りは噴き出したが、昔ほどではなく感情が十分にコントロール出来るようになっていた。

 

「もう、気にしていないと言ったはずです」彼女の胸元に頭を入れた紫の少女の髪が、ふわふわと彼女の顎下で動いている。「なに、ぼーっとしてるんですか。ほんと使えないですね。」少女はパッと彼女から離れた。

 

「アレを死なせたくないなら」少女は時おり見せる優しい笑顔を彼女へと向けた。「早く海藻でも取りに行って来てださい」しかし、すぐに少女の顔はいつもの無表情へと戻り、彼女に冷たく言い放った。

 

「え?」彼女は理由なく零れ出る涙と共に、棒立ちしている。「え?」予想した結末から一転し、彼女はいつまでも少女が笑っている世界に取り残された。「駆逐ちゃん、笑ってる」彼女はニヨニヨと変な表情で固着した。

 

「はぁーつ」

 

少女は少し嬉しそうにため息をつくと、目を擦りながらしぶしぶと乾燥した海藻を取りに行った。少し楽しそうに少女のツインテールが上下に揺れる。

 




<<アンケート結果はお知らせの話の前書きで時々更新!!>>

つ´・ω・`) ヒロインだろと 思う子

  • 駆逐ちゃん
  • 戦艦棲姫
  • 飛行場姫
  • 提督さん
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