ざっくり内容&要素
・上記のまま
子供の頃にいくつかの物語を読んだことがある。その物語の共通点は「迫害されているエルフ、獣耳付き、羽付き等の非人間族が心の優しい主人公に救われる」ことだった。その頃から顔が理由で虐められていた自分にとっては、「非人間族を救う人がいるんだったら、この顔の自分を救う人間はいるはず」と希望を持って生きてきた。
しかし、人間とは思えない顔と見なされて避難所に入れてもられなかったり、醜い顔だからと盗賊に見逃されて囚われた他の人には「いい顔でよかったねぇ」と皮肉られてきた。
所詮、あの物語の主人公も「顔さえ良ければどのような種族でも構わない奴」だったんだろう。
「大流行の異形病や獣化病に人間が立ち向かうべき」という演説を聞いたことはあるが、どうせ美しい顔の人間が手を組んで立ち向かうんでしょ。
もし、こんな世界をこんな顔で嫌われ続ける人生だったら……捨ててやる。
薄暗く湿った森の中、一人の女性が縄を首にかけて木に吊り下げられていた。首吊り死体だ。
森の中の首吊り死体、これは異形病等が流行する前からあった光景だ。主に悪事を働いた罪人をこうして絞首刑にして悪人を減らすだけでなく、見せしめに首吊り死体を晒していた。
罪人だけではなく、運の悪い被害者も残酷な娯楽としてこのような最期にされてしまうことがある。
しかし、女性の遺体には襲われた傷痕がない。見て分かるのは、彼女の顔が正直言って美しくない。
醜い顔で生きていくのが苦痛で耐えられなかった彼女が森で首吊り自殺したのだ。怪物が存在する世界に絶望した自殺者はいるが、己の顔に絶望して自殺したのは彼女だけだ。彼女を愚か者と見るか、美醜の差の被害者と見るかは人それぞれが勝手にすることだ。
彼女を吊り下げているローブに植物の蔦が絡まっていた。ローブを木にかける時に絡まったと普通は思う。だが、この蔦は普通ではない。木の枝からローブに絡まった蔦が急成長して伸び続け、吊り下げられている醜女の死体に向かっていく。
この森は無数の植物の怪物で出来ている場所であり、急成長の蔦もその一つだ。醜女の項に到着した蔦は枝分かれし、彼女の全身に広がっていく。蔦の端が遺体の四肢に到着した後、大きめの葉が一斉に生え出して遺体を覆った。
覆った葉で遺体の全身が見えないが、時々揺れると同時に葉の隙間から赤い液体が地面に零れ落ちていくことから、中身は見ていられない状態になっているだろう。
数時間後、葉に覆われた醜女の遺体を吊り下げるローブと蔦がちぎれ、遺体が地面に落下した。貼り付いていた葉が全て剥がれ落ち、醜女の遺体が露わになった。だが、蔦に覆われる直前の姿とは全く異なっていた。
うつ伏せで倒れている上半身は蔦に絡まっている女体だが、緑色に変色していた。
下半身がもっとも変化していて、花弁で出来ているロングスカートの下には無数の蔦がうねっていた。
そして、両腕を地面について身体を起こした彼女の髪から一輪の花が咲いていた。
植物の異形――アルラウネに変化した醜女は無数の蔦で立ち上がり、どこかへ向かっていった。「水、水……」と呟いて。
森の中にあった池に蔦を浸らせるアルラウネ。植物になり水分を求めた醜女が見つけた場所だが、そこの水面に映る顔を自分の顔とは思えなかった。
「この……美しい顔が私……?」
自殺する前、鏡の中の醜い自分の顔を見て割ったことが何度もあった。しかし今、自分が見ている水面には「自分の顔だったら」と願っていた美しい顔が映っていた。自分の顔に両手を触れると、水面に映る顔も同じタイミングに両手で触れていた。片目を閉じると同じタイミングに片目を閉じた。
水面に映る顔の持ち主を理解したアルラウネだったが、それでも信じられない。異形化による幻覚かもしれない。
「おお……!」
男の声が聞こえ振り向いた。青年が池のそばに立っており、アルラウネを見つめていた。青年は馴れ馴れしく近寄りながら話しかけてきた。
「そう警戒すんなよ、怪物だからって殺さねえよ。俺はエンドウ、怪物と友たちになる男だ」
……聞いてもいないのに、自分のことを話し続ける青年。アルラウネの前で立ち止まり、彼女の全身をジロジロと見ていた。こういう奴は可愛い女の子には声をかけまくるが、醜い子には一切話しかけないタイプだ。
「君って人間の顔してて可愛いな~。人間の姿をしている怪物は人間と仲良くなりたい奴だって俺は知ってるぞ!」
どこから聞いたそんな情報。アルラウネは人間時に読んでいた物語の主人公を「顔と体が美しい人間である他種族目当ての人間」だと確定し、その場から離れようとする。しかし、青年が立ち塞がってこう言い続ける。
「まあまあ、いくら君が怪物だからって可愛い子をほっとけねえよ! 俺と一緒にいれば安全だし、なあ!」
黙って聞いていたアルラウネは我慢の限界に達していた。蔦に絡まった両手を花弁のロングスカートに伸ばし、開こうとする。その動作に青年は興奮した様子で喋りだす。
「えっ!? それオッケーなの!? いやー初対面の男にそれって、君は積極的だなー、俺それ好きだぜ。この前の猫耳の女の子なんか生意気な事を言うから肉便器に――えっ?」
危険すぎる言葉を発していた青年が呆気に呆然とした表情になる。
魅力的な股が隠れていると思ったロングスカートの中には、無数の蔦がそれぞれ意思を持っているかのようにうねっていた。その蔦が一斉に青年に襲いかかり、四肢を拘束した。
身動きが取れない青年は抜け出そうとしながら、アルラウネを罵倒する。
「てめえ、騙しやがったな! そうやってエロい格好で男を誘い、このグロい触手で襲いやがって! てめえはブサイクなバケモ――」
本性を現した青年の言葉が不意に止まった。彼の服に入り込んだ二本の蔦、一本は陰茎にキツく巻き付き、もう一本はアナルに挿入していた。
四肢を拘束され、陰茎を巻き付かれたまま扱がれ、尻穴を蔦にピストン運動されている青年は不快感と望まぬ快楽で顔を歪ませていた。
それを冷ややかな目で見るアルラウネは腰から一本の特殊な蔦を伸ばしていく。下半身の蔦とは異なるそれは、先端が口になっている蛇のような触手であり、青年の頭に近づける。大きく開く触手の口に青年は恐怖で涙を浮かべた。
「ゆ、ゆるして……」
しかし、顔と女体で狙うような男の命乞いは通用せず、頭をまるごと触手に咥えられた。くぐもった悲鳴を上げるも、肩、胸、腹とゆっくりと体が呑み込まれていき、上半身が触手の口内に入り込んだ。
蔦にシコられていた陰茎が精液を放つも、それが青年の最後の射精となり、下腹部を呑み込まれ、足先も呑み込まれたことで青年の体は完全に捕食されてしまった。
しかし、青年は死なせてくれない。アルラウネの体内に生かされたまま留まり続け、半永久的に少々溶かされて栄養にされるのだった。
醜女だった美しいアルラウネは外道な青年を体内に留めた為、しばらくの食事は困らないだろうと考えていた。