※この作品はR-18です。

今日も今日とて火々里さん   作:赤い鳩サブレ

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第二話 (色々な意味で)頑張れ多華宮くん

「……はい? 『霞を呼びつけて何かさせておけ?』 いや、可能でやがりますがね? 丁度、他所からウチの生徒にちょっかいかけてきてるグループが居て、そいつらを今晩中に叩き潰すつもりで、オラァ!」

 

 夕闇迫るストリート。

 着ぐるみめいたパーカーを被った少女が、携帯で誰かと話をしたまま眼前のリーゼント姿の巨漢を一撃で殴り飛ばす。

 

「え? ああ、今、そのグループの手下とやり合っている最中なんです。四天王がどうとか言っていましたが、まあイキっていただけの雑魚で……え? 『できれば霞を今晩は帰宅させるな』? あとり、それは一体どういう、ウラァ!」

 

 今度はアフロヘアの巨漢を一撃で蹴り倒す。

 

「姫様が!? ちょ、大事(おおごと)じゃないですか! ハアッ!」

 

 今度はモヒカンヘアの巨漢をチョップ一撃で沈める。

 

「……『多華宮君が居れば大丈夫』? 『ただ霞が居るとややこしくなる』?? 何だか分かりませんが、分かりました! オゥラァァ!」

 

 携帯を片手に持ったまま彼女、冬月市を邪悪な魔法から守る5人の魔女の一人にして不良グループ「天竺」総長である乙女橘(おとめたちばな)りのんは宙を舞い、最後に残っていたホッケーマスクを着けた巨漢の延髄に蹴りを叩き込んだ。

 

「さて……では霞に電話するとしましょうか」

 

 ──同時に5人の魔女の補欠枠、多華宮霞の師匠でもある。

 ホッケーマスクが倒れ込むのを確認すらせず、りのんは携帯の履歴から霞の番号を探した。

 

「……ああ、霞? 今、電話は大丈夫ですか? これから抜き打ちの修行を行います」

 

 

 

 今日も今日とて火々里さん  第二話 (色々な意味で)頑張れ多華宮くん

 

 

 

 多華宮家は二階建ての一軒家で、その造りは三人家族では少し持て余す程に大きい。二階には仄や霞の部屋に加えて幾つかの個室。一階にはキッチン、リビング、和室に浴室、そこそこの広さの庭もある。諸事情から自宅が完全に破壊され、多華宮家に居候することになった火々里綾火は一階の空き部屋を個室として利用している。

 

「………」

 

 勃起したままの肉棒を持て余しつつ、多華宮仄は気持ち息を殺して階段を下りた。綾火に言われて部屋を出てからさほどの時間は経っていない。床板を踏む音がやけに大きく響く気がする。

 やがて仄は綾火の部屋の前まで辿り着いた。

 

「火々里さん……」

 

 頼まれて出て行った手前、堂々と中に入るのは流石に気が引ける。仄は腰を落とすとそっとドアノブに触れ、音を立てないようにゆっくりと回した。鍵はかかっていない。

 そのまま仄は僅かにドアを開け、隙間を作った。

 

「!?」

 

 むわっとした熱気が隙間から流れ出し、仄の頬に当たった。室内の温度と湿度は相当に上がっているようだ。

 

「(だ、大丈夫なのか!?)」

 

 心配からすぐにでも部屋に飛び込みたい衝動を抑えつつ、仄は隙間に顔を近づけ中を覗いた。

 果たして、綾火は布団の上にいた。

 

「……!」

 

 しかし、その様子は仄の知るどの綾火の姿とも異なっていた。

 綾火は掛け布団を被らず、着崩れた制服を纏ったままうつ伏せの姿勢で腰だけ突き上げるような姿勢で、枕に顔を埋めていた。

 

「ンッ……ンウッ……」

 

 仄の耳に微かに綾火の喘ぎが届く。

 それが苦悶によるもので無い事は明白だった。綾火の片手はショーツの中に差し込まれ、下着の中で激しく動いていた。もう片方の手は、ブラから零れ露わになった重そうに揺れる乳房を揉みしだいているようだ。

 

「うっ……!」

 

 唐突かつ鮮烈な綾火が自慰行為に耽る姿に、仄は危うくそれだけで射精しそうになった。腰に力を込め、何とか堪える。

 綾火のスカートは既に半分脱げており、太腿で引っかかっているような状態だった。ステッチの部分に染みが浮かんでいるのが仄の位置からでも分かる。

 

「ふうっ……ンッ、アアッ!」

 

 快感が強まってきたのか声を抑え切れなくなった綾火の口が枕から離れ、より鮮明な喘ぎが室内に響く。

 

「(火々里さん、こんな声も出すんだ……!)」

 

 日頃から淡々とした反応で静かに語り、滅多な事では大声をあげる事もない綾火の嬌声。それを聞いた仄は素直にそう思った。

 

「(って、そうじゃない! どうなってるんだ、これ!?)」

 

 興奮で麻痺しかけている理性を辛うじて回復させ、仄は考えた。

 あとりは「行けば分かる」と言っていたが、これは流石に状況が唐突すぎる。体調を崩したと思っていた綾火が自分を遠ざけたかと思えば、さほどの時間も置かず部屋で夢中で自慰行為に及んでいる。これは一体どういう事なのか。

 そこで仄は何かに気付き、自身の勃起したままの肉棒に意識を向けた。

 

「(まさか……『そういう薬』だったのか!?)」

 

 あっさり引き下がった二人、自分の薬の効果を肩代わりした綾火の変調、不自然に滾る自分の身体。これらを結びつけるのは難しくなかった。

 同時に仄は今の彼女を襲う衝動の激しさを思い、息を呑んだ。今までのダメージ転移が発生したケースから考えて、本来自分が受ける筈だった薬効の大半を彼女は肩代わりしており、仄にはほぼ効果は残っていない筈だ。

 それでいて今の仄の身体には、まるで中に火が籠っているかのような「熱」が籠っている。ならば今の綾火はどれほどの───

 

「はぁっ……多華宮、君……!」

「!?」

 

 突然に自分の名を呼ばれ、仄の心臓が大きく跳ねた。思わず口を手で押さえる。

 

「多華宮君、多華宮君……ッ!」

 

 しかし、綾火はこちらに気付いたのではないようだった。枕に顔を埋め、腰だけを突きあげた格好のままスカートを脱ぎ、更に染みの広がるショーツをずり下ろす。

 当然ながら綾火の下半身を隠すものは全く無くなり、薄い陰毛に彩られた彼女の秘所が露になる。

 

「(あ……あれが火々里さんの、お、おまっ……!)」

 

 愛液に濡れる陰唇が蛍光灯の光に照らされテラテラと光沢を返す。

 女性の秘所がどんなものかは仄も知っていた。妹の霞とは彼女の強い要望により、数日に一度のペースで一緒にお風呂に入っている。隠す風も無く全身を見せてくる霞の乳房はおろか秘所の形も普通に知ってはいた。

 しかし、初めて目にする綾火の秘所は仄の股間を否応なく興奮させた。ビクンと肉棒が跳ね、ブリーフの先端に先走りが滲んだのが分かる。

 

「多華宮、君……そう、そこっ……くうっ!」

 

 布団の上の綾火はそう言うとクリトリスを中心に弄っていた指を陰唇に移し、膣口に指を差し込んだ。「くちゅ」という音が仄の耳にまで届いたような錯覚を覚える。

 

「う、動いて、多華宮君……激しくして、いい、から……!」

 

 どうやら綾火は仄に抱かれる妄想で自分を昂らせているようだった。うつ伏せになった事で釣り鐘状に揺れる巨大な乳房を強く揉みながら、膣に差し込んだ指を出し入れし始める。

 

「ンンッ! あ、はあ……っ! 多華宮君、もっと、強く……!」

 

 膣に挿入している一本の指を浅く動かしつつ、他の指で陰唇やクリトリスに触れる。部屋から漏れ出す空気の熱と淫臭が更に強まる。

 

「……っ!」

 

 やがて綾火の全身が大きく震え、僅かに脱力した。どうやら達したようだ。しかし、数秒ほどの間も置かずに再び秘唇を弄り始める。おそらくは全く治まっていないのだろう。

 

「………」

 

 仄は自慰を再開し始めた綾火の姿を見て、少し迷い、大きく息を吸い、立ち上がり、ドアを開けた。

 

「……火々里さん」

「っ!?」

 

 妄想でない仄の声に気付き、綾火は除けていた掛け布団を素早く手にして体に巻くと身を起こし、仄を見た。

 絶頂の余韻が抜けきらない紅潮した顔のまま、しかし何とか平時通りの対応をしようとしているのだろう。綾火は静かに尋ねてきた。

 

「どこから見ていたの?」

「その、火々里さんが僕の名前を呼び始めた、少し前あたりから」

「……そう」

 

 仄は綾火の瞳を見た。そこには浮かんでいるものは隠し切れない動揺と、拒絶。

 

「だったら分かるわね? これが、多華宮君が飲まされた薬の効用……こうなる事が分かっていたから、見てほしくなかった」

「……やっぱり」

「でも、逆に言えばそれだけよ。ひと晩を越えれば治まるわ」

 

 嘘だ。仄はそれを悟った。

 こうして今、仄と話をしている最中でも彼女の脚はもぞもぞと動いている。自身の中から際限なく湧き上がる性欲を抑え切れていないのだ。

 綾火には物理攻撃は全く効かない。毒物にしても猛獣用麻酔弾さえ短時間で無効化する。しかしおそらく──今回使われた薬は格(・)が(・)違(・)う(・)。

 仄は息を呑むと、一歩踏み出した。

 

「火々里さん」

「それ以上、近づかないで」

 

 静かな、しかし全力の拒否。しかし仄は更に部屋に踏み込む。

 

「入ってきては駄目。多華宮君にまで影響が及ぶわ」

「……嫌だ」

 

 更に一歩。

 

「下がりなさい。これは『師匠』としての命令よ」

 

 魔女の師弟関係において、師匠の言う言葉に弟子は絶対に従わなければならない。師匠が黒を白と言えば、弟子も白と言わねばならない。

 綾火は日常においてこの「師匠」という言葉で仄に命令した事は滅多に無い。言わばこれは最終通告だ。

 実際、仄はその言葉に歩みを止めた。安心したように綾火が言う。

 

「そう、それでそのまま出て行きなさい。今晩の夕食は悪いけれど……」

「火々里さん……本当はもっと、苦しいんだよね?」

「……!?」

 

 仄はおもむろに制服のズボンのベルトを外すと、留め具を外して脱ぎ捨てた。先走りに濡れるブリーフも脱ぎ、下半身は靴下だけの姿になる。

 果たして仄の肉棒は固く反り返り、半分ほど露出した亀頭からは先走りが滲んでいた。血管をうかべた竿はびくびくと震え、臍に当たりそうになっている程だ。

 

「多分、ほんの少しだけ僕に効果が残っていたんだと思う。正直、その……火々里さんのを見て、ちょっとだけ、出た」

「………」

 

 綾火は答えない。潤んだ瞳で仄の肉棒から視線を逸らせずにいる。

 

「転移されたはずの僕でコレなんだから、今の火々里さんがこんなもんじゃないって事も、分かる」

「……多華宮君」

 

 仄は腰を落とし、綾火に顔を近づけた。

 日頃から自分と離れようとしない綾火が何故この状況において遠ざけようとしていたのか、既に仄は気付いていた。

 今の綾火は言わば飢えた狼であり、仄は無力な兎だ。近くに居れば綾火は堪えられなくなり、『兎』を食うだろう。

 綾火はそんな形で仄との一線を越えたくなかったのだ。敵に飲まされた薬による衝動のまま行う、初めてのセックス。そんな形で仄と結ばれたくはなかったのだ。

 仄にしても女性との交合の経験などない童貞である。確かにこんな形で綾火と初体験を迎える事への抵抗が無いかと問われれば、若干の迷いはあった。しかし──

 

「……火々里さん」

 

 心臓が激しく動悸している、仄はそれを感じつつ綾火に言った。

 

「え、えっと……僕も初めてだから、どれだけ役に立つか分からないけど……火々里さんの苦しいのを、少しでも軽くさせられるなら……」

「多華宮君、駄目、それ以上は……!」

 

 綾火の身体が震えている。まだ拒絶の色は消えない。

 仄は思った。理詰めでは今の彼女の心を開けられない。

 息を吸い、仄は真っ直ぐに綾火の瞳を見つめて言った。

 

「それが、薬の効果だったとしても……僕は、『今の』火々里さんとしたい」

「……!」

「……駄目、かな?」

 

 一瞬の静寂。

 直後、仄の身体は強烈な勢いで手前に引っ張られ、くるりと回転したかと思えば汗に濡れる敷布団に寝かされていた。

 

「火々里さ……ンッ!」

「んっ、ふっ、んんっ……!」

 

 綾火の顔が急速に近づき、仄の唇に綾火の濡れた唇が押し当てられる。熱を帯びた舌が仄の口腔内に入り込み、歯茎を撫でるように舐めてゆく。

 

「はあっ……多華宮君、多華宮君……!」

「か、火々里、さん……ううっ!」

 

 仄の肉棒に細く長い指が絡みつく。固さと熱さを確かめるように愛おしく撫で擦る。それだけで仄の腰は軽く浮き上がってしまう。

 密着する二人の間で、綾火の豊満な乳房が仄の胸板に心地よい弾力を与えてくる。先端で固くなっている乳首の感触を覚えつつ、仄は自分からもぎこちなく舌を伸ばし、綾火の舌に絡ませた。二人の唇の間で舌が別の生き物のように動き、唾液が交換されてゆく。

 

「ふぅ、はぁ……か、火々里、さん、凄い……!」

「……ごめんなさい、もう、私……ンッ!」

 

 離れた唇の間に粘液の箸がかかる。大きく息をつく仄に綾火は荒い吐息と共に呟くと、仄の身体に跨った。

 

「私に任せて……多華宮君は、そのまま……」

「う、ううっ!」

 

 愛液に濡れそぼる秘唇を広げ、屹立した肉棒に手を添える綾火の淫猥な姿に仄は言葉を失った。愛液の雫がぽとりと亀頭に垂れ、その熱さに思わず声が漏れる。

 綾火はそのまま腰を落とした。肉棒を焼けるような熱さの襞が包み、やがて亀頭の先端が強い抵抗感を覚えた。

 

「(これ、ひょっとして、火々里さんの処女膜……)うあっ!」

「ンッ、ンンッ……多華宮君、手を、握って……ああぁっ!」

 

 竿に添えられていた綾火の手が何かを求めて宙を泳ぐ。仄は快感に顔を歪ませつつもその手を強く握った。

 更に綾火は腰を落とした。ぷつぷつと接着していたシートが乖離するような感触と共に、仄の肉棒は綾火の膣内のより奥まで呑み込まれてゆく。

 

「うあっ、くうっ! 火々里さん、ごめっ、ああっ!」

「………!」

 

 初めて感じる強烈な熱さと締め付けと快感に仄の腰がびくびくと震えた。我慢しようと思う間すら許されず、どくどくと亀頭が精液を吐き出してゆく。

 結合部から愛液と僅かの血液が混じった白濁液が溢れてくる。

 

「……出してしまったのね、多華宮く、ンンッ!?」

「だ、大丈夫、まだ、全然だからっ!」

 

 満たされない事への不満が浮かびかけていた綾火の身体が跳ねた。射精直後というのに、仄の肉棒が硬度を落とさないまま下から突き上げたのだ。

 

「あっ! ああっ! た、多華宮君っ! 熱いっ!」

「ううっ! か、火々里さんこそっ、熱くって、キツくって、柔らかくって!」

 

 互いにテクニックなども知らない、本能任せの獣めいたセックスであった。仄が夢中で腰を突き上げると、綾火はそれに合わせて腰を振る。豊かな尻肉はその旅にゆさゆさと揺れ、大きさと弾力を備えた巨大な乳房が重そうに揺れると仄の片手がそれを強く揉んだ。もう片方の手は綾火の手を握ったままだ。

 

「うっ、うあぁっ!」

「んあぁっ! 多華宮君のが、出た、ままっ! またっ!」

 

 二度目の射精。しかし仄は腰を止めずに射精したまま更に綾火の快感を引き出そうとする。大量の精液によってより潤滑になった綾火の膣内を、凶暴なまでに怒張した仄の肉棒が蹂躙してゆく。

 

「た、多華宮、君! 私、もう、もう、少し、でっ!」

 

 仄は悶える綾火の顔を見た。それは淫らで、今までの仄の知らなかった顔で、そして美しかった。

 自分が彼女を気持ちよくさせている。その事実は仄に未知の征服欲を感じさせると共に堪らない愛おしさを覚えさせた。

 もっと綾火の感じる姿を見たい。自分が今まで知らなかった、おそらくは綾火自身も知らなかったであろう姿を見たい。

 

「あっ! ああっ! 来る、来る……っ!」

「か、火々里さんっ! う、ああぁっ!」

 

 互いを握る手の力が強くなる。

 三度目の射精と同時に綾火は大きく背を反らし、身体を震わせた。きゅっと仄の肉棒が強く締め付けられ、より奥まで精液を吸い上げようとする。

 やがて、にゅぽんと肉棒が綾火の秘所から抜け落ちる。しかし萎えたかに見えた肉棒は早くも復活し、硬さを取り戻してゆく。

 

「あぁ、ハァ、ハァ……」

「……火々里さん、その、いいかな?」

「え……?」

 

 絶頂の余韻に浸る綾火に仄は言った。彼女の身体も、既に再度の熱を帯び始めている。一度や二度の絶頂で治まるものではないのは分かっていた。

 仄の頼みに綾火は一旦身体を離した。仄が身を起こしたのを確認し、今度は四つん這いの姿勢で仄に尻を向ける。

 

「……恥ずかしいわ。こんな格好……ンンッ!」

「凄い、大きい……全然、手に収まらないよ、火々里さん……!」

 

 四つん這いになった彼女に覆いかぶさるかのように──実際は綾火の方が大きいので、上から圧し掛かるような恰好になってしまってはいるのだが──仄は身を寄せると、背中から手を回して綾火の両の乳房を揉みしだいた。片手では到底収まらない大きさの乳房は柔らかく、同時に確かな弾力で仄の指を押し返してくる。

 両手に感じる堪らない感触を堪能しつつ、仄は後ろから綾火の陰唇に亀頭を擦りつけた。

 

「はぁっ……お、お願い、多華宮君、焦らさずに、早く……!」

「う、うん、分かって……くうっ!」

「ああぁっ!」

 

 再び挿入される肉棒から与えられる快感に、綾火は声を抑える事も忘れて喘いだ。

 

 

 

 ──二人が交わる部屋を見下ろす、隣家の屋根の上。

 

「おーおー……すっごい効き目」

「これは……何と言うか……」

「♭……!」

「くくっ、いいねェ。生の参考資料は」

 

 眺めるように手を額にあてて声を漏らす冥。言葉に困る虎徹。顔を赤らめて、しかし視線を逸らさず見つめている鈴。何処からかスケッチブックを取り出して鉛筆を走らせている環那。

 冥は状況を確認すると、後方のたんぽぽに言った。

 

「リーダー! 状況は絶好、今が攻め時だよ!」

「にゃっ!?」

 

 後方で耳まで真っ赤にしていたたんぽぽは冥の声に跳ねるような反応を見せ、もじもじと答えた。

 

「そ、その……本当に『アレ』に攻撃するのか? もうちょっと待ってからの方が……」

「いや、何言ってるのたんぽぽちゃん? ここまでたんぽぽちゃんの想定通りに行ってて、今回はイケそうなんだよ?」

「ええと、そ、それはそうなんだけど……」

 

 環那のツッコミにもやはり顔を赤くしたまま言葉を濁す。

 たんぽぽは性についての知識は薄い。仄に白姫について説明を求められた時にも「お前の中の白いアレ」と言って誤解された事に気付かなかった程度だ。おそらくは本当に薬の効果については「炎の魔女を無力化できる」という所までで具体的な効果は分かっていなかったのだろう。冥はそう推測した。

 とはいえ、ここで二の足を踏んでもいられない。綾火のあの様からして、気高い在り方を示す限り魔力を10倍にする「ノブレス・オブリージュの加護」は発動してはいまい。言わば今の彼女は今まで相手をしていた時の1/10の力しか発揮できないという事になる。

 

「……仕方ない! たんぽぽはバックアップ、アタシらだけで行くよ!」

「わ、分かった!」

 

 たんぽぽの返事を待たず、冥たち四人は屋根を蹴った。

 冥の周囲に物質透過の魔獣「ダークスライム」が展開し、手にした鞭が音を鳴らす。

 環那の背中の巨大な魔導書「ブラックバイス」から魔物が溢れる。

 鈴の手にしていた頭蓋骨が骨の姿の獣「ラブリー・ボーン」を形作る。

 虎徹の手にした妖刀「虎鉄」が禍々しい光を放つ。

 

 後背位で仄から突かれ喘ぐ綾火は、そこで初めて四人に気付いたようだった。しかし遅い。戦闘態勢に移り、攻撃魔法を展開する前にこちらの攻撃が届く。

 その時、快感に震える手を少しだけ綾火は持ち上げ、ちょっとだけ指を振った。

 

「え?」

 

瞬間、辺り一帯を昼に変える程の大爆発が起こり──

 

「な……」

 

 爆風が、多華宮宅に飛び込もうとしていた4人を押し戻す。

 

「「「「何でぇぇっ!?」」」」

 

 やがて、四人とたんぽぽは爆風と爆炎により遥か遠くに吹き飛ばされた。

 

 「『ノブレス・オブリージュの加護』を失った綾火の魔力は1/10になる」ここまでは冥達の判断は当たっていた。

 しかしながら、綾火の魔力を強める方法はそれ一つではない。最も重要なのは、主従の契約を結んだ相手との心身の繋がりの強さである。

 この繋がりが強ければ強いほど仄から綾火への魔力の供給量は増大するのだ。具体的に言えば頬へのキス程度で対象の石化を解除し、耳かき&膝枕で校舎一棟を半壊させる程である。では、それが愛する者同士のセックスであったなら?

 確かに綾火の魔力は1/10になっていた。しかし──元の数字が10倍以上になっていれば、それは意味を持たないのだ。

 突然の爆発に、綾火に挿入したまま仄は驚いて周囲を見た。

 

「え!? な、何!?」

「ンッ……何でも、無いわ……それより多華宮君、もっと、動いて……!」

「くぅっ! し、締まるっ、火々里さんっ! 熱っ!」

 

 切なそうに腰を揺らす綾火の姿に、仄は再び肉棒を激しく突き入れた。

 

 

 

 某所。

 

「ふぅむ。とりあえずは幸先良好……といった所かの」

 

 幼い少女の声がする。

 

「しかしまあ、若者のまぐわいというのは激しいのう。何百年かぶりに子宮が疼くわい」

 

 かかか、とコート姿の少女は笑うと、手元のガトーショコラをひと口食べた。

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