※この作品はR-18です。

ヒトデナシ R-18   作:影絵師

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前回に引き続き、シスターが全裸でやられちゃう話です。次回は彼女が出ない形にします。

※後半は若干雑になっています。


全裸で敗北して、植物の異形に変えられるシスター

 聖掌の修道女――シスターは人々を喰らう不気味の森を根城とするヒトデナシの長――頂点者を浄化するべく、木々が生え伸びる森の中を歩いていた。

 ……全裸で。

 

「……あんな所で遅れを取ってしまうとは」

 

 森に入る直前に植物のヒトデナシの群れに襲われ、“聖なる光”が纏う拳で撃退したのは良いものの、一体のヒトデナシの攻撃を受けてしまい、カウンターと引き換えにベールと靴などは勿論、下着ごと修道服が消滅してしまったのだ。一応ある程度の魔力があれば修復出来るとはいえ、「一度攻撃されたら消滅してしまう」という欠点を持つ修道服について、いつか訴えていたシスターだったが、結局聞き入れてもらえなかった。

 

 いつもはベールで隠されている金髪を風でなびかせ、湿った草が生い茂る地面を裸足で踏み歩く裸のシスター。どうにか腕で乳首を隠しながら乳房を押さえ、もう片方の手で股間を覆うその姿は、もはや清楚な修道女より、森の中で露出行為している痴女にしか見えなかった。禁欲生活が当たり前の彼女にとって、このような破廉恥極まりない格好をしているだけでも羞恥に駆られる。

 「だったらヒトデナシを追っていないで、服を取りに帰ればいいじゃないか」と、ヒトデナシ狩りの同業者である傭兵から言われた事あるが、責任感と正義感が強いシスターは多くの人々を守る事を第一としている為、服を取りに行く暇あるならヒトデナシを倒し、被害を抑えた方が良いと考えていた。

 

 胸元と陰部を隠すように両腕で覆い、前屈みになって裸体のまま歩いていたその時だ。

 

「うっ!?」

 

 突然、鼻孔に不快感を募らせるような異臭が入ってきた。思わず胸を押さえていた片腕を動かし、その手で鼻元を覆う。解放された乳房が淡いピングの乳首を目立たせるように上下に揺れたが、今はそれどころではない。

 鼻と口を手で覆いながら、乳房が振り回される程周囲を見渡し、異臭の出所を探るシスター。しかし、それらしきモノは見つからない。それどころか、この臭いは死体の腐臭とは違うようだ。むしろ、教会でよく嗅いでいた臭いだ。

 

「……煙草?」

 

 それは煙草特有の匂いであった。彼女が所属している教会には、ヒトデナシを浄化する修道女達がいるのだが、その一部である不良気味の修道女達は重度の喫煙者で毎日のように吸っていた。その為か、彼女達の身体からは強い煙草の香りを放っており、嫌でも記憶に残っている。

 しかし、ここは教会ではなく森の中。他の修道女がここに派遣されたという話は聞いていない。仮にここで誰かが喫煙していたとしても、何故かこの森全体が煙草臭い気がする。

 

 一体誰が……

 

 そう思いながら、再度乳房を隠し直したシスターはゆっくりと歩み始めた。まるで、鼻腔内を無数の小さな虫達が這いずり回っているような感覚に耐えながらも、奥へと進んでいった。

 

 シスターが進んでいる森の異常は煙草の臭いだけでなかった。頂点者が根城とする森の中は見たことのない形をした花や木々、果物でいっぱいだ。そして、それら全てには“人間だった”痕跡が残されていた。

 花の根に張り巡らされている人骨、木の樹皮に埋め込まれたかのように一体化された人の身体、まるで木に喰われたかのように惨たらしく樹洞に押し込まれた人体等、どれもこれもが頂点者の仕業に違いない。しかも進む度にそれらを多く見かけるという事は、頂点者がいると思われる森の深部に近づいてきたようだ。濃くなっていく煙草の臭いも関係がありそうだ。

 

「……こんな格好で挑みたくありませんが、背に腹は代えられません」

 

 ここまで運良くヒトデナシに遭遇することなく、そして運悪く魔力を補充できず全裸のままであるシスターは覚悟を決め、胸と股間を手で隠したまま進むのだった。

 

 

 

 歩き続け、ようやく煙草の臭いの元凶であろう人物、いや、人の形をした植物を発見した。

 

「ふぅー」

 

 その頂点者は地面から生えている巨大な葉に腰を下ろして座っており、植物でありながらも口から煙を吹き出しながら空を見上げていた。シスターの存在に気づいていないのか、あるいは気づいていながら無視しているのか分からないが、彼女の存在などどうでもいいらしい。

 

 頂点者の外見は、一言で言えば女体を植物で再現しているようだった。

 腕や脚などの四肢は枝や根を絡めて作ったように見える。胴体に至っては茎で出来ているにも関わらず、くびれも再現されており、柔らかく実った果実で乳房を模している。

 頭部から生えている細長い蔓や葉は長髪を模しており、髪飾りのように鮮やかな花を生やしている。また、顔は種か椰子の実を連想させる木彫りの仮面そのものであり、目や口は穴そのもの。枝で出来た指先に摘まれている煙草を口に近づけては、口から吐き出す紫煙を眺めていた。

 

 教会やギルドが危険視している、自然に迷い込む人間を殺してヒトデナシに変えるだけでなく、住人を皆殺しにして町全体を歪な森に作り変える程の力を持つ植物の頂点者。

 そいつが目の前にいる。

 

「…………」

 

 頂点者を視認した途端、今まで感じなかった恐怖が湧き上がり、無意識に裸体を震わせてしまう。これまでヒトデナシを浄化してきたとはいえ、一体だけで人類の文明を容易く崩壊させる程の力を持つ頂点者と戦った事はない。

 それでも彼女は逃げようとせず、逆に一歩前に進み出す。足元の草が裸足に踏まれた瞬間だった。

 

「……だれ?」

 

 気配を感じたのか、頂上者が振り返って声をかけてきた。目が穴そのものであるにも関わらず、視線がシスターの方に向けられたのが分かる。

 それでもシスターは答えることなく、ただ黙って頂点者と対峙する。一方、植物の頂点者も彼女の姿に驚いていた。

 

「……いやぁ~、あたしを倒しに来る人間はたっくさんいたけどね。全裸で倒しに来る変態は初めてかな?」

 

 植物の頂点者は枝の指で摘んでいる煙草を口に付けることなく、両腕で胸と股間を覆い隠している全裸の女に、真ん丸な形の穴の目を向けていた。ヒトデナシにすら驚く自分の格好に、シスターは顔を赤くするしかなかった。

 

「だ、黙りなさい……っ! とにかく、多くの人間の命を奪ったあなたを許しません!」

「ガーデナーちゃんは守ってるだけだよ。木さんやお花さんを無駄に消費する人間を肥料にして、自然を守ってるんだよ」

 

 シスターが怒りをぶつけると、植物の頂点者――ガーデナーは悪びれもせずに淡々と答える。ガーデナーが言う通り、彼女の足元には煙草の灰にまみれた人骨が大量に転がっていた。肥やしにされた人間のものだろう。

 

「だからと言って、生命を奪う権利なんてないのです!」

「植物を必要以上に浪費する権利だって人間にはないよ。ガーデナーちゃん、人間と違ってエコロジカルなんだからさ」

「そんな理屈が通ると思っているのですか!?」

 

 シスターの叫びにガーデナーはため息を吐くと、手に持っている煙草を口につけ、煙を堪能した後に吹いた。

 反省の様子が見られない態度に、シスターは思わず口を閉ざしてしまった。自然を大切にする、ヒトデナシとはいえ確かにガーデナーの言い分にも一理ある。

 しかし、だからといって過激な行動を起こしていい理由にはならない。主張を聞いてもらうために価値のある美術品を破損するのはもちろん、人を殺すのは問題外だ。

 

 ヒトデナシの中には会話が出来る個体がいる。しかし、倫理観と道徳心は期待するな。

 

 教会での教えを思い返したシスターは、乳房と股間を腕で隠しながら戦闘態勢を取った。すると、それを見たガーデナーは肩をすくめながら口を開いた。

 

「あーらら、戦う気満々だねぇ。でも、大丈夫? 今更だけど、こんな所で戦っても勝てるのかな?」

「どういう意味でしょうか?」

「そのままの意味だよ。ここはガーデナーちゃんが支配してる森の一つ。つまり、ガーデナーちゃんのテリトリー。しかも、ここには沢山のお友達が住んでるんだよね」

「……そちらに地の利がある、という事ですか?」

「そゆこと」

 

 ガーデナーはそう言って椅子代わりの葉から立ち上がり、吸っていた煙草を指で弾き飛ばす。地面に落ちた煙草は、自分で動く草に揉まれて完全に鎮火した。

 動く植物に驚いたシスターは警戒しながら周囲を見回す。予感していた通り、彼女の周囲にイソギンチャクのように葉や蔓を動かしている植物達の姿があった。どれもこれもが敵意を剥き出しにしており、中には威嚇するように鋭い棘を伸ばしているものもあった。

 

 この場にいる植物は皆、頂点者であるガーデナーの支配下にある。彼女の攻撃だけでなく、他の植物達の攻撃にも躱さなければならない。

 修道服を着ていれば一発だけ攻撃は受けられるが、今は裸。防御力が皆無に等しい。

 

「どうしたー? こわいー?」

 

 シスターの焦りを感じ取ったのか、穴の両目を細めたガーデナーが可笑しそうにからかう。だが、乳房と股間をしっかりと手で隠しつつも、シスターの瞳から闘志は消えなかった。

 

「怖くても戦います。ここで逃げたら多くの人が犠牲になり、その者達を見殺しにした事を後悔しますから……」

「うわー、健気だねー。ガーデナーちゃん感動しちゃった。でも、どうせなら裸じゃなくて服着てから来るべきだったね」

 

 ガーデナーは嘲笑いながら、枝の指先を動かす。その動きに反応して、周囲の植物達が一斉に襲いかかってきた。

 植物達は葉や根を刃物のように鋭く尖らせ、貫こうと伸ばしてきた。シスターは両手で乳房と股間を隠しつつ、植物達の動きに合わせて回避していく。修道服を着たままであれば、素早く走るか跳ぶかで簡単に躱していた。

 

「くっ……!」

 

 しかし、全裸だと防御面が脆くなるだけでなく、どうしても乳首や陰裂を晒したくないと手で覆い隠し、派手な動きを自重する。その結果、敵の攻撃が迫っても歩きで移動し、ギリギリのところで躱している状態になっていた。

 

「ほらほら、恥ずかしがってないで反撃しないと死んじゃうよ?」

 

 ガーデナーは面白がるようにシスターを挑発し、次々と植物を操って襲わせる。その度に彼女は聖なる光を纏った拳で殴りつける。その際、整った陰毛が覆う恥丘が露わになってしまうが、すぐに股間を隠せるように手の位置を戻していた。

 シスターは植物の猛攻を回避しつつ、隙を見ては拳を振るって植物を倒していく。

 

「……はぁ……はぁ……はぁ……っ!」

 

 しかし、いくら倒しても次から次に新しい植物が現れる。体力と魔力は無限ではない。このままではいずれ力尽きてしまう。

 シスターが疲労の色を見せ始めた頃、何故か植物達の動きが鈍くなっているのに気づいた。それは様子を見ているというより、まるで手加減しているようだった。それらを支配しているガーデナーに視線を移すと、いつの間にか煙草を咥えている彼女が余裕の笑みを浮かべながら手を振っていた。

 

「あ、やっと気付いた? ガーデナーちゃんは優しいからさ、裸で戦う変態さんをすぐ殺さないようにしてあげたんだよ。感謝してほしいな~」

 

 ガーデナーの皮肉と紫煙混じりの言葉を聞いたシスターは、唇を噛み締める。

 彼女の言う通り、ガーデナーはまだ本気で戦っていない。それどころか、わざと植物達にも攻撃を仕掛けさせていないのだ。つまり、シスターを弄んでいる事になる。

 

 悔しいけど、彼女の言う通りです……。今の私には彼女を倒す術がない……

 

 ガーデナーの実力は未知数だ。もし仮に彼女が全力を出した場合、今の自分には勝ち目はないかもしれない。シスターはそう思いながらも、弱音を吐かずに睨みつける。すると、そんな彼女の様子にガーデナーは肩をすくめた。

 

「もういいや。そろそろ終わりにしよっと」

 

 そう言ってガーデナーは足元にあった人骨を蹴飛ばしてシスターに近づく。彼女の接近にシスターは構えを取るが、ガーデナーは気にせず近づいていく。

 そして、ある程度まで近づいた瞬間、シスターは聖なる光を纏う拳を突き出した。が、ガーデナーは枝の腕であっさりと受け止める。ヒトデナシを浄化する聖なる光も効いていない。

 

「無駄だよ。ガーデナーちゃんは植頂点者なんだから、雑草みたいな人間の攻撃なんて効かないんだよねー」

 

 そう言ってシスターの首を掴んで持ち上げた。人間の女性と変わらない太さでありながらも、シスターの足を地面から離す程の力がある。

 

「こ、このっ……!」

 

 首を掴まれてしまっては、胸と股間を隠してなんていられない。隠していた乳房と陰裂を露わにし、両腕で必死に抵抗するシスターだが、ガーデナーの力は強く振り払えない。今度は両足でガーデナーに何度も蹴りを浴びせた。

 しかし、それでもダメージを与えられず、ガーデナーは煙草を咥えたままニヤリと笑った。

 

「それじゃあー、人間やめちゃおっか!」

「なっ!?」

 

 ヒトデナシは人間を殺して同族に変えるが、頂点者は人間を生かしたまま同族に変えられる。その知識を思い出したシスターは、どうにか首を絞めてくるガーデナーから逃れようとする。しかし、遅かった。

 シスターの首を掴んでいる枝の手から無数の根を生やし、彼女の体内に刺していく。

 

「ぐぅ、あああっ!?」

 

 根に刺された痛みに悲鳴を上げるシスター。ガーデナーはそのまま根を伸ばしていき、心臓や肺にまで到達させる。彼女の身体中に根を張り巡らせると、今度は体内からシスターを作り変え始めた。

 

「あっ、があぁ……」

 

 シスターは苦しみ悶えるが、ガーデナーに捕まっているため逃げる事が出来ない。やがて、変化が始まった。

 

 全身の皮膚が破れ、その下から硬い樹皮が覆っていき、丸みとくびれを残したまま胴体は幹に、両腕は枝に、両足は根に変えられていく。

 片方の眼球が割れ、そこから花が咲いた。もう片方の眼球は変色し、光沢を放つ果実のようになった。

 金色の髪が残る頭頂部からはいくつかの色鮮やかな花が咲き、花弁を散らす。

 

 やがて、数分も経つ頃にはシスターの姿は完全に変貌していた。

 顔や身体は人間の時とあまり変わらない。しかし、全身を覆う樹皮、それぞれ枝や根を絡み合わせて出来た腕と脚、そして体中に咲いている花など、それらの特徴を持つ人間を模した異形の樹木。それが今のシスターの外見だ。

 

「ふぃー、完成! これでガーデナーちゃんと同じ植物のヒトデナシだね」

 

 ガーデナーは自分の仕事を終えたかのように一息つくと、シスターだった樹木を手放した。地面に落とされた彼女は、ゆっくりと立ち上がる。唯一樹皮に覆われていない顔にも関わらず、その表情は無感情で無機質だった。シスターが植物化した事で、彼女の中にあった自我が抜け落ちてしまったのだ。

 新しい玩具を手に入れた子供みたいに木彫りの顔に無邪気な笑みを浮かべるガーデナーは、シスターだった樹木を褒め称えた。

 

「わー、可愛いじゃん。これからは植物として、自然を穢す人間を殺して肥料にしたり、同じヒトデナシとして咲かせるんだよ。頑張ってね、木さん!」

 

 ガーデナーの言葉にシスターだった植物は静かに頷く。それは植物に意思を宿らせたというより、操り人形のような反応だ。

 こうして聖掌の修道女は人間のモラルと身体を奪い取られ、人間を餌とする植物のヒトデナシへと作り替えられたのだった。

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