※冒頭はうちの子が出てるプロローグ的なものです。
水分が必要でない植物はいない。それは人の遺体が変わり果てた化け物――ヒトデナシでも同じ。
身体の水分が不足した状態の植物のヒトデナシは人間の脅威にはならない。逆に長時間雨の中を行動する個体は、歴戦の騎士でも返り討ちにされてしまう。
植物のヒトデナシの頂点に立つ存在――頂点者であるガーデナーもなるべく水分を蓄えるようにしている。葉、枝、果実、幹、根といった植物の要素で再現しているその女体を持つ彼女は、湿気をもたらす雨を好んで……
「……火が点かない!!」
いなかった。
自称“クスリと春の売人”と名乗っていた人間の頃から喫煙家だったガーデナーは、植物の異形となった今でも煙草を吸うのをやめなかった。他の頂点者から意外か、呆れるかの反応を見せる中、火の付いた煙草を常に穴のような口に咥えていた。
森の中での彼女の一服を邪魔するのが、主に雨である。腕から生やした広い葉を頭上に掲げて傘代わりにし、もう片方の手の指を擦り合わせて火を起こし、煙草に付けようとしても天からの雨粒で消えてしまう。
何も嵌めていない穴の両目を、天を覆う雨雲に向け、人間の青筋のように師管を木彫りの額に浮かばせる。
「おタバコの邪魔をする雨なんて、一生降らなきゃいいのに!」
湿ってしまった煙草をペッと吐き、そう愚痴を漏らす。植物の癖に雨を否定するその言葉を、他の頂点者や人間が聞いていたら、思わず指摘してしまうだろう。
ガーデナーが雨を嫌う理由は喫煙の邪魔になるだけではない。それは彼女の身体に影響を及ぼすからだ。
「うわ……いつの間にか生えてる」
脇と股間の違和感に気づいたガーデナーは、両腕を大きく上げて両脇を晒す。蔓や枝を組み合って出来たそこには、いくつかのキノコが生えていた。下半身を覆う葉のパレオを捲り上げると、割れた果実を連想させる大陰唇にもキノコが出来ていた。
植物で出来ている彼女の身体に胞子が付着することがあり、雨などの大量の水分を吸い込む事でその菌糸類が成長し、ガーデナーの身体にキノコが出来上がる。
別にこのキノコは彼女に悪影響があるわけではない。人間の女性で例えるなら脇や陰裂に“できもの”があるようなモノであり、特に陰核近くで大きなキノコが出来てしまった時は、“異形の少女”に「ふたなり~」と笑われてしまったことがあった。
「も~、抜いちゃえ」
枝の指先で身体に生えているキノコを次々と引き抜く。両脇のは全部取れた。問題は陰裂のだ。大陰唇にキノコが根付いてしまっており、それを引っ張ろうとすると陰部も一緒に引っ張られてしまう。痛いうえに気持ちよく感じてしまう。
「んっ……」
ビクンッと大きく跳ねると同時に、口から声が出る。幸い周りには誰もいないので聞かれることはなかった。
痛みと快感を我慢してキノコを全て取り除いた後、キノコが生えていた大陰唇の間から汁が垂れ出ているガーデナーは地面に落ちたそれを見下ろす。自分の身体に生えていたキノコは意外と多く、小さな山が出来ていた。
「ふぅー……もう二度と生えてくるんじゃないよ」
ため息をつくように言いながら、再び煙草を口に咥える。雨の中で吸う煙草もまた美味しいものね。
しかし、一滴の雨粒が煙草の先端に触れ、炎が消える。
「あぁもう! こんな所にいられるもんか!!」
苛立った彼女は叫ぶと、勢い良く走り出す。目的地などはない。ただ、イラついた感情をぶつけたい相手がいる場所へ走るだけだ。
その場に残されたのは、ガーデナーの身体に生えていたキノコの山だけ。森の一角に出来たそれに雨粒が落ちた瞬間だった。
キノコの山から一斉に菌糸が生え伸び、瞬く間に地面や周囲の草木を呑み込み始めた。
これから起こる異変をガーデナーが気づくことなく、その後も関与することもなく、二度と来ることはなかった。
―――
料理に使う薬草を切らしていた私は、村の近くにある森に行った。村に泊まっている傭兵さん達がそこをパトロールしており、「恐ろしいヒトデナシは見かけなかった」と言ってたから安全だと思った。
でも、前に来てた時と比べると空気が重い気がする……
森に入る直前に感じた違和感に私は不安になりながらも、その中へ足を踏み入れた。傭兵さんが言っていた通り、ヒトデナシがいる様子はなく、リスや野ネズミといった小動物が私に気づいて逃げる。この森に危険はないと安心した私は、持ってきた籠に摘んだ薬草を入れていった。
ある程度薬草が溜まったところで私は採取を止めて村に戻ろうとした時だった。
異様に柔らかいナニカを踏んでしまい、地面に転んでしまった。籠の中の多くの薬草がそこら中に散ってしまう。
「きゃっ……え?」
地面にぶつけた部位に走る痛みに我慢しながら起き上がろうとした私は、視界に入った光景に呆気にとられた。
森の地面や木々に覆う白い物体。私が踏みつけてしまったモノもそれらと同じ物だった。
村で読んだ図鑑に出てるキノコの元である菌糸の集合体。地面の落ち葉をひっくり返せば簡単に見つかるそれだが、私が見ているのはまるで“菌糸で出来た森”としか言えなかった。あまりに広げているそれに、恐怖を感じずにいられない。
「何これ……」
思わず呟き、ここから逃げようと私は起き上がろうとした。
その時、足元にある菌糸を強く踏んでしまった。すると、そこから一気に粉末状のナニカが噴き上がった。それに私は包まれてしまい、口や鼻に入り込んでしまう。
「うぐっ!? げほっ!」
咳と共に吐き出すも胞子が気管に入ってしまい、更に苦しくなる。涙目になって咳を繰り返す私だが、身体から力が抜けてしまい、菌糸の地面に膝をついてしまう。その直後、菌糸が生き物のように動き出し、私の足を取り込もうとしてきた。
「ひっ……い、いやぁ……」
膝下の脛全体が菌糸に纏われてしまい、太腿にも登ってくる。呼吸がまともに出来ない私はそれを振り払うことが出来ず、そのまま白い物体に飲み込まれてしまった。
手足の指先まで菌糸で覆われ、腕や脚には太い根のような物が絡みつき、手や足の形に変形していく。全身が菌糸に覆い尽くされてしまい、白く柔らかい身体となった。腰回りや胸といった女性の特徴は残されている。
髪の毛も菌糸で一体化してしまい、人間の時の髪型で固まった。
頭頂部から鮮やかな色のキノコの傘が広がり、被り物に見える頭の一部が形成された。
得体の知れない菌糸に侵食され、人間の姿を失っていく感覚に耐えられず、私の人としての意識は次第に薄れていく。
嫌だ……こんな所で死にたくないよぉ……
必死に抗おうとするも抵抗虚しく、私は完全に菌糸に包まれ、そして……人の形をしたキノコへと生まれ変わった。
キノコに変えられる激痛と不快感、そして快楽に項垂れていた私だが、どうにか菌糸に覆われた白い顔を起こした。頭の中がぼんやりとしており思考が定まらない状態だ。
このあと、なにをするんだっけ? わたしはなんなんだっけ? ……ああ、そうだ! むらのひとたちも、かえないといけないんだった。
人間だった時に住んでいた村を思い出した私は、ふらつく足取りでその場から離れた。転がっている籠と沢山摘んだ薬草を残して。
高い塀に囲まれている村まで着いた私を待っていたのは、槍と剣を向けてくる傭兵達だった。その後ろに見覚えのある村人達が不安と恐怖の表情でこっちを見ている。
しばらくそれを観察していると、一人の傭兵が私に斬りかかってきた。血が出ないとはいえ、剣が菌糸に覆われた脇腹に食い込んで痛い。仕返しに切り口から粉末状の胞子を噴き放つ。
鎧に守られていない肌に胞子が付着し、身体に根のように菌糸を張り巡らせた。それはやがて皮膚を覆い尽くし、筋肉や内臓にまで到達して寄生する。傭兵は白目を剥いて倒れ込み、息絶えた。
「うわああっ!!」
仲間が殺されたことに悲鳴を上げる傭兵達だったが、それでも武器を構えて向かってくる。今度は数人がかりで一斉に襲いかかってきた。
無駄なのに……
私は胞子を全身から噴出させ、村の入り口を白い霧で埋め尽くす。その中にいた傭兵や村人達はあっという間に死んでしまい、全身を菌糸に覆い尽くされた。さっきまで生きていた人達を平然と殺したことに対して罪悪感などなく、寧ろこれで良かったと思っている自分がいる。
体中から胞子を出しながら村の中に入る。地面や道は勿論、家や小屋といった人工物も菌類に覆われて真っ白になり、子実体(キノコ)が生えてきた。それらを眺めていると、先程殺した人間達がヒトデナシとして蘇った。
女性は今の私のようにキノコの傘が頭に生え、女体が菌糸に覆われている。中には眼孔や耳の穴から棒状の赤いキノコが生えていたり、頭が割れてそこからヘラ状のキノコが出てる個体もいた。
男性は比較的シンプルで、首から上がキノコの傘に変形し、首下の全身は菌糸に覆われている。股間には立派に育ったキノコに例えられる陰茎が勃っていた。
キノコのヒトデナシに変えられた男達は、同じく人間をやめさせられた女達を犯し始めた。逃げようとする者、抵抗する者はいたが、自分から進んで犯される者もいた。
一体のキノコ男が迫ってくるのに気づいた私は、彼に背中を向ける。別に逃げるつもりはなく、背後から自分の胸を揉ませてあげる。
「あはっ♡ エッチなことをして、仲間を増やそうね」
乳肉を揉まれる感触に気持ち良くなりながら私が微笑みかけると、彼は嬉々として菌糸で出来ている乳房を掴んだまま激しく動かし、捏ねるようにして揉んできた。同時に太腿の間に陰茎を差し込み、外陰部を撫で始める。キノコペニスに擦られている大陰唇の隙間から汁が漏れ出てきた。
「あん……いいよぉ……」
私の喘ぎ声を聞いて興奮したのか、キノコペニスを膣口に挿入してきた。お腹に浮き出るほど膣道に陰茎を挿れられると、上下に腰を振り始めてきた。後ろの腰の動きに合わせて私も前後に腰を動かしたり、円を描くように回す。キノコ男に掴まれていない方の乳房が垂直に弾み、汗の代わりに胞子が飛び散る。
いつの間にか足が地面から離れるほど、陰茎に持ち上げられた私は、そのままの体勢で突かれ続けていた。
あっ、そろそろ中出ししてくるぅ♡
腟内でキノコチンポが大きくなるのを感じ取った私は、彼の身体に脚を絡めて振り向いた。見えたのは人間の顔ではなく、巨大なキノコの傘だ。その頭は快楽と愉悦に歪んでいるように見えた。
私の下腹部が突き上げられ、子宮に目掛けて大量の胞子を含んだ精液が注がれた。それを感じた瞬間、私も絶頂を迎えた。
「ああああぁっ!」
激しい快感に襲われ、胞子が飛び散るほど全身が痙攣し、結合している性器の隙間から愛液と白濁の液が漏れ出す。それと同時に体内の子宮口が開き、子種を飲み干そうとする。
しばらく余韻に浸っていると、キノコ男は萎えた陰茎を引き抜いた。すると栓を失ったせいで私の中から精液が逆流する。その感覚すらも快楽に感じた私はまた軽く達してしまった。
解放されて地面にへたり込む私を尻目に、他のキノコ男達は未だに女を犯し続けている。頭の小さな傘が目立つ幼い子供は大人に覆いかぶさられて犯され、割れた頭からヘラ状のキノコがある女性は、一人で両側のキノコペニスを手で扱きながら仰向けの男の上で腰を動かしている。
そんな光景を眺めていると、一人の男が近づいてきた。私を犯したあのキノコ男だ。彼の股間には萎えていたはずの男性器が復活していた。
「もう一回、しましょう?」
私は誘うような笑みを浮かべ、再び彼と交わることにした。
こうして人間が住んでいた村は消滅し、人間だったキノコのヒトデナシが繁殖する村となった。
今も男女は錦糸に覆われた白い身体を揺らし、胞子をばら撒きながら交わり合い、暮らしている。