転生して、カーディナルさえ検知できないチートを手に入れたから、ゲームクリアしてくる。 作:恭華
前書きって結局何書けばいいのやら。
まぁいいや。
とりあえず、変な感じになってるかもしれないですので、そこんとこ夜露死苦
……?
自身の部屋の匂いに紛れ、嫌な香水の臭いが混じっている。
ため息はつけない。 この、いま目の前にいるであろう人の前では、ため息1つついてはいけない。
「……母さん」
そろりと目を開ければ、そこには暗いベージュのスーツを着込んだ母さんがいた。
「明日奈、ソレを外して起きなさい。 夕食の時間に7分遅れているわよ」
アミュスフィアを外しながら、体を起こす。
私にもみんなとの時間があるのに、それを裂くようなことをしなくても、とLANケーブルを持った母さんに反論する。
「……だからって、電源コードを引き抜かなくたっていいじゃない。 耳元で声をかけるか体を揺すってさえくれれば、中に通知が来るんだから」
「そんなの知らないわよ。 ……ほら、早くなさい」
「今日はいらない」
「……そう、勝手になさい」
部屋から母さんが出ていったのに、しつこく残る臭い。
それを換気しようと窓を開ける。
寒い。
1月の寒風が部屋の中を席巻する。
……またアミュスフィアを被って、みんながいる暖かなログハウスへと戻りたい。
でも、それは今はできない。 したくない。
今戻ってしまったら、多分、愚痴とか色々吐き出してしまうから。
……ピロン♪
「わひゃっ!?」
鬱々とした、鋭い冷たさを持つ空気の中、スマホの音が響いた。
すぐに画面をタップすれば、リズからメッセージが届いた音だとわかった。
『おつー。 お母さんに電源コードでも抜かれた? まぁ、そーゆーのよくあるよねぇ。 ほら、クリア出来たのに掃除機かけ始めようとしたお母さんに電源抜かれてデータが飛んだ赤い帽子の髭の……って、そうじゃないそうじゃない。
とりあえず返事が来たら、みんなには大丈夫だったって伝えておくからね。
明日は15時前後に集合だぞー。 忘れないでよー? おやすみー!』
……リズらしいというか……
『あはは、ちょっとね。
明日15時、了解だよ。 みんなによろしくね。 おやすみ、リズ』
送ってからスマホを机に置く。
「……」
小さくため息を吐き出す。
その息は白く染まっている。
……よし。
意を決してベッドから起き上がっては、クローゼットからお出かけ用のコーデを取り出していく。
寒いから暖かいのを、ということで、ベージュのニットをメインに、ワインレッドのスカートと白のタイツ。 コートもワインレッドで併せ、それを着込んでいく。
着替え終わったらすぐさまスマホを手に取り、階下へと向かう。
お手伝いさんはもう帰ったようで、リビングから顔を出したりはしなかった。
食堂へ軽く顔を出しては、あの人がいるのを確認。
「……少し、外出してきます」
「待ちなさい明日奈。 もう遅いのよ、今からの外出は……」
もう聞いていたくない。
リビングの扉を締め、すぐに玄関へと向かう。
ヒールの高くない黒のブーツを履き、家を出る。
冬の突き刺す空気がまた私の体を貫く。
だが今は構ってる暇は無い。
すぐさま玄関、庭、門から飛び出し、大通りへと向かう。
この時間でも多くはないまでも、それなりにタクシーは通っている。
ちょっと大通りを走れば、すぐにタクシーはつかまる。
息を整えながら、川越の、
……あの家には、すぐには帰れない。
……あれ、部屋の窓閉めてきたっけ?
~~~~~~~~~
おおよそ1時間程度で目的地へと到着する。
タクシーから降り、ゆっくりと家の前に歩いていき、インターホンを押す。
『はーい』
家の中から声が聞こえ、軽い足音が響く。
ガラララッと扉が開けば、ピンクのニットに白スカートを着込んだユイちゃんが出てきた。
「ママ!? こ、こんな時間にどうしたんですか?」
まだ19時30分だが、ちょっと遅かっただろうか。
なんて言ったものか、と悩んでいたのだが、ちょうど奥から
「んぉ、明日奈?」
珍しく大人っぽい女性に姿を変えている晴明君が黒いスウェット姿で出てきた。
「あ、こ、こんばんは、ユイちゃん、晴明君」
「おう、こんばんは」
「はい、こんばんはです、ママ」
「んで、家出か?」
「……あ、あはは……正解。
ちょっと家にいたくなくて……」
「そっか。んじゃあ、気の済むまでここに居ればいいよ。 ここは明日奈の家みたいなもんなんだから」
「……じゃあ、お言葉に甘えます」
やっぱり、晴明君はやさしい。
優しすぎる。
……だから惹かれた、って言うのはあるのかも。
「ストレアー、ベッドメイク頼んでいいかー?」
「よくなーい。 晴美自分でやりなさーい」
「じゃあ洗濯物自分で洗えよ! いつもいつもそこらに投げ捨てられてるブラとか誰が洗ってると思ってんだ!」
「あ、それ多分ニミュエのー」
「マジですかごめんなさい!」
惹かれた、のかなぁ……?
「……はぁ……ごめんな、明日奈。 色々うるさくて」
「ううん、大丈夫。 むしろ聞いてて楽しいよ?」
「ほんっとにもうしわけない……」
かなーり渋い顔して謝ってくる晴明君に苦笑いしながら、いつも貸してくれている部屋に案内してくれる晴明君の後を追う。
案内してくれる部屋は1階の和室だ。
とはいっても全面障子張りとか襖という訳ではない。
入口は1つしかなく、箪笥や押入れなどで壁の一角が占拠されている。
別な一角には、畳ベッド、というものだろうか。
それが置かれている。
他にも、座椅子やそれに合わせた机、薄型壁掛けテレビなど。
それなりに高級な旅館に箪笥などを置いた、と言えば想像しやすいだろうか。
さすがに、自室みたいに自動で開くクローゼットとか引き出しとかは無い。
「いつも通り風呂は自由。 ご飯は朝7時から9時、昼11時から13時、夜18時から24時まで。 好きな時間にリビングにおいで。 一応、これから夕飯だから、食べてないならどうぞ。
……まぁ、朝は俺死んでるだろうから、キッチンに立ってる誰かに声掛けて。
服に関してはー……後でタンス覗いてみ」
「ふふっ、はーい。 ありがと、ハルくん」
「気にすんなー」
その心遣いが、私の心を暖かくしてくれる。
「ありがと」
部屋から出ていく晴明君に聞こえないように、もう一度呟く。
~~~~~~~~~~~
さて、どうしたもんかな。
「ストレア、明日奈んちに電話しなきゃなんだけど……」
「あ、もうしておいたよ。 家出してるので、うちで預かってますーって」
「反応は?」
「一瞬ふじこしそうな感じはしたけど、すぐ冷静になって帰ってくるよう説得出来ないか、って言ってきた」
「ほう、それで?」
「えーと……家庭の事情はこっちじゃ分からないけど、帰りたくなるまでは居させてあげたいって言ったら分かりましたって強めに言ってガチャ切りされたよ」
「そっかー……ん、ありがとうストレア」
ふじこるとかこっちでもあんのか……
とりあえず、結城家には連絡済。ポリスメンとか呼ばれても誘拐とかじゃないんで問題なし。
明日奈が帰る気になるまでは帰れとは言うつもりない。
まぁもしお母さんが乗り込んでこられたら俺特製の筋肉空間に送り込むが。
……んまぁ、こんな所か。
とりあえずのやることは終了。
あとはまぁ、居させてあげられるだけ居させてあげる。
……あ、やべやべ、鍋に火かけっぱなしだった。
本日の夕飯はシチューなのだ。
火にかけっぱなしにしてると煮込まりすぎるからなー。
カレーは辛さ増すけどシチューは……まぁ、あまりあじ変はしないか。
台所へと戻れば、火加減を調整してくれていた紗知に礼を言い、その隣に立つ。
「ねぇ、セイメイ、今の人って……?」
「あぁ、明日奈だよ。 ほら、前話したろ? 一番最初に俺の嫁になったって」
「……あー」
「微妙に覚えてなさそうな声で頷くな……」
『記憶は無いけど、生きていたい。 生きていかなきゃならない。 私の代わりに、命をなくした誰かのために』
あの日見せた信念の欠片を、記憶をなくしても大事に抱えている少女を、俺は放っておく事が出来なかった。
だから引き取った。
……さすがに、サチ、というプレイヤーネームだけの、名前もない状態だと色々不便だから、と
もちろん、正式な書類なども菊岡に手伝ってもらいながら仕上げた。
養子、ということになっているのだが……
今この家に俺の両親はいない。
つまり、養子縁組を組める人間がいないはずなのだが、何故かニミュエ……
宇宙猫。
どういうことだってばよ、ということで戸籍なんかも市役所で出してもらったら、しっかり親が二三江となっていた。(あとついでにいうと、
……
サチは晴れて葉山家の一員となったのだ。
「セイメイ、焦げちゃうよ?」
その言葉に記憶の箪笥から顔を引っ張りあげられ、あわてて目の前でかなりぐつぐつ煮立ちはじめたシチューの火を止める。
「あぶねー……ありがとう、紗知」
「ふふっ、どういたしまして」
夜飯台無しにしたらみんなから怒られてしまうから、紗知の注意は助かった。
「それじゃあ、各々よそって持ってけー」
シチュー用の皿、ご飯用の皿、シチューライスの皿をそれぞれ用意し、スプーンと胡椒を含め、各々で持ってけ、と指示を出す。
俺はシチューライス派。
それぞれがそれぞれの好みによそい終わり、席に着いた所で明日奈がリビングへとやってきた。 しっかりお腹鳴らして。
「あはは……お腹すいちゃった」
「いらっしゃい、明日奈。 今日はシチューだから、ビュッフェスタイルみたいな感じだ。 好きによそってくれい」
「ん、はぁい」
「星型の人参とか、いっぱい切ったんですよ」
「あたしもあたしもー」
「ストレアはソファでゲームやってたろ。 バッジは何個集まった?」
「んーと、まだ6個」
「それ、サボりじゃ……?」
あははは、と食卓は笑いで包まれる。
明日奈がよそい終わり、椅子に着いては、皆でいただきます斉唱をした。
~~~~~翌日~~~~~
14時30分。
明日奈はユイを伴ってALOへとダイブして行った。 ユウキとのデュエルに行ったのだろう。
それを確認してから、夕飯の仕込みを始める。
と言っても、今日は簡単なものにする予定だ。
シチューもあと1回分は残っているため、付け合せをちょこちょこっと作るだけ。
ちょっとした肉料理、酒のつまみを作っていく。
……そんな中、どうするか、という思いが唐突に出てきた。
それを振り払うかのように、フライパンを揺らし続ける。
だが、考え始めてしまったソレを唐突に放棄することは出来ない。
どうするか……ユウキのAIDSに関しては、かなり末期だと言われている。
彼女にその話を持ち出しても多分……いや、確実に拒絶するだろう。
なら、勝手に治すか……?
それもダメだ。 あとの揺り戻しが怖い。 あるかわかんないけど。
「となると、根気にかけるしかないか……?」
「なんの話?」
「あぁ、いや……」
紗知がひょこりとキッチンに現れた。
自分一人で解決出来れば良かったが、いい解決法が思い浮かばない。
これ幸い……という訳では無いが、他の意見も聞きたかったため、ちょっと濁しながら問いかける。
「……ゲームの話なんだが、一人の女の子が病気と戦っているが、ソレの手助けをするか待っているか。 どっちにしたらいいのかなぁってさ」
「んー……私なら、手助けしちゃう、かなぁ……?」
「ほう、どうして?」
「……手助けして貰えると、それだけで勇気が出るから。 立ち向かうことが出来るから。
私も前に、誰かに助けて貰って、勇気をもてた様な気がするから……っていうのじゃ、だめかな……?」
「ダメじゃないさ。 俺とは違う意見が欲しかったからね」
ふむ……SAOの記憶が少しでもあるのだろうか?
あの砂漠の階層の……
「あ、また焦げるよ」
「わ、とっ、と……」
焦がすと文句言われる。
フライパンを揺らしながら、紗知の頭を撫でて。
「ありがとう紗知。 参考になったよ」
「どういたしまして」
ふりふりと手を軽く振りながら、キッチンから出ていく紗知。
それを見送ってから、フライパンの上を転がしていた肉料理を皿に盛り付けては、冷まし始める。
温めても美味しい、冷めても美味しい鶏皮胡麻甘だれ。
それにラップをかけてから自室へと戻る。
明日奈とユウキを追うつもりだ。
ベッドに飛び込み、アミュスフィアを被る。
「リンク・スタート」
その起動句を入れれば、即座に俺を電脳の世界へと意識を飛ばしてくれる。
短い起動プロセスと七色の虹彩が過ぎれば、目の前はもう仮想世界。
ALO内に存在する浮遊城アインクラッド・22層の森にあるログハウスで目覚める。
「
「ん、あぁ、こんにちは、セブン。 来ていたんだ」
「えぇ、仕事も一息ついたから、その気分転換も兼ねてね」
「ほう、お疲れ様」
「ありがと。 それで……引き止めたわたしが言うのもナンなんだけど、急いでなかった?」
「せやな、急いでた。 また後で」
「えぇ、
久しぶりに来ていたセブンとの挨拶を軽く済ませ、ログハウスを飛び出る。
星空色のロングヘアをたなびかせて空を駆る。
~~~~~~~~~
「……わたし、かなり扱いが雑ね。 せいどれいになれって言ったのに、あんまりそういったことしてくれないし」
~~~~~~~~~
……あれ、そういえば……現実で病院に行ってから色々やれば良かったのでは?
今更な思考が頭を占める。
現実の方が色々やりやすかったりするが……まぁいいか。
とりあえずは……と、スリーピングナイツのメンツとアスナの顔合わせには間に合ったようだ。
アスナ達の声が聞こえる位置に陣取……る前に、今の姿をセーブ。
モブっぽいシルフの姿へと体を作り替えてから陣取る。
自己紹介は既に済んでいるようで、今は作戦会議中のようだ。
……未来視みたいなチートあるかな。
チートウィンドウを久しぶりに呼び出しては、それのMOD一覧もどきを呼び出し、スクロール。
選択したキャラの未来を表示できるソレを発見しては、取得し、そのまま起動してユウキへ照準を合わせる。
………………
あぁ、そうか。 そうか……なんだ。 なら、これは必要ないな。
数分しかこの場に居ないが、気にせず立ち上がり、店の外へと出る。
「はは……あぁ、そうか……そうか……クリアが早かったからか……? それともリーファが来たからか……? なんだっていいさ。 彼女がアスナと一緒に生きているなら……」
空を見上げ、息を吐き出し、彼女の未来を思いながら、小さく零す。
俺の力が必要とならない未来。
俺の力がないと実現しないと思い込んでいた未来。
ここでは無い……いや、このザ・シードの中でもない、かの地下世界。
アンダーワールド。
そこで剣を振るう、剣神。
VRワールドではない、現実世界。
(見た目)木造住宅。
白銀の瞳を持つ管理者、紫紺の髪を持つ少女。 2人が言い争い、終いには共に笑いあう。
そんな未来が見えた。
見えてしまった。
「なんだよ、かなり色々考えてたのに、全部無駄になっちまった」
だがそれでいい。
「……あぁ、みつけた。 ここにいたのね?」
かなり歩いてしまっていたのか、路地裏に来てしまっていた。
そんな俺を見つけてくれた、水色の虹。
「……おいで?」
どんな顔をしていたのだろう。
優しく手招きをされてしまえば、抗うすべはなく、その小さな胸に収まってしまった。
情けなく、みっともなく、大人気なく、小さな女の子の胸で、泣いてしまった。
はい。
晴明がなにかする必要はなかったのよ。
晴明が来た、というだけで紫紺の妖精は回復へと向かうのだから。
自分で書いといてアレなんだけど……一瞬泣きそうになっちまったよ。
また次回、会いましょう。