転生して、カーディナルさえ検知できないチートを手に入れたから、ゲームクリアしてくる。 作:恭華
どこかの作品のキャラとかではなく、現実……いま私たちがいる世界からの転移者、という感じです。
なので、2021年位までのアニメやゲームは色々知っています。
そこを踏まえて……踏まえなくてもいいや!
ゆっくりみていってね!!!!
27層のボスを倒したアスナとスリーピングナイツは俺たちの拠点となっているログハウスでささやかな打ち上げをやっていた。
その後に1層、黒鉄宮へと向かった。
だが、そこでアスナとユウキに何かがあったのだろう。
原作通りに、ユウキはアスナの前から消えてしまった。
多分姉ちゃんって呼んだのだろう。
ユウキは自分がもう長くは無い、と感じてしまっているのだろう。
だからアスナの前から消えた。
1週間程度時間が経ったある日、晴美の下に一通のメールが届いた。
紗知の担当医をしていた倉橋からのメールだった。
晴美の主観で要約した内容はこうだった。
1週間くらい前から塞ぎ込んでしまっている患者から何人かの名前が出た。 その名前の中にセイメイが居たから連絡をとった。 何か知っていたら……
晴美はそれに返事を出した。
もしかしたらだが、と前置きをしてから
全てでは無いが知っていること。
可能な限り倉橋に伝え、その患者に会うことは可能か、というお願いもした。
最初は渋りそうな字面だったのだが、可能な限り教えたからか、OKが出た。
学校から帰ってきた上の空な明日奈にもしかしたらユウキに会えるかもしれない事を告げる。
すると掴みかかりそうな顔でどこか問いかけてきた。
紗知が入院していた病院だと教えると、すぐに行きたい、と晴美に掴みかかりそうだった。
少し悩む晴美を明日奈がじっと見つめていた。
晴美はすぐに折れたようで、明日奈のライダースーツをチートで作り出し、それに着替えるように言った。
ぴっちりライダースーツの上に羽織るライダースジャケット、プロテクターなんかも用意し、晴美は自分の姿を作り替える。
少女の見た目から大人な姿へ。
それが終われば、車庫からスポーツタイプだが少し大型のバイクを運び出す。
道路に出る前で止めると、ちょうど明日奈が家から出てきた。
すぐに明日奈を乗せ、晴美も跨がれば、横浜へ向けてハンドルを捻った。
~~~~~~~~~
学校終わりからのバイクで1.3時間。
うっすらと赤く色付く空の下、目的地である病院へと到着した。
明日奈を下ろし、中に入っては、受付にてセイメイの名前と倉橋に用がある事を告げる。
おかけになって少々お待ちくださいと言って受付の人は奥に入っていった。
少しして、眼鏡の優男……倉橋が顔を出した。
私はただの付き添いですので、と明日奈を紹介しつつセイメイはここで待つことを選んだ。
ほぼ丸投げになっているが、倉橋は気にした様子はなく、請け負った、というように頷いてから明日奈を連れて行く。
戻ってくるまで時間はあるだろうから、と病院に併設されているカフェへと足を運ぶ。
……大丈夫だよね。
~~~~~~~~
数時間ほど時間を潰していると、晴美が待っているカフェに明日奈が来た。
泣いたような微かな跡が残っているが、それを見ないようにしつつ帰るか、と晴美は明日奈を撫でた。
駐車場にあるバイクの元まで向かう最中、明日奈が
「……ねぇ、ハル君……」
と小さく晴美の袖を引っ張ってきた。
何事かと振り向けば、寂しそうな、悲しそうな、それでいて申し訳なさそうな曖昧な表情を作っている。
他人を……木綿季を巻き込む。 晴美を巻き込む。 そういった願いを持ってしまった。
そんな表情だ。
「ダメ。 他人の運命を無理矢理捻じ曲げることはしたくない。 特に、病気とか寿命とかで死ぬ運命の人をね」
「君がそれを言うのはだめじゃない……?」
「俺だからこそだよ。 あとはまぁ……死者や重病、難病なんかを治せてしまったら、今の医療が衰退していく。
俺が居なくなった後……あぁ、いや、今すぐにという訳じゃないから泣きそうな顔するなって……
まぁ、チートで病気などをかなり長い期間治していた俺が死んだりとかした場合、衰退している医学、医療はどうなる?」
「えぇと……パンクしたり、お医者さんがいなくなってたりする……?」
「そう。 そこで、俺が最初に言った医療が衰退していくってとこに繋がるわけだ」
うーん……? と説明が苦手な晴美に説明をさせた明日奈はまだ分からないと首を傾げたまま。
小さくため息をついた晴美はもっと単純に
「お金貰えないのに医者続ける人はいないでしょ。
……いるかもしれないけど」
医療機器然り、医療道具然り。
給料なんかもそうだ。
そういったものを貰ったり払ったり出来ないのに、医者、という職業につく人はいないだろう。
辻医者だろうが黒いジャックだろうが、対価を貰っているのだ。
「まぁ、要はチートを使ってまで人を治すことはしない」
「……じゃあ、医療のレベルをもっと上げたりとかは?」
「しない」
「……」
泣き出しそうな明日奈を見てしまうと、心が痛む。
仕方がない事なのだが、罪悪感がね。
「……まぁ、そんな事しなくても、いい方向には転ぶと思うよ」
ぽんぽんと頭を撫でてやりながら小さく呟く。
「えっ……それって……?」
「見てからの……というよりは……あー、なんて言えばいいんだ……? その日になったらわかる……でいいか?」
「なにそれ……」
とりあえずだ、と明日奈の頭を撫でてやりながら、停めてあるバイクの側まで行く。
「明日からもしっかり学校行くぞ?」
「……うん、分かってる」
ヘルメットをしっかり被らせ、ライダースーツのジッパーを上げさせる。
バイクに跨り、明日奈を後ろに乗せたら、割と強めにお腹周りを抱きしめてきた。
『あー……なんだ。 明日、楽しみにしててくれ』
『……えっ?』
明日奈の疑問に答えることなくバイクを発車させた。
数分後、ヘルメットに増設してあるマイクとスピーカーがあるのだが、ソレのマイクの方のボタンを操作し、同じように増設してある明日奈のヘルメットとのペアリングを解除する。
ポケットの中の自身のスマホに接続するボタンを押しては、S○riを起動する。
そのまま、どこかへ電話をかけはじめた。
~~~~~~~~~
「明日奈、着いたよ」
「……うん」
川越の自宅へと戻ってきた晴美、明日奈の2人は途中あまり話をしなかったのか、雰囲気が暗かった。
「……ごめんハル君……今日、夜ご飯いらないや……」
「分かった。 バナナとかもあるから、もしお腹すいたら食べなね」
「うん、ありがとう……」
精一杯の笑顔を見せる明日奈。
やるせない気持ちや無力さでも感じているのだろう。
わかる、すっごいわかる。
ヘルメットを俺に押付けた明日奈は家に入っていってしまった。
「……もうちょっとちゃんとした説明出来たら良かったんだけどね……
……あ、もしもし」
家の扉が閉まりきっているのを確認すれば、またどこかへ電話をかけ始めた。
「はい、はい。 例の件で、倉橋先生と……はい、お願いします」
~~~~~~~~~~
翌朝
明日奈は1人で学校に向かったようだ。
ユイから、明日奈の様子が少しおかしかった事を聞き、ちょっとやりすぎたかも、と後悔していた。
……説明の方法とか、ユイを交えればすこし変わっていたかもしれない、と過ぎた時間に後悔をして。
だが、そうもしていられない。
晴美も制服に着替え、リュック型の鞄を背負い家を飛び出す。
一応、帰還者学校の生徒ではあるのだ。 サボりがちなだけで。
サボりがちだが、今日は必ず行かなければならないと、ガレージからスクーターを引っ張り出してきた。
それには一辺40cm程の青いキューブが括り付けられていた。
それに触れないようにしつつスクーターに乗り込み、ハンドルをまわしアクセルふかして文字通り家を飛び出でる。
そのまま、明日奈の行く先を迂回しながら、学校へとスクーターを転がす。
スクーターだから割と早くつける。
ソレを駐輪場にしっかり停め、鍵とかチェーンとかでガチガチにしてから、青いキューブに手袋をしてから触れる。
ソレを括っている紐を解き、持ち上げては、帰還者学校で数多ある部活のひとつであり、晴美含め部員が3人くらいしかいない『特殊科学技術研究部』……通称とっかん部の部室へと走った。
部室の中では、校長と明日奈のクラス担任が居た。
「おはようございます、先生方。
先日は相談に乗っていただいてありがとうございます」
「いやいや、構わんよ。
病気の少女を学校に通わせてあげたい、という君の気持ちに心動かされたのだからね」
「そう言っていただけるのなら幸いです」
チートは使用していない。
そうしなくとも、この学校の校長や先生達なら快く受け入れてくれると考えていたからだ。
……実際、帰還者学校の先生をやっているのだからね。
言い方は悪いが、お人好しが多いのだ。
「それでー……その箱がそうなのかい?」
「あぁ、いえ、これは素体です。 コレにアクセスしてもらって、体を作ってー……まぁ、その話は今度ゆっくり」
ぶっちゃけブラックボックスだから分からん、という表情を浮かべる晴美。
「で、少々失礼しますね」
鞄からスマホを取り出し、とある人物へと電話をかける。
「お世話になってます、葉山です。 はい、はい。 例の準備が出来ました。
そちらは大丈夫そうですか?」
とある人物……倉橋の直通のPHSに電話を掛け、準備が出来たことを告げると、後ろから元気な声で
『こっちも準備できてるよー!』
と聞こえてきた。
問題なさそうだ。
「それでは、これから作業に入りますが……その、キューブの都合上すっぽんぽんで出てくる可能性もありますので、先生方は一旦部室の外にお願いします」
世紀の発明を見れないとは……とちょっと残念そうな2人を部室の外に追い出してからスマホをキューブの上に乗せる。
とある世界……アズールレーンの世界から呼び出した箱、メンタルキューブ。
力の与え方次第で古の艦の力を行使する少女や別なナニカを作り出せる代物。
メディキュボイドに接続されている紺野木綿季という個人から意識の波長をこのメンタルキューブへと送り、そこからユウキの体を……
……まぁ、あれだ、アバター作成と似たようなものだ。
「倉橋先生、準備出来ました」
その言葉を合図に、一度通話が切れる。
すぐに電話がかかってくるが、その電話番号は倉橋のPHSでは無い。
俺はキューブに触らないようにスマホの通話ボタンを押す。
するとすぐにキューブがどろりと溶け始めた。
ユウキの意識をコピーし、最適な体を構成しているのだろう。
多分、木綿季に1番近い姿になるのではなかろうか。
ゆっくりと、溶けたキューブがひとつにまとまり始める。
時間にして5分くらいだろうか。
5分程でユウキの体が作り出されていく。
ALOで元気よく跳ね回る
違うところと言えば、髪と瞳が黒に近い灰色、耳が人耳な位だ。
そしてやっぱり全裸。
キューブが完全にユウキの姿になったのを確認すれば、すぐさま毛布を召喚し、ユウキの上にかける。
「ユウキ、意識はちゃんとこっちに来ているかい?」
「うん、ばっちり来てるよ」
目を閉じたままにひひ、と嬉しそうに声を出す目の前のユウキ。
ほっと胸をなでおろしては、ユウキの体に触れていく。
「痛いところ、違和感があるところ、その他何か気になる箇所はある?」
「ん、ん……ちょっとまだ視界がぼやけてるかなぁ……? こう、寝起きで目を擦ったら……みたいな」
「……それなら多分時間が解決してくれるね。 じゃあ……」
「あーー!!」
「どしたよ!?」
「なんでボク全裸!?」
……それはね……と説明しながら、ユウキの体のサイズに併せた制服を鞄から取り出していく。
とりあえずはこれ着てくれ、と言っては、着替えを見ないよう、誰にもみられないように注意しつつ待つ。
「そ、そろそろ、いいよ?」
許可が出たので、そろりそろりと後ろを見る。
するとそこには、ALO寄りだがちゃんと木綿季の面影をもつ、帰還者学校の制服に身を包んだユウキが立っていた。
「えへへ……どうかな、似合う?」
「……あぁ、しっかり似合ってるよ」
一瞬涙が出そうになってしまった。
それをどうにか堪え、ユウキにイイネする。
「……なんだか久しぶりだなぁ。 校舎の匂いって言うのかな。校舎の匂いとか埃っぽい匂いとか。 VR世界だったらこんなの体験できないよ……」
なんだか目がしょぼしょぼしてきたよ……と目元をぐしぐし拭うユウキを撫でつつ、こちら側から声がかかるのを待っている校長達を入れて大丈夫かと問いかける。
「……余韻を感じさせてくれないタイプって言われない?」
「そんな余韻なんかに浸ってたら明日奈に会えないし授業にも出れんくなるよ」
「あー……よし! 大丈夫だよ」
目元を再度ぐしぐし拭い、問題ないとアピール。
それを聞いてから中に入ってきて大丈夫だと中から声をかけて。
「それで……成功したのかい?」
「はい、見ての通り。 成功しました」
「は、初めまして、
ばっ、と頭を下げる木綿季を見てわっはっは、と笑う校長。
「あぁ、すまない。 しっかり成功しているみたいだね。 おほん、私はこの学校の校長です。 よろしく、紺野さん」
「はいっ、お願いしますっ」
「で、私が君がはいるクラスの担任です」
「よ、よろしくお願いしますっ」
かなり挨拶に全力な木綿季を皆笑顔に。
「うぅ……」
だが木綿季ちょっと恥ずかしいのか、対校長が苦手なのか、周りに聞こえない音量で唸っていた。
「ふっふっふ……いやぁ、申し訳ない。
……この調子であるなら、授業を普通に受けてもらうことは可能だね?」
「そうですね。 木綿季さん……あぁ、木綿季さんと呼んで大丈夫ですか?」
「あ、はい、大丈夫です」
「それでは……木綿季さんなら大丈夫だと思います」
校長も担任もにこにこしっぱなし。
転校生が初だから、という可能性が無きにしも非ずなためだと晴美は予想している。
「それでは……葉山君、先生と一緒に紺野さんを教室まで案内してあげなさい」
「分かりました。
……ありがとうございます、校長先生」
うむうむと嬉しそうに部室を出ていく校長に頭を下げる。
同じように晴美の近くで頭を下げる木綿季に笑みが零れる。
校長がいなくなったのを確認すれば、さて、と担任が声を出す。
「それじゃあ、木綿季さん、教室にいきましょうか」
「はい。 お願いします」
木綿季の言葉に頷いた担任は、木綿季、晴美を引き連れて部室を出ていった。
~~~~~~~~~~~
はぁ……ワクワクするなぁ……!
高校生活なんてしたことないからちょっと怖いけど、それでもすっごい楽しみ!
セイメイさ……違う違う……晴美さんのお陰でアスナとも会えるし、またしたかった学校生活も出来るし……なんて言うか、ボク、幸せ者だなぁ……
「大丈夫、木綿季?」
「うん、大丈夫、大丈夫……ちょっと緊張でね」
えへへ、と晴美さんに笑ってみせる。
……うん、転校したての子って、こんな感じだったんだね。
うぅ、自己紹介とかどんなこと言えばいいんだろ……
……えぇい、そんなこと考えずに、当たって砕けろ! 砕けちゃダメだけど!!
「さ、ここですよ。 私の合図で入ってきてくださいね」
「は、はい!」
「じゃあ、私はここで見てますね」
「えぇ、お願いします」
「よし、がんばるぞー……!」
晴美さんはここで見てくれてるし、先生も優しそうな人だから大丈夫……
大丈夫大丈夫、と頭で考えていたら、先生方中に入っていった。
「……見たら驚くぞー?」
晴美さんはそんなことを言うが、なんとなく罪悪感を感じているような表情になっている。
なにかしたのかな……
「はい、それじゃホームルームの最後に、転校生を紹介します。 入ってきてください」
あ、行かなくちゃ。
ボクはゆっくり顔を上げ、教室のドアを開けて教室へとはいる。
ゆっくり、ゆっくりと。
でも、ちょっとだけギクシャクしちゃう。
ぁ……
明日奈が居た。
すっごい驚いてて立ち上がっちゃってる。
晴美さんが言ってた驚くぞーって、明日奈のことだったんだね。
にっこりと笑みを見せながら、教壇の横に立つ。
うん、落ち着いた。
明日奈が見ていてくれるんだ。
落ち着かないわけが無いよ。
「はじめまして、紺野木綿季です。 よろしくお願いします!」
でも、好きな物とか、特技とか、全部端折っちゃった。
「ありがとうございます、木綿季さん。
それでは、席は……結城さんの横が空いてますね」
そこに座ってください、と先生に言われる前に明日奈の方に向かう。
「明日奈ぁ!」
「っ……木綿季!」
抱きついて明日奈の感触を確かめたいけど、流石にみんなの前じゃ怒られちゃいそうだから手を握るだけ。
ありゃ、明日奈泣いちゃった……
どうしたんだろ?
「明日奈……大丈夫?」
「うん、うん……大丈夫、大丈夫だよ」
ぽろぽろと溢れる涙を、晴美さんが入れてくれていたハンカチで拭いてあげる。
「……ありがとう、木綿季。 もう大丈夫」
「そう? 良かった」
「あー……そろそろ結城さんは泣きやみましたか?」
「あ、ご、ごめんなさい!」
いつの間にか女子ガードがボク達の周りに出来ており、男子や先生に見せない感じになってた。
しかも、泣き止んだのを確認すれば、忍者の如くさささっと自分たちの席に戻っていってたよ。
明日奈の隣に座り、晴美さんの方を見れば、手を振ってどこかに行ってしまった。
自分の教室に戻ったのかな?
……
「ありがとう、晴美さん」
はい。
メンタルキューブのくだりにつきまして。
メンタルキューブというブラックボックスでユウキのアバターを作成。
ソレをメディキュボイドに繋がった木綿季が動かしている……
要は、ALOのユウキが現実に来た、みたいな感じです。
……アバターは、ある時までそのままユウキのまま。
……NPCsとは違うからね。
それでは、また次回、お会いしましょう。
明日奈と木綿季の再開は、悲しい結末には絶対にさせねぇ。