始まり
沖縄県から鹿児島県に向かってフェリーが出向した。そのフェリーの客の1人、彼の名前は
ゴールデンウィーク中に、とある出来事を目撃した。そのショックを隠すかの様に勢いに任せ、飛行機に跳び乗りそのまま船にも飛び乗った。
昔からの夢であったフェリーでの長距離移動であったが、こんな形で実現してしまうとは……。知り合いからは、長くて暇だと聞いていたが、昔から一度は体験したいと思っていた。
沖縄県から島々を巡って、最終目的地の鹿児島県に到着した。確かに長時間はつらかったが、360度、海に囲まれての絶景は最高で、いろいろと悩んでいたのがちっぽけに感じた。
「長い船旅も終わりか……これからどうしようかな……」
特に計画して来た訳でもないので、これからどうすれば良いのか途方に暮れてしまう。5月の連休なので客は多数いたのだが
――おかしい、妙に静かだ。
しかしよく見ると、待合室の隅にフードをかぶった女性がふたりいた。フードの隙間からは髪の毛が見えており、1人は薄赤い長髪。
もう1人は金髪で、隙間からのぞく顔はふたりとも美しい。おおよそ20代前半だと思われるが、不思議なオーラをまとっている。
日本人じゃないのかな? と思いながら歩き出した陽二を、ふたりの女性は何も言わず、ただ、目で追っていた。
ネットリとした空気が、からだ全体にまとわり付くような感じがしたが、土地が変わったので、湿度の違いと思い建物の外へ陽二は歩き出した。
この時、既に手遅れだったのかもしれない
陽二が一歩進むたび、後ろの景色も少しずつ塗り替えられていった。しかし、陽二は全く気付いていなかった。建物を出ると、一瞬でそれまでの景色が変化した。
――あれ? おかしい……まわりの建物も消えてるし、後ろを見てもそこにあったはずのフェリーもない
周囲を確認してみる
前方10メートルくらい向こうは、陽二の背丈を超える雑草が生い茂る平原。後ろは海。ただし10メートル以上の断崖絶壁。降りれそうもない。左右には、膝下程の雑草が生い茂っている
――ここはどこなのだろうか? なにか空気も違うし妙に静かだけど……
陽二は、取りあえず人を探すべく歩き出した。
5分ほど歩いた時、ポケットのスマホに気がついた。
なるほど。あまりにも想定外の事に遭遇すると、人は取りあえず何も考えず歩き出すらしい
「んなことあるかよ!」
軽く自分に突っ込みを入れつつ、スマホを取り出し画面を見ると電波はある。まずは衛星利用測位システム(GPS)で現在位置を確かめてみる
「えーと、場所は…………所在地不明かぁ」
茫然と歩いていて前と下しか見てなかったが、海の向こうを見てみると、確かに桜島っぽい山もある。
なので、ここは間違いなく鹿児島だと思うんだけど……
「おい、ここどこよ!?」
今さらながら、陽二は事の重大さに気づき始めた。
「まあ焦ってもしょうがないし、取りあえず海沿いに歩いて、人でも探すかぁ」
焦る心を落ち着かせるように
「マジでやばいぜ!」
軽口をたたきながら、なんとか落ち着こうとするが、やっぱり駄目らしい。自分の顔が青くなっているのも理解できるし、足も疲れて痛くなってきたので、とうとう座り込んでしまった。
横になって空を見上げてみる
「すっげー星だなぁ……」
気づけば、周囲はもう真っ暗で何も見えない。陽二は星を見て少し落ち着いたのか、いつの間にやら眠りについていた。
「*******」「*******」「**」
ん? うるさいな
「********」
なんだ……? 目の前にオッサンがいる。何かしゃべりかけているが、なにを言っているのかさっぱり分からない
陽二は右手を上げて答える
「ハロー? おはよう? こんにちは? 俺の言っていることワカリマスカ?」
意外と冷静な対応、俺マジイケメン! 陽二は自画自賛。
オッサンは頭の上に『?』が浮かんでいる顔をしているが、なにかを納得したのか、陽二に向かって何かを
「よう少年。俺の言ってること……わかるか?」
少年だと……? 俺はどう見ても、目の前のオッサンと同い年位だと思うけど……まあいいか、
目の前のオッサンは、見た目40歳。なかなか渋い面構えをしている。角刈りっぽい短髪で、どう見ても日本人。身長は180センチくらいで、ガタイがとても良いオッサンだ。上は動物の皮っぽいTシャツにゴツイ胸当て、膝下程の皮のズボン。見た目は日本人だと思ったが、何か違う……
「おい! 言ってること……わかるか?」
「あ、はい。わかります。こんにちは、どちら様で?」
「俺の名はバリソン、探索者だ。おまえは? どう見ても人族だが言葉は通じないし……高級そうな服を着ているし……この辺りはそこまで危険な場所ではないが、そんな手ぶらで歩けるほど安心はできない場所。おまえ、いったい何者だ!?」
おっと、なにか危ない場所らしいし、めちゃくちゃ警戒されている。言葉が通じないと言うことは、日本っぽいが違うのかもしれないな。
「僕の名前は中山って言います。日本人です。怪しい者ではありません。実は、道に迷ったと言いますか……気付いたらここに居たといいますか……」
「なるほど……日本人? よその国から来たのか? しかし日本なんて聞いたこともないし……近くに人族が暮らしてる場所があったか? もしかして……異世界人か?」
日本人を聞いたことがない? 異世界人? アニメとかである
「あの、異世界人とは? それと、ここは日本という国ではないのですか? てか、ここどこよ!」
「なんだぁ? かしこまった口調かと思えば……それが地か?」
オッサンは、クックックッと笑っている
「まあ焦るな、言葉は通じるんだ。俺は優しいからなぁ質問には答えてやるぞ。ここは、マツサ開拓地。人族が暮らす土地を開拓している」
オッサンの話によると、ここは人族の国がある大陸で、とにかく広くてオッサンも全部は知らないらしい。人を襲う魔物も多く、討伐しながら開拓し町を広げている途中らしい。
で、この場所はマツサという町の南に2日程移動した場所で、数は少ないが魔物も出るらしく、危険なので町まで連れて行ってくれるらしい。とりあえずお願いしよう。
異世界人に関して。
「とにかく途方に暮れていたので、町まで連れて行ってもらえると助かります」
「まあ町まで行けば領主もいるし、もうちょっと詳しいことが分かるだろう。町まで時間もかかるし、行きながら話でも聞かせてくれや」
馬車に乗れと言ってくれた。馬車かぁ初めて乗るな
馬が2頭つながっていて、前に3人程座る場所がある。その後には、軽トラック風の荷台と帆が着いていて、いろいろな物が乱雑に乗っている。詮索するのも失礼なので、前の席に座らしてもらった。
「じゃあ行くか! 暇つぶしくらいにはなってくれよ? ハッ!」
「僕も聞きたい事がたくさんあるので、嫌でも話してもらいますよ」
こうしてマツサに向かって出発したのだった。