シスターみたいな良い子をエッチな目に遭わせるのもいいけど、性格に難がある女の子を酷い目に遭わせるのも良いと思ってます。
「待ちなさい! あんたがヒトデナシを生み出した張本人ね!!」
「ん?」
どんな人間をどんな異形に変えるか、蟲姫や天使モドキなどの“お気に入り”をどんな目に遭わせるかを考えながら、廃れた街道を歩いていたゼノノア。
そんな中、背後から自分を呼び止める高い声に振り向くと、一人の人間が仁王立ちしていた。
良く言えば行動的、悪く言えば熟考するかしこさが無さそうな幼い顔つき。
一対の角がついている兜。その下から茶髪が伸びている。
装甲が胸、腰回り、両肩しかないビキニアーマー。
片手には派手な装飾の剣が握られており、その先端をゼノノアに向けている。
人間をヒトデナシから守る傭兵や騎士……にしては、風変わりな格好をした女がゼノノアを鋭い目で睨んでいた。
しかし、ゼノノアは気にすることなく視界を前に戻し、何も見なかったかのように歩く。
「えっ? ……ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
明らかに無視だとわかるゼノノアの行動に、一瞬困惑した女だが、慌てて再度呼び止めながらゼノノアの進行方向に先回りする。
だが、今度は背を向け、歩いてきた道を戻ろうとするゼノノアに、女はついに大声を上げた。
「いい加減にしなさい!! この異形の少女!!」
自分の異名を呼ばれたからというより、自分が人類の天敵「ヒトデナシ」を生み出した存在――異形の少女だと知っているこの女に、とうとう無視する理由が無くなったゼノノアは、気だるそうに顔を合わせてやる。
「誰? 変な鎧のお姉ちゃん」
ようやく自分に関心を向いたことに嬉しそうな女は、見せびらかすように派手な剣を振り回しながら名乗りを上げた。
「あたしは人類の希望であり、非道なヒトデナシを殲滅する者! 勇者ヒロイナよ!! ちなみにこの鎧は、勇者しか身に着けられない代物よ」
「ゆうしゃ? どうしてそう呼ばれてるのかな?」
「誰かに呼ばれてるわけじゃないわ。あたし自身が勇者だと決めたのよ!!」
剣を地面に突き立て、自慢げに自分の豊満な胸に手を当てながら言い放った理由に、ゼノノアは首を傾げるしかなかった。
勇者という概念は知らないわけではない。むしろ自分に深く関わるモノだが、ヒロイナを勇者だと認めては色々といけない気がする。とはいえ、ゼノノアが異形の少女だと分かっていることは褒めてやってもいいが。
「まだ信じてないようね。これまであたしは色々なヒトデナシを倒して来たのよ、こうしてあんたの前に立っているのが証拠よ」
「……それで? その勇者様がゼノノアさんに何のよう? 自慢話は酒場でもやったら?」
「わかってないわねぇ。あんたをぶっ倒して、あたしが人類の救世主だと証明するためよ!」
剣先をゼノノアに向けて啖呵を切るヒロイナ。
人間を容易く殺せる「ヒトデナシ」。その長である、災害に例えられるほどの実力を持つ「頂点者」。そして、頂点者を“お気に入りの玩具”として持て遊べる上位存在と言える異形の少女――ゼノノア。
そんな自分に挑むヒロイナに、ゼノノアは感心した。仮にヒトデナシを殺せる力がある人間でも、並の個体に苦戦することが多い。頂点者を相手にした場合は勝負にすらならない。たとえ全裸になっても戦うことを放棄しない“聖掌の修道女”の異名を持つシスター――フィースも、ゼノノアにとって面白い存在である。
「ずいぶんと自信満々だねぇ。ゼノノアさん、なんだか怖くなってきちゃった」
「フッフッフッ。流石の異形の少女も、このヒロイナ様の実力を察したようね」
袖に包まれた両手を顎まで持っていき、ガクガクと震えるフリをするゼノノア。演技にも見えるそれを目にしたヒロイナは、得意げに剣を構えた。
次の瞬間、地面を力強く蹴り、ゼノノアの目と鼻の先まで迫る。鋭い剣の刃先を異形の少女の胸へ向けて突き出す。
ヒロイナが握る剣はゼノノアの左胸を容易く貫き、血に塗れた先端が背中から突き出た。
微動だにしないゼノノアだったが、剣が突き刺さっている自身の胸を見下ろす。そして口を大きく開けて、断末魔を上げる。
「うわー、さされたー、このままじゃあしんじゃうー」
「あーはっはっは!! 所詮ヒトデナシの創造主でも、勇者には敗れ去る運命なのよ!!」
「いたいよいたいよー、くるしいよー」
「これがあんたの罪よ。これまで散々あたしたち人間を苦しめてきた罰なのよ。せいぜい苦しみなさい!!」
「勇者様はそんな酷い言葉を使っちゃ駄目でしょ?」
突然変わったゼノノアの声色に、ヒロイナは彼女の顔を見た。剣に貫かれたにもかかわらず苦痛の表情はなく、まるで愚か者を見るような冷たい目をしていた。
驚きながらもすぐさまゼノノアの胸に刺さっている剣を捻り、傷口を広げてダメージを与えようとした。
しかし、先にゼノノアの反撃を受けてしまう。袖口から姿を現した片手――皮膚がなく、骨と筋繊維が剥き出しの歪な手に、へその下辺りをパチンと引っ叩かれた。
「いったぁ!」
ヒロイナが愛用しているビキニアーマーは装甲の面積がかなり狭いうえ、主に胸と股間しか覆っていないため、腹のほとんどは露出してある。何かで守られていない下腹部を掌でビンタされ、予想以上の痛みに剣を手放す。
痛みが残っているへその下辺り両手で押さえながら、涙目のヒロイナはゼノノアを睨む。
「やったわねぇ……! 勇者様にこんなことをしてただで済むと思ってんの!?」
「思ってるから叩いたんだよ。それにゼノノアさんには手も足も出なくなるよ」
「何よそれ……そんな戯言が通じるとても――っ!?」
突然の激痛にヒロイナの言葉は途切れた。ゼノノアに叩かれた部位が異様に痛い。いや、皮膚などの表面ではなく、腹の中が強烈な痛みを感じていた。
あまりの痛さに、太腿の間を密着させて堪らえながら、青くなった表情でゼノノアに問う。原因は明らかにこいつだ。
「な、なにを……したのよ」
「別にー。ゼノノアさんはね、ヒトデナシを作れるだけじゃなく、人間さんの身体をイジれるんだよ。さっき叩いた時に子宮内膜を厚くさせて、それが今剥がれるようにしただけだよ」
「ど、どういうことよ……」
「簡単に言えば生理みたいにしただけー♪ 今みたいにすっごく痛いし、おまたから赤いのが漏れちゃうよー」
「なっ!?」
まさかの答えにヒロイナは驚愕した。これまで月経に苦しんだことは何度もあるが、まさかゼノノアの手で再現されるとは思っていなかった。
子宮に走る激痛に耐えきれず、ヒロイナはその場に跪いてしまう。それだけでなく、身体を前に倒して鎖骨辺りを地面につけ、ショーツ型の鎧に覆われている臀部を上に突き出す姿勢をとってしまった。
自分が無様な格好をしている状況より、生理を再現されている状態に苦しんでいるヒロイナは顔を地面に押し付けたまま、ゼノノアに止めるよう必死に言った。
「あ、あんた……! こ、これを止めなさい!! こ、こんなの、卑怯よっ!!」
「今、刺さってる剣を抜いてるからあとにしてくんない? 別に勇者様が生理で死ぬわけないじゃない」
「い、痛いのは痛いのよ!! 早く止めないと殺すわよ!!」
「だから物騒なことを言わないでよ。わかったわかった。痛く感じないようにすればいいでしょ」
そう答えるゼノノアは、自身の胸に突き刺さっていたヒロイナの剣を抜き、菱形の傷口を塞ぎ終えた。そして、尻を突き上げた体勢で生理痛に襲われているヒロイナに近づく。
ショーツ型の防具の隙間から赤い体液――経血とおりものが滲み出し、太腿に垂れ落ちていく。まるで血尿を失禁してしまったヒロイナの姿に、ゼノノアは笑わずにいられない。
「勇者なのにおもらししちゃったのー? 幻滅しちゃうなー」
「あ、あんたのせいでしょうが!! は、はやく……止めなさい……!」
「りょーかいりょーかい。痛いのが嫌なら、気持ちよくすればいいんでしょ?」
「な、何いってんの――」
その言葉にヒロイナが聞き出そうとするも、遅かった。
ゼノノアが骨の指で鳴らした直後、確かに痛みが薄れた。しかし、それは「痛みが消えていく」というより、「出現した別の感覚に塗りつぶされる」という表現が相応しいものだった。
散々生理痛に突き刺された脳。今度は溶かされるかのようなその感覚に、頬が赤くなっているヒロイナは焦り始める。
「あ、あんた……まさかっ!?」
「ピンポーン♪ 痛いのが嫌なら、快楽を与えればいいじゃん」
「ふ、ふ、ふざけないで……!! こんなの、のぞんでないぃ……!!」
口ではそう言うが、激痛に苦しめられた身体は快楽を拒もうとしない。息が荒くなり、胸の鼓動が高鳴っていく。防具に守られている胸と股間に熱が籠もり、疼くのが分かる。
オナニーをしないわけではないが、流石に異形の少女の前でするのは避けたい。うつ伏せで、尻を空に突き出したまま、なんとか我慢するヒロイナ。
しかし、そんな彼女にゼノノアは無情にも追い打ちをかける。
「おしっことオナニーの我慢は、身体に毒だよ~」
二度目の指鳴らしが周囲に響いた。
その瞬間、ヒロイナの理性が崩れ始めた。
「も、もうがまんできないぃぃぃっ!!」
ヒロイナは悲鳴のような声を上げ、地面に伏せたままビキニアーマーを外し始めた。
胸を押さえている鎧の金具を外し、実った乳肉はもちろん、ピンクの乳輪と硬くなっている乳首も外気に晒す。臀部を覆っていた防具も外す。丸みを帯びた尻肉だけでなく、その谷間に隠れている肛門と赤の体液に濡れている陰裂も露わになった。
両角の兜をつけたまま全裸になった彼女は仰向けになり、胸の山を空に向けて大きく呼吸した。それでも疼きが治まらず、ついに刺激を求めている部位に手を伸ばしてしまう。
片方の乳房を鷲掴みしてあらゆる形に揉み、指先で乳首を弄る。もう片方の手は陰裂の隙間に指を入れ、膣前庭と膣口を掻き回す。膣から漏れ出た経血が指に絡みつくが、快感を欲しているヒロイナは気にしていない。
「あれー? 勇者様はゼノノアさんを倒しに来たんだよね? なんで全裸オナニーしてんのかなー?」
「う、うるさいっ♡ こ、これがっ、おわったらぁ……あんたを、ころして、やりゅうぅぅぅ♡」
ゼノノアの言葉にそう返すヒロイナだが、紅潮した頬に涙を流し、唾液塗れの舌を出している口から嬌声しか出ない姿は、全く勇ましい者には見えなかった。
淫らな水音を鳴らしながら自慰に勤しんでいる自分を、ゼノノアが笑みを浮かべて見下ろしている。その視線に悔しさを込み上げながらも、何故か気持ち良く感じてしまう己に失望する。
やがて、快感が爆発する寸前だと気づくも、乳房と性器を弄る手が止まってくれない。
「イ、イッ……イックゥゥゥ♡」
とうとう絶頂に達し、ヒロイナは身体を仰け反らせる。柔らかい乳房は大きく弾み、指に弄られていた陰裂から潮が飛び散る。
地面に汗塗れの背中をつけた彼女は、身体を痙攣させたまま呼吸を繰り返すだけ。涙が漏れ出ている両目を白目を剥いており、口から涎が溢れ、陰裂からは経血だけでなく潮と黄金水も尿道口から噴いていた。
「はぁー……はぁー……」
「派手にイッちゃったね、勇者様。生理の痛みはもう治まった?」
確かに再現された生理は終わったが、今度は絶頂の余韻が残っているヒロイナは、返事をする気力も失った。
「そっか、そっか。それじゃあ、負けた勇者様は人間をやめてもらわないとねー♪」
返答が来ないことを理解しているゼノノアは、袖口から手を出す。骨と筋繊維、様々な管で構成されている異様な手の付け根から、細い管を数本伸ばしていく。
ヒトデナシに敗北した人間は、生死問わずヒトデナシに変えられる。
この世界の常識であり、自称勇者も例外ではない。
血管のような触手が纏う手で、ヒロイナの裸体に触ろうとした。
「待ってくださいぃぃぃ、始祖さまぁぁぁ」
突然、聞こえてきた歪な高い声にゼノノアは動きを止め、聞こえてきた空に顔を向ける。
上空から降りてくるナニカがいた。ベールを含む修道服に似た衣類を着ており、教会の人物に見える。しかし、異様に小さい瞳、頭上に浮かぶ神経節で作られた光輪、背中から三対の腐った翼が生えていた。
腐肉を落としながら異質な羽を羽ばたかせる天使を模した異形が、ゆっくりとゼノノアのそばに着地した。
「……呼んだ記憶はないんだけど? 天使モドキちゃん」
「呼ばれてもいないのにぃ来たことにはぁ、ご無礼をお許しくださいぃぃぃ。ですがぁ、どうしても我慢できなかったのですぅぅぅ」
天使モドキ。
並のヒトデナシとは比較にならない力を持つ“頂点者”の一人であり、ゼノノアの“お気に入り”の一つでもある。蟲姫や人魚の歌姫といった反抗心を見せる者がいる中、天使モドキは唯一異形の少女を心から崇拝する信仰者である。
ゼノノアへの狂信が原動力である天使モドキの行動は分かりやすく、ゼノノアに褒められるためなら何だってする。
そして今、呼ばれていないはずの天使モドキが自分のもとに訪れた理由も、ゼノノアは察していた。そして、ヒロイナを気の毒に思った。
「このぉ……冒涜者がぁぁぁぁぁ!! よくもぉ、始祖様の体に傷を負わせましたねぇぇぇぇぇ!!」
「がはっ!?」
自慰したばかりで身体から力が抜けているヒロイナの脇腹を蹴りつける天使モドキ。額に血管を浮かばせ、怒りで腐肉の翼を震わせながら、ヒロイナの裸体を何度も蹴る。
まともに動けないヒロイナは抵抗すら出来ず、動かせる両腕で必死に防ぐしか出来なかった。しかし、防御出来ない部分を狙って天使モドキが蹴るため、身体にダメージが溜まっていく。
しばらくリンチを眺めていたゼノノアだが、せっかくの獲物が死んては困るので止めた。
「天使ちゃん、ストップストップ。死んじゃうよ」
「死んてもいいんですよぉ、このクズはぁ! 始祖様のお体を傷つけた罪は重いのですぅぅぅ!!」
「うん、それは嬉しいよ。でもね、殺しちゃったらゼノノアさんは困るなー」
「わかりましたぁ。殺すのはやめますぅ」
ゼノノアが言った「嬉しい」に、天使モドキは笑みを浮かべ、ヒロイナに対する制裁をあっさり止めた。
「あ、あ……いたい、いたいよぉ……」
しかし、皮膚が裂けて出血するほど散々蹴られたため、血塗れの裸体に多くの痣が出来てしまっている。苛烈な暴力にヒロイナの心もへし折られ、目から光が消えた状態で地面に蠢くしかなかった。
そんな哀れな勇者を見下ろすゼノノアと天使モドキ。先に口を開いたのは、天使モドキだ。
「ところでぇ、このアバズレはなんですかぁぁぁ?」
「え? 天使ちゃんは聞いてないの? その頭の上の輪っかで、さっきのことを“見聞き”したから、ゼノノアさんのところに来たんじゃないの?」
「私が見たのはぁ、こいつが始祖様を刺した瞬間からですぅ。その前は知りませぇん」
「勇者様だって。流石にこのお姉ちゃんの思い込みかもしれないけど――」
「ゆうしゃさまぁ?」
ゼノノアの口から「勇者様」という単語が出た瞬間、天使モドキの表情が再び怒りに歪む。点のような瞳が小刻みに震え、額に血管が浮かぶ。
それに気づいたゼノノアは、溜息をついてから宥める。
「あの子のことは気にしないでよ。最近、ゼノノアさんがなにかされたわけじゃないし」
「いいえぇ、気にしますぅ! 罰するべきですぅぅぅ! 素晴らしい身体を始祖様が与えてくださったにもかかわらずぅ、あの離反者はぁぁ!! 愚かで無価値な人間どもを戯れに救いぃ、あろうことかぁぁぁ! 始祖様に恩を仇で返すなどとぉぉぉ!! あの薄っぺらい紙切れ人形と、脆い鏡人形と一緒に天罰を受けるべきですぅぅぅ!!」
「だからさぁ……『気にするな』と言ってんの。あれ? 聞こえなかった?」
一瞬だが、真顔で言い放ったゼノノアの言葉に、今度は天使モドキの顔が青くなった。すぐさま、その場に跪き、頭を下げて無礼を詫びる。
「も、も、申し訳ありませんんん……ど、どうしてもぉ……あの裏切り者が許せずぅ……」
「勇者ちゃんがあんなことをしてるのはね、ゼノノアさんがそういう風に弄っただけだよ。今は勇者ごっこをして人間さんを助けてるけど、いつか自分の行動を疑問に思う時が来る。その時、勇者ちゃんがどんな顔をするのか、ゼノノアさんの楽しみだよ」
「……」
「でも、そんなに勇者ちゃんにキレてるんだったら、この力尽きた勇者様で憂さ晴らしすれば? もちろん、ヒトデナシに変える限定でね♪」
ゼノノアが笑顔で提案した瞬間、顔を上げていた天使モドキの口角が上がっていく。
素早く立ち上がり、起き上がる様子がないヒロイナの側に移動する。骨と皮しかないような片手でヒロイナの首を掴むと、地面から彼女の足が離れるまで持ち上げた。
「お、おねがい……ゆるして……もう、おそったり……しないから……」
「駄目ですぅ。始祖様を傷つけただけでなくぅ、自称とはいえぇ、あの忌まわしい“勇者”を名乗った時点でぇ、お前は洗礼を受けるべき罪人なのですぅ」
激痛を伴う月経を再現、オナニーの強制、天使モドキの過剰な制裁によって、戦意がへし折られてしまったヒロイナの懇願を、天使モドキは一蹴した。
天使モドキの頭上に浮かぶ歪な光輪から、細長い触手が伸びる。体外に出た神経節を思わせるそれが、自身の額に向いていることに気づき、ヒロイナは涙を流しながら命乞いをする。
「た、たすけ――」
「悔い改めよぉ」
罪人が吐く耳障りな言葉を聞くことなく、天使モドキは光輪の触手を伸ばす。
予想通りヒロイナの額に突き刺さり、脳に到達した。両角付き兜ごと急所を貫かれたヒロイナの身体は数少ない力が抜け、四肢を真下に垂らす。様々な体液で濡れている陰裂からは、緩んだ膀胱が漏れた尿が滴り落ちる。その足元には彼女が愛用していた両角付き兜の欠片があり、持ち主の黄金水に汚されていた。
自称勇者の死体による失禁に気にすることなく、天使モドキはいつも通り彼女を“生まれ変わらせる”。
ヒロイナの遺体の表面に羽毛が生えだし、顔を含めて身体中が覆い尽くされる。
背中を一対の羽が突き破り、身体を包み込めるほど大きくなっていく。
両腕、両足も翼のように変形し、何かを掴む機能も、立つ機能も奪われる。
兜が取れたことで露わになった頭は、人間時の茶髪が残っている。その上で、ヒロイナの身体から抜き取った神経節が悍ましい光輪を構成する。
「うーむ……これが天使ちゃんが作るヒトデナシ。ゼノノアさん好みの“天国”にピッタリだね♪」
「お褒めいただきぃ、ありがとうございますぅぅぅ♪ それではぁ、最後の仕上げに入りますぅぅぅ」
ゼノノアのコメントに嬉しそうに返し、天使モドキはもう片方の手をヒロイナの顔に近づける。羽毛に覆われて、目や鼻、口が見えない顔に指を押し当てると、線を作るように水平に動かした。
すると、横に伸びる切れ目が生じて開く。その隙間には赤い粘膜が張り付いており、鋭く歪な歯が並んでいた。その奥からヒロイナとは思えない声が漏れ出ていた。
「ア、アア……アアアァ……」
「完成、ですぅ♪」
天使モドキは目を細めてそう言い、ヒロイナだった羽毛人形を手放す。
絞められていた首が解放され、顔の唯一のパーツである大きな口で深呼吸する。どうにか立ち上がって逃げようとするが、両手と両足が翼に変えられているため立つことができず、羽で飛ぶ知識もないため、地に落ちた鳥が蠢くかのように這うことしか出来ない。
地面でモゾモゾしている元勇者の異形な天使を、ゼノノアと天使モドキは嘲笑う。
「こうして勇者様はみっともなく負けて、天使のお化けになってしまいましたとさ。お気の毒ですが……ってやつだね♪」
「気の毒ではありませんん。新たな人生を歩むのですぅ……イヒヒィ♪」