転生して、カーディナルさえ検知できないチートを手に入れたから、ゲームクリアしてくる。 作:恭華
え、昨日上げたばかりだろ、だって?
……そうだねぇ、上げたねぇ……でも、いい加減現実に戻したくなっちゃいました。
「それでは、行くとしよう」
赤の鎧に身を包んだ男、ヒースクリフはそう号令をかけてボス部屋へと続く扉へと向き直る。
それに合わせた訳では無いが、ちらりと俺の後ろにいる円卓の騎士のメンバーと、月夜の黒猫団のメンバーを見やる。
歴戦の風格、というものは見いだせないが、それでも第1層からここまで登ってきたみんなは、俺には輝いて見えた。
あの後、サチと同盟を結んだ俺達円卓の騎士は、サチ率いる月夜の黒猫団と合同で74層辺りのボスまでノンストップで狩り続けた。
元血盟騎士団の副団長だったパーシヴァルに頼み、『74層まで攻略完了、75層のマッピングもボス部屋前までなら完了』という旨をヒースクリフに送って貰った。
数分でヒースクリフから返信が来て、『ならば、早期決着が望ましいだろう。 2日後、74層の転移門広場に招集をかける』と書かれていた。
さて、回想と仲間を見る時間は終わりだ。
エギルやクライン達風林火山、最終的には倒すヒースクリフ率いる血盟騎士団、俺たち円卓の騎士とサチの月夜の黒猫団。
全員が鬨の声を上げて部屋の中へと侵入。
中は円形のフィールドでそれなりに明るい。 しかし、その場所にはボスの姿が無い。
みんなは辺りを見回しているが、俺とヒースクリフだけは上空……天井を見上げた。
原作通り、天井に張り付いた状態でこちらを睥睨する骨の百足< The Skull Reaper >
「上だ!」
誰が発したのだろうか。 皆が一様に上を見上げ、スカルリーパーの異様を目にする。
あれはやばい、と腰を抜かしそうになる者、かかって来いと奮起する者、少し涙目になってるユナ。
様々な反応を示すが、それを見て楽しむという機能は無いのだろうスカルリーパー。 すぐさま落下を開始し、一番最初にスカルリーパーを見つけた俺に切りかかってきた。
エクスカリバーを鞘から居合の様に抜刀し、スカルリーパーの鎌にぶつける。
落下分の重さはある筈だが、問題なくその鎌を弾き返し、ソードスキルの構えを取る。
【騎士王】専用片手直剣用10連撃ソードスキル、クラレント・アセンション。
金色に光る10本の剣の進む道をエクスカリバーの鋒で指定してやるだけで、その10本の剣はその道を遮るものを容赦なく貫く。
それはスカルリーパーでさえも例外ではなく、ゲージ一本消し飛ばすほどの穴を開けて金色の剣達は飛翔する。
苦痛に悶え、鎌をあたり構わず振り回すスカルリーパーだが、ソレをヒースクリフ、ストレア、レインが受け止める。
その隙に百足足に気をつけながら、レイドメンバー達が横っ腹をぶん殴っていく。
割とあの百足足のダメージ、えげつないらしいからね……
それはそれとして、円卓の騎士、黒猫団両ギルドメンバーには、98層で取れる素材を使用した武器を持たせているため、ごりっごりスカルリーパーの体力が削れていく。
それのおかげか、さっきの鎌を受け止め横から殴る戦法を数回やるだけで、HPバーがラスト一本の赤ゲージまで行き、もう一度クラレント・アセンションをぶちかましてやるだけでスカルリーパーはポリゴンの塊へと姿を変えてしまった。
スカルリーパー戦はあっけない最後だった。
周りのプレイヤー達も、本当にこれで終わったのかと疑心暗鬼になったが、『Congratulation』の文字が空中に出現すれば、どわっと喜びの声が上がる。
ギルドメンバーで抱き合うもの、よくやったと別々のギルド同士で称え合うもの、なぜかぐったりしているリーファ。
俺も息を吐きながら座りたい衝動があったが、今はそれよりも優先すべきことがある。
チートウィンドウを表示し、AGIをそれなりに上昇させてから、ヒースクリフの視界外から高速の奇襲を仕掛ける。
だが、やはりヒースクリフには刃が届かなかった。
『immortalobject』の文字が書かれた紫色の六角形のパネルに阻まれている。
不死存在、破壊不能オブジェクト、普通のプレイヤーにはありえない属性。
「セイメイ、なにを……」
ヒースクリフの近くにいたパーシヴァルが俺の行動を咎めようと目を向けるが、そのパネルをみてピタリと動きを止めた。
剣を引き、ゆっくりと後ろへと下がってから
「自分で作ったこの世界で生き抜いてきたけど、最終的に魔王として君臨できなかった感想は?」
挑発気味にヒースクリフへと質問をなげかけ、どう言った反応を見せるかと口角を釣り上げて。
「……感想はない、が、なぜ気付いたのか参考までに教えて貰えるかな……?」
「さてね、気付く要因なんて各所にあった、としか言う気は無いよ。 ……だがまぁ、強いて言うならHPバーが黄色まで行かないこと、神聖剣なんていうありもしないスキルのこと、あとは……まぁいいか」
「そうか……あまり気が付かせないようにと気を張っていたのだがね。
……予定では後略が95層に達するまでは明かさないつもりだったのだがな」
苦笑いを混じえながら、自身の考えを明かしていくが、すぐに超然とした笑みへと変化させ
「──確かに私は茅場晶彦だ。 付け加えれば、最上層で君達を待つはずだったこのゲームの最終ボスでもある」
「最強の勇者が最凶の魔王になるってシナリオか。 悪趣味」
「はははっ、なかなかいいシナリオだっただろう? だが、それも全体の4分の3で看破されるとは思っていなかったがね」
どことなく金属が混じった笑い声を上げながら、ヒースクリフが管理者ウィンドウを表示。 俺を除く、この場にいるプレイヤーに麻痺デバフを付与する。
ちらりとヒースクリフの向こう側に見える月夜の黒猫団を見れば、バタバタと麻痺のアイコンを点滅させながら倒れていくのが見えた。
「まさかとは思うが、ここで全員殺して隠蔽する、なんてことはしないよな?」
「まさか。 そんな理不尽な真似はしないさ。
予定を早めて、紅玉宮で君達の訪れを楽しみに待つことにする……が、その前に。
私の正体を看破した君に報奨を支払わないとね。
チャンスをあげよう。 今この場で私と戦うチャンスを。 無論不死属性は解除する。 私に勝てばゲームはクリアされ、全プレイヤーがこの世界からログアウト出来る。 ……どうかな?」
「ノった」
「……思い切りのいいのは嫌いじゃないが、私が何か仕出かすとは考えないのかな?」
一瞬きょとんとされるが、俺は首を横に振り
「するんだったら俺を麻痺にして殺すだろう。 それに、ここでゲームクリアする、というのも面白いものだろう?」
にっ、と歯を見せるように笑みを浮かべれば、それを見て吹き出すヒースクリフ。
「そうだな……確かにそうだ。 では死合うとしよう」
【changed into mortal object】と書かれたメッセージが表示される。 不死属性が解除され、通常と同じダメージが入るようになった。
「セイ君……だめっ……」
「大丈夫だアスナ、俺は止まらねぇからよ……!」
フラグブレイカーの名は伊達じゃねぇ、と笑みを浮かべながら円卓の騎士のメンバー達を見る。
次いで、エクスカリバーを構える。
「セイメイ、やめろ……!」
「セイメイっ……!」
エギルやクライン、ユイ、ストレア、ユナ、サチ、リーファ、ニミュエ、シリカ、フィリア、レイン、パーシヴァルにガウェイン。
みんなから俺を止める声が飛んでくるが、俺は右手を持ち上げ、ぐっと親指を立てるだけにとどめる。
「そろそろ、いいかな?」
「あぁ、待たせたな。 ……円卓の騎士団団長、セイメイ」
「血盟騎士団団長及びゲームマスター、ヒースクリフ」
「「参る!」」
掛け声と共に息を吐き出し、床を蹴る。
システムアシスト等は一切使わず、右下段から逆袈裟斬りに切り上げる。
それをヒースクリフは左手に持つ盾を下げるだけで難なく受け止める。
剣と盾がぶつかり火花を散らすが、すぐにヒースクリフの剣が目の前へと伸びてくる。
盾の向きに合わせてエクスカリバーを滑らせ、盾に押さえられた状態から脱しつつ、それの反動で盾に体重をかけていたせいでバランスを崩したヒースクリフの剣を、盾側へと避ける。
必然的にガラ空きになる胴に向け、片手剣体術合同ソードスキル、メテオストライクを放つ。
一撃目に拳法にある鉄山靠、肩甲骨辺りを相手にぶつけるという技を繰り出し、上段の二撃目に繋げるものだが、二撃目はしっかり盾にガードされ、ソードスキルはキャンセルされる。
一瞬の技後硬直に勝利を確信し、必殺のソードスキルを叩き込もうとするヒースクリフ。
だが、ソードスキルをキャンセルされたエクスカリバーから、また別なソードスキルのライトエフェクトが溢れ出し始め、ヒースクリフの顔に驚愕が生まれる。
盾に防がれたのは丁度中段、ならばとスキルコネクトが出来るであろうと選択したソードスキル
【騎士王】専用片手用直剣最上級20連撃ソードスキル、The Nightmare
白に黒の線が入り交じったライトエフェクトを迸らせながら、中段からの突きに始まり、切り上げ袈裟斬り逆袈裟切りおろし、それこそ悪夢のような攻撃を続け20連撃目に人型であれば首の位置を貫く突きを放つ。
ヒースクリフ、茅場晶彦はその突きを穏やかな笑みで受け入れた。
それと同時に、茅場のHPゲージはゼロを示し、無数のポリゴンへとその姿を変え、崩れ去っていった。
「……」
「……」
辺りに静寂が訪れかけるが、けたたましいファンファーレと
『2023年1月3日午後13時22分、ゲームはクリアされました。 ゲームはクリアされました』
というアナウンスが辺りを占めた。
それに遅れるように、辺りから歓喜の声が上がり始めた。
「やった……」
「これで俺たち、帰れるんだ……!」
「やったなセイメイ……!」
仲間の肩に手を回しはしゃぐ風林火山のメンバー達、漸くゲームクリア出来たことに涙する血盟騎士団メンバー、ゲームクリア出来たよ、という報告をするために形見のアイテムを取り出すサチ、ぷんすこして怒ってきそうな円卓の騎士団全員。
それぞれがそれぞれの喜びを噛み締めている中、1人、また1人と転移結晶を使った時のようなエフェクトを撒き散らし、どこかへと消えていく。
「……そういえば、俺はどうなるんだろうか」
ボス部屋にいたみんながゲーム内から退去してから、ぼそりと俺の体のことを思い出したように呟く。
だがまぁどうにかなるだろう、と頭を振って、青い光が降ってくるのを待つ。
少しすればようやく俺の番になったのか、青い光が俺の体を包んだ。
そこで、ぷつりと俺の意識が途絶えた。
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何か、久しぶりな匂いがする。
……あぁ、空気か。
薬や消毒の匂いも微かに感じる。
オゾンの臭い匂いまで。
ゆっくりと目を開ける。 その途端、強烈な光に眼を焼かれ掛け、慌てて目を閉じる。
再度目を開けてみれば、ようやくそれが太陽の光だと言うことに気がつく。
見慣れない薄ピンクの混じった白い天井、その部屋の外でぱたぱたと忙しない複数の足音。
むくり、というより、のっそりと体を起き上がらせ、頭に感じる重く硬い感触へと手を伸ばす。
その硬い感触のものは呆気なく外れ、自分の大きな胸の前へと……
「……ぁ……?」
大きな、胸……?
「……ぁ……ゃ……こ……ゃ……!!??」
なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??
はい、いかがだったでしょうか。
最後の最後、セイメイ君の今後に期待できそうな胸(おっぱい)『ぱいおつ』
最終章だと思ったか?
まだ続くんじゃよ
とまぁそれは置いておいて、久しぶりのマジバトル。 短いながらも沢山書き込んだ気がします。 頭いてぇ。
ヒースクリフとの問答ですが、これは入れざるを得ない、入れないとなんでバトルするか分からない、と思ったので、ほんの少しだけ入れました。
もしダメって言われたら、修正します。
アインクラッド編を最後まで見ていただき、ありがとうございました。
ここまで来れたのは皆様の感想やお気に入り等のおかげです。
こんなクソみたいな文章力ですが、宜しければ、これからも是非見に来てやって下さい。
それじゃあ、今回はこの辺にして、また次回会いましょう。