「随分とスケベになったなぁ、ルルアも」
肉棒に這う艶かしい感触を味わい、男性は悦に入っていた。
上等なソファへ腰を下ろし、さらけ出したそれの側に、美少女の上気した顔がある。
しゃぶりつくのに夢中になっていたらしい彼女──ルルアは、唐突な言葉に肉棒から口を離す。
「っぷあ……。す、スケベって言い方はやめてよ……。それに、どうしてもして欲しいって言うから、仕方なくしてるだけで……」
「確かにして欲しいとは言ったけど、だからって実際にしてくれる女の子なんて居ないぞ? スケベな事が好きになったんだよなー?」
「だ、だって! “貴方”は、あのアイディアをくれた恩人だし、恩返しを……ううう、もういいっ! 静かにしてて! あむっ」
「おうっ」
男性の言いようが気に入らなかったのだろう、ルルアはまた肉棒にしゃぶりつく。
しかも、先ほどよりも強く、激しく、丹念に。
先端を吸い上げ、デコボコを舌でなぞり、余った棒を指でしごき、空いた手は袋を弄ぶ。
明らかに慣れた手付きだった。
「んぐ、んっ、むっ、ふ、んふっ」
「ちょ、ルルア、本気出し過ぎ……うっ」
「んむぅ!?」
まるで娼婦のようなフェラチオに、男性は堪らず射精してしまう。
いきなり吐精されたルルアは、苦しげに眉を寄せるけれど、しっかりそれを受け止めていた。
脈動に合わせて吸いつきに強弱をつけ、噎せてしまわないよう、舌の上に精液を溜める。
射精が終わったのを見計らい、彼女はゆっくり、最後まで肉棒を吸い上げながら、時間をかけて離れた。
「ん……ふ……っうん……はぁ……ふぅ……」
しばらく、うっとりとした表情で口をモゴモゴさせていたが、やがて大きく喉を鳴らし、感嘆とした溜め息を。
その頭を優しく撫でながら、男性が満足げに微笑んだ。
「やっぱりスケベだよ、ルルアは。何も言ってないのに、自分から飲むとか。美味しいか?」
「美味しくないに決まってるよっ。生臭いし、喉に引っかかるし……美味しくない……けど……」
ふてくされつつも、決して肉棒から目を逸らさず、言葉とは裏腹に頬擦りしている。
少女から女へと変わり始めたルルアを眺め、男性はふと、彼女との出会いを思い返す。
そう。あれは、ほんの二ヶ月ほど前の出来事……。
暗澹たる有様。
エルメルリア・フリクセル──ルルアの現状を表すのに、これ以上適切な表現はないと思われた。
「……スティア……」
錬金術の師匠である、ピアニャの幌馬車のアトリエ。
その中にあるルルアのベッドの上で、膝を抱え、もう言葉を交わせない友人の名を呼ぶ、“青と白”の服を着た少女。それがルルアだ。
絶世の美少女とまではいかないまでも、誰もが可愛らしいと評するだろう顔には、涙の跡が残っている。
ライムグリーンの瞳も赤く充血し、薄く桃色のかかった銀髪はボサボサ。憔悴しているのは明らかだった。
そして、幌馬車の外側には、そんな彼女を心配する二人の影が。
「ロロナさん、ルルアちゃんは……」
「うん……。まだ、塞ぎこんじゃってるまま……。ご飯も食べてくれなくて」
長い栗毛色の髪を持つ妙齢の女性に、黒髪を短く纏め上げた、ルルアと同年代の少女が声を掛けている。
ルルアの母親、ロロライナ・フリクセルと、幼馴染のエーファである。
二人とも、ルルアの事が心配で仕方ない様子だ。
が、落ち込んでいる理由を……。
ほんの数日前、友人であるスティアという名の少女が、崩落しかけた遺跡からアーキュリスを守るため、その身を犠牲にしたという事実を知っているからこそ、どんな風に声を掛けたものか、悩んでいる。
しかし、このまま放っておいたらマズい事だけは分かっている。手に持った鍋を確かめたエーファは、意を決してアトリエへと踏み込む。
「ルルアちゃん? 入るよ?」
返事がない。
静寂にエーファの心はくじけそうになるが、奥歯を噛んでグッと堪え、足を進める。
「ルルアちゃん。わたし、カレー作ってきたの。ほら、一緒に食べよう? 早く食べないと、冷めて美味しくなくなっちゃうよ!」
「エーファ……。ごめんね、食欲なくて……。今は、いいや……」
入り口から右手の曲がり階段を登り、努めて明るく振る舞うエーファ。
対するルルアは、やはり意気消沈したまま。
一日三食カレーでも、いや、一週間丸ごとカレーでも喜ぶルルアが、エーファお手製のカレーに興味も示さないだなんて。
いよいよ追い詰められているのだと焦ったエーファは、サイドテーブルに鍋を置き、縋りつくようにルルアの横へと座る。
「食べなきゃダメだよっ。ルルアちゃんが倒れでもしたら……スティアちゃんも、悲しむよ」
「……っ」
スティア。
力不足で助けられなかった、友人の名前。
その名を耳にした途端、ルルアの体が大きく震える。
自分で口にした時よりも、酷く胸を抉られた。
(わたしがもっと、練金術師として凄かったら、今頃スティアも)
スティアもカレーが好きだった。
よく一緒に食卓を囲んでは、美味しい美味しいと笑い合っていた。
それが叶わなくなったのは、ルルア自身の、選択が原因。
どうにも居た堪れなくて、ルルアはこの場から逃げ出す事を選んでしまう。
「本当に、ごめん……。少し、一人にさせて……」
「ル、ルルアちゃん!? どこに行くの!?」
「心配しないで、ちょっと歩いてくるだけだから。……お願い」
引き留めようとするエーファを、ルルアは振り返らない。
それどころか、入り口の脇で様子を伺っていたロロナにすら気づかず、肩を落として歩いて行く。
小さくなっていく背中を見つめながら、エーファは悔しげに歯嚙みする。
「どうして、こんな事に……っ」
一人でいるには広過ぎるアトリエの中で。その呟きは誰にも届かないまま、静寂に掻き消された。
一方、沈んだ様子で歩くルルアの事も、誰も気にしていないようだった。
アーキュリスは現在、解放されたフェルスガラクセンを目当てにした冒険者や調査隊、そんな彼等を相手にする商人で、かつてない賑わいを見せている。
誰も彼もが、今まで閉ざされていた旧機械文明の遺跡に夢中になっているのだ。
(みんな、スティアの事を知らないんだ。崩壊寸前だったフェルスガラクセンを、スティアが直したのに。アーキュリスは、スティアが守ったのに……)
無性に腹が立った。
なんでみんな浮かれているのと、怒鳴りつけたい衝動に駆られた。
けれど、そんな事をしても誰も喜ばない。
そんな事をしても、スティアは帰ってこない。
結局、自分の無力さを再認識させられたルルアは、何も考えず、アーキュリスそのものから逃げ出す。
がむしゃらに走って、息が切れて、それでもまだ歩き続けて。
朝露の森を通り越し、さらに南の、ほとんど誰も足を踏み入れない深い森へ。
そして、ふと気づいた時には、すぐ近くから、獰猛な獣の唸り声まで聞こえてきていた。
「……えっ、魔物!?」
十歩ほど前方の木陰に、人間の大人以上の体躯を持つ、狼に似た魔物──ウォルフが、数頭の群れを成していた。
パキリ。
ゆっくりと近づき、枯れ枝を踏み折る音が、ルルアの背筋を凍らせる。
「ヤバ、思ってたより遠くまで歩いて来ちゃってた……! つ、杖は……っ」
反射的に、いつも持ち歩いているはずの武器──錬金術士の杖を掴もうとし、指が空を切った。
しまった、とルルアの表情が強張る。
着の身着のままで家を出たせいで、まともな装備を持って来ていない。
杖はもちろん、攻撃用の道具を入れたカゴも、お気に入りのアルケミーコートだって着ていない。
だというのに、靴だけはいつも履いている旅人の靴だったから、思っていたよりも遠出してしまっていたのだろう。大誤算だ。
内心の焦りを察知したか、群れの中でも特に大きいウォルフが、余裕たっぷりにルルアへとにじり寄る。
装備さえ整っていれば竜だって仕留めるルルアだが、装備が無ければ、ただのか弱い少女。素手で戦えるはずがない。
(だ、大丈夫っ。わたしだって伊達に戦闘経験を積んでないんだから、回避に専念すれば………………来る!)
それでも、不意打ち気味に飛びかかってくるウォルフをサイドステップで避けられたのは、彼女の自負する戦闘経験のおかげだった。
……が、見事に回避できたと思いきや、ステップの終わりで足を滑らせ、盛大に転んでしまう。
「ふぎゃっ! ……っつう……ぁ、足、捻った……!」
顔面から地面に突っ込み、間抜けな悲鳴をあげるルルア。
しかし、状況はそれを笑い事で済ませない。
ウォルフの群れが、ルルアを取り囲んでいた。
よほど腹を空かせているらしく、剥き出しになった牙がよだれに濡れている。
ただでさえ動きの早い魔物相手に、足を痛めては逃げられそうもない。
「こ、来ないで……だ、誰か……!」
痛む右足を庇いながら、ルルアは震える声で助けを求めた。
けれども、ここは森の奥深く。運良く……本当に運良く冒険者でも通り掛からない限り、誰にも声は届かない。
群れの輪が縮まる。
唸り声。
荒い息遣い。
その時、ルルアはふと思った。
(ああ、そっか。これ、罰なんだ。スティアを助けられなかった、わたしへの、罰)
故郷と、友人。
どちらかを選ばなければならず、どちらをも選ぶだけの強さを持てなかった、自分自身への……軽蔑。
(ごめんね、スティア。ごめんね、エーファ。ごめんね、お母さん……)
自罰的な諦観に支配されたルルアの体から、力が抜ける。
絶好のチャンスを見逃さず、ウォルフ達がルルアへ殺到した。
──次の瞬間。
「そのまま動くな!」
「……え?」
唐突に、爆発が飛んで来た。いや、飛んで来た物が円を描いて爆発した?
ウォルフの群れが丸ごと吹き飛ばされ、ルルアの前に、黒髪の大きな背中が立っている。
(オーレル、じゃない。知らない男の人。冒険者?)
周囲を囲うウォルフの群れを、彼は脚で一薙し、その度に爆発が起こる。
履いている重厚なブーツの、つま先部分と踵部分に、何か特殊な機構が仕込まれているようだ。
ルルアが呆然と見つめる中、ウォルフ達は爆発に怯えて逃げ去り、あっという間に戦いは終了した。
「終わったぞ。怪我はないか」
「あ、はい。大丈夫で……痛っ」
声を掛けられ、立ち上がろうとするルルアだったけれど、右足の痛みで尻もちをついてしまう。
思っていたよりも酷いようだった。
男性は、顔を歪めるルルアの事を気にしつつも、周囲への警戒を怠らない。
「足を捻ったか。とにかく、ここを離れるぞ。近くにキャンプを張ってある」
「わ、分かりました……きゃっ!」
痛みを堪え、どうにかこうにか腰を上げようとするルルアを、男性は軽々と横抱きにした。
いわゆるお姫様抱っこ状態に、ルルアの頬が赤く。
「あ、ああああの、わたし、一人で歩け……」
「嫌かも知れないが、我慢してくれ、お嬢ちゃん。その足じゃキャンプに着くまでに日が暮れる」
「ううう……はい……」
言うが早いか、そのまま男性は歩き出してしまい、ルルアも恥ずかしさを我慢する。
異性とここまで密着するのは、初めてな気がした。
育児院の恩師であるベノンとは触れ合う機会も多かったが、異性としてカウントするのは違うし、やっぱり初めてだ。更に言うなら、お姫様抱っこも。
妙な形での初体験にルルアがドギマギしていると、程なく、男性の言っていたキャンプに到着する。
どうやら一人で旅をしているらしく、開けた高台に、こじんまりした三角形のテントと、すぐ側に火が焚かれていた。
その前にあった折り畳み式の小さな椅子に、ルルアは座らせられる。なんだか、美味しそうな匂いが漂っていた。
「痛む方の靴と靴下、脱いでおいてくれるか」
「あ、はい。分かりました」
男性はテントの中へ頭を突っ込み、何かの包みを手に戻って来る。
ルルアの前にしゃがみ込むと、彼は包みを開け、乾燥させた薬草──マジックグラスと乳鉢を取り出し、水で煎じて布を浸し、腫れた右足首へ。
昔からどこにでも伝わる、簡単な治療法だ。じんわりと冷たく、熱を持った足首に気持ち良い。
「普通の手当てで悪いな。ヒーリングサルヴは温存しておかないと、いざという時に困るんだ」
「い、いえいえ、大丈夫です。本当にありがとうございます、助けてくれて」
見知らぬ少女を助け、手当てまでした上で申し訳なさそうにする男性。
逆にルルアの申し訳なさが際立ち、心からの感謝を込めて頭を下げる。
本当に、彼が現れなければ命が危ない所だった。
思い返してみると、ほんの一瞬でも、生きるのを諦めてしまった自分が信じられないルルアだった。
「さて。本当ならゲンコツ落とされても文句は言えない、危ない事をしてたのは理解してるか?」
「……はい。ごめんなさい……」
「なら、オジさんからは何も言わない。後で家族にこってりと怒られるだろうしな」
「あはは……。怒られるし、泣かれちゃうと思います……」
「そうか。愛されてるのを自覚してるのは、いい事だ」
苦笑するルルアを、男性は殊更に叱ろうとはせず、何事もなかったように背を向ける。
普段なら素っ気なく感じられるかも知れないけれど、今はその、適度な距離感がありがたかった。
エーファも、ロロナも。リーザ、レフレ、マァナ、ピアニャ……。他の皆も絶対に、必ずルルアを心配して、怒って、その分だけルルア自身も、自責の念に駆られるだろうから。
「あーあ、やっぱり煮過ぎちまったかぁ」
「煮過ぎ……? あ、お料理してたんですか」
「ああ。もうそろそろ食べ頃かなって時に、魔物共の唸り声が風に乗って聞こえてきたもんだから……ほれ、森キャベツがくったくた。まぁ、これでも食えるけどさ」
「ごめんなさい、わたしのせいで……」
よくよく見ると、焚き火の上には小さな鍋が架けられていた。これが美味しそうな匂いの正体のようだ。野菜のスープだろうか?
蓋が開けられた事で匂いは更に強まり、緊張が解けたせいもあってか、ルルアのお腹が「ぐぅ~」と盛大に鳴った。
「なんだ、腹も減ってるのか」
「ち、違いま……せん、減ってます……ごめんなさい……」
「ごめんなさいの多いお嬢ちゃんだねえ。……ほれ」
「え?」
「食いなよ。そんなに腹の虫に鳴かれたら、安心して食べられん」
流石に乙女として恥ずかしく、顔を伏せてしまうルルアに、男性は大きめのマグカップとスプーンを差し出す。これまた大きめの、ゴロゴロとした野菜がたっぷり見えた。
いいのかな、と躊躇っていると、男性がさっさと食べ始まったので、ルルアも「いただきます」と口をつける。
煮過ぎたというのは本当のようで、野菜は歯がいらないほど柔らかかった。その分、甘味と旨味がしっかりスープへ溶け出し、濃厚なのにホッとする味付けになっている。
しばらく、無言が続いた。
パチパチと薪の弾ける音と、スープを啜る音だけが聞こえる。
気まずいような沈黙を破ったのは、意外にも男性の方からだった。
「なんで、あんな所に一人で居たんだ? 大して強い魔物は出ないが、護身用の武器も持たずに来ていい場所じゃない」
「それは……」
ルルアが森の奥に居た理由。
スティアを失った悲しみから逃げたかったから。
アーキュリスに居たくなかったから。
自分の不甲斐なさから目を逸らしたかったから。
そんな理由が頭に浮かぶけれど、なんだか言葉にするのが嫌で、黙ってしまう。
「ま、言いたくないなら良いさ。それも無理には聞かない。とりあえず、オジさんはアーキュリスに向かってる途中だ。そこまでは送ろう」
「……はい。助かります……」
男性は肩をすくめ、本当にそれ以上を聞いてこなかった。
スープも空になり、今度こそ気まずくなったルルアは、どうにか間を保たせようと話を振ってみる。
「オジさ……“貴方”は、どうしてアーキュリスに?」
「オジさんでいいよ。実際、君と比べたらそういう歳だ。……最近、フェルスガラクセンが解放されたらしいじゃないか。何があったか知らないけど、稼ぎ時だと思ってな」
……が、結局はルルアの傷を刺激する話題に戻ってしまい、顔を伏せる。
それをどう思ったのだろう、男性は自分のマグカップにスープをお代わりしながら、何気なく話しかける。
「無理には聞かないと言ったが、話したいなら聞くぞ。何も知らない赤の他人の方が、話しやすい事もあるだろう」
口振りこそ何気なく……というより素っ気なかったが、確かな気遣いも感じられた。
この人は、何も知らない。ルルアの事も、スティアの事も、フェルスガラクセンの事も。
だからだろうか。知って欲しい、全てを吐き出したいという気持ちが溢れてしまい、ルルアは取り留めもなく、感情を言葉にし始める。
「わたし、最低なんです……。フェルスガラクセンは……アーキュリスは、スティアが守ってくれたのに、どうしても納得できなくて、でも、もう何も変えられなくて……」
「………………」
「こんなに辛いなら、出会わなければよかった……。何もかも忘れたいって、思っちゃうんです。絶対にダメなのに、本当に、辛くて……もう……っ」
実情を知らない者には意味を成さない、単なる言葉の羅列に近い吐露だったが、男性は黙って聞いていた。
そして、今にも涙が零れそうになった時、静かに口を開く。
「本当の……」
「……え?」
「本当の後悔ってものは、たとえ一時忘れられたとしても、何かの拍子にふと蘇って、何度も、何度でも、どうしようのない気持ちになるんだよな」
「あ……」
「だから、別に良いんじゃないか。ほんの少し、忘れたいって思ってもさ。……ずっと背負ったままじゃ、潰れちまうよ」
彼の瞳は、ルルアを向いていない。
スープの表面を見つめたまま、しかし言葉だけは、間違いなくルルアに向けられていて。
我慢していたものが、また。
「ごめん、なさい……っ、少し、だけ、あっち向いてて、くれますか……?」
「……ああ」
「う、ぐす……っ、スティアぁ……!」
ルルアが泣き出すのと、男性が背を向けるのは、ほぼ同時。
零れ落ちる雫が、暮れ始めた太陽に照らされ、オレンジ色に輝いていた。
ややあって。
ルルアのすすり泣く声は段々と静かになり、太陽が半分ほど沈んだ頃には、どうにか平静を取り戻していた。
「ごめんなさい……。もう、大丈夫です……」
「ん……。少しは落ち着いたか?」
「はい……ちょっとだけ。けど、なんだか……眠く……」
男性が振り返ると、ルルアは泣き疲れたのか、こっくりこっくり、船を漕いでいる最中だった。
彼は知らない事だが、数日前からろくに寝ていない上、魔物に襲われて絶体絶命のピンチも味わったのだ。眠気が差しても不思議はない。
「よっぽど疲れてたんだろ。眠いんだったらテントまで運ぼう。ただし、あんまり無防備だとイタズラしちまうぞ?」
「……わ、大変だ……警備団に……連絡しな……きゃ……」
本格的に眠り始めてしまったルルアを、男性は溜め息混じりに、足に響かないようゆっくりと抱き上げ、一人用のテントへと運ぶ。
自分のために作った毛布の寝床へと彼女を寝かせ、知り合いの錬金術士に作って貰った、温度を自動調節してくれるマントを被せると、またテントの外に。
「長い夜になりそうだ」
誰ともなく呟いた男性は、違う鍋を火にかけ、新しくお湯を沸かす。
辺りに濃いコーヒーの香りが立ち込めるのに、そう時間は掛からなかった。
「……ん……」
目を覚ました瞬間、ルルアが感じたのは、疼くような足の痛み。次に、懐かしい匂いだった。
頭がボーッとする。
どうして足が痛いのか、思い出せない。
けれど、この匂いは……。
(なんだろ……。子供の頃、先生におんぶして貰った時みたいな……。不思議な感じ……)
ちょっと汗臭いような、でも安心するような。
あの頃の幼いルルアは、知ったばかりの言葉を使いたくて、「せんせー、かれーしゅーがするー!」とか失礼な事を言い、しかし「ははは、昨日もカレーだったからなぁ」と勘違いされて助かったという、心温まる? エピソードがあった。
が、それとも少し違って、懐かしいのに嗅ぎ慣れていない、なんともおかしな感覚である。
体を起こし、ルルアが寝ぼけ眼で考え込んでいると、不意に何か、布が捲れる音が聞こえ、見知らぬ男性がヌッと顔を覗かせた。
「ん、起きてたか。そろそろ起こそうと思ってたとこだ」
「……わきゃあ!? だ、誰っ!? ……て、あれ? ここは……」
「……イケメンじゃない自覚はあったけど、悲鳴を上げられると傷つくな……」
「あっ、ごごご、ごめんなさい! ちょっと驚いただけで、あの、そうじゃなくって!」
「ははは、分かってるよ」
不審者!? と一瞬思ってから、やっと自分の置かれた状況を思い出したルルアは、悲しげな男性に慌てて言い訳を。
すると、彼は苦笑いを浮かべてテントの外に姿を消し、ルルアも足を庇いながら後に続く。
眩しい朝日と、コーヒーの香りが出迎えてくれた。
「顔色、良くなったな。昨日は酷いもんだったが」
「そう、だったんですか……?」
「そりゃあもう。とりあえず、飯が食えてちゃんと寝られれば、大丈夫だ」
「………………」
出されていた昨日と同じ椅子に腰掛けると、男性が淹れたてのコーヒーを手渡す。
確かに、体調は悪くない。足の痛みも、あと2日もすれば消えるだろう。
でも、問題は何一つ解決していない。いや、解決するはずがない。
起きてしまった事は、決して変えられないのだから。
「オジさんは……」
「ん?」
「オジさんは、後悔してる事って、ありますか」
「ある」
知らず、口をついてしまった問いかけには、即答が返された。
目を丸くするルルアに、男性は自分のマグカップを傾けながら言う。
「後になって、あの時ああしたらよかった、こうすればよかった、なんて思う事はしょっちゅうさ。
どうしようもない、取り返しのつかない選択をしてしまって、後悔だけが残った仕事もある」
「あ……」
なんの感情も込められていない、淡々とした語り口が、逆に真実味を強く感じさせた。
何度も、何度も。苦しんで、涙して、悲しみ自体が摩耗してしまったような。
この人は、どんな感情を胸に秘めているのだろう。
どんな風にして、それに耐えたのだろう。
気にはなったけれど、土足で立ち入る権利なんて誰にもないと、ルルアは自分に言い聞かせる。
その間も、男性の話は続き……。
「いっそのこと過去に戻って、昔の自分では出来なかった事を代わりにやり遂げたり、もっとああしておけ、こうしておけ……って言い聞かせられたらいいんだが。
そんな都合のいい話は、物語の中だけ。結局は、折り合いをつけて生きていくしかないのかもな」
「……そうかも、知れな………………ん? 今、なんて?」
「は? だから、折り合いをつけて……」
「ううん、もうちょっと前!」
「前って……昔の自分に、もっとああしておけとか言えたら……」
カチリ、と。
話を聞いていたルルアの中で、何かの歯車が合わさった気がした。
昔の自分。
言い聞かせる。
自分では出来なかった事を。
過去に戻って。
──いける!
「それだぁ!」
「うおゎ、な、何が!?」
いきなりズビシッと指を突きつけられ、驚く男性を他所に、ルルアは足の痛みも忘れて立ち上がる。
頭には、一つの案が浮かんでいた。
かつて母ロロナに、ルルアは言われた事がある。
過去は変えられない。たとえ過去に干渉しても、そこからまた別の世界が生まれるだけ、と。
ならば、作れるかも知れない。
この世界ではダメだったけれど、別の世界なら。
スティアが笑っていられる世界を。スティアを救える自分が居る世界を、作り出せるかも知れない。
「そうだよ、起きてしまった事は変えられない。でも、これから起きる事だったら、まだ変えられるかも! こうしちゃいられない、早く家に帰らないと!」
「きゅ、急にどうした? 帰るって、どこに……」
「アーキュリス! そこにわたしの家もあるのっ。お願い、早く連れてって! 早く早く早くぅ!」
「い、いきなり元気になり過ぎだろ……っておい、アーキュリスからここまで歩いて来たのか!? どんな健脚だ!」
降って湧いた起死回生のアイデアが、ルルアの悲しみを吹き飛ばし、事情を知らない男性を困惑させる。
けれども、その騒がしさには、希望があった。
悲しみの先にも、新たな未来を見つけ出そうとする、ルルアらしい明るい希望が。
「あれから一ヶ月で、過去の別世界に本を飛ばして、そしたらその世界のルルアがこっちに来て、何もかも丸ごと解決して……。ホント、めまぐるしい日々だったなぁ」
時は戻り、ルルアの自宅 兼 アトリエにて。
かつての記憶を振り返った男性は、ダランと柔らかくなった肉棒を晒したまま、腕を組んで感慨深そうに頷く。
用意しておいたメンタルウォーターで口をゆすいだルルアも、その隣に腰掛けながら同じように頷いた。
「……うん。本当に、“ルルア”にはいくら感謝してもしきれないよ」
「なんだかんだで、まだ会った事ないからな。ぜひ会ってみたいもんだ」
「うん。きっと“ルルア”も喜ぶよ」
“別世界”のルルアと、この世界のルルア。
違いといえば錬金術士としての腕前に、着ている服の色くらいだと、男性は聞かされているだけで、面識はなかった。
どんな経緯があれ、今、隣に座るルルアの心を救ってくれたのは確か。一度くらいお礼を言ってもバチは当たらないだろう。
「と、ところで、なんだけど……」
「ん? どうした、ルルア」
「えっと……えっと、ね……?」
ちょんちょん、と服の肘を引っ張られる感覚。
男性が目を向ければ、上目遣いに見つめるルルアが居た。
何を言わんとしているのか。何を欲しているのか。
手に取るように理解できたが、ここで彼は、ちょっとしたイタズラをしてみる。
「ああ、そうか。お礼を言わなきゃな。気持ち良くしてくれてありがとう、ルルア。今日はもういいよ」
「……ええっ!? な、なんでっ!?」
ニッコリ。わざとらしく微笑んで礼を言うと、ルルアは愕然としてしまう。
期待を裏切られたからに違いないだろうけれど、しかし男性は敢えて分からないふりを。
「なんでって、ルルアも錬金術士としての仕事で疲れてるだろうし、無理をさせちゃいけないかと思ってさ」
「う、ううんっ、大丈夫! 全然疲れてない! 癒しの香炉も使ってるから、元気元気!」
「……そうは言っても、仕方なくしてくれてるだけなんだろう? これ以上、嫌な事を続けさせるのも心苦しいから……」
「そんなぁ……。ぃ、意地悪しないでよぉ……」
思わず目に涙を浮かべ、唇をへの字に結んで訴えかけるルルア。
これ以上焦らすのは流石に可哀想で、男性も彼女の望みを叶える事にした。
「ごめん、悪かった。ちゃんとルルアの事も気持ち良くしてあげるから」
「ホント!? ……あ。べ、別に、わたしは……」
「はいはい。こういう事に関してだけは素直じゃないな、全く」
「……だって、恥ずかしいんだもん」
謝るついでに男性が肩を抱くと、そのまま胸にポスンと額を落とすルルア。
きっと顔は真っ赤になっている。
これからする事、される事への羞恥心と、期待で。
十分それを承知している男性は、肩に置いた手を脇の下へくぐらせ、胸に手をやった。
「あ……」
ピク、と小さく跳ねる体。
あどけなさの残る顔立ちには似合わないボリューム感が、服越しでも手を喜ばせる。
そして、もう片方の手はルルアの太ももを滑り、スカートの中へ。
「ふ……う……んん……うっ……」
すぐに直接触る事はせず、まずはショーツの上から、下腹部を撫で回す。
その温もりで指を温めた後、布越しに秘所の上をなぞる。
くちゅり。
明らかに粘度を持った水音が、静かな部屋に響いた。
「うわ、もうビショビショ。やっぱり感じやすいな」
「そ、そんな事、ない……。“貴方”の手付きが、Hなだけ、で、ぇ……んっ」
耳元で囁かれたルルアは、言葉の上では否定するが、顔がすっかり蕩けていた。
目を閉じ、口は半開きで、足も閉じようとしていない。
男性の指を、完全に受け入れている。
(どうして、自分の手じゃないだけで、こんなに気持ちいいの……? もっと、触られたい……)
胸を揉みしだかれ、秘所を弄ばれて、ルルアは与えられる快感に酔う。
異性にあまり興味がなく、錬金術漬けな日々を送っていたため、自分で慰めるような事もした事がなかった。
この男性に出会ってから教えられ……教え込まれてからというもの、夢中になって女性の快楽を貪っている。
「あっ……はぁ……んふ、う……んく、うっ」
ゴツゴツとした男性の指は、既にルルアの肌へと触れていた。
服の胸元に開いたハート型の穴から、反対側の胸を揉まれ、ショーツの中にも指が入っている。
胸の先端を押し込んだり、転がしたり。
秘所の突起をくすぐったり、浅い所を内側から擦ったり。
その度にルルアは敏感な反応を返し、高まっていく。
察するに、もう達しようとしているようだ。
「……そろそろか? 強くするぞ」
「あひっ、や、ダメ、強、あ、あ、あっ、な、なか、来る、来ちゃううう……っ」
指の動きが激しくなると、ルルアは悲鳴にも似た声を上げ始めた。
先端を少し強めに人差し指と中指で挟み込み、秘所への抜き差しをもっと早く。
ルルアの体が小刻みに跳ね、やがて。
「ん~~~~~っ!!!!!!」
ある瞬間、痙攣するように強張る。
秘所の指を肉壁がキュウキュウと締め付け、かと思えば、数秒後には全身をぐったりと弛緩させて、ルルアは荒い息遣いを漏らす。
口端から垂れるヨダレが、彼女の絶頂の度合いを物語っていた。
「はぁ……はぁ……ん……あ……」
うっすらと開かれた瞼の下で、焦点の合わない瞳が揺れている。
しかし、男性の満足げな顔がそれに映ると、途端ルルアは正気を取り戻し、痴態を晒してしまった事への恥ずかしさに唇を噛む。
「うう、簡単にイかされちゃった……。なんか悔しい……」
「ふふふふふ。ルルアの弱点は、この一ヶ月で把握済みだからな。気持ちよかっただろう?」
「……よかった、けど……」
「けど?」
「もっと……もっと長く、触っていて欲しかったような、気がするというか……」
不思議そうにする男性から、目を逸らしつつ呟くルルア。
声は段々と尻すぼみになり、最後の方は蚊の鳴くような声だった。
可愛らしい少女にそんな事を言われて、我慢できる男など居るはずがない。
男性はソファを降り、無言のまま股の間に顔を突っ込む。
何をされるのか理解したルルアは、咄嗟に彼の頭を手で抑えるが……。
「や、やだぁ! それ苦手なのっ、舐めちゃだ……めぇ! あ、んひっ」
抵抗虚しく、ルルアの秘所を熱が這った。
入り口を舌の腹で舐め上げ、溢れ出る蜜を啜るように吸い出す。
むしゃぶりつくとしか言いようのない愛撫が、またルルアを震えさせる。
「やだぁ……やめてぇ……き、汚い、からぁ……んあ、う、ぁあっ!」
「汚いもんか。凄く綺麗だぞ、ルルアのここ」
「そ、そんなとこ、褒められても嬉しくな……いっ!」
間近に見られるのが恥ずかしくて、足を閉じようとするルルアだが、簡単に抑え込まれ、スカートもたくし上げられる。
どんな風になっているのか、自分で見られるはずもないけれど、男性の視線が集中している事から、とにかくイヤらしい反応をしてしまっているのだけは分かった。
それが恥ずかしくて、本当に恥ずかしくて堪らない。
……恥ずかしいのに。
「あ、はぁ……っ、ん、そこ、ダメ……あっ……いやぁ……んんん……」
心がいくら恥ずかしがっても、体は行為を受け入れてしまっている。
他の誰にも見せた事のない場所を、好き勝手に遊ばれているというのに。
遊ばれてしまっているという事実自体が、ルルアの心を高ぶらせていく。
男性もそれを理解しているのだろう、秘所に口づけながら、突起を指で擦り始める。
「あ、あ、ダメ、ダメぇ……また、来るぅ……! あ、うううっ……!」
更なる刺激を加えられ、ルルアは早くも二度目の絶頂を迎えようとしていた。
スカートの端を強く握り締め、唇を硬く結び、あともう少しの刺激を待ちわびる。
ところが、あと一歩というタイミングで、男性は愛撫を中断してしまう。
「ぁえ……? な、なんで……?」
惚け顔で問うルルアに、男性が股間を見せつける。
硬さを失ったはずの肉棒は、すっかり怒張していた。
ルルアの喉が、無意識に唾を飲む。
「そろそろ、いいか」
「あ……。ん……」
返事はしない。
代わりにソファから腰を上げ、背もたれに手をついて、尻を突き出す。
早く。早く欲しい、と。
言葉にしなくとも、ルルアの体が示している。
完全に準備が整った秘所へと、男性は肉棒の先を押し付けた。
「う……っ」
柔らかく湿り気を帯びた舌とも、ゴツゴツとした指とも違う、異質な感触と熱さ。
だが、それのもたらす甘い快楽を知っているルルアは、受け入れやすいように体から力を抜く。
すると、肉棒はいとも簡単に秘所へ飲み込まれる。
「ぃ、あ……! は、入って、く……うっ!」
強烈な異物感に、身悶えしながら耐えるルルア。
一方で、男性は肉棒を包むぬめりと温かさを味わっていた。
吐息と連動して蠢く壁。
すんなりと入った割に、今は押し出そうとするように締め付けている。
「やっぱり、入れた瞬間はキツくて硬いな……っ」
「あ、当たり前、だよ……。まだ3回しかして、ないん、だし……っくぅ……」
準備は整っていたが、まだ挿入の刺激に慣れてはおらず、喘ぎ声は苦しげだった。形の良い眉も歪んでしまっている。
けれど、それで欲を留められない程には、男性も我慢の限界だった。
「ごめん、我慢できない。動くぞ」
「え。ま、待って、まだ心の準備が──ひぐうっ!?」
ルルアの腰へ手を添え、一旦は引き抜いた肉棒を、勢いよく突き刺す。
甲高い悲鳴と共に、強い快感が双方を襲う。
「あっ、ひ、いっ、ぃう、んううっ、うっ」
腰を打ち付けるたび、ぬちゅり、ぬちゅり、と粘っこい音が立つ。
ルルアはまるで楽器のように声を漏らし、男性を受け入れ続ける。
声から苦しげな硬さが取れ、合わせて内側も柔らかくなっていく。
「ああ……いい具合にほぐれてきたな……。柔らかいのにキツさはそのままで、トロトロと隙間なく絡みついて。本当にルルアのここは最高だ」
「うっく、ふ、じ、自分じゃ、よく、分からな、っい、よう……っはん!」
男性が夢心地に呟くと、ルルアも甘く喘ぎながら答える。
欠片ほど残った羞恥心が、素直に喜ぶ事を拒ませるけれど、体は勝手に、肉棒への締め付けと蜜の量で答えてしまう。
しかし、ルルアはそれを押して中断を求めた。
「ね、ねぇ、待って、少し待って、お願い」
「……どうした? 痛かったか?」
「そうじゃ、なくて……っうぅん」
名残惜しそうに肉棒から離れると、汚れるのも構わず、またソファに腰掛けるルルア。
そして、誘うように両腕を男性へと向けて広げ……。
「ちゃんと、“貴方”の顔を見ながら、されたい」
微笑み。
快感に蕩け、恥も外聞もなく男を求める、女の微笑。
蜜でテカテカと光る肉棒が、更に角度と硬度を増した。
「……ルルア!」
「あんっ! や、やぁあ、急に、激し……あっ、あああっ!」
男性はルルアへ覆い被さり、我武者羅になって腰を振る。
パン、パン、パン、と間抜けな音が鳴り響き、零れ落ちる蜜がソファに大きなシミを作っていた。
そんなに激しく動いては、登り詰めてしまうのもあっという間だった。
「悪い、もういく。いくぞルルアっ」
「んぁ! あ、え? いくって──んむっ!?」
限界が近い事を告げ、男性はルルアにキスをする。
舌を絡め、互いの唾液を混ぜ合いながら、もちろん腰の動きも止めない。
高まる速度もますます上がり、しかし、同時にある心配事がルルアの脳裏に浮かぶ。
このまま彼が達したら、中に出されてしまう。
錬金術で作った避妊薬を飲んではいるが、まだ確実と言える効果は出せていない。
だから、止めなければ。止めないと、いけない。
(どうしよう。大丈夫だと思うけど、一応中はダメって、言わなきゃ。でも、キスしながらされるの、良い……止めて欲しくないよう……)
けれど、止めようという意思は、行為によって流れて行ってしまう。
それどころか、男性の首に腕を回し、腰へ脚を絡ませ、外に出せない状況を作っている。
夢中になっていた。
膣内射精のリスクが頭から抜けてしまうほど、気持ちよかった。
「ぷあ、ん……っ、むん、んふ……ぇる……ん、ん、んんっ!」
互いの口内を貪りつつ、男性は激しく腰を突き出し、ルルアはひたすらに受け止めた。
肉棒が奥の部屋を小突き、壁を擦る。
秘所はそれを根元まで飲み込み、離すまいと締め付け、絡みつく。
至近距離で重なる視線。
肌で感じる鼓動。
やがて、男性の肉棒は一際に膨らみ──爆ぜた。
「んぁあああっっっ!!!!!!」
最奥を熱が焼くと、堪らずルルアは唇を外し、大きな声を上げて絶頂する。
内側が勝手にキュウキュウと痙攣して、最後の一滴までも啜ろうと蠕動していた。
「あ……あ、ぁ……中、で……出て……熱い……」
うわ言のように呟くルルアの表情は、これ以上ないほど扇情的だった。
普段の天真爛漫な彼女しか知らない人が見れば、きっと同一人物だとは信じられないだろう。
二人は腰を密着させたまま、荒い呼吸を整えた。
しばらくして鼓動が穏やかさを取り戻すと、また甘く唇を重ね、しかしルルアは怒っている風を装って眉を吊り上げる。
「んもう、また勝手に中に出して……。お薬飲んでなかったら、絶対に出来ちゃうよ? 分かってる?」
「そりゃあ、まぁ。ルルアは……嫌か」
「え? そ、それは……」
質問を返され、ルルアは困ってしまう。
本気で嫌なら、そもそもこんな行為はしない。
が、今すぐにそうなっても良い、という訳でもなかった。
「誤魔化すのは嫌だから、正直に言うね。……まだ、怖い。
“ルルア”と違って、わたし、錬金術士としても未熟なのに、同時にお母さんにもなるだなんて。
両立できる自信、無いよ……」
偽りなく、正直な気持ちを告げると、男性は真っ直ぐにルルアを見つめる。
失望される? 呆れられる?
思わず不安に駆られるけれど、彼は小さく微笑み、優しく頬をつついてきた。
「そうか……。初めての事を強く思うのは当然だ、仕方ないさ。でも、錬金術士とお母さんの両立は、ロロナさんっていう良い見本があるんじゃないか?」
「……言われてみれば」
言われるまで、すっかり忘れていた。
ルルアの母であるロロナもまた、凄腕の錬金術士だった。まぁ、お腹を痛めて産んでもらった子ではないが、間違いなく、胸を張って親子だと言える。
ルルアが錬金術士になったのだって、「お母さんみたいになりたい」という理由から。
そう考えると、ありえない未来ではない気がしてくる。不思議だった。
「向こうのルルアは確かに凄いよ。錬金術士としても超一流で、何事にも物怖じしないみたいだし。
けどな、文字通り住んでる世界が違うんだから、やっぱり別人だ。
自分と比べる必要なんてない。無理に真似する事もない。
もっと周りを頼ってくれても良いんじゃないか? きっと皆、喜んで助けてくれる」
「あ……」
小さくなった肉棒を引き抜き、そのままソファの隣へと腰掛け、ルルアを抱き寄せる男性。
繋がりがなくなった寂しさと、たくましい腕に抱かれる充足感が入り混じり、奇妙な感覚が胸の内に生まれる。
その感覚に促されるまま、ルルアは今の気持ちを言葉にした。
「……ねぇ」
「ん?」
「わたし、“貴方”と出会えて良かった。……“貴方”の事を、好きになって。好きでいられて、凄く嬉しい」
普段のルルアと違い、行為中のルルアともまた違う、大人びた笑顔。
それを一身に受けとめた男性は、目がくらむような感覚を覚えて、とっさに顔を背ける。無性に頬が熱い。
「……なんだか、面と向かって言われると照れるな」
「えっへへー。好ーき、大好きー!」
「こ、こら、よせってば」
「あはは、ホントに照れてるー」
が、それも一瞬。すぐに元気一杯なルルアへ戻ってしまい、抱きつくようにして大きく笑った。
思わず釣られて笑ってしまう、眩しい笑顔だった。
「今すぐに、お母さんにはなれないけど。いつかその日が来たら、責任、ちゃんと取ってよね?」
「喜んで」
「……うん。ありがと」
じゃれあいながら、男性とルルアは体だけでなく、心までをも重ねる。
まだ、この関係を言葉で表した事のない二人だが、きっと誰かが見ていれば、「調合失敗して爆発しろ」と言われかねない、幸せそうなカップルに見えただろう。
しかしながら。
「ところで、ルルアさんや」
「なぁに?」
「何故に我がイチモツをシゴいておられるのか」
「変な口調……。それはまぁ、あれですよ。お互いの気持ちを確かめ合った訳だし? お母さんも、もう明日には帰って来ちゃうはずだし……ね?」
甘酸っぱい雰囲気もそこそこに、ルルアの細い指は、まだ乾きもしない肉棒をサワサワしていた。
どんな風に擦れば大きくなるのか、完璧に知り尽くしている指遣い。
無論、また肉棒を硬くしてしまう男性だったが、流石に三連発は体力が持たないと感じ、苦笑いを浮かべつつ説得を試みる。
「いやいやいや、気持ちは嬉しいんだけど、少し休憩しよう? な? ほら、水分補給とか必要だし」
「それは平気! ここに妙薬ドラッヘンとエリキシル剤があるから!」
「ちょっと待てい。そんなもん飲んだら、おさまりが利かなくなって大変な事になるだろっ」
「まぁまぁまぁまぁ。いざという時は他の道具で効果を除去すればいいだけだし。なんとかなるなる! はい、お口開けてー」
「そんな適当なゴボォッ!?」
男性の隙をつき、強引に二つの薬品を注ぎ込むルルア。
数秒もしないうちに、肉棒は剛直へと変貌。男性の目が獣欲に輝く。
そしてルルアは、「きゃー襲われるー!」と、笑顔で被害者ぶった悲鳴を上げるのだった。
「あんの男ぉおお……。ルルアちゃんと、ルルアちゃんとあんな事してぇ……っ! 悔しい、羨ましい、せめて混ざりたいぃ……! はぁ、はぁ、はぁ……」
「ねぇ、エーファ。確かにここは通りから反対側の物陰だけど、流石に覗きをしながら屋外で自慰行為するのは問題だと思うわ」
「うきゃあああっ!? ススス、スティアちゃん、いつからそこに!?」
Q:なんで相手がオーレルとかじゃないの?
A:イケメン様が可愛い女の子とイチャラブしてるの見せつけられたって、欠片も感情移入できないからだよ!
てな訳で、ルルアのアトリエのエロ話でした。
本編ルルアはともかく、平行世界ルルア(もしくは最初にリドルを作ったルルア)は才能を完全開花させてないようだったので、アルケミリドルを生み出すのにも、誰かからヒントがあったんじゃないか? という考えの元、エロをこじ付けました。
我慢できなかったんですわ。エーファちゃんが拗れてるのは仕様です。
個人的な意見ですが、ルルアちゃんからは全身から「土下座すればヤらせてくれる感」が出ている気がします。んで、最終的に責任を取れば大抵の事は許してくれそうな。
あんなエロい格好した子が隣で寝てたら、間違いなく襲いかかる(最低でもパンツ見る)自信があります!
暇があったら、ダブルルアで3Pとかも書きたい。