転生して、カーディナルさえ検知できないチートを手に入れたから、ゲームクリアしてくる。 作:恭華
ワーカーホリックかしら。
……あ、今回は歌わないよ。
「……なんだ、これは……」
央都セントリアへと到着すること自体は簡単だった。
だが、門を守る衛兵も、町人すらいなかった。
否、いた。
いたが、既に死に体。
女子供は犯され、男はいない。
「野郎……」
空間が歪む。
ギシギシと音を立てて、空気が罅割れる。
ガタガタと時の針が音を立てる。
「……」
ふぅ……と小さく息を吐くベルクーリ。
「今ブチ切れてもしょうがねぇ、連中をぶち殺す時まではこの怒りは取っておかなきゃならねぇな……」
時穿剣の柄を握りしめ、ギチギチと音を立てている。
何も言えない。
何も言わない。
俺は暗黒界側の神だ。
慰めも同情もしてはいけない。
それは、彼への冒涜に他ならない。
死者や犯された者たちを貶めてもならない。
それは、彼への……いや、全てへの侮蔑に他ならない。
ガへリスを連れ、ベルクーリから離れる。
チートは使わない。
使ってはいけない。
~~~~~~~~~
「……あいつら、既に色々とやらかしてくれたみたいだな」
「あいつら、ですか?」
犯された後の残骸が散らばる通り……跳ね鹿亭のあった通りのカフェにあった、無事なテーブルに座り、現状を推察する。
推察、とはいっても大それたものではなく、ガブリエルやヴァサゴがどこまで行動しているかを考えるだけ。
……この惨状はヴァサゴ主体だろうけど。
「ガヘリス」
「はい」
「……ブチ切れたら抑えてね」
「かしこまりました」
誰を、が抜けているが、しっかりと読み取ってくれたようだ。
小さく苦笑いを浮かべ、傍に立ったままのガへリスに座るよう促そうとした所でベルクーリが戻ってきた。
「わりぃな、1人にしてもらっちまって」
「いや、気にするな」
殺気は消え去ってはいないが、それでもやるべき事等は分かったようだ。
「さて、じゃあ、乗り込むとするか」
小さく息を吐き、カフェチェアから立ち上がるが
『あー、あー、聞こえておるか?』
「カーディナル?」
周りをキョロキョロしたり、頭に手をやったりしながらカーディナルの姿を探す。
だが、頭にシャーロットがいたり、カーディナルが近くにいたり、といったことは無かった。
『うむ、わしじゃよ』
あがs
「どうしたんだ、急に。 というか、遠距離通信術なんてあったんだね」
『うむ。 まぁ、それは置いておくとして、まずはわしの大図書室に行って貰えぬか』
「大図書室? カーディナルが前にいたあそこか?」
『その通りじゃ。 あそこに入ってもらえれば、追加の援軍なんかをこちらから送り込めるぞ』
軍置き去りにしてきて追加援軍デスカ。
後でシャスターにドヤされそうだ。
まぁもしドヤされたら、カーディナルの連絡が遅かったからだな、と言うようにしよう。
「なんで先に言わなかった?」
『仕方なかろう、遠距離通信術式なぞ考えておらんかったからな。 アリス達のおかげじゃな』
「ん、アリス?」
『うむ。 荷物運びを少し手伝ってもらってな』
アリスとカーディナルの2人が何かを運んでる姿を思い浮かべながら、同年代みたいなみためだし、いいなぁ。 なんて考える。
「見た目だけじゃ。 それ以外は彼女達とは違うぞ」
「分かってるわかって……まて、カーディナル、さっきから彼女”達”って言ってるが、アリス以外にも手伝ってもらっていたのか?」
「あぁ、確か、ドロシーと言っておったな。 その少女がアリスとともに手伝ってくれた。
彼女は暗黒界側の人間じゃが、同年代だからか、子供らと仲良くなっておるぞ」
「へぇ」
心の声をガッツリ聞かれていた事に気づかずに、仲良くしてくれる子がいることに嬉しく思える。
『そろそろ本題にもどろうかの』
「おぉ、忘れてた。 大図書室に入るにはどうすればいい?」
『うむ、カセドラル周辺に点在している扉を通るのが唯一の道じゃ。
……じゃが、大図書室を離れる際に、いくつもの扉を埋めてしまってな。 今残っておるのは3つ。
カセドラル外部のバラの庭園、カセドラル内部3階の武器庫前、あとは……すまぬ、これは忘れてくれて良い』
「えー」
『おほん、それで、行けそうか?』
「バラの庭園ならなら行けなくはないな。 とりあえずソレを目標にして中に入る」
『うむ、任せた』
カーディナルの声が聞こえなくなったのとほぼ同時にガヘリスが声をかけてくる。
「カーディナル様はなんと?」
「あぁ、アリスが探してた事、ドロシーって言う友達が出来たこと、大図書室に向かって欲しいこと。 この3つだったよ」
「ドロシーが……そうですか……」
ドロシーを知っているのか、ガヘリスはなんとなくだが嬉しそうな表情を浮かべている。
「ん……そろそろ行こうか。 ベルクーリも大丈夫そうか?」
「ん? あぁ、問題ねぇよ」
よっこいせ、と座っていた木箱から立ち上がるベルクーリ。
それを見てからカセドラルへ続く道へ向かう。
~~~~~~~~~
「ところで、ドロシーってどんな子なんだ?」
「はい、リピア様の孤児院に引き取られた子供です。 リピア様や私が戦闘訓練を施しておりまして、鎌の扱いが上手いのですよ」
「へー! 帰ったら会いに行ってみようかな」
「はい、ご紹介させて頂きますね」
そんな雑談をしながら歩いていたが、前を歩いていたベルクーリが不意に止まった。
つまりぶつかった。
「わぶっ……どうしたベルクー……」
手でこちらを制止したため、すぐに黙る。
チートを利用し、透明で羽音も聞こえないドローンを飛ばす。
カセドラル南門。 かなりの大きさのある、通常であれば閉じているはずのソレ。
今は開門しており、その中央には紫のマントを付けた鎧の騎士が居た。
「ファナティオ……」
ボソリと、覗いていたベルクーリが呟く。
その手はわなわなと怒りで震え、時穿剣の柄を握りしめている。
「回収するか」
「なに?」
「殺さずに回収する。 洗脳とかは解けるか分からないから、後でカーディナルに見てもらう。 それでいいな?」
「……助かる」
時穿剣の柄から手を離すことは無いが、それでも少しは顔つきが変わった。
「騎士達の回収は俺に任せろ。 2人は危なくなったら援護してくれ」
「わかった」
「かしこまりました」
「よし、行ってく」
『エンハンス・アーマメント』
飛び出そうとする刹那、武装完全支配術を発動したファナティオ。
まずいと思う間もなく佩いていた剣を抜き放ち、鋒を少し上に逸らして相対する。
放たれたソルスの光を剣の鋒程度で逸らせる訳もなく、薄い胸を貫く。
「ミ゛ッ……!?」
胸を貫いてもそのビームは止まらず、切り払いに掛かる。
だがそれよりも先に、ベルクーリとガヘリスは動き出している。
「1人と、思うなかれ」
『それはこちらも同様』
駆け出している2人の足元に、2本ずつ赤い矢が打ち込まれ、1度県政射撃をしてから連射の体勢にはいる。
「デュソルバートか……!」
上空に、いつの間にか出現していた飛竜。
その上に跨った赤い騎士。
その騎士が持つは『熾炎弓』
矢が切れ弦が切れようが、なんか偶に火の矢を
デュソルバートは2人の体を射抜くべく足止めし、ファナティオは俺の事を真っ二つにするために剣を振り抜く。
あ、やべ、これは勝てないかも。
光に貫かれたまま、時間が止まったような錯覚をする。
『あなたはそれでいいの?』
胸に歌を秘める、傷を持つ少女が問いかける
「いいわけないだろ」
反論をする。
『だよね。 それじゃあ貴方に2つ質問。 あなたは、好きな人はいる?』
「いる」
『じゃあ2つ目、その人が悪い子になってらみんなを困らせていたらどうする?』
「それ、今関係あるか……?」
『んー……無いかな。 でも、聞かせて欲しいな』
「……たとえどんな理由があろうとも、俺は手を伸ばし続ける。 払われようが斬られようが、俺は手を繋ぎ続ける」
『……うん、それなら、私も力を貸してあげられる。 私の名前はーーー』
時間が元に戻り、俺の体は上半身と下半身に分かたれた。
どさりと体は倒れ、俺が死んだことを確認したファナティオはデュソルバートの援護に向かうために意識を逸らした。
「……『Balwisyall nescell gungnir tron』」
小さく、だがしっかりとした歌を死んだハズの体から紡ぐ。
心装擬態だが、本来のものとは全く違う。
だが術式は起動した。
『なっ……!?』
「いつだって、貫き抗う言葉は一つ!」
星空色の髪は短く切り揃え、ぴっちりタイツっぽいインナーに、インカムを備えたヘッドホン、黒いマフラー、両腕には半円柱のような機械が取り付けられ、両足には機械ブーツ。
「だとしてもッ!!」
新たな姿へと擬態した俺は、無我夢中でファナティオをぶん殴り、吹き飛ばす。
すぐさま右腕の半円柱に手をやり、銃のスライドを引くように手前に引き伸ばせば、それに連動すように半円柱が形を変え、ジェット機構が腕に形作られる。
「はぁぁぁぁ!!」
『やめ』
「ない!」
アフターバーナーで一気に空へ駆け上がり、腕でガードしようとしたデュソルバートを打ち抜き、飛竜から打ち落とす。
『かはっ!』
カセドラルの外の地面タイルも、破壊不能と言われているが、それを忘れさせるがごとく地面を陥没させる。
今なら捕獲できる。
すぐに左手たでチートを起動し、捕獲用の網を作り出す。
「ゲーッチュ!!」
青く光る網をデュソルバート、ファナティオの順で頭に被せて捕獲する。
「あ、4待ってます」
「……2人とも、大丈夫?」
「あぁ、なんとかな」
「私も負傷はありません」
「それよりもお前さん、今のはなんだ? 姿が全く別な娘っ子になってたが……」
既にガングニール……立花響の心装擬態を解除しているため、いつものロリスタイルに戻っている俺に問い詰めてくるベルクーリ。
「……え、一般的な術式じゃないのか?」
「1度だけ最高司祭殿が別な姿になっていたのを見てことがあったが、それ以外だと見たことは無いな」
「そっかぁ……本当なら使い方とか教えたいけど……俺のはなんかまともに起動しなくてな……後でカーディナルに聞いてみてくれ」
なんだか納得できない、というような表情でこちらを見てくるベルクーリ。
そんなベルクーリにファナティオ達がどうなったかを先に伝えてやれば、良かった、とは言わないまでも、さっきまでの殺気が少なくなっていた。
さっきだけに。
はい、立花響さんが遊びに来ました。
え、ユウキがやるんじゃないの?
「本当にな。 なんでなん?」
え? なんとなく。