安全運転をしていたオレのバイクに、後方から赤い甲羅が追尾してくる。
バナナの皮を犠牲にしたおかげで相殺できたが、第2第3の甲羅が迫ってきていた。
オレの操作していたバイクはダメージを受け、引っ繰り返ってしまう。
これは大幅なロスタイムだ。
「…ッ!ブフッ!お、おちてる…っ!」
「クッソお前!!赤甲羅お前か!!」
「お先に!1位もらったよ。」
「フザケンな!おい待て待て!オレを抜かすな!」
「ごめんね〜」
響香ちゃんはくくく、と肩で笑いを押し殺している。
体が震えてるの見えてんだよ!
「アイテムの力だろうが!運だぞ運!」
「運も実力のうちだからね。」
「青甲羅出せ!青甲羅!!下位供役に立て!」
カチャカチャと激しくゲームのコントローラーを操作する。
オレは、気合が入るとつい指に力が入ってしまう性なのだ。
オレたちは今、何故かカートのレースゲームをやっていた。
ゲーム自体はあるものの、百ちゃんがゲームが苦手だったために対戦プレイをすることができなかった。
ネットでの対人戦もできるが、やはり対戦相手と一緒にするのとは臨場感というか、楽しさが段違いだ。
同じコースの繰り返しにそろそろ飽きてきて、何度かやった後に放置していたのだが。
催眠状態を解くと、オレを彼氏だと思い込んでいる響香ちゃんが最新ゲームハードに興味を示していたため少し始めてしまったのが最後。
もう一戦、もう一戦、と終わらない戦いが続いていた。
「あれ〜?アンタまだゴールしてないの?さっきまで一位じゃなかったっけ?」
「くっそ…今アバンチュールゆみこって奴と争ってるから…」
「誰ww」
既にゴールを決め、余裕綽々とお茶を飲んでいた響香ちゃんがオレを煽る。
最終局面で響香ちゃんに出し抜かれ、オレの順位は9位という微妙な順位で決着がついた。
響香ちゃんはそのまま順位を守りきったようで、一位ゴールとなっていた。
「あーーーーーレートが溶ける…」
「あってないようなモンでしょ。」
「まあそうだけれども。」
ネット対戦をあまりプレイしていなかったため、ポイントもそう高くはない。
が、自分評価が下がっていくのを見るのは気分がいいものではない。
「どうする?もう一回やってあげても良いけど?」
響香ちゃんは調子に乗って小さくドヤ顔を晒す。
勝ち越されたとはいえ、実力はほぼ五分五分。
あるのはゲットできたアイテムの良し悪しで決まる運の差。
「な、なに…?」
オレの隣に座りなおし、再戦する気満々の響香ちゃん。
そんな勝ち誇った様子が癪に触り、ずいっと距離を詰める。
顔が近くに寄ると、顔をぽっと赤らめた。その初心な反応が大変よろしい。
「えっ、ちょっと…げ、ゲームは…?」
響香ちゃんの顔からはムカつくドヤ顔が消え去り、代わりに間抜けな惚けた顔になってしまう。
異性との恋愛には疎いのか、あわあわしてしまう姿が可愛くて仕方がない。
「まだしたい?」
「ウチはどっちでも…勝ち逃げできるし。」
「じゃ、何か賭けようよ。次勝った方が好きな事命令できる、みたいなさ。」
「…言ったな?負けないかんね。」
暑くなった顔を冷ますかのように、オレの側からパッと離れて乗ってきた。
そして、頬を染めたままニヤッと悪い笑みを浮かべる。
「ウチが勝ったら、エッグいこと命令したげるから。」
「へえ。そいつは楽しみだな。」
ゲームが始まって、オレはグイグイと響香ちゃんへ近づく。
そして、セクハラと言ってもいいような激し目のスキンシップを始める。
運転に集中している響香ちゃんはたじたじだ。
「ちょ!やめろ…!マジ!」
「妨害は無しって言ってないからな〜」
「ズルっ!」
ついに手段を選ばなくなったオレに向かって悪態を吐く。
が、やはり調子が出ていないようでコースアウトや操作ミスが続く。
オレがゴールする頃には、後ろから抱きつく形となっていた。
響香ちゃんは、オレの腕の中でカチンコチンに固まっていた。
「あれ、響香ちゃん最下位じゃねーか。」
「く、くっつきすぎ…」
響香ちゃんは、もう沸騰してしまうんじゃないかと思うほど顔を赤らめている。
こういう反応は新鮮でいいな。百ちゃんは早々照れないし、トガヒミコはベッタベタにくっついてくる。
響香ちゃんがオレの事が好きな設定はこのままにしておくとしよう。
「じゃあ、響香ちゃん罰ゲーム決定だ。」
「…こんなことして勝って嬉しいの?」
順位が決定したので終了します、というメッセージが現れた画面から目を外し、じっとりとした目線でオレを見据える響香ちゃん。
響香ちゃんは不正を許さないっていうか、正義感強そうだよな。
「勝負は勝負だからな〜。響香ちゃんは今日一日オレの言いなりね?」
「命令権1回だけだったじゃん!」
「え?そんなこと言ってないよ?オレは好きな事を命令できるって言っただけで、一回だけとは言ってない。」
「ズルじゃん!全部ズルじゃん!詐欺!詐欺師!」
「響香ちゃんが訂正しなかったのが悪いでしょ。」
響香ちゃんは余程オレに1日ペットになるのが嫌だったのか、ぎゃーぎゃー言い合った。
水掛け論なので、仕方ないがオレが折れてやることにした。
まあ確かに大人気なかったしな。流石にやりすぎた。
「わかったわかった、ごめんって。じゃ、命令は1つだけにするから。」
「…ったく。で、なに命令すんの?」
呆れた様子で聞く響香ちゃん。
オレの命令は勿論もう決まっている。
「響香ちゃん、エッチしよう。」
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