※この作品はR-18です。

家に帰ったら妻が分裂して六人の子持ちになった宇宙人の話   作:じぇねぐろ

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この記憶は多分、忘れることはないだろう。

『りり、しばらくここで暮らさなきゃならない…え?いいの?』
『家が必要だよね…一つ使っていいか申請してみるよ』
『りり、民家の複製、使用の許可が出たよ!これから二人で…とと、飛び付くほど嬉しかった?』
『え!?け、結婚!?…りりが…ぼくなんかでいいなら、よろしくね、りり』

これは…私が一番嬉しかった瞬間の思い出。
思い出は生まれたそのときから培ってきた。
この船の中に産み落とされた私に赤ちゃんの時なんてなかったから。

「り…りり…はげし…うぁ…」
「ん…あ…わ、ワカバァ」

たくさん培った思い出だけど、ワカバと重なるといつも込み上げてくるのは結ばれる事を許されたあの日のことばかり。
私にとって最愛の人と最高の生活に足を踏み入れたあの日から、私は思い出と共に絶望を刻み続けている。

「ご、ごめん、ぼくもう…!!」
「きて!!きてきてワカバ!!!んぁ…」

ワカバの熱いものを受け止める度、私の中に訪れる悲しみの波は、あまりに大きく、あまりに受け止めがたく、私は私を呪うのか、ワカバとの運命を呪うべきなのか、わからなくなっていた。

いつもの朝。ワカバは変わらず仕事に向かう…。

「それじゃあ、僕は仕事に行ってくるよ、りり、留守番お願いね」
「…ワカバは…」

私の言い淀んだ言葉に、ん?と小首を傾げるワカバを見て、私は彼を困らせたい訳じゃないことも、彼の気持ちも、この運命の縮図も解っていながら、それでも彼の口から聞かずにはいられず、そして

「んーん、なんでもない、いってらっしゃい、お仕事頑張ってね!」
「…?うん、ありがとう、りり」

その言葉を私の口から言わせるわけにはいかないのだ。絶対に…


プロローグと一話

彼の出ていった扉を見つめ、頭に残る彼の手のひらの温もりを名残惜しく感じながら「行ってきますはキスじゃないの…」と、何度目かもわからないが、おぼろげな記憶から思い描いていた憧れとの些細な不満をいつものように漏らすと自身の腹部を擦るりり。

 

「…」

 

丸一年、ワカバと二人で暮らしている。交わりを持たなかった夜はないが一向に立ちこめない幸せの狼煙に、痺れを切らしたりりがワカバに相談したのが半年前。

 

『え?子供?そういえば、繁殖行動も構造も近いのに産まれないね…やっぱり遺伝子構造的には僕たちは違う種なのかな…ごめんね、ぼくはそっちの専門じゃないから…』

 

そう言って頭をかいて応えるワカバに、その言葉に、りりは平静を装うので精一杯だった。幸か不幸か、ワカバはりりの質問の意図を理解していない。

出来ないのはなぜか。それも確かに重要なことだし、出来ないことを知って受け入れがたい負の感情も感じたが、何よりりりが聞きたかったのは出来なくてもいいのか。そちらが問題だった。

 

「…やっぱり出来ないのかな…」

 

リビングにごろんと体を投げ出し、天井に向かって呟くりり。

 

「…ワカバはどう思ってるんだろう…」

 

もう一つ漏らすと体を捻ったりりは自分の橙を起動する。何気なく眺めていたその光がりりに何かの閃きをもたらす。

 

「そうだ!!」

「ぴぴ?」

 

ガバッと起き上がると不思議そうな声をかけるヌシッチに目もくれず自室に籠るりり。その顔には一片の曇りもなく自身の才能を遺憾なく発揮するためケムリクサを手に嬉々として机に向かうと桃色の希望の兆しをその手に宿していた。

 

すっかり日も暮れると仕事を終えたワカバが帰ってくる。

 

「ただいまー」

 

ワカバが玄関を潜ると何やら騒がしい。ヌシッチが故障でもしたのかとリビングを覗くと、そこには涙ぐむ最愛の妻

 

「わ、ワカバァ…」

 

と、綺麗な六人の少女が思い思いに過ごしていた。

 

「お?こいつがワカバナ!?」

「へぇ~君が私らのおとーさん?」

「なんだぁ?こいつ?ホントに俺らと繋がりあんのかぁ?」

「ふぅん…ケムリクサ…私らの中のこれとまた別のもあるじゃん」

「姉さん、お水もってき…だ、誰だそいつ!?」

「あ、りん、ありがとにゃぁ~私たちのおとーさんの、ワカバ君らしいにゃ♪」

 

唖然とするワカバに駆け寄るりりはワカバを見上げ涙を目一杯溜めながらながら謝る。

 

「ごめんなさいワカバァ…」

 

かくして幸せの狼煙は奇妙な形でその勢いを増していくのだった。

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