転生して、カーディナルさえ検知できないチートを手に入れたから、ゲームクリアしてくる。 作:恭華
活動報告の方に追加で書きなぐったものがあるからではありません。
では何故か?
……なぜ?
「はー……楽しかった!」
「それは、まぁ、良かった……なんだろうけど、木綿季、数学とか分かった?」
「ぜんっぜん分からなかった! 数学Bなんて言われても全然Bじゃないもん! 因数分解とか名前は聞いたことあるんだけどなぁ……」
明日奈と一緒に、お家へと帰る帰り道。
今日の授業……数学とか全くわからなかった、なんて話を明日奈と2人でお話しながら帰ってる。
晴美さんは用があるからって言って先に帰っちゃった。
一緒に買い物とか食べ歩きとかしたかったんだけどね。
めんたる……きゅーぶ……?
とかいうもので作った体だから、食事なんかも普通に取れるんだって。
……どんな原理なんだろうね?
「ところで明日奈……怒ってる?」
「ちょっとね。 あ、木綿季に怒ってるわけじゃないよ?」
「あー……晴美さん、かな? 内緒のサプライズだったりしたから……」
「うん、そう。 ……もー、ほんとに……」
「あはは……」
晴美さんのおかげで、旅立つ前の思い出作りや心残りが解消されるから、あまり責めないであげて欲しいけど……多分、無理だよね。
明日奈の方を見ながらそんなことを考えるけど、明日奈には気づいて貰えない。
「……はぁ……そろそろ、お家帰らないとなぁ……」
唐突に小さく呟いた明日奈に
「え、今帰ってるのが明日奈のおうちじゃないの?」
「あ……えーと、今帰ってるのはハル君……晴明君……あー……えーと、晴美ちゃんのお家なんだ。
私、ちょっと家出しちゃってて……」
「あぁ……なるほど。
……明日奈、家出の理由についてはボクは知らないし、踏み込むつもりはないけれど……
ちゃんと相手とぶつからないと、伝わらないことだってあるよ。
……あと、今言わないと永遠に言えなくなってしまうことがあるから、ね?」
「木綿季……」
お母さん、お父さん、姉ちゃん。 ボクは3人に色々教えてもらった。
だけど、皆逝ってしまった。
ありがとうも言えないまま、3人とも死んでしまった。
明日奈にはそんなことになって欲しくない。
「……ありがとう、木綿季。 私、ハル君の家に戻ったら、家に帰ってみる」
「うん、分かった」
……明日奈なら大丈夫だよ。
明日奈は強いから。
口には出さなくても、この気持ちは伝わってると思いたい。
……口に出すの、ちょっと恥ずかしいし……
~~~~~~~~~~~
そんなこんなで葉山家についたんだけど……
「武家屋敷……って言うんだっけ……おっきいね……」
「そうだね……っていうか、なんだか少し大きくなってる……?」
なんだかいつもと違う、と明日奈が困惑してるけど、なんでなんだろ?
「そりゃあ、隣の家買い取って広げたからね」
玄関の扉が開き、中から晴美さんが顔を出してきた。
買い取ったってなに……?
「ん、いやぁ、最近うちの家族が増えまくってきたからね。
家大きくするためには隣の……あぁ、桐ヶ谷家とは反対のお家と後ろのお家を買収しなきゃならなかったのよ」
んー……?????
百歩譲って、買収は分かるけど、そんな短期間で家って増築できたっけ……?
「増築はちょっとずるしたけど気にしないでいいよ」
思考でも読んだのか、晴美さんから先出しされてしまった。
気にしないでもいい、なんて言われたら気になっちゃうんだよねぇ……
でも世の中余計なことに首を突っ込まないのが長生きの秘訣って姉ちゃんに言われてたし……
「ま、とりあえず上がって上がって。 木綿季の部屋は明日奈の部屋の隣に用意してあるから」
「……あ、ハル君……!」
ボクを案内しようとしてくれている晴美さんを明日奈が呼び止める。
「私、その……1度家に帰ろうと思うの」
晴美さんぬき明日奈を見つめる目がスっと細くなる。
値踏みをしているのだろうか、真意を探っているのだろうか。
不思議な視線。
相槌などはなく、無言で続きを促している。
「母さんに謝って、今の自分を知ってもらって、今の私が見ている世界を見てもらいたい。
ここが私の、私たちが生きるもうひとつの世界だって知ってもらいたい。
だから……」
ちらりと晴美さんの方を見てみると、細めていた目が閉じられていた。
呆れていたりもう知らない、というような表情ではなく、笑顔だった。
「あぁ、行っておいで。 しっかりとお母さんに分かってきてもらいなね。
……と、なると……ログハウスに誰かいると不都合だから……
ユイ、ログインして皆を狩りに誘っておいて」
「はーい、分かりました!」
明日奈と明日奈のお母さんだけで話し合いが出来るように晴美さんが……ええと、ユイちゃん……? に声を掛けていた。
「ありがとう、ハル君……!」
「おうよ。 しっかりお母さんにぶつかって、しっかり自分の伝えたいことをぶつけてきなね」
「うん!」
「……あ、ストレア、明日奈送ったって」
「はーい」
……色んな女の人の声がするけど、ここはシェアハウスなのかな……?
今聞いただけでも、明日奈、晴美さん、ユイちゃん、ストレア……さん?の4人。
いっぱいいそうだなぁ……なんて考えていると、晴美さんに手招きされた。
それについて行きながら、明日奈にいってらっしゃい(?)をする。
返答してくれた明日奈の表情は明るく、陰は見当たらなかった。
~~~~~~~
「で、こっちは明日奈が使ってた部屋で、こっちが今日から木綿季の部屋だよ。 家具なんかは備え付けのものを使ってもらって構わないけど、もし模様替えとかしたかったらいつでも言ってね。 STR値が高い俺やストレアが手伝うから」
「あ、ありがとう。
……ねぇ、晴美さん、ボクのこの体っていつまで……あ、ううん、なんでもない……」
「あー……まぁそうだな。 リハビリ終わるまでかな」
「えっ……?」
「あー、いや、リハビリ始めたあたりがいいかなぁ……」
「えっ、えっ……?」
「まぁ、どっちでも問題ないか。
木綿季なら、しっかり自分の足で立てる」
「それって、どういう……?」
「木綿季はさ、明日奈と会ってから、何となく体の調子が良くなってきてたり、周りがなにか変化したりしてる気はしないかい?」
「……たしかに、ちょっと動きが良くなったり、先生の表情が明るくなってる気がする」
「だろう? つまりそういう事だ」
「む、む……どういうこと?」
「そういうこと。 それ以上は今は言えんなー」
「ぶー……」
~~~~~~~~~
それ以上言うと、どうなるか分からないから。
晴美が見た未来は変わってしまう可能性がある。
固定観念ではないか、思い込みではないか。
と晴美は心の隅で考えてはいるが、危ない橋は渡りたくない。
そのため、少しぼかしつつリハビリ頑張れ、と言うだけに留めた。
アウトだと言われそうなものだが、その程度であれば修正は効くだろう。
それはそれとして、だ。
木綿季に葉山家での生活の仕方を教えては、今家にいるメンバーと顔合わせをさせようと考える。
「木綿季、人見知りはしないかい?」
「唐突だね? まぁ……人見知りはしないけど」
「なら問題はなさそうだね。 後で皆を紹介するよ。 それまで荷物整理したり確認したりしておいてね。 足りないものがあったらいつでも声掛けてくれい」
はぁい、と小気味良く返事する木綿季を置いて部屋を出る。
……メンタルキューブを通して、今の木綿季の本体は少しずつ回復するだろう。
というかしてある。
してくれなければ困る。
そんな考えをしつつ部屋へと戻る。
「……はぁぁぁ……」
詰めていた息を吐き出す。
ひと仕事……いや、ふた仕事位終わらせたような気さえしてしまう。
脆く繊細な蜘蛛の糸を手繰り寄せるが如く。
木綿季の運命を回復への道へと固定させる。
そのためのメンタルキューブ。
「……ちょっと、疲れた」
ベッドへと倒れ込み、小さく、誰にも聞かれないように嗚咽を零す。
部屋の扉が締まりきっておらず、何人かに見られていることに気が付かずに。
晴明君が疲れ果ててるからですね。
彼最近動きたがらない。
こう……空間勃起力が枯渇してきてます。
性欲はあるのに気力がね。
「じゃあ来週はボクの出番かなー?」
「いえ、せっかくなので私が……」
なんかいい妄想できないかなぁ。
「無視された!?」
では、また次回お会いしましょう。