※この作品はR-18です。

異世界生活 冒険譚~   作:すったふ

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チームゼラニオン! (1)

 王都にある、見慣れたごく一般的な建物の中。

 発射された巨大なクラッカーとその内容物が散乱する部屋に、陽二を囲む3つの人影があった。

 その人物の中のひとり。薄い赤髪の女の子が、ビシッと人差し指を伸ばし、まるで声高らかに歌うように口を開いた。

 

 

「ふっふっふ。全世界の親愛なる僕共(しもべども)よ!妾(わらわ)ぢゃ!」

 

 ―――― 俺は、おまえの僕じゃねーよ。それと、自己紹介なら名前を言えや!

 

「ん? 誰かわからないぢゃと?」

 

 ―――― 言ってねーよ

 

「戯(たわ)け! 全知全能・完全無欠。容姿端麗の超絶、美・少・女!。ここが大事ぢゃから2回言うのぢゃ。超絶、びしょーじょ!」

 

 ―――― 怒られた!? そして、盛りすぎだろが!

 

「テストに出るからな? 要チェックぢゃ!!!」

 

 ―――― くっ。うぜぇ

 

「うぁーはっは。うぁーはっは。うぁーはっはっ!」ゲホッゲホッ

「かわいいです!」

「毎回、毎回……アホだな」

「なんぢゃと!?」

 

 ―――― うん同意。アホめ

 

「まあよい! 掴(つか)みは上々。気分は上昇。あとひとつは……えーとっ」

「ランスの罰は情状酌量(じょうじょうしゃくりょう)だ! 忘れるな」

「………」

 

「よし。掴(つか)みは上々。気分は上昇。ランスは今もノーパンティーぢゃ!」

「まあ!」

「なっ、お、おい言うな!!」

 

 ―――― な、何!?

 

 と、陽二の前でアホなやり取りをしている3人が、この国で超有名なチーム『ゼラ二オン』のメンバーなのだが、ここで、話は少し遡(さかのぼ)る

 

 △△

 

「何かが、スキルに干渉してきたのぢゃ……何だったのぢゃ……ん? 感じるのぢゃ……王都、か?」

「桜ちゃん、もしかして……帰ってきたのでは……」

 

「何かは分からんのぢゃ、王都にいくのぢゃ」

「「はい!」」

 

 現在、彼女たちチームゼラニオンの居る場所から、王都までは、直線距離で100キロほど。しかし、山を降り道なき道を進む事を考えれば、その行程は2倍以上に膨らむ計算になる。

 だが、彼女たち『ゼラニオン』ならば、走って3時間もあれば十分。現在時刻は、深夜2時。朝には到着予定だ。

 

 到着は6時。  

 桜がいつも通り、ランスロットを弄(いじ)って遊んでいたので、少し時間がかかってしまったが、許容範囲。

 

「まずは、感じたものを探す。……王宮か?」

 

 むむむっと集中して、感じたナニカをキャッチすべく、見えないアンテナっぽいのを広げる桜。その背中を、アスモデウスがツンツンと指でつつく

 

「なんぢゃ? アスモ」

「桜ちゃん、あの人たち」

 

 アスモデウスの視線を辿ると、王子パトリックを先頭に、何人もの兵士が馬で駆けて行くところだった。

 

「どこに行くのぢゃ?」

「パトリック王子の雰囲気……変わりましたね」

 

 ランスロットもその姿に気づいたらしく、思わず呟いた。

 

「騎士! ああ、私も一緒に行きたい!」

 

 その言葉にイタズラな笑みを浮かべた桜と、その意図に気づいたアスモデウスは

 

「ランス。おまえも行けば良い、ホレホレ」

「ランスちゃん行ってもいいですよ? こっちは、私と桜ちゃんだけで十分ですから」

 

 と、冗談半分。からかう様に、ランスロットの背中を押した。

 

「わがままを言って済まなかった。だから仲間はずれにしなでくれ」

 

 それを本気と取ったランスロットは、超、足で踏ん張った。どうやら彼女、知らぬは本人だけ、いじられキャラで好かれているのだろう。

 

 

 △△

 

 

 朝も早く、感じたナニカも睡眠中らしく動きがない。なので、アジトに戻り休憩がてら動向をチェックしていた桜たち。ぼちぼち動き出したのを感じた桜の提案で、王都の近くにある店から見張ることに。

 

「桜ちゃん。何を食べますか?」

「うむ。そうぢゃな……ぱふぇでもしゃれこむか」 

「なに、ぱふぇだと? 仕方がない。私も付き合おう」

 

「ふむ。うまいの」

「おいしいですね」

「こ、これがぱふぇか……おいしいぞ!」

 

「なんぢゃランス。食(しょく)した事がなかったのか?」

「あ、あるに決まっているではないか! 騎士たる者、ナウい物には敏感でなくてはな!」

 

 ナウいって……とりあえず、ランスロットの虚勢とも取れる嘘はバレバレで、桜は『ピーン!』とひらめいた!

 

「さすが騎士、分かっておるのぉ。ところで……ぱふぇを食べる礼儀作法があると聞いたのぢゃが……騎士ならば、当然知っておるのぢゃろう?」

「と、当然だろう。だが、私の知っている礼儀作法と違いがあってはなるまい。い、一応聞いておこう!」

 

「ふむ……。まぁ知っておるのぢゃろうが、ぱふぇを食する時は『左足とお尻を、浮かせたまま食べる』と聞いたのう。まあしかし、これは上級騎士の礼儀作法ぢゃと聞いたしのう。妾(わらわ)みたいな愚か者では、到底できぬぢゃろう。ぢゃが! 騎士の中の騎士、ランスロットなら朝飯前。できて当然ぢゃろう?」

 

「ふっ。何を言うのかと構えれば……まさに、私の知っている礼儀作法ではないか! 良く見ているがいい。私が、正式な礼儀作法を教えてやろう!」

「さすがはランス。早速お願いしようかのぉ」

 

 ランスロットは『ふっ、余裕だな』と、教わった通り左足を上げてお尻を浮かす。空気椅子の片足版だ。

 

 プルプル

 

「ではランス。ここで張り込みをするついでに『礼儀作法』をしかと勉強させてもらおう。ちなみに、礼儀作法を崩すと、騎士は自分に罰を与えると聞く。騎士とは誠に立派ぢゃのう」

「当然だ。騎士とは、自分に厳しく他人に優しく! わが騎士道見せてやろう!」

 

 ―――― こやつ……やはりアホぢゃ

 

 20分後~プルプルプルプル

 1時間後~プルプルブルブル

 

「そ、そろそろ張り込みは止めて、王宮へ向かった方が早いのではないか?」

「ん? 限界なのか?」

 

「そ、そんな事は、これっぽっちもないが……見てみろ桜、アスモが暇そうだ」

「いえいえ、いつもの事なので」

「な!(いつもは助けてくれるのに……)」

 

 2時間後~ガクブル、ガクガク、ガクブル、ガガガガ

 

「ランス、顔色がかなり悪いが、大丈夫か?」

「べ、べ、べいきだじょ、こりぇくらい。えぐっ。私、えぐ、ぐす、えぐ、ずみまぜんでじだ~うぞをづいでまじだ。えぐ、ひっぐ、ばちゅうげますかだぁ~ゆるじで(済みませんでした。ウソをついていました。罰を受けますので許して下さい)」

 

 バタッ。ランスロットは倒れてしまった。息はしている。屍(しかばね)ではないようだ。

 

「どぅわーはっはっ! 見てみよアスモ傑作(けっさく)ぢゃ! あーっはっは、ひーひー苦しい。ぷぷっ」

「桜ちゃん。ランスちゃんで遊んではダメです。もう……ランスちゃんも、ミエを張らなければいいのに……」

 

 立ち上がったアスモデウスは、ズルズルと床に崩れ落ちたランスロットの近くにしゃがみ込むと、呟(つぶや)く

 

「あっ!回復するでない。まだ、足をツンツンしておらんぢゃろう!」

「もう、桜ちゃん……め!」

 

「わ、わかったのぢゃ……ちっ」

「桜ちゃん?」

 

「な、何でもない!は、早くランスを見てやるのぢゃ」

「もう……誰に似たんだか」

 

 アスモデウスのおかげで、ランスロットは無事復活した。

 

「手間をとらせた、すまないアスモ」

「ランスちゃんも、もう少し素直になったら良いのに……」

「罰は与えるのぢゃ」

 

「くっ、騎士に二言はない。どの様な罰でも受けよう!」

「ふむ。では、1カ月間。ミニメイド・ノーパンティーの計ぢゃ」

 

 ――――な、なんだと……?

 

 ランスロットは、ガラガラと崩れ落ちた。そしてこの騒ぎは、店長やスタッフたちにしっかりと見られていた。

 

「あそこのお客様たち、パフェ1杯でどれだけ粘るつもりなのかしら……」

「君。彼女らが出ていったら、塩をまいておくように!」

「OKボス!」

 

 陽二とカリンが店に訪れたのは、桜たちが出た少し後の事であった。

 

 △△

 

「映画館の外に丸タイ確認。尾行を開始する」

「丸タイに気付かれるな。オーバー」

「了解!」

 

「丸タイ遊戯場(ゆうぎじょう)に入った。後を追うべきか? オーバー」

「ふむ。潜入して様子を探るのぢゃ オーバー」

「了解。潜入を開始する」

 

 ランスロットは、カリンと仲良くゲームセンターへ入る陽二の後を追い、2人の尾行を続け、様子を観察していた。

 

 ―――― ほほうパンチングマッシーンか、どれどれ? なっ!蹴っただと!? しかしどうして、なかなか機転の利くやつではないか。確かに遊戯(ゆうぎ)の説明には『パンチしてね』と書いてあるが、足を使うのは駄目とは書いていない。

 それに、実際戦いになった場合、ああいった機転は大きな武器になるものだ。

 

 その後もコソコソと陽二の様子をうかがうランスロット。

 だが、ちょっとだけイライラしていた。

 ランスロットの周囲はカップルばかりで、イチャイチャしていたのだ。さすがに羨(うらや)ましいとは思わないが、ちょっとだけ、本当にちょっとだけ羨ましかった。

 

 だから少し魔が差した。パンチングマシンの前に立つと、魔力で代金を支払い『フー』と息を吐いた。

 

 ―――― 爆発しろ!

 

 ランスロットのスラッとした美しい脚が、扇を開いたようにパッと宙に舞った。その直後。バーの先端に付いていたミットが爆(は)ぜた! 爆(は)ぜたミットの破片はそこら中に突き刺さり、残ったバーは、ものすごい勢いで倒れた。

 

 ドゴーン!!

 

 点数を表示する指針となる内部の重りが、一気にマックスのラインを超え、あろう事か、機体から飛び出し天井に突き刺さる。

 そして周囲にいたバカップルどもは、ランスロットを褒めたたえる様に騒ぎ始めた。

 

「「「すごい、すごい!」」」

「「(パンツ)すごい。(見えた)すごい!」」

 

 ランスロットは、思わぬ大喝采に有頂天。めちゃくちゃ調子に乗った。

 

 ―――― なんだなんだ、意外と良いやつらばかりではないか。『爆発しろ』と思って悪かったな

 

「ふっ、私は騎士。このくらいは……余裕のよっちゃんだ!」

「おお! スゲー! すごーい」

 

 などと歓声が飛ぶ。ついでにランスロットの鼻も伸びすぎて、どこかに飛んで行きそうだった。

 そこへ、一人のイケメン男性店員が現れた。その男性は何か紙を持っていて、ランスロットの顔をチラチラと見ながら近付いてくる。

 

 ―――― サインか? そ、それとも私に惚(ほ)れたとか?

 

「あの、すみません」

「ん? な、何だ? サインなら書いてやってもよいが、つ、付き合うとなると、まずはお互いの『弁償……』事をよく知ってから……ん?」

 

『何やらかしてんだよ、弁償しろ!』と、ランスロットの手に、請求書と書かれた紙が渡された。

 

「き、金貨2枚だと……」

 

 

 ランスロットは、ゼラニオンのメンバーである。

 チームゼラニオンは、生活の全てを謎の組織(スノーム)が面倒をみているので、実質、給金はない。

 お金が必要な場合(お店などの支払い)は、アスモデウスが管理している活動費から出される。

 なので、ランスロットはお金を持たされていない。

 

 だが、ランスロットも乙女。きれいな小物やかわいい物など、普通の女子と同じ様に大好きだ。そのためにも、少しはお金を持っていたいし、手に入れたい物もあるので、魔物の素材をコツコツと売っては、へそくりを貯めていた。

 

 何年かかっただろうか……その金額は、金貨2枚とちょっとにまで増えていた。日本円で約200万円と大金だ。

 

 へそくりで弁償したランスロットは、何も言わず外に出て、目立たない地ベタに体育座りをしたまま、ゲームセンターの出入口に目を向けていた。

 

 ―――― 3年もガマンしたのに。私は、何をやっているのだ……

 

 

 △△

 

 

「丸タイ、ただ今薬屋で物色中。何も買う気配がなし、ケチ野郎、オーバー」

「了解! ケチ野郎、オーバー」

 

「丸タイ、武器屋、道具屋、宿屋、全くお金を落とす気配無し。オーバー」

「ケチ男爵芋野郎、オーバー」

「芋男爵、オーバー」

「桜ちゃん、ランスちゃん。今度は何をして遊んでいるのですか?」

 

 桜と通信相手のランスロットが、遊んでいる様にしか聞こえないアスモデウスは、少し不安になり介入した。その声は、通信機能を持つ桜の腕輪によって、ランスロットにも届いた。

 

「遊んでおらん!」

「私もだ。真面目に尾行している!」

「私がやりましょうか?」

 

 とアスモデウスが提案するが『ダメぢゃ!』『断る!』と、この楽しい遊びを、譲る気はなかった。

 

「……そうですか。では、少し別行動させて頂きます」

 

 アスモデウスの言葉に、桜は『スムーズに進んで、面白くなくなるぢゃろう』と考え、別行動を止めようとしたが、桜が口を開く前にアスモデウスの姿は消えていた。

 

「興がそがれたのぢゃ、ランス合流する。ひとごおまるまる地点Pじゃ! オーバー?」

「こちら尾行班ランス。了解した。地点Pとはどこだ? オーバー」

 

 ランスロットはその場に待機してしばらく待つが、本部(桜)からの連絡はなかった。

 

「オーバー! 桜。返事をしてくれ……」

 

 △△

 

「遅い!」

「突然、地点Pと言われても分かるか! どうして応答しなかったのだ!」

 

 ランスロットは、集合場所を探して町中を探し回った。しかし、やっと見つけた桜から理不尽な文句を言われてしまったので、息を切らしながらも反論した。

 

「あの時点で通信は切った。それに、Pと言えば『ぱふぇのP』に決まっておるぢゃろう。感の悪いやつぢゃ」

「くっ!」

 

 ランスロットは、桜に言いくるめられてしまった。

 

「では、次の作戦を発表する。作戦名は“ミニミニ潜入。メイドは見た”ぢゃ」

「ミニ耳栓にゅー? 何を言ってるのだ? 桜」

 

 いまいち、桜の言っている事が理解できなかったランスロット。『潜入ぢゃ!』と桜に言われやっと気づいた。

 

「では変身ぢゃ!」

「なぜだ? 変身する必要などないだろう!」

 

 変身すると、今履いている冒険用の服が、イェローの乙女戦闘服(ゼラスーツ)、すなわち、恥ずかしいミニスカート姿になってしまうのを意味している。

 しかし、ゼラニオンの撮影をする訳でもないので、ランスロットはなるべく回避したい。

 

 

「ランス。この作戦には、必要な事のぢゃ! 残念ながら、妾ではちと荷が重い。ぢゃが! 騎士の中の騎士を志すランスであれば、この程度余裕!」

「ふっふっふっ。そうか、そうか。そうだな! 私に任せろ」

 

 ―――― くっくっく、予定通りぢゃ。チョロいのぉランチョロットよ。よし、次ぢゃ

 

「おっ、よいことを思い付いた。妾は本部に戻り、ランスの仕事ぶりをモニターして、勉強する事にしよう」

「なる程……それは良い心がけだ。ならば、しっかり見ていろ!」

 

 フンスと鼻息荒く言うランスロットに、桜は魔法を施す

 

「隠密戦隊ゼラニオン(ヒーロータイム)!」

 

 この魔法のおかげで、ランスロットの姿は本人(・・)か桜(・)が許可しないと、認識する事ができなくなる。

 

 桜の使うヒーロータイムとは、対象者や接触者の行動や言動その他諸々を、数台のカメラで撮しているのと同じ現象を起こす。また、映像は本部にて記録され、リアルタイムで確認できる。主にゼラニオンの撮影に使われているが、他にも不思議な現象を引き起こせる

 

「ランリー(ゼライェローの名前)出撃せよ!」

「私に任せておけ!」

 

「待つのぢゃ。そう言えば忘れておったわ」

「なんだ?」 

「脱げ」

 !?

 

 パフェの罰が、ここで執行されたのだ。そして当然、このやり取りもしっかり撮影されていたのだっだ。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 私の名前はランスロット。

 誇り高き騎士を目指している。見た目を言っているのではない。心だ!

 私の事はどうでも良い事だった。

 私は今任務中で、ある男の身辺調査をしている。その男はゆるんだ体で、頼りがいがないが、顔はまあまあ好みのタイプだ……

 

 △△

 

 少女がやって来て魔法を放った。男の実力を確かめるチャンスだ。離れた位置で観察する。ゴタゴタのあと、男は必死に少女たちを助けようとがんばっていた。

 

 回復魔法を使えないのか? 基本がなってないな

 見たところ詠唱はしていない。と言うことは、強固なイメージができていないのだろう。仕方ない。

 私は、男の後ろに移動し回復魔法を手伝ってやった。だが、手を貸さなくても良かったかもな。最後の魔法、なかなか良かったぞ。

 

 すると男は、少女に向かって熱く語り始めた……その話に耳をかたむける。なかなか骨のある男ではないか! 名前は陽二か、悪くないぞ。

 

 男が王に会いに行くと言うので、私もあとを追い、王と陽二の会話を盗み聞く。

 

 しかし王妃か……そんなこともあったな。あの当時、私たちゼラニオンはこの地にいなかった。私たちで森に行ければ、あの様な惨事は起こらなかったかもしれない……

 

 陽二が部屋を出て行ったあと、王に姿が見える様に許可して、事情聴取と口止めをした。

 (※王ダグリオスは、ゼラニオンの存在を知っている)

 

 名前は山中陽二。元勇者。

 魔道具を使い、勇者を王子に渡した? そんな道具があったのか……

 

 ぱふぇの店での会話や、少女たちに対する態度を見て、私は、この男が、なかなか見所のあるやつだと認識した。

 

 陽二がお風呂に向かった。

 私は恥ずかしいが、調査のためなので着いて行く事にした。断っておくが、決して見たいからではないぞ!

 

 ほ、ほう。こんな風になっているのか……さ、触ってみても良いだろうか? 私は、バレないように優しくさわさわした。

 こ、これは……や、柔らかいぞ! なぜか、ぽーとしてきたな……

 

 私がさわさわしていると、むくむくっと大きくなってきた。

 か、固くなってきた。不思議だな……はっ!? これはまさか!

 

 触っていたのがバレたと思った私は、すかさず距離をとった。

 

「おっかしーなぁ。何かムラムラするぞ……よし!」

 

 陽二は壁に近づき……

 

 よく見えないな。何をしているのだ? 

 私は、様子を見るため近づいた。

 

「えーと……居た! これはまた……登りがいのある見事な山脈!」

 

 陽二は妙な事を口走り、自分のモノを触って手を動かしていた。

 何をやっているのだ……? はっ!? ア、アレがさらに大きくなっている……。な、何かピクピク動いている。生き物みたいだ!

 

 私は、なぜか無性にアレを触ってみたくなった。頭がぽーとして火照ってきたのを感じる。アレしか目に入らない。私も動かしてみたい。

 

 そそくさと近づいた瞬間、陽二は、壁から顔を離し体ごと向きを変えた。ちょうど、アレが私の顔の前に来るように。

 

 しまった罠か、バレてたのか?

 だが、私は動けなかった。『あっ出そう』と言いながら動かす手の中に、プクッとふくれたアレが出たり入ったり……目を反らす事ができなかった!

 陽二の動きが止まる。すると、アレの頂点から何かが飛び出た。

 

 魔法攻撃!? 駄目だ、動けない。くっ、まともに受けてしまう! 私は覚悟を決め、アレに釘付けだった目も閉じた。

 

 ペチョ。ピチョ、ピチョ。

 その時だった。温かいものが顔に当たった瞬間、体中に雷が落ち初めて感じる衝撃が走った。

 はうっん……くっ! 

 

 どんな魔法だったのだ?

 私が目を開けると、陽二はすっきりした顔で、風呂場から出て行こうとしている。

 

 情けをかけられたのか? 屈辱だ!

 私は、反撃を試みたが……ん? 温かいこれは何だ?

 触ってみるとヌルヌルしている。温かく生臭いのだが、嫌な匂いではない。むしろ、ずっとかぐのもやぶさかではない気がする。

 

 ペロ。指に付いたモノを舐めてみる。

 少し苦いが……毒? ではないな。

 もっと舐めてみたいが……遅毒(ちどく)性なのかもしれない。

 

 それにしても……追撃もせず陽二は出て行こうとしている。私の存在に気付いていないのか? しかし、私を狙ったような攻撃……何だったのだ? やはり情けなのか……まあいい。今のうちに脱出だ。

 

 えっ!? うそ……

 私は、腰が抜けて動けなかった。

 だが、それよりも屈辱的だったのは、陽二の攻撃によって私は……失禁していたのだ! 私のスカートの中はビチョビチョだし、腰は抜けてるし、妙に下半身はジンジンするし……動かせない。

 

「くっ悔しい!」

 

 陽二は、(たぶん)私の存在に気付いていないのに、この私を無力化したのだ! なんと恐ろしい男だ! 私は、陽二が歌を口ずさみながら、出て行くのを見送る事しかできなかったのだ。

 

 △△

 

 アスモにお姫さま抱っこされ、王都にある秘密基地の1つに運ばれてきた。

 陽二が風呂場から出て行ったあと、無力化された私を、アスモが助けてくれたのだ。

 

 この笑顔の絶えないメイド服の少女。見た目は私よりも年下に見えるが、何百年も生きている人でアスモデウスと言う。

 

 アスモと呼び捨てにしているが、本来ならば決して許されない関係だ。アスモから魔法や魔技の指導を受けているのだ。つまり師匠と弟子の関係で、私など片手一本で圧倒する力を持っているのだ。

 

「師匠。情けない姿を晒(さら)してすまない」

「ランスちゃん、アスモですよ。それよりも、早くお風呂に入って来てください」

「わ、わかった!」

 

 風呂から上がると、アスモの手作り料理を食べながら、陽二について分かった事を伝える。

 

「そう言えば……道具を使って、王子に『勇者を渡した』と王から聞いたが……そんな事が可能なのか?」

 

 一瞬だが、アスモの、笑顔の質が変わった気がした。

 

「可能だと思います。おそらく、その道具を使ったのが切っ掛けで、桜ちゃんにも影響があったのでしょう」

「そ、そうか。陽二の調査は続けるとして、その道具も手に入れるべきか?」

 

「道具の件は、私に任せてください。ランスちゃんは、続けて陽二君の調査をお願いします」

「わかった。しかし、陽二はなかなか手ごわい。私が一方的にやられるとはな」

 

「ランスちゃんがあんな風になるなんて……お風呂場で何があったのですか? 話してください」

 

 私は焦(あせ)った。

 

 調査のためとはいえ、裸体の男のあとを追いかけお風呂に潜入。あまつさえ、陽二のアレに釘付けになり……ピクピクしているのを触ろうとして油断。さらに、頂点から出た魔法で衝撃的ダメージを受け腰を抜かし、そのついでに失禁までして……言えるはずがないだろう!

 

「ランスちゃん、それって……?」

 

 声に出ていただと!? まずい、まずい、まずい。何か言わねば……

 

「だ、大丈夫だアスモ、心配するな。舐(な)めてみたが、少し苦いだけで毒性は感じなかった。陽二にも気付かれていないはずだ。それにしても……アレは、少しクセになる味だったな!」

「ランスちゃん……」

 

 いつも笑顔のアスモ、そのアスモの表情が明らかに変わった。

 

「えっ? 何なのだ、毒なのか? 手遅れなのか? 私の命は短いのか?」

「ランスちゃん、今からお勉強です。起きてしまった事はどうにもなりませんが、これからのためにしっかりと学ぶべきです!」

「は、はい!」

 

 数分後。

「うそだー!」ランスロットの叫(さけ)び声が、夜遅くまで基地内に響き渡った。

 近所迷惑? この基地は高度な防御システムが施されている。当然防音も完備なので、外に音がもれる心配はない。

 

 

 ん? 朝か……どうやら、勉強会のあと眠ってしまったみたいだな。この2日間は徹夜続きだったし、疲れていたのだろう。

 少しくらい無理しても、3日くらいは眠らなくても平気なんだが……よほど疲れがたまっていたらしい。

 

 アスモは? ……不在か。もう出かけたのだろう。

 

 机に山積みにされた物が目に止まり、昨晩の記憶が一気に呼び戻された。私は、目の前が顔の熱で真っ白になり倒れた。

 ―――― そうか、眠っていたのではない。気絶(ショート)していただけか……

 

 何度、気絶したことだろうか。ようやく気持ちの整理ができた。いや騎士の心! 志が勝ったのだ!

 

「行くか……」

 

 

 △△△△

 

 

 私の名前はランスロット。知っていると思うが、潜入調査中だ。私の標的である陽二は、現在、学問に励(はげ)んでいる。私は、一緒に教室の中に入り監視している。

 

 しかし、あの学問に打ち込んでいる真剣な目や横顔。なぜだろうか、魅入ってしまうな。

 あれから何日か一緒に行動しているが、今のところ怪しい点はない。

 

 お風呂場やベッドの中でゴソゴソし始めたら、アレが目に入らないように外へ出て、遠くから観察する。

 ひとつだけ言っておくが、決して見たいわけではない。何かの儀式の可能性も考慮して監視しているだけだ。

 

 今日は協会に行くらしい。薬草と緑茸(たけ)を買って、魔茸(たけ)を注文していた。少女と離れて町の外に出るみたいなので、尾行する。

 

 調合を始めた。独り言の内容から錬金もできそうだな。職業も複数もっているらしい。普通の者が、複数の職業を持っているなど怪しすぎるが、異世界人は違うのかもしれない。尾行した甲斐(かい)があった。

 

 そう言えば……四角の板で何かをしていたな。あれに秘密があるのかもしれない。

 

 その日の深夜、私は四角い板を調べるため陽二の部屋に潜入した。と言うのも、見えていないとはいえ男と同じ部屋で夜を過ごす事はできず、部屋を確認できる外で監視していたからな、わざわざ潜入という形になったのだ。

 

 部屋の中を探してみるが、どこにも見当たらない。用心深く身に付けているのかもしれないな……

 

 私は忍び足で陽二に近づいた。そこでふと気付いた。布団に盛り上がっている場所があったのだ。

 

 なる程……眠るときは布団の中に隠し持っていたのか。私の読み通り用心深いやつめ。だが私の目はごまかせないぞ!そっーと、盛り上がっている部分を触って確かめてみた。

 

 固い、間違いない。四角い板の角の部分だ! よし、取り出して調べてみるか。はっ何だ? 急に盛り上がっていた場所がさらに盛り上がってきたぞ!

 

 くっ!また罠なのか? 

 

 私は咄嗟(とっさ)に身をかがめ、陽二の出方を見ることにした。私の姿は隠密戦隊(ヒーロータイム)で見えないはずだが……陽二は複数の職業を持っている。何か特殊なスキルで見破られた可能性もある。

 しかし、5分程様子を見ていたが寝息が聞こえるだけだった。どうやら罠でもなく、バレていなかったらしい。 

 

 行動再開だ。身を屈めたまま盛り上がってる部分を目視して距離を確認。あそこか! 私は布団の横から慎重に手を侵入させ手を伸ばした。

 

 少しずつ、少しずつ、気づかれないよう慎重に手を伸ばす。布団の中は、陽二の熱で温かい。そして、見た目よりも筋肉がある体……ふむ、まあまあだな。悪くない。

 そのまま体の感触を確認しながら、目的地までゆっくりと進むと……

 

 あった! 固い部分に到着したのだ。

 

 温かい?……形状を確かめるため手のひらでゆっくりと感触を確認。

 ん?おかしい……先程よりも固くなってる気がする……四角? ではないな。ん?違うのか? 傷つけないように優しく握(にぎ)りゆっくりと引っ張ってみた。

 しかし、どこかに引っかかっているのか、何かで固定してあるのか分からないが取れない。

 

 何か細工がしてあるな? 

 握った手を上下に動かしてみると、少しだが皮っぽい物は動く。

 やはり何かで固定してあるのか?これはもう、直接見ないと無理だな。

 私は、掛け布団を少しずつめくる……足首から脛(すね)、太もも。そして目的の場所までめくると……薄暗い月明かりの中で、ピーンと主張しているアレがいた!

 

「あわわ、あわわわ、あ」

 思わず、声にならない声が漏れてしまった。

 私は今まで、四角い板かと思い触りまくっていたのだ。何も知らないお風呂場の頃とは違い、アスモに教わり今は知っている。コレがナニで、ナニをするものなのかを!

 

 せっかく目に入らないように意識していたのに……

 

 私は調査を諦め、そっと掛け布団を被せた。しかし、その重みをモノともせず掛け布団は盛り上がったままで、満足顔の陽二に腹が立った。

 

 斬っても良いだろうか? いや、騎士が寝込みを襲うなどと……

 

 私はナニの成果もあげられず、陽二の部屋をあとにした。

 

 △△

 

 翌朝、私は町の外でくすぶっていた。

 もう潜入捜査は終わりにして帰ろう。と考えていた。受けたダメージが、精神的ダメージが大きすぎた。

 

 そこへ陽二が意気揚々とやって来た。到頭、年貢の納め時か……

 やはり陽二は私に気付いていて、わざと泳がせていたのだ!

 私に破廉恥な行為をさせ、身も心もズタズタにして私の純潔を奪う気なのだ。

 ああ。あえて陽二の軍門にくだってやろう。私は騎士だ!逃げも隠れもしない。さあ、好きなようにすればいい!

 

 だが陽二は、何事もなかった様に調合を始め、しばらくすると帰って行った。私は、ただただ呆然(ぼうぜん)としていた。

 

 日も落ち始め、農作業をしていた人たちも町へ帰っていく。私は、その様子をぼーと無気力に眺めていた。

 

「ランスちゃん?どうしたのですか!」

 

 目的の魔道具を手に入れたアスモが町から出てきて、ぼーとしていた私を見つけてくれたのか、焦った様子で話しかけてきてくれた。

 

「アスモか……陽二は恐ろしい男だ。私の手には負えない。完敗だ……」

「ランスちゃん……何があったのか話していただけますか?」

 

 またまた王宮に戻って来た。

 アスモも目的の物を手に入れたので、今日を最後に潜入捜査は終了して、一度本部へ戻ることになった。

 だが――――話を聞き終えたアスモから提案があった。

 

「ランスちゃんは簡単に遅れをとるような実力ではないです。もっと自信を持ってください」

「私は陽二が怖い。私は無力だ」

「そんな事はありません。ランスちゃんなら大丈夫」

「……しかし」

 

「わかりました、本部に戻りましょう。ですが、私もついて行きますから、最後にもう一度だけ潜入捜査へ行ってみませんか?」

「アスモがついて来てくれるのであれば……最後か、良いだろう!」

 

 おそらくアスモは、私に自信を取り戻させたいのだ。なら私は、それに応える義務がある!

 

 

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