「助けてくれてありがとうございます。迷惑じゃなかったですか?」
「気にするな。おまえみたいなやつは、昔からあちらこちらで発見されてるし、保護したら領主に報告することになっているからな。だから迷惑に感じる必要はない。おまえは丁重に保護してもらえるし、届けた俺にも褒美が出るからな。どっちも損はないだろう?」
未知の技術や知識を持つ人が多い異世界人。発見したら領主か国の兵士に引き渡せば褒美が出るし、異世界人は保護されてwin winと言う訳である。
「連れて行かれた後はどうなるんですか? 自分で言うのも何ですけど、身元も怪しいし異世界人だと証明もできないですし……」
「心配するな、ステータスが確認できる鑑定眼持ちが居るから大丈夫だ」
「あの、ステータスってなんですか? どうやって確認するんですか?」
「ほう、知らないって事は、おまえの世界にはないみたいだな。簡単だ。ステータスって頭の中で思い浮かべてみろ」
――思い浮かべろか……
言われた通り思い浮かべてみると、見える。説明しにくいが、目を閉じると目の前に文字が書いてある板が置いてある、そんな感じに見える。目を動かせば文字も追える。そして日本語だ。
《中山 陽二 勇者 レベル0 スキル 異世界人》
――ゆ、勇者だと? ……あのハーレムを作ったり、やたら女の子に持てまくる勝ち組か! しかし職業が勇者って……勇者って職業なのか? あと、スキルの異世界人ってなんだよ! しかし考えようによっては決定的な証拠ではあるけど……異世界人ってどんなスキル?
「だめだ、全く意味が分からん」
つい声を出してしまった陽二に『初めて見たなら理解できないだろうが心配するな、町に着いたらヨーゼフが教えてくれる。俺には無理だが、あいつは、人のステータスを
――なるほど、他人のスキルを見る事はできないのか。そしてヨーゼフさんとやらは、他人のステータスが覗けると……鑑定眼というスキルのおかげなのだろうか?
「ところで……最初って言葉が通じなかったですけど、途中から通じるようになりましたよね。どうしてですか?」
「ああ、それはな『ギフト』。通訳してくれる魔法だ――」
『ギフト』
この世界、人族の間で使われている魔法のこと。呪文は1つ『イガネオ』で、最低でも6つの効果がある。
例えば『イガネオ・水』または『水』をイメージしながら呪文を唱えると、ココ! と指定した場所に水を出す事ができる。
コップならコップに、鍋なら鍋に。量は程よく適量という具合に。ただし、上限あり。
属性に紐付けてあって、次のような効果になる
火 火をつける。
水 水を出す
風 翻訳。ただし、ある程度知能の高い相手にしか通用しない
土 土を出す
光 光源
闇 固有の空間に物を出し入れできる。
――正直すごいな。
水や風はもちろんのこと実用的だが、闇なんて
陽二は教わった魔法が楽しくて、水を出したりポケットのスマホを空間に出し入れして遊んでいた。その後、日も落ちてきたので、野営をすることになった。
バリソンは手慣れていた。
馬の休めかたから、かまどの作り方、火のつけかた、その他いろいろな事を学び、陽二も覚えたての魔法で水を出して手伝い、おいしいご飯をごちそうになった。ありがとうございます!
そして片付けも終わり寛いでいると、遠くの方で噴火のような音がした。
「今のは、噴火ですか?」
「噴火? なんだそれは。あれはな、山が爆発しているんだ。山に魔素が集まると起こる現象らしいが、実際の所まだ分かってないのが現状だな」
――それを噴火と言うのではないのだろうか? 魔素(?)は関係ないと思うけど、ファンタジーだし郷に従えばなんとやらだ! うん、魔素なんだろう。
「ところで、今は見えませんが、海の向こうに大きな山があったじゃないですか。名前はあるんですか?」
「名前か、あの山はサクランヤマと言うんだ」
「サクラジマじゃなくて?」
「いや、サクランヤマだ」
「ちなみに……阿蘇山とか富士山と呼ばれている山ってありますか?」
「アソザンは知らんが、王都からフジヤマってのが見えるらしいな」
――なんとなくだけど酷似している。
決め付けるのは良くないと思うけど、多分ここは日本なんだろう……てことは、今いるこの場所は九州の南、鹿児島だよな。で、王都のある場所が、富士山の見える場所……やめやめ。そんな事より、何も分からないんだから町に着いてから調べればいい。せっかくだし、今を楽しむべきだ。そうしよう。
「明日には到着するんですよね?」
「ああ、明日の12時頃には到着するだろうな」
「12時? 時間なんてあるんですか?」
「ああ? 言ってなかったな
「はい! いま何時?
すると視界の隅に、デジタル表記の時間が現れ一定時間で消えた。
――すげぇ。デジタルってとこが微妙な気分になるけど時間が分かる。しかし本当に万能だなぁこの魔法は。隠された効果がまだあるかもしれない。落ち着いついたらいろいろと試してみよう
「他にも聞いていいですか?」
「ああ、何でも聞いてくれ。かわりにおまえの世界の事でも聞かせてくれや」
結局、男ふたりの男子会は寝付くまで続くのであった。
「起きろ、出発だ。飯は食いながら行くぞ」
「おはようございます。了解しました」
そそくさと荷物を片付け、出発の準備をする
「かまどはそのままで良いぞ、誰か使うかも知れないし目印にもなるからな」
「了解しました!」
今から6時間ほどで町か、楽しみだな。
自然に囲まれた大地を見ながら、自分に起こっている状況を棚上げして、陽二は思いにふけっていた。
***
「おい、着いたぞ」
「バリソンさん、お疲れさまでした。そしてありがとうございました」
ポカポカ陽気に誘われ、眠りに落ちていた陽二。ここまで送ってくれたバリソンに、深々と頭を下げる。
「じゃあ衛兵にあいさつするか」
入り口まで移動して馬車を降りる。
町の外周は、石垣で作った頑丈な柵が張り巡らしてある。おそらく町を一周しているのだろう。入り口には、横開き式の門が設置してあるけど、防衛には役に立たないだろう……蹴り一撃で壊れそうなほどボロい
陽二がそんな失礼な事を考えている間に、バリソンは衛兵と話をして、陽二を引き渡す手続きをしていた。
「へえ、その人が?」
「ああ、こいつの名前は陽二。平原で寝てるのを見つけてな、危ないから連れて来てやった」
と、自分が話題に上がっているのに気づいた陽二は、衛兵の前に歩み寄る。
ちなみに朝起きたとき、陽二は自分に対して
「初めまして、中山陽二です」
なるべく笑顔であいさつ。営業スマイルだ
『初めて異世界の人に会いました! 僕たちと全然変わらないですね』と語ったライアンくん『この町の衛兵なので、困ったことがあったら頼りにしてください』と、伝令をだすため横の建物に入って行った。
*
「初めまして、陽二です」
「初めまして、副領主のヨーシンです。早速ですが、こちらにご足労願いますか?」
伝令が走って行ってから30分ほど待っていると、横の建物に案内され、副領主であるヨーシンと対面する。
『副領主と言っても名前だけでね、楽にしていいですよ』と、とても丁寧な口調のハゲたおじいさんは言う。
「はい。よろしくお願いします」
「じゃあ、そこの椅子に腰掛けて下さいね、すぐ終わりますからね」
陽二は、ヨーシンとテーブルごしに座り、鑑定してもらう
鑑定中________________
中山 陽二 男17歳
勇者 Lv.0
スキル
異世界人
___________________
「なんと! ……あ、いえ。では、少しばかり事情を聞きましょうか」
陽二は、ここまでの経緯や元世界の事などを説明する。ヨーシンは、ものすごく真剣にいろいろと聞いてくるが、少しばかり興奮しているのか、息が荒い。
「では、これからの事を説明します。まず、陽二くんは王都に行ってもらいます。そこで王様との謁見。その後、準備が整うまで各部門の室長からの質問に答えてもらいます。そして、準備が整い次第、元の世界に送り返すことになります」
―――今まで何人もの来訪者があったらしく、一応マニュアルがある。
まず、王様に謁見。そこで、この世界に残るか、もとの世界に帰るかを選択できる。次は、各部門の長に元世界の情報や技術を、知っている範囲で教える。その情報料が、元の世界に帰るための代金になる。
慈善事業じゃないのだ、そりゃそうだ。じゃあ、なにも知らなかったらどうなるかだって? 別にいいそうだ。とにかく質問に答えさえすれば、問題はないようだ。
準備が整うまで約3カ月。その間は王都の中であれば、ある程度は自由に行動できるみたいだ。正直なところ、もとの世界に未練もクソもないので、この世界で生きていくのも良い選択なのかもしれない。
ちなみに今の俺は17歳らしい。ヨーシンさんが教えてくれた。なぜ若返っているのか? 理由は分からないが、残る理由の1つになっている。人生やり直し、夢みたいな話じゃないか―――
「今から王都に連絡を入れます。本日はこのまま領主の館にご案内しますので、王都に行く手はずが整うまでお寛ぎください」
今後どうするか? 話を聞いた陽二は、ひとつの決断を下そうとしていた。だがその前に、ここまで送ってくれたバリソンにお礼を伝え、深々と一礼をしなければならない。
「ご丁寧にありがとうございます。では遠慮なく。バリソンさん、送ってくれてありがとうございました」
「おう、達者でな。俺も謝礼をもらえるから気にするな」
「では、さようなら」
「おう、じゃあな」
『気にするな』と、バリソンは笑いながら立ち去った。
*
翌日
「陽二様。もうすぐ準備が整いますので、こちらの方にてお待ちください」
屋敷のメイドさんが部屋に呼びに来てくれて、病院の待合室みたいな場所まで案内される。数分後、ヨーシンが入り口と逆の部屋から出てきて陽二を呼ぶ。
「陽二君、準備が整いましたので入ってください」
陽二が中に入ると、部屋の中に直径3メートルの魔方陣が書かれていた。これは、王都とマツサを繋ぐ転移門。
「私も一緒に行きますから心配しなくて大丈夫ですよ。さあ陽二くん。この転移門の中に入ってください」
陽二は、言われるがまま魔方陣の中に入った。
「では行きますよ」
ヨーシンの合図と共に、魔方陣の外にいた人がスロットマシンみたいなモノを操作してレバーを引いた。その瞬間、魔方陣からまばゆい光があふれ、目も開けていられない世界の中で魔方陣へと吸い込まれて行った。