湖まで戻ってきた陽二は、渡りやすそうな場所を求めて湖畔を少し歩くと、拾った枝で植物を手繰り寄せ、恐る恐る片足を乗せて体重をかけた。
―― おおっ!?びくともしない
植物の上に完全に乗り移ると、足の裏に力を入れて感触を確かめ軽くジャンプ。地面と全く変わらない感触に、驚きと感動を覚えた陽二は、次の植物に狙いをつけてジャンプ!
―― よし。このまま渡りきるぜ
ピョンピョンと植物の上を注意して渡っていたその時、不意に誰かの声で呼び止められた
「あ、あの!」
「ひゃい!?」
飛び移ることに集中していたので、突然の声に驚いて足を踏みはずしてしまった。そのままドボンと転落。
アワアワとしながら植物にしがみつこうとした陽二だが、後から誰かが支えてくれた。
一瞬キョトンとした陽二だったが「誰?」と問うと「びっくりした? ごめんなさいなの」と女の子の声が聞こえた。
その声の主は、陽二を支えたまま正面に回り込んできた。すると目の前に現れたのは、薄ピンクの髪を三つ編みにした女の子だった。
予期せず抱き合うような形になってしまったが、無遠慮な陽二は、まじまじと観察。
10代後半くらいで、目はぱっちりとした色白のとてもかわいい子だ。水着の代わりなのか胸に大きな谷間ではなく、ホタテの貝殻を装着しているが、あふれんばかりの暴れん坊さんを隠すのには不十分である。
普通なら目がくぎ付けになってしまうが、陽二は紳士なので、その心配はないだろう。
「あ、あの」
残念ながら紳士ではなかったようだ。
陽二のエロティックな視線に我慢できなくなった女の子は、困惑した声をあげた。
「助けてくれてありがとう」
女の子の声を受け、すぐに礼を返した陽二だったが、言葉とは裏腹にその視線は1点を見続けていた。
この変態に困った女の子は「ねぇ」と腕に力を入れ、陽二の意識を勝ち取ると「お願いがあるの。いい?」と尋ねてきた。
「えっなに?」
「その前に! パールの名前はパール・ディンプシー。あなたのお名前は?」
「俺は陽二、中山陽二だ」
△△
この体勢を第三者に見られると誤解を招くおそれがある。なので、植物の上で話を聞くことに……
パールは植物に腕を乗せ、その上に顔を置いた姿勢になっていた。
「それでお願いって何?」
陽二が問うと、パールは「手が届かない場所があるの」と答えて跳ねた。水中から飛び出したパールは、胸を中心にくるっと向きを変えると、陽二の隣に寝そべるように着地。しかし不思議と、着地の衝撃は全くなかった。
だがしかし、陽二はそんな事気づいていなかった。出てきたパールの姿が衝撃的すぎて目を奪われていたのだ。
理屈は分からないが、長い1本の三つ編みが、たわわに実った谷間に挟まれていた。
水滴が滴る肌は、赤ちゃんのようにきめ細やかに見えた。
その肌を見つめながら視線を下にやると、ちょこんと申し訳程度のおへそがあった。
さらに視線を下げると、桜の花びらのように光の反射でピンクや白に見えるキラキラと輝く鱗……
「って、なんでやねん!」
陽二は、嬉しさのあまり盛大にツッコンだ!
そう。パール・ディンプシーは、
「こほん。それで、どこに手が届かないの?」
「お尻から下がムズムズするの。そこに手が届かないの」
パールはそう告げると、手の届かない場所を色々な姿勢で実践してみせる。
―― なるほどね、分かった。
「おまえ体が硬いんだよ。その前に腰から下の長さに、手の長さが合ってないな」
パールの体は人間で例えると腰から下、つまり足が2倍くらい長かった。さらに、人でいうところのヒザ関節がないのだ。
「おまえ、そこに座ってみ?」
「おまえじゃないの。パールなの!」
「じゃあパー子。そこに座れ」
「もぉーなの! パール!パール!パール!!」
「なんだよ……折角○ーマン3号に任命してやったのに……じゃあ、パールちゃん座ってごらん」
「そんな子どもじゃないの!」
「うるせーよ、はよ座れや!」
陽二の中の人魚に対するイメージのひとつに、岩場の上などで“崩れたかわいい正座をしている”というものがあった。
人魚が出てくるシーン定番のひとつである。
なので、陽二は勝手に『ヒザ神か!?』とガッカリして強く当たってしまっただけなのだ。
パールは、全然悪くない。
「中山こわい……」
少し涙ぐんだパールは、横に倒れた姿勢からえっちらおっちらと、尾ビレを伸ばしたまま長座前屈の形に座ると、その動きを見ていた陽二は一言。
「なんか、かわいくねーのな。陽ちんがっかりだよ」
「自分で『陽ちん』って……それだってかわいくないの」
「なんだとコラ! 刺身にして食っちまうぞ」
そんな陽二の鬼畜発言に、真っ青な顔をしたパールは本気で怯えていた。
「ごめんなさい許してなの。陽ちん最高なの……食べないで」
パールの謝罪に、流石の陽二も言い過ぎたと罪悪感でいっぱいになった。勝手な想像で当たり散らすなど人間失格である。今さら遅いかもしれないが、態度を改めて接しようと誓った。
そんな陽二は、懺悔の気持ちを込めながらパールの頭を撫でると、なるべく優しい顔と声で語りかけた
「怖かったよね、本当にごめんね。かわいくて愛らしかったから、ついイジメたくなったんだ」
「…………?『本当にごめんね』の次、もう一度なの」
パールは、怯えていたのが嘘のようにデレっとした顔で催促し始めた。
―― たくましいな、おい。実は怖がってなかっただろう……
△△
「どこらへん? ここ?」
「もっと下なの。あっんっ……陽ちんぁっそこっ! うぅんそこなの!」
「誤解されるからもっとボリュームを下げようか……」
陽二は、パールの指示で手の届かない場所を掻いていた。他人の背中の
とにかく陽二は、罪滅ぼしとばかりにパールの指示通り動き続けた。するといつの間にかパールの息は荒くなり、艶のある声を出すようになっていた。
「ぅん、そこ……そこを、尾ビレを触ってなの……」
尾ビレに触れると、パールの体が一瞬だがビクッと身悶えた。そのまま尾ビレの付け根から先に向かって指をはわすと、目をつぶりながら唇を噛みしめて、なにかを我慢している様子だった。
その姿を見た陽二は、ピーンと閃いた。
―― 感じる事だけに意識を集中している?
その通りだった。
パールは、本気でこの快感を逃すまいと意識を集中していた。わざと体を硬直させ、快感に逆らう姿勢をとる事によって、得られる快感は倍増するのだ。
陽二の中で、ナニカが刺激された。
「パール。おまえ感じてるな? ここか? ここがいいのか?」
陽二はパールの表情や握りしめた手、唇の動きから、弱点と断定した尾ビレの付け根を、集中的に攻撃。優しい攻撃と少し強い攻撃をリズミカルに繰り返す。
パールの限界は近い。押し殺すのを止めた艶のある声が、陽二の動きにシンクロ。絶頂は近い。
ここで陽二が、ピタッと動きを止めると、パールは無意識に「あんっ……」と、懇願とも取れる目で声を漏らした。
―― わかってる。わかっているさぁ! 止めて欲しくないんだろう?
陽二は、力も入らずされるがままに身を
「続けて欲しい?」
ついでに『ふっ』と耳に息を吹きかけるおまけ付きだ。
「ひゃん――!」パールの全身に、イナズマがイレブンした!
「陽ちん欲しいの……」
陥落したパールのお願いを受けた陽二は、パールが絶頂して気絶するまで体中を刺激しまくった。
その結果『
⚫
対象者の弱点を的確に見抜き、その卓越した指使いで天国に導く
☆☆☆
「マジか!」
何がどうなっているのか、陽二は、ひょんな事から新たなスキルを獲得した。
その隣には、人に見せられない姿で倒れているパール。意識はないようで、口元には
胸のホタテが取れているのは流れというやつで、ビッグマウンテンは天にそびえ存在を誇示している。そしてどこから出たのか、パールの下には水たまりができていて、尾ビレまでビチョビチョになっていた。
「やりすぎた……」
お願いされたとはいえ、ほぼ犯罪である。陽二は、収納スペースからタオルを取り出しパールの涎を
そして、頭の下に新たなタオルを敷いてから優しく寝かす
次に肩から脇、腕を拭き終わると谷間を丁寧に拭いた。
そしてお待たせのおっぱいである。
丁寧に磨き上げると、そこにはキラキラと輝く双丘が……つんつん
ホタテをのせて、その上に新しいタオルを被せる。この流れで山頂にイタズラをするのは当然だろう。
「んっ……」余韻が残っているのか、パールから艶のある声が漏れた。
―― エロいな……
次は下半身だ! と思って手を伸ばした時にそいつらが現れた!
ザバン! ザバン! ザバン!
陽二とパールをとり囲むように、3体の人魚が周囲の植物の上に飛び出てきた。原理は分からないが、尾ビレで器用に立っている。
湖の中に目を向けると、他にも人魚がいるようだ。その数5体。
―― 人魚って事は……パールの身内? それにしても……ああ!?
パールと同じ人魚が突然現れた。先ほど悪のりした行為を考えると、怒って出てきたと考えてしまうのも当然である。
しかし、どうやら様子が違うようだ。
人魚たちは、イタズラした陽二に目もくれず、パールの下にある水たまりを見つめていた。
正直この状況、普通なら自身に危険が迫っているので対話を試みたり、弁解をしたり逃げる準備をするかもしれない。
だが陽二は違った。逆ギレしたのだ!
その理由は……
「コラ、ババア!」
現れた人魚は、
そりゃあ人魚だって、子供もいればお婆さんもいるだろう。
婆さんだからって差別するのは大間違いである。
それは陽二も重々、承知の助だ。
しかし陽二には、どうしても許せない事があった!
真っ赤な口紅に紫色のシャドー、バカ長いつけまつげに厚化粧。それはまだいい、女性の
しかし、植物に飛び乗った衝撃でなのか、はみ出していたのだ! いや、垂れ下がっているのだ、おっぱいが!
神妙な表情でパールを見ている目の前の人魚だけなのだが、ビローンと垂れ下がっていた。
さらに年甲斐もなく、ホタテまでしっかり着けていた。ラッキースケベ? 罰ゲームである。
普通なら
「お婆ちゃんそこ! 大事なものが出ちゃってますよ!」
と声をかけるだろう。
だが、流石に陽二は違った
「んなもん見せんじゃねーよ! しまえ!」
と、人間失格の暴言を浴びせたのだ。
しかし、そんな暴言を言われた人魚のお婆ちゃんは、ほんの一瞬だけ、陽二も気づかない驚きの表情を見せたあと、素知らぬ顔を作った。
そして、ビローンと垂れ下がったおっぱいを、先端からクルクルと巻いて、ホタテの中に収納。
そして
「1号収納じゃけぇ!」
もう片方を同じように収納すると
「2号も収納じゃけぇ!」
と言うと、両腕で胸を押し上げながら包み込み、少し前かがみの姿勢になって「だっちゅーの!」と自信満々に言いはなった。
それを聞いた陽二は、『1号・2号収納』時点でのちょっと面白いなぁという考えは萎えてしまった。無理があるだろうと……
すると陽二は、自分の暴言を反省したのか
「酷い事を言って、申しわけありませんでした!」
と土下座して謝ったのだ。
「そこは笑ってもらわんと……こちらが困るけぇ」
△△
陽二が謝罪すると、何故か人魚たちは驚きの表情を見せ、仲間内で顔を見合わせ動揺しているような雰囲気になってしまった。
全く意味の分からない陽二は、目の前に居る、おっぱいを収納したお婆ちゃん人魚に話しかけた。
「えっと、あんたたちはパールの知り合い?」
話しかけられた人魚はハッと我に返ると、そのしわくちゃな顔を陽二に向けた。何か言おうとしているが、不測の事態に考えが纏まっていないようだった。
それに陽二は気づかなかったが、返答を待つ間、目の前の人魚を観察した。
髪の色は、くすんだような茶色。よく見ると顔はしわくちゃで、無理に化粧をしたせいなのか、シワに化粧品が入り込んで逆にシワを強調していた。
体は痩せ細っていて、肌は黒ずんでいる。茶色の鱗はボロボロで、取れている部分が多く痛々しい。
そんな失礼な感想を抱いていると、人魚はとんでもない事を言い出した。
「なぁに。ワシらはそこにおる『娘』を、食おうと思っておるだけじゃけぇ」
「身内かと思ったら敵パターン!? おい、ふざけるなよ。パールには指1本触れさせん!」
「うひょひょひょ。なら勝負するけぇ? ワシが勝てばその娘をもらっていく、おぬしが勝てばおとなしく帰るけぇ」
「おまえらが約束を守る保障もないのに、そんな勝負受けられるか!」
「よく考えてみい。ワシの仲間が娘をかっ
―― 確かに……。この婆さんとしゃべっている間に、いくらでも
「分かった勝負を受けよう。ただし、大ケガしても知らないからな」
「ふぇふぇふぇ、誰がケガをするのけぇ?」
「俺だ!」
お婆ちゃん人魚は、素で『はっ?』と
―― そこは『おまえかよ!』ってツッコンでくれよ! 盛大に滑ったじゃねーか。しかし、今が
「
まだ勝負の内容も話し合ってないし、開始の合図すらない。しかし陽二は卑怯にも先制攻撃!
しかし魔法は、お婆ちゃん人魚に当たらず僅かに逸れて髪をかすめた
「ぎゃーー! あち、あち、
髪がチリチリと燃え始めた人魚は、必死に火を消そうとしてるのか、陽二の足元に倒れこんできて、陸に上がった魚のように暴れはじめた。
―― うわあ……
流石にかわいそうで見てられなかった陽二は、
「なんかごめんね」
「なにすんじゃボケー! 死んでまうけぇ殺すきけぇ!」
「いや、勝負だったよね?」
「まだ話の途中だったけぇ? おまえさんがその気なら、ワシの必殺技が火を吹くけぇ?」
「悪かったけど、一応、命の恩人だよね?」
「何を言うけぇ。くらうのじゃけぇ」
知恵袋と堪忍袋の緒が切れて何を考えているのか、髪の毛をチリチリにされたお婆ちゃん人魚は、ふたつのホタテを外しておっぱいをさらけ出した。
『ビロ~ン』陽二の頭の中で効果音が鳴った。
「いくけぇのお!
と叫びながら人魚は、『
全く痛くも
「うおおええぇ」
口からなんともいえない声がもれた
そんな陽二から素早く離れたお婆ちゃん人魚は、ちょっと頬を染めながら次の攻撃に転じた
「
必死に垂れ下がった乳で右、左、右、左と平手打ちならぬ、乳(?)打ちを繰りだした。
「はぁ、はぁ。右の頬を打たれたら、はぁ、はぁ。左の頬を差し出すんじゃけぇ!」
ぺち、ぺち、ぺち、ぺち。息を切らせながらも必死に攻撃を繰り返す人魚を見て、陽二は思っていた。
―― ああ、分かっているよ
陽二は、言われた通り右を打たれれば左を、左を打たれれば右を差し出した。
平手打ちというのは、打たれた側は痛い。しかし打つ側も痛いのだ! それは物理的に手であったり心であったり……決して、憎くて打つわけではないのだ!
これは、愛だ!
以前陽二は、ランスロットに罰を与えるため鬼教官になったが、この人魚の鬼教官はそれの比ではなかった。愛にあふれていた!
陽二の頬には、込み上げてくる思いをおさえ切れずダムが決壊していた。だが陽二よ、いつまでもお婆ちゃん人魚に辛い役目を押し付けてはダメだ! もう終わりにしなければならない。
陽二は、人魚のおっぱいを優しくキャッチして、もう片方も手中に収めた
「な、なんじゃ刃向かう気なのけぇ?」
「そんなんじゃないさ。婆さん……あんたの名は?」
「な、なんじゃ突然? ワシはヴァイオレットじゃけぇ」
「ヴァイオレットか、いい名だ」
「おまえさん、頭は大丈夫けぇ?」
―― さぁ終わりにしよう。ヴァイオレットがここまでやってくれたんだ。今度は俺が本気で応える番だ!
「
陽二は黄金指を発動! この黄金指は、指先だけじゃなくて舌先でも効果があるのだ!
ヴァイオレットの乳首を口に
「なっ! なにをするんけぇこの変態がぁ。おりものも止まって100年余り、こんな年寄りにも欲情するんけぇ? やめるんじゃけぇ!」
―― なるほど100年以上も忘れていたのか。それなら蜘蛛の巣が張っていたっておかしくはない。こりにこってるんだな。
それならまずは、ほぐしてやろうじゃないか
――
ヴァイオレットの全身を黄金指でマッサージ。少しずつ体のコリをほぐし、性感帯を探る。その間も、乳首への攻撃は続いていた。
「や、やめてじゃけぇ……」
口ではそう言うものの、少しずつヴァイオレットの抵抗は弱まり、陽二を受け入れ始めた。
―― 今だ!
舌先で固くなってきた乳首を舐め回し、片方は牛の乳を
「ご、後生じゃけぇ!」
久しぶりの感覚だった! 最近では攻めばかりだったので、受けを体験したのは先輩人魚にやってもらったのが最後。もう数百年以上昔の話なのだ。
「ヒー、ヒーー、ああっーー!」
ヴァイオレットは崩れ落ちた。火照った体はビクンビクンと
「また、つまらぬ物を切ってしまったか……」
途中から勝負を忘れてしまった陽二は、あさっての方向に勘違いした挙げ句、ヴァイオレットに手を出してしまった。
もしこの場にお医者さんが居たのならば「お薬出しときますね-!」と呆れていたか、頭の病院を紹介されたであろう。
「えっと、なんですか?」
ヴァイオレット、陽二、ヴァイオレット、陽二、と視線を動かすと、突然、植物の上にいた人魚がパールを
「おい、約束……」
すると、湖の人魚たちが一斉に植物の上に乗り込んできた。
陽二もヴァイオレットも巻き込まれ、人魚に乗られて動けない状態、それでも陽二はパールを目で追った。
見つけたのは、すぐ隣の植物の上だった。パールの上に人魚2体が覆い被さっていた。
―― 食われる!?
そう思った陽二は、パールを助けるため必死にはい出ようとした、だが人魚たちは重くて出ることができない
「おい! やめろって……?」
違和感に気づいて目を凝らすと、食べているのではなく、パールの下半身を鱗の流れに逆らわない様に舐めたり、鱗の間を吸ったりしていた。
―― えっ掃除?
すぐ隣では人魚5人が、パールから出た水たまりを一心不乱に
―― これってどういう状況?
すると、陽二にも飲ませようとしてなのか、頬っぺたを膨らませた人魚の唇が迫って来た。『あぶねぇ!』なので必死によけようとしたが、動けなかったのであっさり捕獲された。
「ちょ。や、やめろ! やめうう……」
流し込まれる液体と、飲ませようと蹂躙してくる人魚の舌。ディープである。口の中に婆さんのエキスをたっぷりと注がれ、されるがままに唇を奪われ続けた陽二は……心が折れた。
―― もう好きにしてくれ……
△△
―― ここはどこだ?
上から差し込む日の光。うっすらとした霧の中で陽二は目を覚ました。寝転がったまま眼球を動かすと、湖の入り口でも見た頂上が霞むほどの断崖絶壁が目に飛び込んできた。
―― 微妙に風景が違うけど一体……!?
陽二は、何故か気だるい体で何があったのか記憶を探った。その最中、腕に重みを覚えて確認しようとした時、お婆ちゃん人魚のしわしわな顔と唇がフラッシュバック。
その記憶はまるで、暗闇で突然遭遇した怪物を想起させた。
カクン……余程酷い記憶だったのか、陽二は意識を失ってしまったのだった。
あの時、お婆ちゃん人魚の精神的攻撃を受け続けた陽二は、許容量を超えてしまい気絶してしまった。もし気を失っていなければ、間違いなく廃人になっていた事だろう。
リングのコーナーで、真っ白の髪になって……
だが、自己防衛機構の迅速で的確な判断により、陽二は救われたのだ。人間という生き物は素晴らしいものである。
さて話を戻すと、自己防衛機構の働きで戦場から強制離脱していた頃、人魚たちに劇的な変化が起こっていた。
あの後人魚たちは、気絶した陽二とパールを連れて、湖の奥にある巨大な植物の上に来ていた。
そこは週に1度、パールに『ペロペロ』の下準備をしていた場所である。
そこで、陽二に“感謝感激雨あられ!”の人魚たちは、お礼の気持ちを込めて、まっ裸にした陽二の隅々をペロペロし始めた。大切な息子を担当したのは、ヴァイオレットだ!
この『ペロペロ』という行為は、いくつかの儀式を行う上で重要なものである。
その1つ目が『子種譲渡の儀式』である。
人魚姫以外の人魚にとって、他種族の精子は猛毒である。その為、唯一受け入れ可能な人魚姫が、精子を入手して無毒化。それを仲間に譲渡するのだ。それに必要な行為がペロペロである。
人魚姫をペロペロすると、ある器官から分泌液と共に子種が排出される。それを人魚は摂取して子どもを作るのだ。
2つ目が『親愛行動の儀式』
これは上記と同じ内容であるが、その目的は子種ではなく人魚姫から出る分泌液。この分泌液には人魚を若返らせる力があり、仲間の結束と人魚姫の求心力を高める効果がある。
まだまだ様々な目的の儀式はあるが、割愛する。
ただ全ての儀式に共通するのは、人魚のみで人魚姫の部屋でしか儀式は行わないという事。なので人魚以外が、例え子種の提供者であっても、ペロペロを見たり、受けたりする事は、皆無なのである。
よって、ペロペロを実際に受けた人物は、陽二が初めてとなる。
△△
宿場町の分岐点を海沿いに進むと、漁業が盛んな町サラデインがある。町の周辺にある浅い海には、魔物も滅多に現れないので比較的安全であり、漁港や養殖などの設備もある。
50年ほど前までは、近くの岩場で人魚の姿を見る事ができた。しかし最近では、めっきりその姿を見せなくなったという。
⚫
上半身は人間で、下半身は魚の姿をしている。美しい金の髪と鱗を持つ個体が多く、泳ぎは上手で水を操るのが得意。性別は女性のみ。男の人魚は『マーマン』と呼ばれ、地上で暮らしている。人魚とは完全に別種族として扱われる。
また、人魚の肉を食べると不老不死とか、涙が真珠になるとか、恋敗れると泡になって消える。などの逸話もある。
人魚は、もともと水の精霊の一種であり、精霊が成長して人魚の器を得た。そんな伝承を持つ種族は、意外と多い。なので人魚も、同様に世代を重ねて定着し、命を繋いで来たのだと考えられている。
それとは別に、聖霊より授けられた精霊卵から生まれる人魚もいる。その人魚は特別で、精霊の強い力を持つ次世代の聖霊候補である。またその人魚は、女王蜂のように特別な育て方をしなくても、成長すれば確実に
ちなみに、他の種族にも精霊卵は託されており、候補者は人魚姫だけではない。
儀式の説明でも少し触れたが、他種族の精子は猛毒であり、人魚の体内に入ると死んでしまう。その為、他種族の精子を無害化するのが人魚姫の役目。
人魚は、姫から排出された子種を体内に保存して、胎内の卵と受精させて子供を作る。保存してある子種がなくなるまでは、何度でも受精が可能である。(人魚姫も子どもを産めるが、無毒化能力を失ってしまう)
ただし、女の子。つまり人魚が産まれてくる確率は、2%と極めて低い。
人魚の寿命は約500年だが、人魚姫に寿命はない。
子供を産めるのは肉体年齢300歳までであり、それを過ぎると急激に老化が進む。しかし出生率は2%と低いため、それを補う方法がある。
その方法こそが、人魚姫から出る分泌液の摂取である。この分泌液には若返りの効果があり、摂取し続ける事で老化防止と寿命の延長、そして出産が可能なのである
△△
600歳超のヴァイオレットを含む年長組数人は、先代人魚姫の分泌液を飲んでいた。そのお陰で、何とか今日まで命を繋いできたが、それも風前の灯火だった。
年少組の人魚たちは種族存続のため、仲間から譲り受けた子種で出産する禁忌を犯した。そのせいで、わずか200歳で老化が始まってしまったのだ。さらに女の子率0%であった。
まさに、絶滅の危機である。
その頃からだった。
尊敬や羨望の眼差しが消え、若返りもできず老いてゆくだけの人魚を、笑う者が増え始めたのは……。
最初は、女の嫉妬心や諦念からだったのかもしれない。それはどんどん広がり、人魚は嘲笑の存在にまでなってしまったのだ。
しかしヴァイオレット達も、手をこまねいていた訳ではなかった。
子種の譲渡もその一環だが……パールだ。
彼女は、聖霊から授かった精霊卵から産まれた次期聖霊候補。すなわち、成熟すれば人魚姫なのである。
先代の人魚姫が生きていた頃に授かった精霊卵だったが、
五聖霊の
その中のひとり水の聖霊サラデインも、
当然パールの精霊卵にも影響が出た。
なので種族存続のために禁忌を犯し、仲間に子種を渡したのだ。
だがしかし、苦難の道は終わらなかった。
どれだけペロペロしても、成熟したはずのパールから分泌液が出なかったのだ。最近では、週に1度のペロペロも形だけになりつつ、ヴァイオレットたちは諦めかけていた。
そのとき、家政婦は見た!
何時もの場所にいなかったパールを探して、水面に近づいた時だった。水の振動で、パールの艶めかしい声が聞こえて来たのは……
「あっん……そこぉ……陽ちん強く……強く吸って……いゃん」
人魚界に激震が走った!!
といってもその場にいる8人だけなのだが……静かに顔を出して、聞き耳を立てると様子をうかがった。
またもや人魚界に、激動という名の激震が走り回った!
パールの上気した顔や体、さらに漂う甘い香り。
ヴァイオレットは確信した。は〇たいらさんに全部である!
△△
ヴァイオレットたちは、パールの鱗や体の下にある大量の分泌液をゴクゴク飲み干して、五臓六
人魚界の今後のため、彼を見定めるため、
一応、殿方の前に出るとあって、みんなでヴァイオレットに化粧をした。それも
簡単な打ち合わせを済ませた後、突撃開始だ!
「コラ! ババア!」
―― な、なんじゃと? ワシを見ても笑いもせず声をかけてきおった……まだ、こんな人族がおったのけぇ?
実は、地元サラデインでの人魚とは、チラリと姿を見られただけでも笑いが起こる存在になっているのだ。それはもうトラウマレベルである。
突然怒られて驚いた後、一瞬何事かと考えてしまった。
すぐに、乙女が胸をさらしている事に対しての注意だと解釈したヴァイオレットは、お礼として宴会芸を披露したのだが――何故か謝罪を受けてしまった。
―― はて? と困惑したものの『パールとは本気なのか』『子種を授ける気はあるのか』それを彼の口から引き出すため、踏み込む決意を固めた。
この時ヴァイオレットは、“彼がパールを守る過程で、自分を殺す事になっても構わない”、その覚悟で仕向けた。ところがだ、いきなりの魔法である。
昔の面影もへったくれもない惨めな髪ではあるが、髪は女の命である。チリチリにされては女が廃る。なので久しぶりに、2大必殺技が火を吹いたのだ。
だが教官の愛を理解する彼は、逆らう態度を一片足りとも見せず、左右の頬を差し出してきた。出されてしまえば、止める訳にはいかないのが『
息も絶え絶え、必死に平手を繰り返すのを止められたその時、予想外にも名前を聞かれたので答えると、これまた予想外のさらに外、突然『ペロペロ』を始めたのだ。
ペロペロとは、人魚の中では親愛行動。若い人魚が相手ならば劣情を爆発させてしまったのだと、それなりに納得はできる。
だがしかし、相手は
ヴァイオレットは感激した。思わず変態と罵ってしまったのは照れ隠し。そんな彼に、
その後目覚めると、自身を含めた全員に変化が現れていた。
最年少の人魚は、パールと同じくらいの年齢。人間で例えると、10代後半と言ったところだろうか。まだまだ青い果実だが、それはそれで初々しさが際立つお年頃。
その他の人魚は、30~40歳くらい。果実で例えるなら、程好く熟した食べ頃、まさに旬と言ったところか。そんな
くすんだ茶色の髪は、光り輝く金髪へ
シワシワの顔は、みずみずしいプルンとした肌へ
痩せ細っていた体は、健康的なダイナマイツ・バディへ
ボロボロで痛々しかった鱗は、髪と同じくキラキラと輝く金色で傷ひとつない鱗へ
人魚たちは、
その人魚たち。
彼が、ヴァイオレットにペロペロしていたのを見て欲情……いや、感激していた。ならば自分達も……お礼! それを名目に陽二を丸裸にして『
人魚たちのペロペロは、彼の足先から手の指先、耳の裏や体の隅々まで、まるでマーキングするかの如く、丁寧に丁寧に競うように行われていた。
ある程度、2層にも3層にも重ねペロペロを終えると、彼の唇に代わる代わる
それに反応したのは、存在を主張し始めた彼の息子。余程いい夢を見ているのだろう。ヴァイオレットは恩を返すように、息子にもペロペロ。なんなら逮捕しちゃうぞっ!
花火は打ち上げ寸前! それを察したヴァイオレットは、逃げ道を塞ぐように回り込んだ。
ぱっくんちょ。
その時、彼女らの人魚姫。群れの未来を背負うパールが目を覚ました。
「皆さまは、誰なの? ……もしかして、婆さま達?」
彼にペロペロしている若返った姿を見て、パールはとても驚いていた。
△△
パールの名前は、パール・ディンプシー。自分では分からないけど、婆さまたちからは『人魚姫』って呼ばれています。
生まれたときからずっーとここに住んでいます。
でも少しも寂しくありません。たまに婆さまが、サラデインの海へ遊びに連れて行ってくれるの。
それに……泉の底には、とてもきれいな人魚さんがいて、パールのお話を聞いてくれます。といっても眠ったままなので、パールが一方的に話しかけているだけですが……
でもでも、側に居るだけで、すごく安心できます。
同じピンクの髪と鱗。婆さまに聞いたら、先代の人魚姫様だそうです。戦争に巻き込まれて亡くなったなんて、かわいそうです。
その時パールは、自分の事のように悲しくなって泣いちゃいました。
パールは昔、青い髪と鱗でした。
成熟すると、先代の人魚姫と同じ色になると聞いていました。
でも同じ色になった頃から、婆さまたちの目が鋭くなってきて、
「どうして、そんな事をするの?」
尋ねると
ペロペロすると、パールから『ブンピツエキ』が出るらしく、それが出ないと、婆さまたちは死んでしまうらしいのです。
パールもソレを出そうと頑張ったんですけど、婆さまたちの目が怖くて駄目でした。次第に婆さまたちから諦めた感じが伝わってきて、申し訳ない気持になりました。
そんなときです!
この『精霊の泉』に、怖い魔物ではなく、かわいい姿をした人族が現れたの。町で何度も見た事があったけど、婆さまたちは好きではないようです。
パールは、勇気を出して話しかけようとしたけど、青い髪の綺麗な人が、黒い髪の女の子を投げ飛ばしました。驚いてしまったのであえなく断念。
ただ、飛んでいくスカートの中に、何かがチラリと見えたとき、ドキッとしました。
なんだったんだろう……?
見えたナニカの事ばかり考えていると、お尻がムズムズしてきて、とてももどかしい気持になってきました。
悶々とした気持ちで思考を繰り返していると、今度は男の子が現れました。じぃーっと見ていたら、またムズムズしてきたので、勇気を振り絞って声をかけました。
ドボン
男の子が落ちてしまいました。慌てて助けたのですが、その手に触れらたらもっと触って欲しくなりました。
パールを見ずに違うところばかり見ていたので、腕に力を入れて言いました。
「お願いがあるの。いい?」
婆さま。いえ姉様たちの姿を見たとき確信しました。
―― もう大丈夫なの! と
△△
ヴァイオレットは、パールの姿を確認すると口の中にある物を飲み干して手招きした。分泌液を出した事によって本当の意味での成熟を果たしたパールは、何をすれば良いのか本能で理解。無言で彼に近づき唇を重ねると、肌を重ねた。
他の人魚たちは、彼と人魚姫を中心に円を作ると、祈りを捧げるように歌いだした。
再度口づけしたパールは、彼に姫エキスをたっぷりと注入。その時、何層にも重なった特別な鱗が開いた。
受け入れ準備完了だ。
姫エキスをたっぷりと注入された彼も準備完了。
ここに神聖な儀式が、数百年ぶりに復活したのだった。