誰得? 俺得です。これまで「誰得?」的なリクエストを引き受けて来ましたので(それらはリクエストを送った人得ですが)。
大地が乾き切っており、植物や動物が存在しない砂漠。
そんな空間に口のような穴が開き、そこから何かが降りてきた。
内臓を思わせるフード付きコート、赤と青の二つ結び、赤い瞳。
ゼノノアである。彼女は自分が出てきた口に目を向け、ため息を吐く。
「あの世界に行くの、もううんざり」
ゼノノアは自分が出てきた口に向けて手を伸ばす。袖口から出ている手を握りしめると、空間に浮かぶ口が消え去った。
この世界で人間を殺しては同族に変える存在――ヒトデナシを生み出したゼノノアは、自身の能力を応用して様々な世界を行き来していたが、ここ最近は異世界に行くことが少なくなってきた。
理由は簡単。飽きたのである。
ゼノノアは自分の影響を広める為に、退屈しのぎに異世界を渡り歩き、そこの人間を現地のモンスターに変えることを楽しんでいた。
しかし、自分の思い通りにならない事があり、それが嫌になってきたのだ。
偶に異世界で楽しい事があって、そのことを知り合いに話したくなることはあったが、戻ってきた自分を出迎える者はいない。何故なら自分が帰ってくる事を伝えていないからだ。
異世界への移動には負担がかかり、帰った直後は弱体化してしまう。その隙に自分の命を狙う者は山ほどいる。
「お帰りなさいませぇ、ゼノノア様ぁ~」
……例外はいる。
ゼノノアが異世界から帰ってくる時、高確率で出迎える頂点者がいる。帰ることを一切伝えていないのに、異様に発達した感覚器官である光輪で察した狂信者である天使モドキがゼノノアの元に現れるのだ。
背後から聞こえてきた天使の声にため息つきながら振り返り、労いの言葉をかけようとするゼノノア。
「お出迎えご苦労――」
背後にいた変わり果てた――ゼノノアの手で人間から変わり果てた異形の姿をしているが、予想外の姿をした天使モドキにゼノノアは口を止める。
背中から生えている骨が見えるほど腐った三対の羽に白く濁った液体が付着して滴り落ちていた。雄のヒトデナシの精液だ。
天使の頭上に浮かぶ神経節で出来た光輪には、精液が詰まった半透明の小袋をいくつか結ばれている。
いつも着ている修道服はなく、露わになっている乳房の谷間には溜まった精液が乾燥しているのが見え、あばら骨が浮かぶ脇下にもこびり付いていた。
下半身も白濁液が塗られていない面積が少なく、隠そうとしない陰裂と菊門から大量の精液がボドボドと垂れ落ちている。
異様に小さい瞳が特徴の顔も白濁液がこびり付いており、それでも笑みを浮かべ続けている。
レイプ事後。それも大量の雄に輪姦された直後の姿だった。暇つぶしとして頂点者の中で雌である蟲姫や歌姫やガーデナー、そしてアンティルウェンが格下の雄に犯されるのを見ていたゼノノアがよく知る姿だ。
しかし、ゼノノアが変えた自身の身体を異常に大切にしている天使モドキは、他者に触れられた瞬間「穢した」と激怒して殺してしまう筈だ。疑問を抱くゼノノアに、全身にザーメンを纏う天使モドキが答えを告げる。
「ゼノノア様が前に言ってたじゃないですかぁ。『多くの格下ヒトデナシに抱いてもらったら、私を好きにしていい』ってぇ。ですからぁ、ゴミ共にこの身体を差し出してやったのですよぉ?」
「……あの言葉を本当に信じてたの?」
「勿論ですぅ! だってぇ、ワタシにとってあなたが全てなんですものぉ!」
呆れ顔になるゼノノアの前で、天使モドキは赤らめた頬に両手を当てる。
自分が全て。つまり、ゼノノアの為なら何でもする、自分の身や命も犠牲にしてまで。
そんな考えを持っている天使モドキを見て、ゼノノアはある意味感心していた。
嫌いじゃないけど……バカだね。
頭が宗教に支配された村で生まれ、その教えを冒涜する行動を取ったため親を含む村人全員から凌辱されて近隣の森に捨てられていた少女をゼノノアが作り変えたのが、この天使モドキだ。
子は親に似るという言葉が当てはまるのか、自分の手で殺した両親のように天使モドキもゼノノアを信仰しており、彼女に対して盲目的なまでに忠実だった。同じように変えてきた頂点者達は若干反抗心があったので、自分に忠実な存在がいても面白いとゼノノアは考えていた。
しかし、少々つきまとっていたので「私を好きにしたいなら、格下に抱かれて」という命令を天使モドキに出していた。ゼノノアに変えられた自身の身体を他の者に触らせるつもりはないと思っていたが、予想に反して天使モドキは実行した。そして、ご褒美としてゼノノアを好きなようにできる権利を待っているのだ。
いくら命令を聞いてくれたからって、見返りがある訳がないのに。ザーメン塗れの天使モドキを見つめながら、ゼノノアは背中を向けてこう言ってやった。
「やーだよ」
「えっ……?」
ゼノノアの言葉に天使モドキの動きが止まる。
彼女は理解できなかった。自分が心から崇拝している存在から、自分の行為を否定する言葉が発せられたことに。
信じられないといった表情で固まる天使モドキに、背中を向けたままのゼノノアが言葉を続ける。
「もしかして、私があなたに何かしてくれると思ってたの? 馬鹿だねぇ。私はそこまで優しくないし、お人好しでもないよ」
クスッと笑うゼノノアの声に天使モドキの身体が震え、付着している乾いた精液が落ちていく。
この方はワタシを救ってくれた。だから、この方の為に尽くしてきた。それなのに……どうして?
悲しむ天使モドキにゼノノアが振り向かずに続ける。
「どっかに行ってよ。ゼノノアさんはつまんない異世界から帰ってきて疲れてるの。あなたの相手なんかしてられないの――」
ゼノノアが追い払おうと手を払った瞬間だった。フードで隠れているうなじに何かが突き刺すような激痛が走る。
「いっ!?」
ゼノノアの視界が一瞬だけ暗転すると同時にフードが取れて地面に落ちて、ゼノノアのうなじが露わになる。
皮膚がなく脊髄が浮かんでいるうなじには触手が刺さっており、それは天使モドキの頭上にある光輪から伸びていた。痛みで顔を歪めるゼノノアに天使モドキが笑いかける。
「確かにお疲れのようですねぇ。ワタクシ程度の攻撃を避けられないはずがありませんものぉ」
天使モドキは自分の頭部の光の輪から伸ばした触手を彼女のうなじへと伸ばしており、そこからゼノノアを操ろうとしている。
必死に抵抗しようとするゼノノアだが、「異世界を行き来する」という行為で体力を消耗しているため、思うように身体を動かすことができない。触手で天使モドキに引き寄せられたゼノノアは、天使モドキと向き合う形で、両腕だけでなく、背中から生えている三対の腐った翼で包まれるように抱きつかれた。
乾燥した白濁液がこびりついている顔に笑みを浮かべている天使モドキとは対照的に、ゼノノアは不愉快そうな表情を見せる。
天使モドキの触手がゼノノアの体内を虫のように侵食しているからだ。
「……嘘つきな私が嫌いになっちゃった?」
「まさかぁ! ワタクシがゼノノア様のことを好きだからですよ。愛しています。愛しています。あぁ、本当に素晴らしい! この世の上位存在である貴女様に、こうして触れられるなんて!」
ゼノノアは天使モドキから逃げるために力を振り絞って離れようとするが、天使モドキの力の方が強くて抜け出せない。その間にも天使モドキはゼノノアに顔を近づけていき……互いの唇が重なった。
天使モドキの舌がゼノノアの口内に侵入し、歯をなぞるように舐め回す。レイプされていたからか、精液の臭いも残っていた。ゼノノアは嫌悪感を感じて吐き出そうとするが、天使モドキに身体の自由を奪われて吐き出すことができず、胃の中に精液が混じった唾液が入っていく感覚が伝わってくる。
長い時間かけてキスをしていた天使モドキが口を離すと、二人の口から糸を引いた。
「いひひひっ。とても美味しかったですよぉ、ゼノノアさまぁ」
ゼノノアを象った聖像を生きた人間で制作してきた天使モドキは、異形の少女とキスをしただけで満足できるわけがない。
天使モドキはゼノノアを腐った翼で抱きかかえると、空いている手で彼女のコートを剥ぎ取った。
首から上は幼い少女と変わらないが、上半身と下半身はそれぞれ肋骨と骨盤を模した外骨格で覆われており、四肢も同じ材質の甲殻に覆われている。その関節などの隙間からは、血管や神経系が混じった筋組織のような管状の器官が覗かせていた。
人間から見れば悍ましいゼノノアの身体を天使モドキがまじまじと見つめると、感嘆の声を漏らした。
「あぁ、美しいぃ……。これこそ、まさに芸術品。これから行う行為を想像すると、興奮してしまいますぅ」
天使モドキの指先がゼノノアの胸部である肋骨を模した外骨格に触れると、ゼノノアの身体がビクンと跳ねた。
本来なら何も感じないはずなのに、快楽に近い刺激が襲ってくることに困惑する。
そんなゼノノアの反応を見て、天使モドキはニヤリと笑う。
「ふっふっふ。ワタクシが貴女の感覚を弄っているんですよぉ。でも安心してください。貴女に痛みを感じさせることはしませんからぁ」
そう言って天使モドキはゼノノアの胸に手を伸ばし、彼女の胸である肋骨の形をした甲殻に摩り始めた。胸から伝わってくる感触に、ゼノノアの身体が再び震える。
「やめて」
ゼノノアは自分の身体を好き勝手に触られる不快感と、自分の意思に反して反応してしまう身体への羞恥心から甘い声を漏らす。が、その声を無視してゼノノアの身体を貪り続ける天使モドキ。
「その表情! ゾクゾクしますよぉ」
天使モドキは片手でゼノノアの剥き出しの腹筋を撫で回し、もう片方の手を彼女の骨盤を模した外骨格へと伸ばす。
骨盤の隙間には骨盤底筋が露わになっており、そこにあるものが何かを理解したゼノノアは、無駄だと理解しながらも警告してやる。
「それ以上やったらどうなるか理解してる?」
「してますわぁ。でも、もう我慢できないんですからぁ」
天使モドキの指が大陰唇をゆっくりとなぞり、次に小陰唇との隙間に指を埋めて掻き回す。そして指先でクリトリスを包皮越しに突っついた直後、膣口にも差し込んできた。
腟内を何本かの指で掻き回され、ゼノノアの顔が痛みに歪む。しかし、同時に快感も感じてしまっていた。
しばらく中を弄くり回し、ようやく天使モドキはゼノノアの秘部から指を引き抜くと、指先が愛液で濡れている。
ゼノノアは歯を食いしばりながらも、天使モドキに聞いてみた。
「まだ……満足、じゃない……でしょ?」
「わかってくれて嬉しいですぅ。今度はこっちのキスを楽しみましょうかぁ」
天使モドキはゼノノアの下腹部を自身の下腹部に密着させ、お互いの外陰部を擦り合わせていく。ふっくらとした大陰唇とひらひらな小陰唇が触れ合い、互いの分泌物が混ざり合い、淫らな水音が立ち始める。
天使モドキはゼノノアの背中に腕を回すと、その細い腰を掴み、上下に動かした。互いの性器が擦れ合う度に痺れるような感覚が全身を襲い、ゼノノアは喘ぎ声を上げてしまう。
やがて、絶頂を迎える寸前で天使モドキは一旦動きを止め、ゼノノアの耳元で囁いた。
「そ、そろそろ、良いですかぁ?」
「……」
ゼノノアは何も答えず、ただ黙って目を逸らす。
天使モドキはそんな彼女を見て、歪んだ笑みを浮かばせるだけだ。
「ふふ、まぁ、良いでしょう。では、いただきますぅ」
天使モドキは互いの下半身を密着させ一心不乱に擦り合わせる。ちゅばちゅば、ぐちゅぐちゅという女性器同士の水音が響き、口から唾液と共に嬌声が漏れ出てしまうゼノノア。
次の瞬間、異形の身体を思いっきり仰け反らし、痙攣させながら絶頂を迎えるゼノノアと天使モドキ。二人の触れ合っている陰裂から潮が噴き出ていく。
「んっ……はぁ、はぁ、気持ち良かったですよぉ」
天使モドキは満足げな笑みを浮かべ、ゼノノアから離れる。
一方、支えを失ったゼノノアは力尽きたように地面に倒れ、荒い呼吸を繰り返している。
そんな彼女に覆いかぶさった天使モドキは語りかけた。
「どうでしたぁ? 気持ち良かったでしょう」
「……うるさい」
そう言うも、ゼノノアの声からは先程までの余裕は無くなっていた。それを見下ろした天使モドキはクスリと笑うのだった。