※この作品はR-18です。

今日も今日とて火々里さん   作:赤い鳩サブレ

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第三話 ひとたび一線を越えれば二度とは、二度とは

 ──結論から言えば、仄の行動は正解であった。

 

 ひとしきり交わった夜を越え朝を迎えた時、綾火の体調は完全に回復しており、同様に仄の中の不自然な滾りも治まっていた。

 実は母の小町はその最中に帰宅していたのだが、二人の様子を察してそっとしてくれていたようだ。翌朝の朝食が赤飯だったのは彼女なりの祝福だったのだろう。

 妹の霞は何故か夜に戻らず、明け方にフラフラで戻ってきたかと思えばそのまま寝てしまった。「何故か」このタイミングで師匠のりのんから呼び出されていたらしい。

 まあ、色々とあったが結果としては全て解決し、元に戻った──と言いたい所ではあるのだが、ひとつだけ変わった事があった。

 

「ちょ、火々里さん、上に霞が……!」

「大丈夫よ。さっき猫耳と一緒にゲームを始めたばかりだから、20分は降りてこないわ」

 

 綾火の仄への行為が、今まで以上に過保護かつ積極的になり、歯止めが効かなくなってきた事である。

 

 

 

 第三話 ひとたび一線を越えれば二度とは、二度とは

 

 

 

 週末の午後の多華宮家のリビング。机の上には幾つかの参考書とノートが置かれ、鉛筆と消しゴムが転がっている。

 現在、綾火と仄はエアコンの効いたこの部屋で勉強中──であった。

 

「いや、だからって、こんな、ううっ!」

 

 ズボンから引き出された肉棒が滑らかな指に扱かれ、仄は思わず声を漏らした。

 

「このまま勃起させた状態で勉強に集中できないでしょ? 我慢する必要はないわ」

 

 足を崩して座る仄に寄り添うように綾火は身体を近づけると、肉棒を扱く手を速めた。

 つい今さっきまで、二人は普通に勉強をしていた。しかし、答えを添削する為に近づいてきた綾火の胸が仄に触れ、仄は不意に勃起してしまった。

 すると間髪入れず綾火は仄の変化を察し、股間に触れてきたのだ。

 

「ぐっ! かっ、火々里さん! このまま、だとっ!」

「もう出そうなのね。少し待ちなさい」

 

 腰の奥から強い射精感がこみ上げてくる。絶頂が近い事を仄が訴えると、綾火はふと手を止め、上体を伏せた。必然的に仄の股間に綾火の整った顔が密着する体勢になる。

 

「……あむっ」 

「ふあぁっ!」

 

 充血した亀頭が綾火の唇に包まれ、仄は耐えきれず大きな声をあげた。慌てて口を押さえ、階上の霞たちの反応を伺う。

 

「………」

 

 動きや反応なし。どうやら最近ハマっている狩りゲーに熱中してくれているようだ。

 

「っぱ……床を汚してはお義母(かあ)さまに悪いわ。このまま私の口の中に出しなさい」

「ちょ、そんな……うぅっ!?」

「ンンッ……はっ、んふっ……」

 

 何とか綾火を制止しようとした仄だったが、再度すっぽりと肉棒を咥えられ途中で言えなくなる。

 綾火の口がすぼめられ、竿の根元を柔らかく締め付けてくる。同時に舌先は亀頭全体を舐めまわし、鈴口をつつくように弄ってくる。

 冬月高校においてあらゆる面において最優秀と認められた「姫」の称号を持つ綾火だが、性についてもその優秀さを持ち合わせていたようだ。処女を失ってからまだ数日だと言うのに早くも仄の感じやすいところを把握し、嫌悪感を持つこともなく自ら進んで仄の肉棒を咥えこんでくる程になっていた。

 

「ンッ、ンッ、ふぅっ……」

「あぁっ! 火々里さん、出る、出るっ!」

「………!」

 

 背を反らし、仄は絶頂に達した。綾火の口の中にどくどくと精液が吐き出され、呑み込むのも苦しかろうそれを彼女は迷う事なく嚥下してゆく。

 

「あっ、んっ……か、火々里、さん……!」

「コホッ……こんなに沢山出して、やっぱり溜まっていたのね」

 

 丁寧に尿道に残る精液も吸い切ると、綾火は軽く咳払いをしてから身を起こした。背筋を伸ばし、口元に仄の精液が僅かに残っている以外は勉強を開始した時と全く同じ風に仄を見る。

 

「さ、勉強の続きをしましょうか」

「……ごめん、二分でいいから休ませてもらっていいかな?」

 

 射精後の脱力感からまだ戻れないまま、仄はぐったりと答えた。

 

 

 

 それから二時間後、仄の部屋。

 

『……姫様が時と場所を選んでくれない?』

 

 仄から「相談したい事がある」と声をかけられ、屋根裏から降りてきた昏峰あとりはその相談内容に(人形の)顔をしかめさせた。

 

「うん、火々里さんが、その、僕の事を気遣ってしてくれている……とは思うんだけど、朝でも昼でも、僕が勃起していたらソレを何とかしようとしてきて……」

 

 例えば、朝起こしに来た際に朝勃ちしていれば躊躇なく「おはよう」のフェラチオ、前回の襲撃の反省からか最近ではローブ姿で仄の外出時のトイレにも随行するようになり、そこで彼女の胸などに股間が反応してしまえば、帰宅後にはまずセックス、夜は夜で風呂に(一応の恥じらいなのかスクール水着姿で)入ってくるようになり、そこでうっかり勃起してしまえばなし崩しでセックスに持って行かれてしまう。

 それ自体は仄としても気持ちよくして貰っている手前、決して嫌という訳ではない。問題は──妹の多華宮霞にこの関係の変化を気付かれる事である。

 

『まあ、確かに霞にバレりゃあ……面倒臭くなるな』

 

 それについてはあとりも同意する。

 彼女は仄に対して「お兄ちゃん子」という枠を超えた強い執着心と依存を見せる重度のブラコンである(なお、本人はブラコンについては固く否定している)。

 幸いにして霞は性についての知識は疎く、むしろ性行為に対し不潔感を抱いているような状態なので隠し通せているが、このまま綾火の行動がエスカレートすれば遠からずその意味に気付くだろう。その時に「姫様だけ不公平よ! お兄ちゃん、妹の権利として私にも膣内射精(なかだし)して!」と言い出し兼ねないのが霞という妹なのだ。

 高校生にもなって数日に一度は添い寝し、一緒に風呂に入っている妹ではあるが、流石に仄としても近親相姦にまで及ぶつもりは無かった。そうなれば、後に起こるのは──ド修羅場である。

 

『うーん……姫様としちゃ、今まで出来なかった形で奉仕できるようになって張り切ってるんだろうなあ』

「うん、僕もそうだと思うんだけど……流石にこのままじゃ」

 

 ふと、人形は何かを思いついたように仄に聞いた。

 

『……なあ、要は姫様がお前の「時と場所を選んでほしい」って気持ちが分かればいいんだよな?』

「え? まあ、そうなの……かな?」

『だったらよ、こういうのはどうだ?』

 

 そう言うと、あとりの人形はある提案をした。仄は顔を赤らめ、驚きつつ反論を返す。

 

「いやいやいやいや、無理でしょそれ! 冬月高校(ウチ)って、魔女の名門校なんだよね!?」

『そこは問題ねえよ。要は魔女が参加していない日を狙えばいいのさ。希望者については俺も把握してる。調整は可能さ』

「それにしたって、その、流石に……」

『……正直、その位しねえとあ(・)の(・)姫様を分からせる事はできねえと思うぜ?』

 

 あとりはあくまで無表情だが、その手の人形は多彩な表情で仄に語る。仄は逆にあとりに尋ねた。

 

「その、あとりさん的には大丈夫なの? これって下手すれば、火々里さんを怒らせるんじゃ……」

『まあ……そうだけどよ。ほら、姫様って、一度自分のする事を決めたら周囲がどうだろうと力づくで押し切って、しかもそれを成功させちまうだろ?』

 

 そう語る人形の表情はあくまでシリアスだ。仄は綾火との今までの色々を思い返し、頷いた。

 

「……そうだね」

『正直俺様としては姫様には少しの柔軟さが欲しいと思ってる。例えば工房長はガチガチの体育会系だけど、あれでなかなか駆け引きもできる人だ。お前の事も含めて本部とは色々とやり合ったらしい』

「………」

 

 工房長にして冬月高校理事長である火々里かざね。彼女の尽力により「白姫」を宿す自分は、こうして学園生活を満喫する自由を与えられているのだ。

 もしこれが融通の利かない管理者であれば、仄は工房本部の地下深くにでも封印されていただろう。

 

『姫様も将来的には工房長の後を継ぐ事になる。その時、今の姫様じゃ本部との微妙な駆け引きなんざ出来ないだろう。そういう意味で、今回のお前との一件は荒療治だがいい薬になると思ってんだ』

「あとりさん……」

 

 どうやら彼女は彼女なりに綾火の事を気にかけているらしい。

 その事を仄は理解し、改めてあとりに言った。

 

「……分かった。あとりさん、協力して貰えるかな?」

 

 

 

 ここで改めて冬月高校の特殊な代表制度システム「王子/姫」について説明せねばならない。

 天からの使いが降臨し、学舎において共に授業を受けたという伝説に由来するこのシステムは、毎年秋に行われる文化祭を中心として回転する。

 前回の文化祭から翌年の文化祭までの一年間、生徒の中から外見・学業・生徒間の評価など様々な面から候補生が選抜され、最終的に文化祭の全校生徒の投票によって決定するのだ。

 こうして「姫」または「王子」となった者は学内において生徒会はおろか理事会すら凌駕する、理事長に次ぐ権限を与えられる。「あの教師はこの高校に相応しくない」とその生徒が言えば、あとは理事長の判断ひとつで解任・退職が可能なのだ(幸いにして綾火が姫を襲名してからは、そういった不幸な教師は誕生していない)。

 そしてそんな代表生徒になった者は、全生徒からの羨望と憧憬と敬愛と、幾らかの嫉妬に晒される事になる。「姫様と少しの間でも同じ時間を共有したい」という気持ちそのものは悪ではないが、それが許容量を越えれば混乱を巻き起こす。現在、その混乱を制御するために存在するのが綾火自身が知らぬところで勝手に結成された「火々里綾火親衛隊」である。

 

 ──「姫様を囲む昼の食事会」

 

 誰とはなしにそう称されるようになったお昼休みの定例行事。

 綾火と一緒にお昼を取ろうとする生徒が授業終わりに教室に殺到するようになったため、親衛隊による抽選制チケット管理がなされるようになった一大イベントである。

 まず参加希望者は綾火ファンクラブに登録を行い、S席(綾火の至近距離、いわゆる升席)、A席(噴水外周・綾火側)、B席(噴水外周・反対側)から選んで事前予約を行う。その後に高倍率の抽選を経て出席権が当選した生徒に与えられるのだ。

 ちなみに綾火自身はこの食事会に対して楽しいと思ってはいないが、同時に面倒とも思っていない。「自分と多華宮君がお昼を摂る時に周りに勝手に人が集まり、勝手に散ってゆくだけ」という認識である。公園で恋人と寛いでいる時に周りの鳩に注意を向けるだろうか? つまりはそういう事なのだ。

 そんな訳で冬月高校の昼下がり、いつものように綾火は校内の噴水広場で広げたシートに座り弁当を広げていた。

 

「………」

 

 いつもであれば眼前に居る筈の仄は、まだ居ない。

 

「火々里さん、ちょっとだけ先に行ってもらっていいかな? すぐに追いかけるから」

 

 そう言って綾火だけ先に行かせたのだ。ちなみに仄の食事会への同席については当初こそ親衛隊などからの風当たりが強かったが、彼が生徒会長に就任した事や仄への周囲の好感度が増してきた事もあり、現在は渋々ながら受け入れているという状態である。

 

「あ、あの、姫様……生徒会長が来るまで、お話いいですか!?」

 

 仄がまだ来ない事を好機と見たのだろう。様子を伺っていた女子のひとり──同じクラスの筈だが、名前は憶えていない──が膝立ちで前に進み出た。

 

「………」

「あ、ありがとうございます! あのあの、今朝なんですけど……!」

 

 綾火は文字通り虫を見るような目で彼女を見たが、「駄目」と言われなかった事を了承と捉えたのだろう。その女子は喜々として綾火に話を始めた。

 

「っ!?」

 

 突如、綾火の制服に包まれた豊満な胸が背後から鷲掴みにされた。狼藉を働く指を弾力ある乳房が押し返す。

 

「……どうしました、姫様?」

 

 眼前の女子は小首を傾げて綾火を見る。

 彼女には現在の綾火の状況が正確に見えていない。その事を理解した綾火は背後の人物が誰か悟った。

 

「多華宮君?」

「………」

 

 背中の埃を取るような動作に見せかけつつ、綾火は背後を見た。果たして、ローブ姿の仄が綾火の背中に密着し、手を回して乳房を下から掬うように揉んできている。

 

「多華宮君、これは……?」

「ごめんね、火々里さん」

「んっ……!?」

 

 首筋へのキス。こんな状況だというのにそのキスの仕方は優しく、そのまま項(うなじ)へと下がってゆく。

 綾火は咄嗟に周囲に視線を巡らせた。魔女のローブには着用者の存在を希薄化させ、一般人から認識されなくなると同時に無意識に対象との接触を避けるようになる隠密魔法が施されている。しかしそれはあくまで一般生徒の話で、魔女、もしくは魔女見習いであれば容易に認識する事が可能なのだ。

 

「大丈夫、今日の参加者に魔女はいないから……」

「くっ……んんっ!」

 

 仄はより大胆な行動に出てきた。今まで制服の上から揉んでいた胸を、脇から手を差し込んで直接触れてきたのだ。仄の指に乳房が揉みしだかれ、否応なく身体の奥から快感がこみ上げてくる。

 実のところ、仄を振り払い放り投げるのは綾火には容易い。体格的にも、また腕力的にも綾火が勝るからだ。しかしそうすれば、流石にローブの隠密効果にも限界が来る。仄は突然昼食を広げる女子たちのなかに魔法使いめいた格好で出現する事になるのだ。

 「工房の魔女」において最も禁忌とされるのは、魔法や魔女の存在を一般人に認識される事である。先日のスーパーのトイレを爆破したケースなどは現場には魔女と仄しか居なかったから何とかごまかせたが、この人数で、しかもその大半が綾火に注目している現在の状況下では──

 

「あ、あの、姫様、大丈夫ですか? 私のお話、不愉快でしたか?」

 

 自分の話で綾火を怒らせたと思ったのだろう。眼前の少女は眼前で綾火の胸を揉み、うなじにキスを重ね、身体を密着させている仄に気付かないまま泣きそうな顔で尋ねてきた。

 綾火は今にも漏れそうな喘ぎ声を抑えつつ答えた。

 

「ん、だ、大丈夫よ……続けて」

「本当ですか!? 良かったー!」

 

 少女はぱっと表情を明るくさせた。周囲から様子を見ていた他の女子が驚きの声をあげる。

 

「姫様がスルーせずに返事を返した!?」

「そんなに姫様のツボに刺さったのかしら、『朝食のハマグリのみそ汁に小さなカニが入っていた』って話……」

「………」

 

 聞き流していたが、どうやら思っていた以上にどうでもいい話をされていたようだ。

 

「あのあの、それじゃ次は三日前に……」

 

 とはいえ、眼前の少女を舞い上がらせるには十分だったようだ。こんな機会は二度とないと思ったのか、綾火の反応を気にせず滔々とどうでもいい話を再開する。

 綾火はできるだけ自然な動作で弁当箱の中の鮭の切り身を食べると、小声で仄に言った。

 

「(多華宮君、これ以上は……)」

「ごめんね、あとちょっとだから」

「……!」

 

 腰の後ろ辺りに、熱く固い感触。

 何かは考えるまでもなかった。腰を落とした仄がズボンから勃起した肉棒を晒し、綾火の腰に擦りつけているのだ。

 

「(駄目よ、んっ! そ、挿入すれば、流石にローブの魔法でも隠し切れなくなる……!)」

「分かってる。少し捲るね」

「多華宮君……!?」

 

 スカート越しの感触から、今度はショーツ越しのよりリアルな熱と感触に変わる。現在の綾火はレジャーシートに正座に近い姿勢で座っているが、仄は後ろからスカートを捲った上で肉棒を尻の谷間に押し当ててきたのだ。

 

「(多華宮君、こんなに興奮してる……)ああっ!」

「ど、どうしました、姫様!?」

 

 思わず漏れてしまった喘ぎに、少女が話を止めて気遣う。

 

「……何でもないわ。作ってきた雷こんにゃくが、ちょっと辛すぎただけ」

「そうだったんですかー……姫様でもそういうのってあるんですねー」

 

 疑いもせず少女は頷く。

 ショーツ越しの尻に強く押し当てられた仄の肉棒は、そのまま上下に動き始めた。いわゆる「尻ズリ」である。

 

「(はあっ……た、多華宮、君……!)」

「気持ち、いいよ……火々里さんの、お尻……! すべすべで、暖かくて……!」

「(そんな事を、言わないで)ん、んくっ……!」

 

 頬が紅潮しているのが分かる。身体の奥からじんじんと疼く。股間の辺りが少し生暖かい。おそらくは濡れてきているのだろう。

 仄の肉棒は綾火の尻を滑らかに動く。次第に上下する速度が増してゆき、それに呼応するように熱が増してゆく。

 ローブの効果で綾火の背中は仄が存在しないように幻影が作られている。スカートも捲れて見えてはいないはずだ。

 

「ふっ……ンッ……はぁっ……!」

「そんなに面白かったですか!? 良かったぁ!」

 

 漏れる吐息を相槌と思ったのだろう。「家族でファミレスに行ったら、インド人がカレーを食べていた話」を続けていた少女が嬉しそうに言う。

 もはや綾火にはそれに普通に言葉を返す事もできなかった。擦りつける仄の動きに、時折びくりと跳ねるような感覚が混じる。絶頂が近いのだ。

 仄の口が耳元に寄せられる。熱い吐息が耳に吹きかけられ、それだけで綾火の身体もどくんと反応してしまう。

 

「も、もう、出るっ……!」

「……っ!」

 

 熱い迸りがショーツに吐き出されるのを感じる。綾火は身体を震わせ、軽い絶頂に達した。

 

「……ごめんね、火々里さん」

 

 その声を最後に、背後の仄の気配が遠ざかってゆく。

 

「………」

「あのあの、それで次はですね……」

「……話を止めてもらっていいかしら?」

 

 更なるテンションで話を続ける眼前の少女に、綾火は冷たく言った。

 

 

 

「ああああああ……」

 

 校舎裏、人気の少ない体育用具室付近。

 

「ど、どうしよう……あそこまでやるつもりは無かったのに……!」

 

 多華宮仄はローブ姿のまま壁に向かい、頭を抱えていた。

 当初の予定では、少し胸を揉んで耳や首筋を責め、綾火を感じさせるだけで早々に撤退。食事会に合流するつもりであった。尻ズリから射精までやってしまったのは仄の暴走である。

 喘ぎ声を抑えつつ感じる彼女の姿が可愛らしく思わず発情してしまった訳だが、流石に精液を彼女の尻に擦り付けたのは完全に行き過ぎだろう。

 

「火々里さん、怒ってるよなぁ……いや、絶対怒ってるって」

 

 射精を終えて冷静になった頭に浮かぶのは反省と後悔だけだ。午後の授業で、隣の席の綾火にどんな顔で会えばいいのやら。

 更にしばらく仄は頭を抱えていたが、やがて覚悟を決めたのか顔を上げた。

 

「……謝るしか無い、よな。許してくれないだろうけど」

「別に怒ってはいないわ」

「わあぁ!?」

 

 背後からの声に、思わず仄は悲鳴をあげて振り返った。

 

「か、火々里さん!?」

「………」

 

 食事会を終えた綾火が眼前に立っていた。何故仄の位置が分かったのかは不思議ではない。彼女なら簡単な追尾魔法のひとつも余裕で使えるだろう。あるいは自分がここに来るよう誘導されていたのかもしれない。

 逆光を背にこちらを見下ろす彼女の姿に、仄は色々な弁解を頭に浮かべ──それが全て無駄だろうと悟り、頭を下げた。

 

「ごめん、その、やり過ぎた……よね」

「多華宮君、頭を上げて。本当に怒ってはいないの」

「……え?」

 

 そう言われ頭を上げた仄が見た綾火の表情は──反省であった。

 一見すると無表情なままに見えるが、確かに彼女は何かしらを反省していた。

 

「火々里さん?」

「……悪かったのは私の方。今まで多華宮君の為と思ってやってきたのだけど、私は貴方の気持ちを何も分かっていなかったのね」

「えっと……それって」

 

 仄の心に一条の光が差す。あとりは「荒療治」と言ったが、本当に上手くいって──

 

「多華宮君は、衆目に晒されてのセックスが好きだったのね」

「……え?」

 

 仄の身体が硬直する。

 

「大丈夫、私は多華宮君がどんな性癖を持っていたとしてもそれを全て受け入れるわ。基本的に死なないからどんなハードプレイでもOK。例え多華宮君が自分の×××を食えとか言ったとしても、私はそれを喜んで受け入れるわ」

 

 思考が止まった状態の仄の耳に綾火の声が届く。一部がノイズめいて聞き取れなかったが、聞こえない方が幸福だったと言えるだろう。

 言い終えた綾火は無表情のままサムズアップすると、その手を下ろした。

 

「手始めにここで、さっきの続きをしましょう。ちょうど体育館で授業があるから、多華宮君のスリル欲求も満たせると思うわ」

「ちょ、え、待っ……!」

 

 そう言いつつ綾火がスカートを上げる。慌てて制止しようとした仄は、そこに見えたものに言葉を失った。

 

「私も、もう我慢ができないから」

 

 精液塗れのショーツは既に脱いだのだろう。ノーパンで隠すもののない綾火の秘所が真昼の体育館裏で露わになっていた。陰毛は既に愛液に濡れ、艶やかな光沢を仄に見せつける。

 

「……火々里、さん」

 

 おそらく自分はこの後、彼女の提案を受け入れてしまうのだろう。

 衝撃と興奮で痺れる意識の中、仄はそう思った。

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