転生して、カーディナルさえ検知できないチートを手に入れたから、ゲームクリアしてくる。 作:恭華
ポケットを叩けばクッキーが増えます。
ビスケットじゃないです、クッキーです。
牛乳を飲めば元に戻ります。
ついでにポーションの効果も消えます。
不思議の国のアリスではなく、マイクラの話でもないです。
……それは置いておいて。
ようやくアンダーワールド編のスタートです。
待ちに待った……というやつです。
……アンダーワールド編の構想からスタートしたこのシリーズ、ようやく一番最初のページに戻ってこれました。
まぁ、当初予定していた話からまったく別なものになりましたが。
それでも続けてこられたのは、見てくれている方々、評価を下さる方々、お気に入り登録してくれる方々、毎話感想くれてる方。
皆さんのおかげです。
100話位までかかるんじゃね? なんて言ってたのが懐かしいです。
……まぁ、それはそれとして、アンダーワールド編が終わってもまだまだ話は続ける予定なので、是非最後までゆっくりしていってね。
第35層・Welcome to Underworld
……体が痛い。
この痛みは……コンクリの壁にもたれかかって寝た時の痛みだ。
痛みにそんな感想を抱きながら軽く目を開ける。
暗い。
いや、暗い訳では無いが、壁材や床材が黒いせいで暗く感じるのだろう。
かなり遠くに配置されている窓から射し込む光はなんだか赤いし。
「なんだったら体も重いし……って……なんじゃこりゃぁ!?」
体に関してはいつも通り。
いつも通り星空の髪、ストンとした胸。 手も体の作りも小学生位のソレと一緒。
なのだが、その体を覆う漆黒の鎧が違和感を垂れ流している。
なぜ鎧なんか装備しているのか、と疑問が頭に浮かぶ。
これには何となくだが答えは出せる気がする。
チートを使って装備を出した可能性。
まだ夢の中という可能性。
このふたつだろう。
では、何故晴明はこんなところにいるのだろうか?
記憶は無い。
わからない。
理解できない。
夢?
にしては感触がリアルすぎる。
では、VR世界なのだろうか。
夢と同じ理由で違うと言える。
ではなんなのか。
「まぁ、どうせ……」
硬い椅子から立ち上がり、赤い光を部屋の中へと招き入れている窓へと近づく。
ソコから見下ろせば、黒い岩壁や電気とは違う、火を用いた灯りを灯す街並みが見える。
「あぁ……やっぱりアンダーワールドか」
アンダーワールドだということが分かってしまえば、今俺がいる場所は自ずと分かる。
ダークテリトリー、オブシディア城。
それも、玉座の間だろう。
「なーんーでー???」
ここは普通ルーリッド村からスタートでしょうや!
ユージオと会ってアリス探すんだーみたいな事になって……じゃないの!?
今まで原作通りに進めてきたせいか、立てていた道筋が全て粉砕された。
まぁ、それも半分近くは行き当たりばったりだったから良かったといえばよかったのだが。
どうするべきか。
とりあえず、クィネラやリセリスを捕獲するのは確定として。
何人かしっかり捕獲もとい拉致もとい奴隷にして……
なんて考えていたのだが、ドコドコと大多数の足音が響いてきたため思考を止める。
~~~~~~~~~
謁見の間という場所が王城にはある。
セイメイは足音が途絶えてから玉座の間を出ては、迷いながらもどうにか謁見の間へとたどり着いた。
中からはかなりのざわめきが聞こえてくる。
……場違いでは無いだろうか。
なんて締まらない思考が浮かんでは消える。
深呼吸をし、意を決して謁見の間の扉を開ける。
『『『『ッ!?!?』』』』
なぜだかみんな一気に静かになり、息を飲んでいるように思える。
入る場所間違えた?
仕方ない、と小さく息を吐くと、堂々と左右に別れた人垣の真ん中を歩き進む。
左側が拳闘士ギルド、右側が暗殺者ギルドだろうか。
拳闘士ギルドの方からは息を飲む音がまた聞こえるが、暗殺者ギルドの方からなんだか幼女だ、幼女……なんて声が聞こえる。
そうです、幼女です。
なんて答えた日にはかなり変な目で見られてしまうだろう。
いや、ベクタ名乗ってるから多分大丈夫だとは思うけど。
ひとまずは玉座に着いた。
やはり足が短いから時間がかかる。
しかも少し玉座高い!
よっこいしょ、と後ろ向きに飛び跳ねないと座れないという欠陥を後で直すよう指示を出すことを忘れないようにしつつ、大仰に足を組んでみる。
準備できたよ。
というような念を送ってみると、入ってからずっと頭を下げていたであろう頭領やら族長やらが頭を上げた。
「私、商工ギルドの頭領を務めております、レンギル・ギラ・スコボと申します」
1番右、恰幅のいい橙色の毛並みのおっさんが初めに名乗り、次いでジャイアント族、オーガ族、オーク族と続く。
拳闘士ギルド、暗殺者ギルド、山ゴブリン族、平地ゴブリン族と順々に名乗りを上げていく。
ここまでは原作通りだ。
次の暗黒術師ギルドの総長であるあいつがなんて言うか。
「暗黒術師ギルド総長、ディー・アイ・エルと申します。 我が配下術師三千、そして私の心と体は、全て陛下のものですわ」
惜しげも無く晒したデカ乳を持ち上げるように腕を組み、恥ずかしげもなくそう言ってのける見た目美女。
原作通りすぎるD・I・L。
小さく笑ってしまいそうなのを堪えつつ、最後に残った顔に傷を沢山残す歴戦の戦士へと目を向ける。
この戦士だけは頭を下げ、ずっと目を伏せたままでいる。
「暗黒騎士団長、ビクスル・ウル・シャスター。
……我が剣を捧げる前に、皇帝に問いたい。
今この時に玉座へと戻った皇帝の望みは奈辺にありや」
セイメイのことを見極めようとする声音と共に、射抜くような視線を向ける。
原作通りにやってしまえば1番楽ではあるが、セイメイは闘争には興味が無い。
「ふむ……そうさな。 余は殺戮や闘争にはトンと興味が湧かなくてな。
余が求るは、余を裏切り天界より余を追いやった神共への報復。 そのために必要である神々の代行者、かの地を治める司祭、アドミニストレータの掌握である。
ただし、ただし、だ。 殺戮や闘争に興味が湧かぬと言ったが、認知せぬと言った訳では無い。
故に、殺しは許さぬ。 略奪を許さぬ。 侵略を許さぬ」
「……なんと」
シャスターと名乗った男が驚愕の声を漏らす。
ソレをかき消すように殺したがり共から不満の声が上がる。
「静まれ。
……余は貴様らに死ぬな、と言うておるのだ。
殺戮や闘争は人間を無駄に消費し尽くす。
それは余を天界より追いやった神共がやっていることとなんら変わらぬ。
そんな神共と余を一緒にしてくれるな」
少しだけ寂しそうな表情をしながらそう言ってしまえば、ゴブリン両族以外が黙ってしまった。
「……だが、先に向こうから手を出してきたら、やり返しても良い。
むしろやり返せ。
やられたらやり返せ。
倍返しだ」
沈黙。
後に咆哮にも似た雄叫びが謁見の間を包む。
「うっさい!」
ダンッ!!と右手で玉座の肘掛を台パンすると、一瞬で静まり返ると共に、玉座が粉砕した。
~~~~~~~
「やっぱりカブリエルみたいにいい感じに演説出来ないなぁ……少佐すれば良かったかな」
暗黒界の十候とその配下達の謁見が終わったあと、オブシディア城内をうろうろし始める。
「でもなぁ……カンプグルッぺとかこの世界じゃ伝わらないだろうし……」
まず吸血鬼じゃない。
小さくため息を吐き出しつつ、構造がまだ把握出来ていない城内をうろうろ……
「……陛下? どうなさったのですが、このような場所で?」
びくりと身体震わせ、声をかけられた方へ目を向ける。
そこには暗黒術師ギルド総長 ディー・アイ・エルがいた。
「……余の部屋が分からなくなってな。
迷った!」
一瞬言うか悩んだが、言わないとまた別な人探したり地道な部屋開け作業が待ってるだろうからと考え、迷ったと返答した。
「……なるほど、承知しましたわ。
それでは私がご案内して差し上げます」
「頼む」
「それでは、お手をどうぞ?」
何故か手を差し伸べてくるディー。
子供じゃねぇんだが? という視線を送るが、それをひらりと躱すように
「オブシディア城は割と段差が多い場所ですわ。 今の陛下のお身体では越えられない段差も。
ですので、私がすぐに抱き寄せ……ごほん、転ばぬようお支えできるように、ですわ」
今抱き寄せられるようにって言わなかった?
そういうことなら仕方ねぇ、というように差し伸べられた手に手を重ね、繋いで。
そのまま何も起こらず、それどころかオブシディア城を案内してもらってから居室へと送ってもらった。
「すまぬな。 助かったぞ、ディー・アイ・エル」
「勿体なきお言葉です、陛下」
「……あと、少しの間だったけど、楽しかったぞ」
扉を開け、中に入り、扉を閉める瞬間にぼそり。
部屋の外から、ありがとうございます……! となんだか嬉しそうな声が聞こえた。
~~~~~
鎧を脱ぎさり、鎧掛けのようなものにかけてから部屋を見回す。
かなり広い部屋だ。
バルコニーに繋がるいくつもの吹き抜け……吹き抜け?
部屋の中央には良さげな硬さのソファ二脚とテーブル。
別の部屋に繋がる扉も3つあるが、多分トイレと風呂と寝室だろう。
「……風呂はいって寝るか」
幼女……見た目10歳程度になっているため、体力もその程度になってしまっているのだろう。
かなり疲れている。
気疲れ、という線もあるだろうなぁ……なんてだらしなく考えながら、ディーに教えてもらった大浴場に行くために用意をする。
商工ギルドがマッハで仕上げたのだろう、かなり触り心地のいい絹の下着にサテン生地の……ローブのようなドレスのようなもの(これしか無かった)を手に取り大浴場へと向かう。
……そういえば、メイドとかはいないのだろうか?
そんなどうでもいい思考を頭の中で回しながら、案内してもらったおかげですかなり早く着いた大浴場の中へとはいる。
大浴場、と言う割には脱衣場などがなく、扉をくぐった瞬間から湯気がぶわっと来た。
「凄いなぁ」
呟きながら、そのまま歩を進める。
きょろきょろと浴場を見回せば、籐かごが置いてあるのを発見。
すぐにそれに寄り、今着ている服をそれに畳んでおき、その上に持ってきた下着類を乗せる。
湯船の方に向かい、頭洗おうとするも
シャンプーやらボディソープはみつからないため、諦めてお湯でちぴちぴじゃばじゃば。
……そういえば、シンイ……妄想力みたいなのがあればそれが現実化するとか言ってるよね。
なんて考えが浮かんだセイメイは今目の前にシャンプーがあるという妄想を実行する。
チートで呼び出せば1発だろう、とは考えずに実行を続ける。
……結果的には成功なのだが、無から有は上手く作り出せないのか、不格好なシャンプーとなってしまっていた。
仕方なしとそのシャンプーと新しく作りだしたボディソープで体を洗っていく。
体と髪を洗い終えたセイメイは、シンイで作ったシャンプーなどを元に戻してから、お湯が溜まった湯船へと飛び込んでいく。
「うー……あー……」
思わずそんな声が出てしまう。
体が幼児だからか、はたまた別の理由があるのかは不明だが……とてつもなく気持ちいい。
……誰か呼ぶか?
一緒に入れとセイメイが言えば誰だろうと入るだろう知らんけど。
晴明の体に戻ってシャスターと男同士の付き合いでも……あー、いや、股間負ける気がするからヤダ。
なら……と考えていると
「陛下、失礼致します」
「をん……?」
「暗黒騎士団所属、リピア・ザンケールと申します」
「あぁ、いらっしゃい」
「お背中をお流しに……と、要らぬ世話でしたでしょうか」
「……え゛、もしかしてちゃんとした石鹸とかあった……?」
「は……あ、いえ、大浴場に常備のものは無いので、私のものを使ってと考えていたのですが……」
ぬあぁぁ……そういう系だったのか……
なんて頭を抱えてしまったセイメイ。
「ぬぬぬ……城下で売ってる?」
「はい、売っております。
……宜しければ後ほど買ってきますが……」
「あぁ、いや、気にしなくていいよ。 後で視察ついでに買いに行くから」
それはいいのだろうか、なんて表情でセイメイを見つめるリピアなのだが、何となく大浴場に入ってきた時と雰囲気が変わっている気がする。
「……じゃあ、まぁ……とりあえず。
今日の仕事が終わってるなら少し付き合って欲しいな」
「は、かしこまりました」
「んじゃ、ゆったりしてるから、しっかり洗ってからおいでね」
そう言って湯船から立ち上がり、大浴場から露天風呂に繋がっているように見える扉の方に向かう。
露天風呂とか、よく分かってるじゃん暗黒界人。
なんて楽しげなセイメイ。
~~~~~~~
「あの皇帝が何を考えているかを知りたい」
閣下……シャスター様が私に命じて下さったのはそれだけだった。
いや、それは命令ですらないだろう。
ただの独り言だったのかもしれない。
だが、皇帝ベクタが女体であるのなら、女の体である私が近づき、真意を、考えを探るに適しているのでは無いか。
そう考えるに至った。
だから、背を流すという名目で近づいたのだが……
なんというか、拍子抜けだった。
私が入っても特に気にした様子もなく、あまつさえ私に付き合え、と言ってきた。
……悪い意味や悪い人(神……?)では無いのだろうと、石鹸のくだりの時に考えてしまっているが、気を引き締めなければ。
体まで洗い終わり、皇帝を探すが、露天風呂にてすぐ見つかる。
「こっちこっち。 ちょっと風があるから風邪ひかないようにしっかり浸かるんだよ」
調子が狂いそうなほど呑気な声に、実際調子を狂わされる。
「は、はい……」
皇帝の言葉に従わない、なんてことは出来るはずもない。
「それで、だ……リピア」
「な、なんでしょうか……?」
「キミ……シャスター好き? 付き合いたい? なんならいっそ子供……あぁ、いや、それ無しだ、無し。 そこまで出歯亀精神持ち合わせてないしそれは当人達のアレだ俺が出張っていい話じゃないとりあえずシャスターが好きかどうか、結婚したいかどうかだけ教えてくれ」
「な、は、えっ!?」
は??
この皇帝は何を聞いて……何を言っているのだ。
「え、と……すき、ですし……結婚も……できれば……」
私も私で何を言っているのだ!?
その返答を聞いた皇帝は大きく笑い出した。
「はっはっは! なるほど、いいな、良い。 初心だね! 素敵だ。
そうかそうか……。
で、あるなら、ば……だ。
とっとと人界にいるあいつらを捕獲して結婚式とか挙げないとだね。
……あ、でも先に……」
ぶつぶつと考え事を始めた皇帝の横に座っている私は頭を沸騰させる。
恥ずかしい、言ってしまった、シャスター様になんと言ったら、あぁでももし……
なんて、生娘みたいなことを考えて……いや、生娘でないと言えば嘘に……ええい! 地の文にまで恥ずかしさを出さないで!
……とりあえず、危険度は無いがかなり危ないと閣下にご報告しないと……
まだ体の芯までは温まっていないが、この場にいてはならない、と心が悲鳴を上げている。
「そ、それでは陛下、お先に失礼致します!」
「ん、あぁ、おやすみ……かな?」
なんて、呑気に手を振ってくる皇帝に騎士礼をし、足早に大浴場から出ていく。
……後でなんて言おう……
~~~~~~
リピアァ、お前、ホント可愛いなァ?
うろたえる様が可愛いと思ってしまう不思議な感覚。
あ、これがSっけでしょうか?
そんな感覚が湧き出てしまうような狼狽えっぷりを見せてくれたリピアは大浴場から出ていってしまった。
まぁ、俺も体温まったからそろそろ出るとしよう。
……後で神聖術……ではなく、暗黒術をディーにでも教えてもらうとしようかな。
ついでに暗黒術師ギルドの可愛い子を食べにいこうかな。
リピア可愛い。
だがリピアを食べる気は無いぞ。
しっかりシャスターと幸せになってもらうんだからな!
原作じゃあ幸せになれなかったんだ、ひと時の夢ても二次創作でもなんでも、幸せになれなかったぶんしあわせにしてやるんだよ!
……それは置いといて、ようやくアンダーワールド編の1話を書けましたが、いかがだったでしょうか。
リピアやシャスターの台詞が少ないせいで上手くエミュ出来ませんが、2人には幸せになってもらいたいですね。
それでは、また次回に。
……あ、1話抜かしたわけじゃないよ?