転生して、カーディナルさえ検知できないチートを手に入れたから、ゲームクリアしてくる。 作:恭華
……とりあえず、新しい剣を探しに行かなきゃね。
見事に真っ二つに割れたカリバーンを左手で掴んだまま、ストレージに収納しようとする。
すぐにポリゴンに変換、破砕音を響かせながら消えて行かなかった事から、折れた状態のままのアイテムになったのではないかと考えられるのだが、この時の俺は焦っていてそんな事を考える余裕は無かった。
「え、え……えっと、ストレージにしまって取り出して……も折れたまんま変化ないし……えっと、えっと……?」
おろおろびくびく、折れたままのカリバーンを再度出現させれば、大きな胸の谷間に挟み込むように抱きしめ、51層へと続く螺旋階段の方へとダッシュする。
みんなを置いて行くような行動をしつつも、みんなは何も言わずについてきてくれている。
かける言葉が見つからないだけかもしれないけど。
とりあえずは51層の主街区、転移門のある場所へとたどり着けば、転移門をアクティベート。
すぐさま50層主街区、『アルゲード』の街へと転移。 エギルのいる店へと駆け込んだ。
「こりゃあまた……ぼっきり折れちまってるじゃねぇか……」
「なんか、50層ボスを倒したらこうなった……」
エギルとは1層のボス戦の後からずっと仲良くしている。
原作のキリト同様、色々売り買いし合って親交を深めており、この姿になった後も、「バグでこうなった」と嘘を言いながらも、そんな感じで仲良くしている。
「ふむ……折れたカリバーン……か」
顎に手を当て、じょりじょりと音がしそうな髭のあたりを人差し指の腹で撫でるようにしながら、「カリバーン、と言えばアーサー王の話だよなぁ……」と呟くエギル。
「アーサー王って言えば、エクスカリバーだよね?」
「あぁ、そうだな。 誰か詳しい知り合いとかはいないのか?」
折れたカリバーンを机の上に置きながら、俺の後ろにいる、ユイ、ユナ、リーファの3人を見る。
他のみんなは拠点の宿に帰っているが、何かあればすぐに駆けつけられるようにしている。
ユイとユナは首をかしげているが、リーファだけが顎に手を当て
「……たしか、カリバーンが折れたあと、アーサー王は湖の貴婦人に会いに行って……そう、そこでカリバーンの代わりの剣を貰っているわ!」
ぴこーん、と頭の上に電球を幻視しそうなリーファの笑顔に眩しいなぁ、と目を細めながら、「そんな感じの情報とかは……」とエギルに目線で問いかければ
「無論、俺よりアルゴの方が知っているだろうな」
との返答。
まぁそりゃそうだと頷けば、アルゴにメッセを飛ばす。
「『カリバーンが折れた。 何か剣を直したり、新しい剣を貰ったり出来るクエストはないかな』……っとこんな感じでいいかな」
メッセージを送信すればすぐに返信がくるアルゴなのだが、今日はその気配がない。
忙しい用事をこなしているのかもしれないと、少しの間待ってみることにしつつ、エギルに要らない装備品を押し付けていく。
その中には魔剣クラスの物もあり、「こっ、これを俺の店に売ってくれるのか……!?」と悶えていたが、俺はカリバーンがあるし、ユナはSTR要求の高いものは好まないし、リーファは片刃の剣がいいみたいだし、と答えてやれば、じゃあ遠慮なく、とストレージそれらを仕舞いつつ、それらの最安値のコルを俺に送ってくる。
「まいどー」
にっこにこしているエギルは怖い。
……まぁそれは置いておいて、だ。
アルゴからのメッセージはまだ来ない。 フレンドは解除されてないから死んではいないが……少し心配だな。
「ン、マァあんまり心配しなくていいんじゃないカ?」
「確かに、アルゴだもんなぁ……ってアルゴ!?」
「ヨっ、元気にやってるカ?」
「……ボチボチだ」
ここでアルゴになんだかんだ言っても躱されそうだから、敢えてボチボチと告げる。
けたけたと笑うアルゴだったが、すぐ真顔になり
「それデ、カリバーンが折れたっていうのは本当カ?」
「あぁ、50層ボスを討伐し終えた時にぽっきりとね」
「そうなのカ……ん、そういえば……いヤ、不確かなモノを顧客に渡すのハ……」
うーん、と悩み続けるアルゴ。
不確かなモノというのが気になるが、まぁ今は気にしないでおこう。 アルゴが言い出すまで待機だ。
だが数秒後には意を決した様な顔をして顔を上げるアルゴ。
「不確かな情報だガ、それでも買うカ?」
「寧ろアルゴの情報を買わないっていう選択肢がない」
「……ハハッ、そうカ……ナラ教えてやるゾ。
……ここ、50層の端の方にある村でナ、おじいちゃんNPCが『湖の貴婦人の救済を』という話を延々と話し続けるらしいんヨ。
そのおじいちゃんNPCが出現したのは極最近。 お客からの情報だト、ホンの3時間前だっテ話だナ。
オレっちも行こうと思った矢先に、セー坊に呼び出されたってワケダ」
3時間前、それはつまり俺達がボスモンスター、ティアマト・ザ・ロアードラゴンを狩り始めた直後を示している。
……ただの偶然かもと考えれるが、今の俺にはその偶然に縋ってでもカリバーンを直したいという思いがある。
「ン、行くナラオレっちも連れてケ。 折れたカリバーンがどんな事になるのか気になるンでナ」
ついでニ情報料代わりダ、といい笑顔で言うアルゴに、仕方ないなぁ、という表情とパーティー申請で了承を示す。
すぐにパーティー申請を受諾したアルゴは、「じゃあ着いてきナ」とDEXにモノを言わせてエギルの店を飛び出す。
俺達も店から飛び出し、アルゴの背中を追う。
俺達の後ろから、「また来いよー」というエギルの声が聞こえた。
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長い長いおじいちゃんNPCの話が終わり、ようやくクエスト受注画面が出現した。
もちろん受諾する。
「……長すぎだろこのじいちゃん……」
「こんなNPC、設置してないはずなんですけど……」
リーファの背中でぐったりしているユイは、こんな長話するNPCは設置していないはず、と考えているようだ。
それはそれとして、今のおじいちゃんNPCからクエストを受注したことにより、貴婦人がいるらしい湖の場所が特定出来た。
アルゲードを挟んで向かい側にある大樹の傍に、小さな湖があるようで、そこに行けばカリバーン(話の中では折れた聖剣だった)を直せるようだ。
ぐったりしているユイをかわりばんこで背負いながら、反対側に向かって全員で突っ走る。
道中のMOBは容赦なく(ユナが)切り伏せ、数分の時間を経て目的地である大樹の根元に到着する。……のだが、肝心の湖がない。
「んなバナナ……いや、粉バナナ……」
謎な事を言っているが、とりあえずはこんな馬鹿な、と言いたい事だけはわかって欲しい。
取り乱したまま目の前の大樹に寄りかかり、「えー、なんだっけー、何かあったっけー、あのおじいちゃん何か言ってたっけー」とぷるんぷるんおっぱい震わせながら考えるが、何も出てこない。
「きゃっ!?」
すてーんと音がした方を見てみれば、ユナが足を滑らせて、大樹の向こう側の方へと落ちていったようだ。
「なにやってんのさー……」
「ご、ごめんなさい……」
うー、という顔をしながら、大樹に寄りかかっていた俺に引っ張り出されるユナ。
だがユナのおかげで気がつけた事もあった。
さっきまで俺が寄りかかっていた方とは反対側、森が生い茂る方に目を向ければ、そっち側が大きく窪んでいる。
水があれば、湖と呼べるほどの広さで。
「だけど肝心の水がないんじゃ、ただの窪みだよなぁ……」
うーむ……と何も思い浮かばないからとストレージから折れたままのカリバーンを取り出す。
はぁ……と溜息を吐き出しながら、じー……とカリバーンを眺めること数秒。 あることに気がついた。
よぉくみないと分からなかった事だが、カリバーン自体にうっすらと淡い光がまとわりついており、その光が大樹の方へと伸びていた。
「……これ、丁度同じ大きさの切れ目……」
カリバーンの折れた刃と同じ大きさの切れ目が大樹に刻まれており、そこに向かってカリバーンの光は伸びていた。
突き刺せ、という意味だと直感的に感じた俺は、ゆっくりとその穴に差し込む。
途端に辺り一面は光に包まれ、周りにいたみんなが見えなくなった。
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ちゅんちゅん、ちちちち……
小鳥の囀りで目が覚める。
さっきまでの光はなりを潜め、辺りは暖かい陽射し、気持ちの良い水のせせらぎが世界を占めている。
辺りを見回しても敵MOBも仲間たちもいない。 だが、目的のモノを見つけた。
湖。
俺が目覚めたこの大樹のある小島を中心に、湖が広がっているようだ。
大樹の横には、日本風に言うところの東家……西洋とかで言うとなんなんだろうか、な薔薇の庭園とかにありそうなフレームだけの茶屋……みたいな場所がある。
「なんだ……湖に来れば、貴婦人に会えると思ったのに……」
「あら、私に会いに来てくださったのですか、今代のアーサー……?」
ビクン、と体を跳ね起こし、今までしなかった人の気配の方へと視線をやれば、真っ白いドレスに身を包んだ、キャリバー編に出てきたフレイヤの様に美しい女性が楚々と立っていた。
はい(真顔)
……湖の貴婦人の名前って複数あるからどれにしようか悩み中です。
それはそれとして、頭ん中いっぱい詰め込みすぎているせいで変な感じになっちゃいましたが、いかがだったでしょうか?
次回は久しぶりのえっち回になると予想します。
私自体まだまだ想定していないのでどうなるか分かりません。
晴明がまったくよく分からない方向に走っていく。