※この作品はR-18です。

ヒトデナシ R-18   作:影絵師

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 今回は強い女性が格下に下剋上される小説を書いているオルフェイスさんhttps://syosetu.org/user/244304/の「(元)竜女帝ヘルベリア」https://syosetu.org/novel/261529/とのコラボ小説です。
 ヒトデナシの二次小説を書いてくれるだけでなく、今回のコラボを募集したところを応募して頂きました。
 ヒトデナシの世界に来たヘルベリアが、そこの住人と交流する物語です。
 今回と次回(予定)は健全ですが、最終回はR-18になる予定です。
(なので、「なんでR-18のシリーズに健全のを載せるんや」と思いますが、R-18の話に繋ぎますのでご了承願います)


【コラボ小説】 ヒトデナシ×下剋上される女の話 【前編】

 気がつけば真っ暗な空間にいた。前後左右を見渡しても何も見えない。

 足元の違和感に気づいた。地面に立っている感覚が全くなく、宙を浮遊しているようだ。

 

「気がついた?」

 

 幼い声が聞こえると同時に、辺りに赤く薄い光が走って消えた。何度も赤い光が間隔を空けて瞬く。その赤い光の光源に気づき、その方向に振り向くと、驚きを隠せられなかった。

 そこには、いくつかの生々しい管を放射状につけられた赤い光の玉が存在していた。その玉の表面が何かの膜に覆われており、内臓のように脈打っている。

 それを眺める少女が宙を浮いていた。正確にはこちらに背を向けている様子だ。

 少女はこちらに振り返ると、前まで移動してきた。そして先程聞こえてきた声で挨拶してきた。

 

「ようこそ、私の体(世界)へ。私はゼノノアっていうの」

 

 目の前にいる少女は人間の姿をしているが、人間ではないことだけは理解できた。

 フード付きコートのような肉々しい服で全身を隠しており、左右それぞれが青と赤の二つ結びをフードから出している。

 そんな彼女がジロジロと見てきては、こう聞いてきた。

 

「気がついたら変な場所にいて、知らない私に話しかけられて困ってるんでしょ? あなたがここにいるのはね、私が連れてきたんだよ。どうして連れてきたかって? 面白そうだから!」

 

 無邪気に笑う彼女――ゼノノアに警戒心を抱く。

 

「大丈夫だよ。これからあなたが私の世界でどう過ごすかを観察して、飽きたら元の世界に帰してあげる♪」

 

 こいつは何を言っているんだ……そう思った瞬間だった。赤い光が不気味に点滅する空間に真っ白な光が照らし尽くした。眩しさに思わず目を瞑り腕で顔を隠すように覆う。

 そして、異世界からの来訪者(というより、無理矢理連れてこられた)である自分は、ゼノノアという異形の少女のものである世界へと吐き出されるのだった。

 

―――

 

 朝日が登る森の中、人の形をした蝶が枝を何本か拾っていた。

 先端が黄色、青、赤の三色に染まった短い黒髪。そして、額から触覚が伸びている無機質な仮面の顔と、鮮やかな蝶の羽で出来た動きやすいドレスの身体を持つ少年――ヴァネッサは、この近くで仲間と共に野宿をしていて起きたばかりのようだ。消えそうになっていた焚き火を点けなおそうと、枯れた枝を薪代わりにいくつか手に取っていた。

 

 少し足りないけど、ないよりマシかな。

 

 そう思って、彼は野宿をしていた場所へと戻ろうと歩き出そうとした。

 

 ドスンと何かが落ちる音が聞こえた。それもかなり大きな音だ。

 

 その音に驚いて立ち止まり、音が聞こえてきた方向に顔を向ける。触覚で気配を探ってみると、何らかの生き物がいるようだ。しかし、仮に木から落ちたとしても、これほどの大きな音をたてる大きさの生き物はいなかったはずだ。

 警戒心より好奇心が勝ったヴァネッサは持っていた枝を手放し、落ちた生き物がいると思われる方へ向かう。

 するとそこには、女性が横たわっていた。銀髪を地面に広げて倒れている女性の姿を見た瞬間、ヴァネッサの動きが止まる。

 

 ……人間? いや、違う。

 

 着ている服は東洋の大国を思わせるデザイン、体つきこそ胸が大きいだけの人間のそれだが、明らかにおかしい部分があった。

 彼女の肌には鱗が生えており、腰辺りからも尻尾が伸びている。顔には頬に線を引くように生える蒼色の鱗と、銀髪から生えている一対の捻れた角があり、その片方がへし折れていた。

 

 人の形をした爬虫類――それもドラゴンの類だ。

 

 瞼を閉じて胸を上下させる彼女はまだ生きているようだが、気を失っているらしい。

 ヴァネッサは悩んだ。このまま竜の彼女を放置して仲間に伝えるか、彼女を野宿していた場所まで運んで手当するべきか。

 後者を選びたいが、仲間の一人である“人外嫌いなカマキリの少女”が怒るかもしれない。そんな考えが頭をよぎったが、すぐに首を横に振って迷いを捨て去る。

 ヴァネッサにとって、仲間の事情はどうでもよかった。ただ、目の前で倒れている竜の彼女を放っておくことが出来なかった。

 彼女を背負った彼は野宿をしていた場所に戻ることにした。背中に当たる大きい乳の感触を我慢しながら。

 

 

 

「なんでこんな化け物を連れてきたのよ!?」

「だ、だって……ほっとけなかったんです。こんな森の中に置いてくのは危険ですよ」

「私にとって危険かもしれないじゃない!」

 

 少女の怒声とそれに対する少年の弱々しい反論の声を聞いて、気絶していた竜の女性は薄っすらと目を開ける。

 最初に見えたものは、青空が見える森の真上だった。大きい乳が実っている上半身を起こして周囲を見渡すと、そこは焚き火を中心に置いた野営地だと分かる。

 そして自分の隣にいる少年と口論している少女を見て、彼女は混乱した。

 

 虫を模した仮面と鎧を身に着けている? ……それにしては動きが滑らか過ぎる。

 

 緑がかった金髪の少女は蟷螂を連想させる緑色の細い鎧に身を包み、額に触覚と単眼がある仮面を顔に装着している。だが、その仮面の裂けた口を器用に動かし、怒声を放っている。

 それに反論しているのは、先端が黄色、青、赤の三色に染まった短い黒髪の少年……蝶の羽を模したドレスを着ているが、雰囲気で男だと分かった。額から触覚が伸びている無機質な仮面を着けていて、少女と同じように裂けた口を動かして喋っているのだ。

 何が何なのか分からない状況の中、竜の女性はふらつく足取りで立ち上がろうとした。

 

「動くな」

 

 少女とは違う女の声が背後から聞こえ、同時に首筋に冷たい物が当てられる。視線だけ動かすと、剣――刀が首に突きつけられていた。

 

 それを理解した瞬間、竜の女性は反撃に出る。

 その刀を握って引っ張り寄せ、相手の体勢が崩れたところを狙って裏拳を叩き込もうとしたが、相手も反応が早く、素早く後ろに飛び退いて回避された。

 竜の女性はすぐさま立ち上がり、刀を突きつけてきた女性を睨みつける。そして相手の容姿に驚いた。

 極東の島国で使われる鎧――当世具足に似た防具を着ているが、竜の女性が驚いているのはそれじゃない。

 

 なんだ? その獣の頭は……

 

 口と鼻が前に突き出ているマズル、鼻を境目に上が灰色で下が白色の毛、黒く長い髪から生えている鋭い三角耳、まるで狼の頭を被っているようだ。

 いや、狼の頭そのものだ。獣人だ。後ろ腰辺りから灰色の尻尾が生えている。

 そんな狼の獣人が刀を構えて立っている。その目は鋭く、敵意が籠っていた。

 

「お前は何者?」

 

 狼の質問に対し、竜の女性は答えることにした。構えを崩さず、そのまま名乗りを上げる。

 

「吾の名はアリウス・セル・ヘルベリア・ザーナイン。ザーナイン帝国を支配する竜女帝だった者だ」

 

 竜の女性――ヘルベリアの言葉に、狼の獣人が聞き返した。

 

「……何、その国名は?」

「知らぬのか? 数々の国が蔓延った一つの大陸を平らげ支配した我が国家は恐れられて当然だが、まさか知らぬ者がいるとは」

「知らない」

 

 即答した狼の獣人は刀を鞘に収める。本来なら相手に戦意が無くとも挑んでいたが、竜の女性――ヘルベリアも構えを解いた。

 口論を止めて見ていた少年と少女は、戦闘が収まった事を確認すると、狼獣人の側に立つ。蟷螂の鎧を身に着けた少女は腕組みでヘルベリアを睨み、蝶のドレスの少年は不安そうな表情を浮かべていた。

 沈黙が続く中、先に口を開いたのは蝶の少年だ。彼は仲間を含めた自己紹介を始める。

 

「えっと、僕はヴァネッサです。この子はマティスで、この人は狼奈です」

 

 蝶の少年――ヴァネッサが名乗ると、刀を得物とする狼の獣人――狼奈はマズルを上下に振って軽く会釈し、蟷螂の少女――マティスはわざとらしく顔を反らす。

 ヴァネッサとマティスの身動きを見たヘルベリアは、二人は「鎧を装着したただの人間」ではないと気づく。狼奈が“人の形をした狼”なら、ヴァネッサとマティスは鎧のような身体を持つ“人の形をした虫”だ。

 

「狼はともかく、虫の鎧を着た貴様らは人間ではないな?」

 

 そう確認するヘルベリアの言葉にヴァネッサは言葉を失い、マティスは怒りの形相で振り向く。

 

「あんたと違って私は人間よ! 馬鹿にしてるの!?」

 

 マティスがヘルベリアに迫る瞬間を目にしたヴァネッサは、慌てて二人の間に割って入り、ヘルベリアに自分達の事を説明した。

 

「ま、待ってくださいよ! 確かに見た目は違いますけど、僕たちはれっきとした人間だったんです!」

「……どういう事だ?」

「それは……ちょっと待ってください。もしかして知らないのですか? 僕達“ヒトデナシ”のことを」

 

 ヴァネッサの質問に、「知らん」とヘルベリアは首を横に振った。「人でなし」の意味は知っているが、ヴァネッサが言っている「ヒトデナシ」はどういうものかは全く知らない。

 彼女の答えにヴァネッサ達は驚きを隠さずにいられなかった。

 

 自分が治めていた“ザーナイン帝国”を知らない人型の虫と獣。

 それに対して、今は常識であるはずの元人間の異形“ヒトデナシ”という概念を知らない竜人。

 

 お互いが異なる世界の住人だと、彼らはまだ知らなかった。

 

―――

 

 そんな光景を、体内を連想させる生々しい異空間で見ていた者がいた。

 

「初めて異世界の住人、それも私のお気に入りのマティスちゃんと出会ったね。おめでと、元竜女帝ちゃん」

 

 暗闇の中から聞こえる声は、まるで子供のように無邪気な声だった。

 声の主は、内臓を思わせるフードの付いたコートを着た少女――ゼノノアだ。左と右がそれぞれ青と赤の二つ結びが宙に漂っていた

 彼女は笑みを浮かべ、ヘルベリア達が映る光景を眺めていた。

 

「ふふっ、これまで他所の異世界に行ってきたけど、こうして他の世界から連れ込むのもいいね。早く会って、種明かししたいなぁ~♪」

 

 ゼノノアが見つめているのはヘルベリアだ。

 なんとなく別世界を観光していた時、ヘルベリアが最強の竜女帝として帝国を治めていた事を知った。彼女がとある理由で女帝の座から降り、別大陸に向かっていたところをこちらの世界に連れ込んだのだ。

 異世界の住人であるヘルベリアを連れ込んだ理由は、面白そうな変化が起きそうな気がしたからだ。

 

「でもその前に、別々の世界の者達が強敵に立ち向かうの見てみたいな。だから、刺客を送っちゃうね」

 

 思いつきで行動する彼女にとって、行動を起こすのはいつも突然だ。

 これから起こる出来事に胸躍らせながら、ゼノノアは刺客に相応しい自分のお気に入り――頂点者を選ぶのだった。

 





○オルフェイスさんと知り合った経緯
 今回のコラボを申し込んでくれた作者オルフェイスさんとは、私がリクエスト募集していたところを彼が「蟲姫が格下に犯される」リクエストを申し込んだきっかけで知り合いました。

 その時は「リクエストしてくれる読者の一人」と思っていたのですが……

・“ハーメルンで個人的に好きな作品”のリストにヒトデナシを入れている
・ヒトデナシのとあるエピソードを参考にしたシリーズを書いている
・「ヒトデナシの二次創作を執筆したい」と呟く(許可しました)

 ……ヒトデナシのどこが魅力的に思ったのでしょう?(感謝してます、ありがとうございます)
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