※この作品はR-18です。

Fem. 01 (R-18)   作:Fry-Hopper

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 ― 海底のセラピー犬 ―
19 Intermission キャスト・オフ


 

 

「何じゃ?」

 

乾燥室で飛行場姫の背中に乗り、肘でグリグリと圧迫している北方棲姫はソ級を見て石床に飛び降りた。

 

「出るぞ!」飛行場姫の引き締まった尻を音を立ててはたく。「いたっ」力を抜いていたため白いお尻が僅かに波打つ。

 

しかし入口に立つ彼女は、ポーチにぎゅうぎゅうに詰められた少女のスカートを取り出しそのポケットから写真を差し出してきた。それと、ご指名は戦艦棲姫らしい。

 

「なんじゃ」幼女は口を広げ思わず声を出した。白い髪が揺れ、紅茶のような済んだブラウンの瞳が躍る。「おい。飛行場姫!」数枚の写真の中にある一枚の絵を持ち、幼女が楽しそうに彼女を呼ぶ。

 

「なによぅ・・・」

 

少し腫れたお尻をさすりながら、飛行場姫はムクムクと転がり起き上がる。

 

「何じゃ、うすらバカが。はよう起き!」

「はいはい」

 

少し不貞腐れた様に石椅子から下りると、数枚の写真と絵を受け取る。そもそもここまでソ級が戻ってきている時点で緊急性は少ないと彼女は判断しており、北方棲姫との若干の温度差があるのは仕方がない。

 

「んふ」彼女は口を広げ白い歯をイーッとするかのように、息を吹き出した。「なによこれ」一瞬緊張した空気が緩む。

 

「燃えてしまう。早く出よ」

「はいはい」

 

絵を見入る彼女の腰付近をグイグイと押し、駆逐棲姫のエタノールげんきん!とかかれた扉を押し開ける。

 

「ああ」飛行場姫は大方の事情を察した。潜水新棲姫が男を犯している写真を見て一人納得する。「戦艦棲姫はわらわが呼ぶゆへ、そこで休んでたもれ」

 

白く雄々しい髪をフワフワと動かしながら、幼女がソ級に微笑む。

 

「報せてくれて、ありがとうよ」

 

ソ級は少し照れるように艤装をフックに掛け中心に吊るすと横になり長い黒髪を石椅子に広げながら青い目を瞑った。

 

「あやつは何処へ消えたんじゃ?」

 

リビングに姿が見えず、自室にも姿はない。リビングに飛行場姫を座らせておくと、一人ポテポテと白く小さな足で歩き回る。すると、通路の遠くから音が近づいてくる。

 

「ああ。下におったのか」

 

「あら、ホッポちゃんどうしたの?」両手にエタノールのポリタンクを抱えてヨジヨジと長い坂を上ってきている。「うん。実はの、駆逐の奴が」

 

ポリタンクが床に落ちる。幸い蓋が閉まっているので、ズリズリと滑り落ちていくだけだ。

 

「駆逐ちゃん?」

「ぐぇっ」

 

幼女は戦艦棲姫に両手で勢いよく掴まれ、石でゴツゴツとした石壁に正面から押さえつけられ首が締まる。

 

「どうしたの?」ゆさゆさと頭を振られ気分が悪くなる。「ねぇってば!」ゆさゆさゆする。首がガクガクする。「あいたっ!」幼女の力強いスネ蹴りが彼女を崩れ落とさせた。「落ち着けバカめ」

 

滑りゆくポリタンクを捕まえると、両手に持ちズリズリと引きずるように持って来る。彼女は脛を抱えゴロゴロと転がっている。

 

「お主の悪い癖じゃ。駆逐はなんともないぞ」ポリタンクを床にそっと置くと白いワンピースのポケットから、写真と絵を取り出す。「ほれ、これじゃ」急いで飛び起きると、むしり取るように受け取る。

 

「なんだ、潜新ちゃんか」彼女は気の抜けた様に写真を返すとポリタンクを持ち、リビングへと向かう。「なんだとは、なんじゃ」

 

呆れたように写真をポケットに仕舞い、両壁が石垣のように見える通路内をポテポテとついて行く。

 

「駆逐がお主を呼んでおる」

「早く言ってよ!」

 

長くしなやかな足を勢いよく動かしながら彼女が言う。

 

「待てというに、まったく」

 

こちらは体が小さいため、リーチを稼げずにより多く足を動かし追従する。

 

「なんだ、下に行ってたのか」

「あんた何でのんきにくつろいでんのよ」

 

赤い瞳が鬼の形相で睨みつける。

 

「走らせよってからにバカめ」北方棲姫が息を切らしながらリビングに追いつく。「はぁ?あたし指名されてないんだけど?」

 

飛行場姫の顏が付いた木のコップを持ち、飛行場姫の背中を押す合間をぬって、北方棲姫が床に置かれたエタノールコンロで温めていたヤカンのお湯を注ぐ。

 

「お。すまんの」

 

北方棲姫の顏の付く木のコップにもお湯を注ぎ、駆逐農園で採取してきた葉を、煎って粉末にしたものを入れる。わずかにお湯が赤く変わる。

 

沸騰はしていなかったが、飲む分にはちょうど良く十分に温かい温度だ。二人は息を合わせたかのように長い息を吐き出す。

 

「確かレッドティーとか言ったかの?自家製とは言え、渋みも少なくなかなか良い味じゃ」

 

「あ・ん・た・ら・ねぇ~」両こぶしを握り締め、眉間にシワを寄せて目を閉じながら長い黒髪がプルプルと震える。「まぁ、落ち着けよ」

 

飛行場姫がたしなめるが、こちらは沸騰しているようだ。その言葉が油を注いだらしい。爆裂する怒りが彼女を突き動かす。

 

「バカやめろ!」

「止まるんじゃ。ハウス。ハウス!」

 

両手がテーブルを掴み震える彼女を、二人が目を丸くして急いで手を掴まえる。フルパワーで押さえつけられ、力が拮抗し体が震えるが僅かに戦艦棲姫の分が悪かったようだ。

 

二人に押し倒され床に制圧されると、彼女はじたばたと動き何か喚いている。

 

「件の巡洋艦はすでに抑え、駆逐艦もすでに沈んでおる」体重を乗せ体を押さえつけながら言う。「艦娘は?」「おらん」赤い瞳に睨まれながら、きっぱりと答える。

 

「あいたた」無理に動き痛めた腰に手をやりながら、落ち着きを取り戻した彼女を開放する。「・・・悪かったわよ」黒い長髪を垂らし、ばつの悪そうに彼女が言う。「まったく。お主と来たらいつもこれだ」

 

床を擦ったフワフワとする白く長い髪を手で払いながら言った。

 

「このポリタンクどうすんだ?また飲むのか?」懲りない奴だと目を細め、飛行場姫が言う。

 

「お風呂にするのよ。駆逐ちゃんの髪が海水で痛んじゃうじゃない」

 

「ああ。そうか」心底どうでも良さそうに、次のお湯を注ぎながら飛行場姫が相槌を打つ。「しかたない。わらわが続きをやろう」

 

「あら。ありがと。気が利くわねホッポちゃん」ウキウキとリビングにある身長ほどの高さの鏡に体をクルクル動かして、まるでデートにでも行くかのように各所を確認している。

 

「どうせ。泳げば崩れよう。バカめ」

「こういうのは気持ちの問題なのよ。朴念仁」

 

売り言葉に買い言葉。タップダンスのように忙しなく動くたびに、黒く長いワンピースのスカートがクルクルと広がる。

 

「なんだおまえ。今度は出て行かないのか」

 

いつまでも、ぐだぐだと鏡の前でうろうろしている彼女を横に見て、飛行場姫はどっかりと木の椅子に座り、木のコップを手に持つ。

 

「あら?イイ女は遅れてくるものよ?」

「そいつぁどうも」

 

手を伸ばし、新しい茶葉をトントンと入れる。揺れるレッドティーに、何処か寂しそうにしている飛行場姫の顏が写り込む。

 

「そろそろいいかしらね?」

 

素材の多くをマリンシューズのようにゴムで作られている、高いデザイン性でサンダルのようにつま先の見えるハイヒールに履き替えると、足のホックをパチパチと留める。長い黒髪を両手でフワッと後ろに広げると勢いよくターンする。

 

「じゃあ。ちょっと行って来るわね」

 

「早く行け愚図」

「そうじゃバカめ」

 

椅子に座りコップを手に持ちながら追い払うように言い放つ。

 

「うっさいわね」かかとをトントンと鳴らす。「じゃあ、ホッポちゃんお湯を頼んだわよ?」「任せよ」彼女は通路の前で片手を横に出し、肘を折り耳の高さまで折り返すと、指を広げる。

 

「バイバイ」

 

ポーズをとりながら可愛らしく、二度ほど手を真横に小さく振り動かし、下すとそのまま意気揚々と出かけていった。

 

「なんだアレ?」

「流石に気持ち悪いの」

 

北方棲姫はヤレヤレと椅子から腰を上げコンロに火をつける。チロチロと青い光が上がりその上に大型の鍋を乗せる。

 

「あの二人はすぐ帰って来るのかの?」

「来なければアイツを突っ込んでやればいいだけだ」

 

飛行場姫はグリグリと捩じった布を鉢巻きのように頭に縛ると、人二人分くらいの大きさがある、流し場内の掃除を始める。

 

「ああ、お主が拾ってきたアレか」ふむ。と考える。「アイツはホッポの部屋に突っ込むって駆逐の奴が言ってたぞ」流し場からガシガシと音が聞こえる。「なぜにワラワなのじゃ・・・」

 

また面倒事がやって来たと白いワンピースのスカートを抱え、体育座りでブラウンの瞳が青い炎を見つめる。

 

「消去法」ガシガシとブラシが石を掻く力強い音が鳴る。「まぁ。よいじゃろう」一瞬眉間にシワがより沈黙するが、アレを無意味にキレさせると後が怖い。鬼の顔を思い出し身震いする。「ところで服はどうしたのじゃ?」

 

「ああ。ボロボロだし血が付いてて汚いから捨てたよ。駆逐の奴が」上水を呼び込み、濯ぎ洗いを行う。「困ったの」「まぁ仕方ないだろう。そもそも飼うなんて誰も思ってなかっただろうし」汗をぬぐい石の流し場から出てくる。

 

「まったく。夜中まで働かされるなんて」濡れた体のままドカッと椅子に腰掛ける。「駆逐に言え」その言葉にイーッと白い歯を見せて答える。

 

「あー」思い出したかのように飛行場姫が声を出す。「なんじゃ」「アイツの服着せればいいんじゃないか?」先程までバカみたいにダンスをしていたアイツを思い出す。「ああ。まぁ体型はあっていような」

 

「暴れるんじゃなかろうか」「いや、あんがい喜ぶんじゃないか?」飛行場姫は注ぎきり、空になったヤカンの蓋を開け、中を覗き込む。

 

「タマゴが入ってる」鉄の円筒形の茶こしの中に卵が4つほど入っている。「冷蔵庫に入っておったぞ、夜食にどうぞって」卵は半円形でボール型のプラスチック容器に入れられ、少女の書置きが添えられていた。

 

「これ好きじゃないんだよなぁ」

 

彼女は一つ取り上げると、殻ごと、口の中に放り込む。前歯で数回噛み割った後、奥歯を水平にスライドさせるように殻をかみ砕いていく。オレンジがかった赤い瞳が左右に落ち着きなく動く。

 

「良薬口に苦しじゃ、好き嫌いしおってバカが」

 

 

駆逐農園は基地の上層部に位置し徹底された温度管理がなされている。野生のアヒルなどが放牧されていて、そのアヒル達から時折卵をいただくのではあるが、その多くは有精卵である。

 

つまり、卵内にはすでにヒヨコが存在している事がる。食用にする際は主に、茹で卵にして食べられる。

 

濃厚な味わいから愛好家も多く、アジアでは珍しくもない食べ物ではあるが、生まれついてから食す習慣がないと、見た目の問題もあり魚をまるかじるする深海棲艦達の間でも、賛否の分かれる食べ物である。

 

食べもの自体の栄養価は群を抜いて高く、彼女らは知らずに食しているものの、疲れが取れやすくなるとの体験から薬味のように扱われている。

 

 

「戦艦棲姫など、駆逐のためと称してその辺の深海魚まで食べて出撃しているのに」北方棲姫のお小言モードが入り「お主の腰を労って~」しぶしぶ二つ目の卵に手を掛ける。

 

「~そんなだから、駆逐がお前になびかんのじゃ」「はいはい」聞こえが悪くなり少し欠伸をすると、ウトウトし始める。「後はワラワがやるゆえ戻ってよいぞ」

 

「ありがとホッポちゃん」

 

ため息をつく北方棲姫の好意に甘えて、少し背中を丸めながらフラフラとリビングから離れて行った。

 

駆逐棲姫の遊びが長引けば、艦娘の嫌がらせ組と会敵する可能性もある。もうすぐ夜が明けそうだが、潜水隊の主力であるソ級ヨ級を時間外に出撃させてしまったため、飛行場姫を休ませておいた方がいいと判断する。

 

杞憂ではあるが、全力出撃ともなれば、制空能力だけを切り取れば、依然として絶大の信頼性のある飛行場姫は外せない。

 

「静かなもんじゃ」

 

騒がしい二人組は外へ出て、時折泣きついてくる飛行場姫も部屋へ追い返すと一人、静寂の中、寂しさを覚える。小さな体の上半身をテーブルに乗せヤカンに腕を伸ばし手を止める。

 

リビングにはカッチ、コッチと時計の音だけが静かに鳴っている。

 

「ああ。ソ級に持って行ってやろうかの」

 

ヤカンの蓋を閉め、黒い取っ手を持つとグイっと体を下し石床に下りる。白いワンピースのスカートがフワッと広がり、白い髪がモワモワと動く。

 

「ん。寝ておるか」

 

湿り気を残す、ソ級の黒髪に手を添える。手足を残して着こむダイビングスーツのような黒い服に、潜水には適さない、ムチムチとダイナミックに突き出る胸と尻が窮屈に押さえつけられている。

 

彼女の尋問時には、物哀しい青い瞳とふくよかに発達した体型から、戦災で言葉を失った未亡人のような役割を与えられることも多い。

 

「すまん。起こしたかの?」

 

乾かされる艤装から放たれる、海水の匂いと乾いた暑さの中、ソ級は目をゆっくり開く。

 

壁側に丸く横になっていたため、体を幼女の方へと回すと黒い髪が顔に巻き込まれ覆いかぶさる。ホラーのように髪の隙間から光る哀しい青い目が僅かに幼女を後退させた。

 

「うん。これをお前にと思うての」

 

ヤカンの蓋を開け、中身の卵を二つ手渡す。彼女はわずかに微笑みありがとうと受け取る。

 

「それで、上の様子はどうじゃ」彼女は殻をむき、茹でられ硬度をました白身の部分に歯を付けると少しずつ噛み削っていく。「そうか」世間話のように会話を続け、幼女が頷きながら話しを促す。

 

「どれ、マッサージしてやろう」卵を二つとも食べ終わると幼女が横になるように促す。しかし、謙遜するように彼女は手を振っている。「バカも追い返したし、あまり早く湯を張っても冷めてしまう」

 

幼女はソ級の背中に手を回しこみ、ウエットスーツのファスナーを引き下ろした。押さえつけられていた胸がふくらみ、自然と真っ白な背中が弾けるように露出する。

 

そのままうつ伏せにさせると、腰に馬乗りになり背中の背骨に沿うように小さな両指を少しずつ押しながらほぐしていく。指のサイズが小さいこともあり、北方棲姫のマッサージはその気持ちよさに定評がある。

 

「寝てしまっても構わんぞ」

 

両膝を体から外し、彼女を挟んで石の椅子に膝立ちで乗る。幼女が体を伸ばし、指が肩に近づくたびに白いワンピースのスカートから、真っ白で面積の多い綿の子供パンツが見え隠れする。こめかみから伸びる白く雄々しい長髪が垂れ、前後にブランコのように揺れる。

 

小刻みに呼吸を立て、髪を揺らしながら体を下げ、お尻に両てのひらを開きコリをほぐしていく。

 

腰を痛めた飛行場姫に良くやってやっており、不思議とお尻を揉みほぐし弛緩させてやると痛みが和らぐこともあるそうだ。ソ級は献身的なマッサージの中、寝息を立て始めたようだ。

 

「しばらくしたら、起こしてやるかの」

 

ゆっくりとスカートの裾を抑え静かに跨ぎ、石床に降りるとお湯を張る作業に戻る。何度か熱湯を流し込んだ後、高温で衰弱しないように様子を見に戻ったが、すでに彼女は出かけていたようだ。干されていた艤装もなくなっている。

 

「まったく。働き者ばかりじゃの」石の椅子の上には、小さくすり潰されたような卵の殻が広がっていて、一見乱雑に広がるゴミに見えるが、わずかにありがとうと読めなくもない。「まったく。散らかしていきおってからに」

 

幼女はぶつぶつと文句を言いながら卵の殻を寄せ集めるが、少し嬉しそうに白い髪が揺れている。

 

「もうすぐ夜明けか」

 

リビングへと戻るとローマ数字の文字盤を見ながら、手に乗せた卵の殻をゴミ箱に捨てる。

 

通路脇でわずかに水の流れる側溝に捨てても良いが、有機物の堆積が悪臭を発生させる原因になるため、基地の上層域では極力避けられている。また、側溝の掃除を行うのが主に自分であるという理由もあった。

 

壁に向かい垂直に立つ重錘式[じゅうすいしき]の置き時計は僅かに傾斜する石床に、水平になるように傾斜に合わせ盛り上げられた、石材のプレートの上に設置されている。振り子を動かし、カッチコッチと時をつげる。

 

「本当に時間は早いの」

 

内部に見える揺れる振り子を見つめ幼女は呟いた。

 

 

壁に立つ、幼女の倍ほどの背丈のある置時計は、とある商船の通行交渉時に収められたものだ。振り子である内部の錘を1週間に一度程度持ち上げ、下ろし、振りはじめを促す必要がある。

 

若干取り扱いに不便はあるが、電力がなくとも動くためこの海底ではその独特の駆動音とともに評価が高い。

 

時報機能は、定期的な調整を極力少なくするため設計時から廃されており、飛行場姫でも本体の分解清掃はある程度行える。

 

本体には一部、見覚えのない配列のアルファベットの文字が記載されており、商人に何かと訪ねたところ、時間が経つのは非常に早いという意味だそうだ。

 

 

「よいしょっと」ハシゴのような物を斜めに流しに立て掛けると、熱湯の入る鍋を流しに注ぐ。「面倒な事この上ない。あのバカに風呂を作らせよう」吹き出す蒸気が顔に飛び掛かりわずかにむせる。

 

「この際、海底ホテルにでもさせたらよいかもしれんの」ニヤニヤとし幼女のブラウンの瞳が揺れる。蒸気により湿った白いワンピースは幼女の裸体と、子供パンツが透けて見える。

 

作業を進めるにつれて、思考がだんだんと捕まえた男の事に寄って来る。今日から自分の部屋に住まわすことにもなるわけであるが、少女が遊び続けたいからこそ、気密性。いや、防音性の高い自分の部屋を選んだのだろうと。

 

自分一人が男の前で、演技を続けさせられる羽目になり、ずいぶんと面倒な話になったと改めて気が重くなる。

 

酸素も艤装が造り続けているが、二人分となると生産量の調整が必要になるかもしれない。また仕事が増えたと、幼女は大きくため息をついた。

 

「帰って来おったか」

 

室内の照明がチカチカとなり、小さな光源に替わる。高頻度で行われた出撃ゲートの開閉により、備蓄されていた電力を随分と消耗したらしい。

 

残量が不足してくると、農園とゲート開閉用を除き、電圧降下により節電回路に自動的に切り替わる。

 

「ただいまです」少女が海水をポタポタと連れてきながら、リビングへ帰ってきた。「あ奴はどうした」幼女はひと段落付いたと、テーブルに座り白湯を飲んでいた。時刻はいつのまにか6時を過ぎている。

 

「姉さまですか?8時間くらいの遠征に出てもらいました」

 

「ほう?」コップを置き、面白そうに声を出す。「あの巡洋艦はアジアに逃げたかったらしく、姉さまが途中までの護衛についたんです」

 

潜新の奴がからんでいるとすればまぁ、そんな事だろうと予測はしていた。

 

「それで、少し困ったことになったんです。見返りとして、物資の入ったコンテナを投下させたのですが」

 

ソ級、ヨ級と相談した結果、浮力を外せば沈みそうだが、この深度までは外装が持たないかもしれないとの結論に至った。

 

「もしかしたら、近くの島で荷下ろしする予定だったのかもしれません」ふむ。と幼女は話を聞いている。

 

「差し出し人は潜新で、荷受人は飛行場姫か。ならば白字裏書ではあるまい」幼女はイスからポンと飛び降りる。「グズグズを起こしてくる」飛行場姫なら何か分かるかもしれないと歩き出す。

 

「ごめんなさい」歩き出す背中に声がかかる。「迷惑をかけました」少女が頭を下げ紫の濡れた髪が下方向に垂れる。

 

「よい」表情が曇る少女の顔を下から覗き上げる。「失敗は誰でもするのじゃ」少女の両手を優しく少女の胸の前にもって来ると、両手を組まさせる。

 

「それに」小さな手が少女の組まれた手を包み込む。「状況を見誤りお主を推薦した我らの責任でもある」優しいブラウンの瞳が。力を無くした紫の瞳を見つめ上げる。

 

「そんな恰好をしてないで早く風呂にでもつかれ」「でも」少女が顔を上げると、紫の瞳の両端にわずかに光が見える。

 

「お主を風呂に入れろと、あのバカ姉に強く頼まれておってな」両手を白い髪の頭の上につける。「厳守しなかったとあの角で突かれては、た・ま・ら・ん」

 

人差し指を伸ばし大げさにツンツンと動かす。紫の瞳から零れる水滴を見なかったことにする。

 

「そんなささいなこと朝飯前じゃ」ケラケラと幼女はリビングを後にした。「まったく」ポテポテと通路を歩き飛行場姫の部屋へと向かう。

 

「泣き虫のたまり場かここは」プリプリと不満を述べながら扉を開ける。「朝だぞ!起きんか!ぐず!」ピンク基調の部屋で、ベッドのように組まれた木の上に布団で眠る彼女がいる。

 

「なによ!まだ早いじゃないキチガイ!」ゼンマイ式の高級そうな置き時計を見る。5時を少し過ぎたところだ。「もう七時前じゃ。また、巻き忘れおってバカめ!」

 

布団を引っぺがすと、可愛い熊のガラが全身に付くパジャマを上下着ている彼女がいる。何がいいのか知らないが頭には三角形のサンタの帽子のような物を被っている。

 

「まーた変な帽子をかぶってからに」ベッドに飛びのると、銀色の髪がはみ出る帽子をスポッと剥ぎ取る。

 

「やめてよ!これないと髪が絡むんだから!」

「じゃあ坊主にせい」

 

きゃあきゃあと二人は言い争いをして、無理やり彼女を目覚めさせると本題に入る。

 

「のう」「何よ」彼女は不機嫌そうに鏡台に向かい髪をといでいる。「巡洋艦からコンテナを出させたが回収できんらしい」それを聞いて少しぼーっとする頭で考える。「海底?」「海上じゃ」

 

ふーんと興味無さそうに聞いている。

 

「浮いてんなら、とりあえず島まで運べば?」「それが出来んから困っとろうが」幼女は不眠のため少しイライラと答えた。

 

「タコヤキいんじゃん」「ああ。そうじゃの」思い出した。あ奴らに押させればよいのか。「なんじゃ?」赤い瞳がニヤニヤと見つめる。

 

「あんたも出来んじゃん。呆けた?」「バカめ!」飛び上がり後頭部を平手打ちする。「あいたっ」銀色の髪が大きく揺れた。

 

 

 

 

かくして飛行場姫・北方棲姫によるコンテナ上陸作戦は迅速に行われ、午前中に作業は完了する。

 

コンテナを複数のタコヤキが額で一斉に押すだけの作業ではあったが、艦娘との会敵も予測されていたため、警戒を厳にしての作戦遂行となった。

 

ソ級、ヨ級は海底からコンテナの姿勢制御を定期的に行い、作戦完了後は正午に予想されるいつもの定期便に合わせ、嫌がらせを見守るために定位置で待機する。

 

駆逐棲姫は疲労しており、戦艦棲姫は遠征中。飛行場姫は腰痛で、北方棲姫は不眠である。

 

仮眠をとったソ級が一人で残ると主張したが、基地の不備を見抜かれたくはないと、不眠でコンテナが漂流しないように見ていたヨ級が申し出た。

 

結局、いつも通りのように二人が艦娘の進路を圧迫して、弾をばらまかせたら、そのまま帰らせる方法になる。

 

「すまんの。この埋め合わせはきっとするゆえ」

 

小さく手を振るヨ級、ソ級に見送られながら、後ろ髪を引かれるように飛行場姫・北方棲姫は帰路につく。

 

「駆逐の奴どうしてた?」

「落ちこんどる」

 

飛行場姫は少し気まずそうに空を見上げた。潮風が頬を高速で過ぎる。二人の髪が大きく後方へとウェーブするように伸びている。

 

飛行場姫はいつもの白いスーツに日光を受けて輝き。北方棲姫は海水を拾った白いワンピースで服を透かせながら、受ける風でスカートを暴れさせている。

 

北方棲姫から聞いた話から考えるに、これは偵察を怠った自分のミスだ。くしくも戦艦棲姫の言ったとおりになる。少し楽観しすぎたようだ。

 

アレはしっかりしているようでいて、まだ実戦経験は少ない。不測の事態での判断は間違えることもあるだろう。

 

「あの姉には敵わないなぁ」ポツリと口から零れ出た。「お主はよくやっとる」青い空の元、海上を滑りながら北方棲姫がぶっきらぼうに言う。

 

「そうかしら?」

「そうじゃ」

 

そんな何気ないやり取りが、彼女には少し嬉しく感じられた。

 

 




<<アンケート結果はお知らせの話の前書きで時々更新!!>>

(はわわわわわ。飛行場姫さん可愛いのです)

つ´・ω・`) ヒロインだろと 思う子

  • 駆逐ちゃん
  • 戦艦棲姫
  • 飛行場姫
  • 提督さん
  • その他
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