※この作品はR-18です。

適当に考えた短編とかその辺を放り投げる場所   作:米ビーバー

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 20XX年。世界に突如として出現した異世界の入り口。

 人類はそれを【ダンジョン】と定義した。


 それから100年ほどが激動の世代と呼ばれ、さらに100年をかけ復興の世代を経て


 22XX年。人類はダンジョンを「管理」することでダンジョンの生成物を定期的に供給するシステムを構築した。


 そうして今、人類は国家ライセンスとして「ダンジョン管理者資格」を発行し、管理者は今日も、冒険者やダンジョン利用者の持ち込む諸問題と戦っている―――。





ダンジョン四方山噺(内容が内容だけにR18)

 「あ、どうも。あの……Bさんの紹介でここを紹介されたんですが……」

 

 同期のB……たしか、勤務自体がブラックだけど稼ぎは良い。と言うダンジョンに勤務している奴だったな。と脳裏に人物詳細を思い起こして、頭を下げる冒険者にお辞儀を返す。

 

 

「本日は当ダンジョンに?」

「あ、その……ええと……」

 

 少しばつが悪そうな顔で下を向く冒険者に、またかと内心で嘆息する。

この手の相談事が絶えない職場―――と言えば少しは聞こえが良いのかもしれないが……いや大分悪いな。寧ろ最悪だな。

 

 当ダンジョン―――“秘宝迷宮”は名前こそ「うわスゲーお宝ありそう」と思わせる名前ではあるのだが、その実は『エロトラップダンジョン』所謂R18な意味での『秘宝』迷宮である。

 

一般的なモノから一般的と呼べないニッチなものまで、迷宮内には千差万別のエロトラップが偏在している。これまでに探索した冒険者がダンジョン内で発見したとされるトラップのリストを見せてもらったが、まぁ多い多い。まさに『エロトラップの博物館』と言って良い。

 一般的に忌避されるダンジョンではあるのだが、こんなダンジョンへ足しげく通う奇特な冒険者もいる。ダンジョン内で発見できるお宝は9割がエログッズや媚薬、ローションと言ったアイテムなので需要が高く業者に卸しやすいというのが魅力なのだとか。

 

 その上で、このエロトラップダンジョンに「まるでテーマパークに来たみたいだぜぇ~。テンション上がるなぁ~!」とウッキウキで通うド変態もいる。そういう連中がこのダンジョン経営の生命線でもあったりするので痛し痒しと言うやつだろう。

 

 

 とはいえ、目の前の冒険者が『どちらなのか?』と考えると悩ましい。

 

 

 40代の中年男性。Bクラスという階級から察するにオーク数体ならソロでも行けるレベルの凄腕冒険者。そんな腕前の冒険者なのだから、ギルドや風俗店の依頼でエログッズを集めるためにソロ探索はありうるし、40代中年という年齢も含めて変態嗜好というのは見た目に限らないものである。

 結論として脳内では『どっちもありうる。そんだけだ』に落ち着いたので、じっと推移を見守り相手の言葉を待つにとどめた。

 

 もじもじと言葉を探すように宙をさまよわせた視線がこちらを向くまで数分間。意を決したように冒険者の男は告げた。

 

 

 

 「あの……!!“TSトラップ”なんて都合の良い罠があったりしませんか……!!?」

 

 

 後者だった。

 

 

 

 

 

 ―――TS(トランスセクシャル)トラップ。所謂「性転換」を起こす魔法罠。

 

 ダンジョンにおける「罠」の定義はいくつか細分化されるが、「性転換」や「転移」などのトラップは「魔法罠」に分類される。テレポーターの罠などはわけのわからない場所に転移されると最悪詰みかねない。という観点から、トラップを探索する専門の探索者が最も警戒する罠のひとつである。これを発見した探索者が記した地図などは非常に高値でギルドに取引されるため、トラップ探索をメインで仕事をしている連中にとってはお宝の山であり、引っかかる=死の地獄の沼なのだ。

 

 その結論を踏まえた上で言うと

 

 

 「TSトラップは水物でして……」

 

 言葉を濁すことになる。「TSトラップ」というのは単発のものが多い。「性転換」というのは男性→女性と女性→男性をシームレスに変化させるので、もう一回同じ罠を踏めば元の姿に戻るため、「複数回使用できるTSトラップ」というのは意味がないのだ。

 

 その上で「TSトラップ」を発見したトラップ探索者は、その情報を秘匿する傾向にある。

 

 理由は「個人的に使用したいから」もしくは「ギルドよりも高く買い取ってくれる存在がいるから」なのだが。

 

 

 

 誤解を招く表現を覚悟で言うと、“この手の趣味のド変態はゴロゴロいる”のだ。怖いことに

 

 

 例えば金持ちが道楽で、買った奴隷をTSさせる。

 例えば犯罪などでお尋ね者になった人間が、経歴を抹消するために使用する。

 例えば性同一性障害などの深刻な悩みを抱えた人間が金を積んでトラップを欲している。

 

 そんなどうでもいい理由やどうしようもない理由でTSトラップは謎の需要を生み出しており、同時に“表向きには出せない案件”なため、高額報酬の裏依頼になりえるのだ。

 

 それが先に俺が言った「TSトラップは水物」といった理由である。

 

 「内部を探索して探し出す。というのなら何も問題はないんですけど、小袋いっぱいの迷宮古金貨(凡そで300枚前後=迷宮古金貨一枚が現代貨幣価格で3万円程度)が最低価格スタートで地下オークションにかけられているくらいの需要ですので……」

「そう……ですか……」

 

 がっくりと肩を落とす冒険者の男に、普段相手をしているド変態どもとの違いを感じたので思わず尋ねていた。

 

 

「……あの、何でTSトラップなんてモノを?」  

「ああ、その話からしないと、でしたね……」

 

 

 俺の言葉に顔を挙げた冒険者の男が話し始める。

 

 

 ―――曰く、元々もっと大きなクランでPTを組んでいたのだが、PT内で寿引退が出たためPTを解散。クランを抜けて独り身だった相棒と二人で冒険者として再登録し、CクラスPTだった状態から二人組のBクラス冒険者までのし上がったのだとか。

 

 

 それで気が付いたら二人とも三十路(アラフォー)を越えて、四十路に突入。風俗嬢などで性欲を発散させたりもするが、それでも寿引退した元仲間から手紙が届いたりすると切なくなる日を送り―――

 

 

 

 

 ―――ある日、どちらともなく「結婚してぇよなぁ俺もなぁ」とこぼした結果……

 

 

 

 

「―――それで、「どちらかが性転換して嫁になれば解決するんじゃね?」という結論に」

 

「発想がおかしい!!!!!」

 

 

 思わず叫んでいた。

 

 冒険者でのし上がる連中ってのは基本的に頭のネジがどっかぶっ飛んでいて、大体の理性ある連中は換金率の高い安全なダンジョンで間引きしながら日銭稼いで老後資金貯めたら引退。みたいなのばっかりだという話を同じダンジョン管理関係の連中と話をしていたが、成り上がりの結果人生を拗らせるとここまでぶっ飛んだ馬鹿が生まれるのか!!と思わず内心で絶叫するも、そんなことを初対面の相手にぶちまけるほど俺はコミュ力が高くもない。

 

 「ハハァ、ソーナンスネ」と相槌を返すことしかできない俺の様子にも気づかず、目の前のド変態は語っていた。

 

 

「どっちが性転換するかに対して問題になったのが、見た目の問題でした。普通の性転換手術とかやっても見た目がオッサンじゃ意味がない。けど身体を削ったり肉を削いだりするともう冒険者として活動もできないでしょう?

 

 ―――そんな私たちの希望が『TSトラップ』なんです!!

 

「ハハァ、ソーナンスネ」

 

 

「魔法罠であるTSトラップは魔力で肉体を変質させて女体化、男体化させる。これは筋肉量の増減や体型の変化はありますが、身体を切った張ったするわけじゃないので変質してからすぐに認識の齟齬さえ埋めれば動かせる!夢のような存在なんです!」

 

「ハハァ、ソーナンスネ」

 

 

「私が性転換するとしてもあいつが性転換するとしても性格が大きく変化するわけでもないし、一緒に冒険者を続けることもできるんです!」

 

「ハハァ、ソーナンスネ」

 

 

 

 もはや「ハハァ、ソーナンスネ」BOTになった俺を気にするでもなく熱弁し続けるド変態。勘弁してくれ。どうにかしてくれ。この状況を何とか打破してくれ。と強く願いを胸に天を仰いだ俺に

 

 

 

「管理者の兄さん?地図買い取ってくれない?」

 

 

 

 ふらりと現れたのは低階層~中階層手前を探索しているマッパーの男“だった者”だった。

 

ハスキーなソプラノボイスで入室してきたのはミントグリーンのチュニックと革のベストというファンタジーな装備と同じ材質のミニ丈スカートに身を包んだ10代の女子。

 

 

 先日、TSトラップに引っかかって性転換した上“若返った”元20代終盤の男である。

 

 

 当初、TSトラップを再発見して元の身体に戻ると息巻いていた男だった“これ”は、冒険者から探索者に転換して活動していくうちに「腰も痛くない。一日くらいなら徹夜しても問題ない。この身体凄いよお!!」と若返った肉体のポテンシャルに感動してしまい、なあなあで「元の身体に戻る」という目的だけが宙ぶらりんで活動している男もとい女である。

 

 

「TSトラップの魔法陣を発見したはいいんだけどさ、バイト辞めるなら一か月前から報告しないといけないじゃん?なんで、地図買い取ってもらってそのトラップを保護しといて欲しいんだよね」

 

 

 女体化してそれまでの活動が出来なくなった結果、10代女子の見た目を生かして表社会のレストランでウェイトレスをやっているこの元男がそんなことを言う横で、熱弁を振るっていたド変態がキラキラとした瞳で元男を見つめていた。これが一般的な視点なら恋の始まりを誤解するかもしれない。

 

 

 俺はなんかもうどうでも良くなってしまって

 

 

「―――じゃあ後は二人の問題ってことで、よく話し合って下さい」

 

 

 そう言ってその場に二人を残して帰ることにした。背後の方で困惑した「え?え?」というソプラノボイスと、その肩をがっしり掴む40代のおっさんという事案待ったなしの絵面が繰り広げられているが、本来なら30手前のおっさんと40代のおっさんのBLシーンのようなものなので何も問題はないな!(問題しかない)

 

 

 

 





  《 それからどしたの? 》




「―――で?結局どうなったの?」


 喫茶店でテーブルを挟んで、ダンジョンとか諸々の事情を知ってる幼馴染と久しぶりに飯を食っている時に、そんなことを聞かれた。
 思いもよらず脳内オーバーフローだった俺が愚痴を聞いてほしい相手として重宝しているので、多分に漏れず今回も盛大に愚痴ってしまったのもあり、その後の話を聞きたかっただけだろう。



「―――とりあえず、TSトラップは結構な金額で取引されて中年の冒険者の人のとこに渡った」
「あっちの人、もう女体化を受け入れてない?」


 言ってやるなよと内心で思いながらアイスティーをストローから吸い上げる。
俺もあの人はもう10代女子に脳内汚染され過ぎてて元に戻っても日常生活を送れないだろと思わんでもないが、言わんで置いてやっているというのに……。


「バイト辞める報告前だし、今度お店の方でお客様感謝デーやるとかで突然辞めても問題が出るとか言っていたからまぁ、確保だけして半年くらい寝かせるつもりだったらしいから、また探すってさ」
「もう一生女の子でいいじゃん。戻っても困るだけでしょ」

 ホットのコーヒーの温度を確かめるようにカップに唇を寄せて舌先でコーヒーをつつくようにして「熱っ」と呟く様子を尻目に、俺は記憶を必死にこじ開ける。


「まぁ……結果として、相談に来た人が女性になったみたいなんだけど」
「なんだけど?」


 歯切れの悪そうな俺の言葉に聞き返す彼女に、どう話そうか言葉を選ぶ。そんな俺の様子に


「言葉を選ばなくてもいいって。多少のセクハラは聞き流すから」
「あ、うん」

 再びアイスティーをズズ、と啜って、渋々口を開く俺。


「成功報告しに来たその人が、さ……ダンジョンから帰還してすぐにこっち来たのに不自然なくらい内股で腰ガクガクさせながら隣の男に肩貸してもらって歩いてきてさぁ……」
「うわぁ……」

ドン引きしてる幼馴染の様子に「やっぱ言わない方が良かった」と内心で思う俺。
だが考えてみてほしい。中身40代のおっさんだと理解してる俺にとっては“どうみても事後です本当にありがとうございました”状態でも「ゆうべはおたのしみでしたね」とか言える脳内ではないのだ。仮に冷静だったとしても言えるような性格ではないけれど。


「じゃあその後は男女で冒険者に?」
「それがさ……」

再び歯切れが悪くなった俺の様子に怪訝な顔になる幼馴染。そこへ


「―――さん」


 鈴の音のような声がかけられた。

喫茶店の入り口からこちらにゆっくり歩み寄って来る20代前半くらいの女性。特徴的なのはその下腹部。


「あぁ……どうも」
「お久しぶりです。その節はお世話になりまして‥‥…」


そう語る女性は慈しむ様にお腹をさすっている。


「外から姿を見かけたのでつい入って来てしまいました。お邪魔してごめんなさいね」


そう言って去っていく女性に対して、何とも言えない表情の俺に、幼馴染は察した様だった。


「一応聞いとくんだけど……相談受けたの何か月前だっけ?」
「……半年前」
「猿じゃん」


 何も言えなくなった俺と何も言わなくなった幼馴染の間に微妙~~~な空気が流れた。




 余談ではあるが、出産して育児期間を終えたら冒険者復帰をすると決めていたその元男性TS冒険者は、子宝に恵まれたとかで年子を量産して4人目を産んだ辺りで冒険者復帰を諦めて主婦になった。



 《どっとはらい》
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