カリンサイドの話です。
カリン=レットイル17歳
王都より北に8㎞、馬車で行くならおよそ3時間の距離にある北の
父母ともに卓越した魔法の使い手であり、
ソラマン領主の家系は血統なのか、何かの偶然なのか不明だが、多くの『
【『○の加護』とは、○の部分に該当する
その祝福は、血統的に優秀だったカリンの元へも当然のように現れた。カリンは、産まれながらにして『水の加護』と『
のちにカリンは家系に多い火の加護ではなく、水の加護だったのを気にするようになっていく。しかしそれは、持たざる者から言わせれば贅沢な悩みであると言えよう。
のびのびと育っていた幼少期のカリンは、ひょんなことから冒険者に憧れ、親に内緒で冒険者協会へ遊びに行くようになっていた。そこで冒険者に剣術を学び、火のダンジョンにも何度か入った経験がある。
領主の子とはいえ、普通ダンジョンに入れるはずはない。しかしカリンに剣術を教えた冒険者は、美形で人気も高く顔も広かった。つまり金とコネさえあれば、ダンジョンには誰でも入れてしまう側面もあった。
カリンの水魔法はダンジョンに出現する魔物と相性が良く、守られながらも固定台砲と化した活躍は、魔力量・威力ともに冒険者も顔負けだった。
ただ残念だったのは、職業を取得していなかった事である。
大人顔負けの活躍をしていたカリンの噂は、時とともに知れ渡り、とうとう両親の耳にも届いてしまった。
仲の良かった冒険者パーティーは、今までと変わることなく接してくれたが、その日を境にダンジョンへの同行は断られることになる。
その裏で、カリンをダンジョンに同行させた冒険者パーティーに、ソラマン領での活動禁止が言い渡されていた。つまりそれは、冒険者を続けるのならば、他の町に拠点を移せという意味だった。
これにはカリンの母親が反対の意を示したが、カリンとの接触を防ぎたかった領主は譲らなかった。
活動禁止までには引っ越しや生活基盤移行の準備もあり、1カ月の猶予期間が設けられていた。
歴戦の猛者ではなかったが、彼女たち5人パーティーは、地下2階でも安定して活動できるだけの実力は持っていた。
5人はソラマンを発つ前に、カリンへ贈り物をしようと計画した。その贈り物は『
嘘か真か実物を見た者は皆無。しかし、火のないところに煙は立たない。愛しいカリンの為ならば、動く理由はそれだけで十分だった。
最も確率が高いのは、ダンジョンの中に突然設置される宝箱だ。中身の多くは大した価値のない物ばかりだが、ごく稀に高値で買い取りされる品物が出て話題になる。
そこで5人は活動禁止の期限まで、未踏地が多くて宝箱が残っているであろう地下3階をしらみ潰しで探すことに決めた。
実はカリンの同伴を許していたのは、あわよくば見つかれば……それもあったのだ。
オーブタなど各ダンジョンに出没する魔物も存在するが、火のダンジョンは、その名の通り火属性の攻撃をする魔物が多く出現する。なので、不燃性かつ耐熱性の装備で身を固めれば、それほど脅威ではなかった。
地下3階も同じだ。
魔物が飛ばしてくる火の攻撃を盾で受けきり接近すれば、装甲が薄くHPの低い火属性の魔物たちは、比較的楽に討伐が可能だった。
しかし、順調に探索を続けていた5人を、不測の事態が襲った。
ひとつ、魔物が放つ攻撃の温度上昇。
ふたつ、攻撃に含まれる物体の増大
みっつ、予想を超えるタフネス
油断も慢心もしていた訳ではないが、奥へ進むほどに、少しずつ少しずつ強化していた魔物に慣らされていたのだ。
地下2階までの常識が通用しない。気づいたのが遅すぎた。
忘れていた訳ではないが、ダンジョンはひとつ下りるだけで別世界だったのだ。
余裕をもって準備してきた冷却用の道具や回復薬が尽き始めた。魔物は狡猾に動き回り、まるで統制されているかの如く奥へ奥へと追い立てられていた。
今までは水魔法を操るカリンが居たので、冷却も回復も心配いらなかった。それこそが慣れで見通しが甘かったのだ。
熱で奪われる体力と、高温でまともに持てない武具。水魔法を持たない5人にとって、今まで戦ってきた地下2階程度の強さしかない魔物でも脅威に変わってしまった。
それでも諦めることなく籠城する場所を見つけた5人は、一途の望みを託して立て籠ったのだった。
△△
5人が地下3階へ下りる少し前、冒険者協会に1人の女性が護衛2人を引き連れて訪問した。目的は、5人のパーティーと面会する手はずを頼みに来たとのこと。
職員ならびに冒険者たちは、女性に『火の結晶石』を探して地下3階へ行ったと告げた。
冒険者たちの稼ぎは、地下1階や2階で事足りる。
そのため、移動距離が長く同程度の魔物しか出ない地下3階へ、道中のリスクを負ってまで行く必要はない。との認識が浸透していた。これは、協会の職員たちも同様であった。
すると、話を聞いた女性たちの雰囲気が一瞬で鋭いナイフのようになった。全員がひりつくような空気に戦慄を覚える中、護衛の2人に買えるだけの薬を確保させた女性は、火のダンジョンへと走り出した。
女性たちの実力は未知数だが、少なくともたった3人で5人の救助に向かい、怪我ひとつなく無事に帰ってこられるだけの実力はあった。
△△
初めはタンクの冒険者だった。
立て籠っていた入口が決壊したとき、仲間を逃がすため魔物に突っ込んだのだ。
次は仲間を叱責して走らせた冒険者だった。
彼女は、タンクを助けるため残ったのだ。
しかし1人でも欠けてしまえば、それはもう別のパーティーだ。戦術は乱れ、戦力も大幅にダウンするのが道理。
また1人。そして、またひとり。
仲間のため、仲間を逃がすため……自らを盾にした。
魔物に捕まり犯された。四肢をバラバラにされた。生きたまま餌になった。
無慈悲に。
救助に向かった彼女たちは、地下2階と3階を繋ぐ通路で、ひとり逃げ延びた女冒険者を発見した。そのあと損壊の激しかった4人の亡骸は、彼女と護衛2人の手によって回収され、そのままダンジョンの中で
数日後。
カリンは、ソラマンを出ていく事にした女冒険者を見送りに来ていた。事件を知る者たち
姉のように慕っていた家族同然といえる者たちの死。
幼なかったカリンが、嵐のように押し寄せては胸を締め付けてくる感情を、処理できずに抜け殻のように立ち尽くしてしまったとしても、仕方がなかった。
『ポン』と頭に手を置かれると、優しい手の温もりと聞き慣れた慰めの声に涙があふれた。そのとき彼女になんと言われたのか、それにどう応えたのか、カリンは覚えていないだろう。
それからややあって、別れの時間がきた。カリンは、行かないでと訴え、それに似た行動も取った。
女冒険者は、カリンのあふれ出る涙を拭うと笑みを浮かべた。そして『私たちからのプレゼントだ』と、赤い宝石のペンダントを渡した。
するとカリンは感極まって、“回した手は二度と離さない!”とばかりに抱きついた。
女冒険者は嬉しそうな表情を浮かべると、またもやカリンの頭を
グズるカリンを引き剥がしたカエデは、泣きじゃくるカリンを抱っこしたまま、口と瞼を動かした。
――
女冒険者は、光の粒子になってその姿を消してしまった。
―― 精魂精霊・
小さな光が現れ、ペンダントの中にスウッと消えていった。
『私たちの魂は、いつもカリンと一緒。いつまでも見守っている』
そんな声が聞こえた気がしてカリンは振り向いた。しかし、その姿はもうなく、唖然とするカリンの手の中では、あのペンダントが淡い光を放っていた。
△△
王都を出発して約5時間。カリンの班は街道から少し脇道に入った場所に居た。出発したのが昼過ぎだったので、近いうちにこの場所も暗闇に包まれる。
なので本日は、ここで野営だ。
通常ならセナドゥースで宿をとる選択肢もあったが、野営は大切な訓練のひとつでもある。今回はカリンにも経験させる目的があったため、野営の訓練が組み込まれた。
ここは王国兵士馴染みの野営場所、一応の設備は整っているのでイチから作る必要はなく、せいぜい手直しする程度だ。
まき集め、食事の準備、周囲の警戒と徹底、テントの設営に分かれて行動を開始。さすがは手慣れた兵士たちであった。カリンもテントの設営を教わった。
食事のあとは、自由時間になった。
といっても、装備の手入れや鍛練など、各々で判断して行動する訓練時間の意味合いが含まれている。
カリンは魔法の鍛錬をした。
先生から教わった魔法を小さく出す訓練だ。
根が真面目なカリンは、愚直に鍛錬を繰り返した。
翌朝、日の出前に起きたカリンは、魔法の水で顔を洗って服の交換と洗濯を済ませた。これも訓練のひとつだ。見張りの有無で臨機応変に対応するが、野営は基本戦いやすい装備で睡眠をとるのが習わしなのだ。
兵士たちも起きだし、朝食の準備や野営の片付け、鍛練をする者に分かれて行動を開始していた。
朝食後、装備を整え結界路へ向けて出発した。
結界路まで到着したら結界路沿いを南下だ。兵士たちの緊張も高まってきた。
結界路の中と外では危険度が桁違いである。たとえば度胸試しでちょっとだけ……そんな考えすら厳禁である。
結界路の外は、資源が豊富なので比較的簡単に素材が集まる。その為、危険を承知で外に出て行方不明になる人族が後を絶たないという。
カリンは、兵士から初めて聞かされた話に驚いた。結界路の外に出るなど、考えたこともなかった。
カリンの考える冒険とは、ダンジョンの中だ。地上はダンジョンと違い、魔物がどれだけでも同時に現れる危険な場所だと認識していた。
その後3時間程南下を続けると、パトリックたちの野営地に到着した。
しかしパトリックの姿はなかった。
野営地で留守を任されていた荷番に尋ねると『レベル上げに出ている』との事で、日を
待っている間に、食料品などを積み込んだ荷馬車を引き渡したり、馬に自分たちの荷を移し替える作業をしていた。
結局、パトリックたちは日が傾いても帰ってくる様子はなかった。
「トパンへ向かうのは、明日にする」
トパンへ到着するには、まだまだ結界路を南下して森を通り抜ける必要があり、道中はすぐにでも暗闇に包まれるのが確実で、それはつまり危険度がハネ上がるのを意味していた。
なので班長は、安全面を優先して野営地にとどまるのを決断した。
それに朝まで待っていれば、パトリックが帰って来て
△△
その日の夜、荷番の兵士に魔物と結界路の外の植物を使った料理をふる舞われた。
初めて見るグロテスクな物が多かったので戸惑われたが、1人の兵士が意を決して食べたところ大絶賛。それを聞いた兵士たちも次々と箸をつけ始めた。
カリンも出された物を残しては駄目だと考え、恐る恐るひと口。
!?
カリンは驚いた。
見た目は少しグロテスクなものの、とてもおいしかった。
見たこともない植物の甘さにシャキシャキ感。良質な肉汁の甘さと、噛みごたえがあるのにとろけるような肉質。
それはもうシェフを呼んで、直にお礼を伝えたいレベルだった。
もう誰も戸惑いなど見せない。ただただ一心不乱に目の前の料理を食べていた。
△△
食事を堪能して休んでいると、荷番がやって来てカリンを後ろから抱きしめてきた。カリンは抵抗せず優しく服を脱がされ生まれたままの姿になった。
絡み合うキスを繰り返し、
カリンは、幸福感に包まれていた。
やがて荷番のアレがカリンに進入してきた。カリンは荷番を抱きしめ受け入れた。
女の喜びだ! カリンは絶頂をむかえ、荷番は中に思いっきりぶちまけた。
それから昼夜を問わず荷番と肌の重なりを続けた。
冒険者になる夢。パトリックの事。陽二の事。父親や母親。懐かしの冒険者たち。
全てがどうでも良かった。もう忘れてしまっていた。
今はただ、この荷番との子供が欲しいと感じていた。
夜になると絶品の料理を食べ、他の時間は子作りの時間だ。
8日目。カリンは今日も料理に舌鼓を打った。
今日の料理は、特段においしく感じた。
パトリックの脳髄に指、コリコリとした食感の内臓は特にやみつきになった。
翌朝、肌を重なり続けていると陣痛が始まった。
とうとう荷番との子供が産まれるのだ
産まれて来た子どもは五つ子だった。
荷番に似て、とてもかわいい魔物たち。
子どもの顔が、魔物から懐かしの顔に変わっていった。
姉のように慕っていた、幼き頃の仲間たちへ
「カリン、久しぶりだな。いつも見ていたぞ」
「魔法も上達したようで偉いな」
「剣もますます上達したな」
あの別れ以降、二度と会う事はないだろうと感じていた。
ダンジョンで亡くなった者は当然として、突如として消えたあの女冒険者も、きっと亡くなったのだと幼心に感じていた。
「夢? それとも幻なの?」
カリンが問いかけると、剣を教えてくれた女冒険者の声が聞こえた
「カリンの母親のおかげだ。あの日渡したネックレスを覚えているか? あれには私たち5人の残留思念が込められている」
実はあの日、逃げ延びた女冒険者も通路で亡くなっていた。仲間が命懸けで逃がしたものの、魔物から受けたダメージは治療できないレベルで、手遅れだったのだ。
ダンジョンで活躍したカリンの噂を伝え聞いたカエデは、その成長に大変驚き、実際に剣の腕を確かめて二度驚いた。
そのあと5人パーティーの話を聞いた。
幼なじみで付き合いが長く、とても結束が固い。そして教えるのがとても上手。
カエデはとても興味を持った。将来、中核を任せる人材に最適だと感じ、
しかし行き違いで一歩遅かった。
カエデは『死者の言葉を家族に届ける』ための
もしもの時、カリンを助けてくれるように。それはまた、5人の残留思念から読み取った願いでもあった。
「そのペンダントに付いている宝石は
△△
―― っ! 今のはなんだったのかしら……? 私はいったいなにを……だめ、思い出せない。痛ッ!
長い夢から覚めたようだった。
無理に思い出そうとすると、頭がズキズキして拒否反応を示した。そして、口内の生臭さに吐き気を覚え、おなかの中を全て吐き出してしまった。
チラッ
兵士たちが食べているモノと鍋に目が行った。どう見ても人だった
オゥェッ……! カリンは
水で口を
「アナタは何者なの、正体を現しなさい!」
ピタリと音が止まると、荷番は気持ち悪い笑みを浮かべながら振り向いた。その顔は、焚き火の光で不気味度が割り増しされており、声をかけたのを後悔するレベルだった。
「アレ? 変だな。どうして正気に戻った? せっかく上等な苗床なのに。まあ力ずくで苗床にすればいいし、気持ち良くしてやるからな、ヒッヒッヒ! おとなしくしていろ」
―― 生理的にムリィィ――!
カリンの背筋に悪寒が3㎞走ったが、すぐに頭の中で
「ごめん気持ち悪い近寄らないで!
陽二に見せた時よりも格段に威力のある魔法を
すると、魔法は当たったがダメージはイマイチだったのか、すぐに荷番もあとを追いかけてきた。
カリンが先に馬へ到着し、自分の荷物から剣を取り出した。しかし、荷番はカリンに追いつき後から羽交い締めにして、首筋を
ゾゾゾゾー!
「イャャァー! やめてやめて、ヤメロ(怒)!!」
鳥肌が全身を駆け回るイヤな気持ちの中、暴れながら叫ぶカリンの胸と恥部に、荷番の手がワキワキと攻めよってきた。
「止めろって、言ってんでしょう!」
カリンは大きく足を振り上げると、痴漢野郎の足の甲を
グシャッ! 「ぎゃヒィッ!」
ざまあみろ!
手の力が緩んだ
―― なにコイツ、固ッ! もしかして魔物?
荷番は
「スキあり!」躊躇したカリンに足払いをして倒した。そのまま胸に飛び付くと、ムニュムニュと胸を揉みだした。
「ちょっ、ちょっと!あっ。だ、だめだってば……」
「気持ちエエだろ? 生娘でもないくせに抵抗するな。任せておけば良い気持ちにしてやるから、ひっひっひおとなしくしろ。それそれ、先っぽだけ、先っぽだけだから!」
荷番は乳首と乳房を
「この変態がぁー! 私は処女よ!!」
カリンのスラッと伸びた脚の先が、下半身を出すために立ち上がった、荷番のそそり立つ根元に食い込こんだ。もうグリグリと深々と半分以上も。
「キョーー!!」
荷番は
「あ、ごめんね。痛かった? 跳ぶと良くなるらしいわよ」
してやったり! 溜飲が少し下がったカリンは、立ち上がり服の砂や土を払って勝ち誇った。
「変態、成敗よ!」
ところが、カリンはすぐに逃げ出した。
剣も魔法も通用しない相手に、どうやって対抗すればいいのか? カリンは対策を考えるため、とにかく今のうちに距離を空けようと考えた。
その後ろを、荷番がピョンピョン跳ねながら追ってくる。
「もう許さん! 優しくしてやればつけ上がりやがって。強引に犯しまくってやる。ガバガバになるまで犯しまくってやる」
「しつこい男は嫌われるわよ? でも、私を捕まえることができたら好きにしていいわ!」
カリンは立ち止まると振り返り、挑発するような言葉を投げかけた。
「本当だな? よしそこを動くな、犯しまくってやる!」
「ええいいわ、私は動かない。そこまで本気で来られたら断れないわね! さあ、捕まえてみてよ!」
素敵な笑みを浮かべたカリンは、待ち望む恋人のように両手を広げた。
「観念したってわけか。なんだ気持ち良かったんだな、我慢できないんだな? ウヒョー!」
「そうね。もう我慢できないわ早く来て!」
荷番は下半身を露出させながら走った。アソコは振動で、クルクルとトリプルアクセル並の小さな回転を生み出していた。
カリンは、薄暗い中を走る荷番の姿をしっかり確認。目線を少し下に向けると、気づかれないように半歩だけ後ずさり。
距離は残り3m、2m
ここで荷番は、カリンに向かってジャーンプ!
残り1m。
荷番は空中で気づいた! カリンばっかり目で追っていたので気づけなかった。
「だ、
「なんのことかしら?」
バチッと何かが弾ける音がした。その瞬間荷番の思考は止まってしまった。結界路に触れて、魔石が破壊されたのだ。
荷番は声を上げることもできずに絶命した。
ヒョイと変態ダイブをよけたカリンは、すぐに結界路の中に戻った。
「外と中の空気って全然違うわね……」
カリンは結界路の線上に倒れていた荷番を、何度も蹴って外に出した。ゴロンと体が回転すると、その死に顔が飛び込んできた。人に化ける道具でも使っていたのか、荷番の姿は魔物本来のソレに戻っていた。
「うわぁ……これが正体なのね。それにしても魔石が破壊されると死ぬのは本当なのね……」
ちなみに5年前までは、魔石ではなく魔物本体にダメージを与える仕様だった。仕様が変更されたのはあの事件以降で、魔力の消費は半分になった。
死に顔は気持ち悪くて正直怖い。それでもカリンは、魔物を観察した。
―― コボルト?
に似ていたが、顔は凶悪で色が少し濃い感じがした。
町に住むコボルトは魔物ではなく精霊の末裔と言われていて、愛嬌のある顔をしたイタズラ好きの人族だ。
「後回しね」
激しい攻防の末、何とか勝利したカリンに余計なことを考える余裕などなかった。
それに、誰かに見られているような気がして、心臓がバクバクしていた。
野営地へ戻った。
ぐったりと倒れていた兵士を1カ所に集め、荷車から毛布を持ってきてかけた。夜になれば今の時期でも冷え込んでくるからだ。
近くのかまどにまきを足し、違うかまどにも火を入れた。
料理されてしまった兵士は、1カ所にまとめて布で隠した。
人の死体や魔物の死骸を何度も見たことはあるが、それでも気持ちのいいものではない。それに……原形をとどめていないモノもあったのだ。
今も先程までの恐怖でずっと手が震えていた。作業をあらかた終えると、心細いのを我慢して荷車の中に入り隠れる様に横になって目をつぶった。
△△
日が昇り、明るくなってからカリンは荷車の外に出た。
結局手の震えは朝まで止まらず、一睡もできなかった。恐怖で荷車の外にも出られず、中で用を足した。一生の恥である。
カリンは、証拠隠滅のため後で荷車を燃やそうと決意した。
兵士の様子を見に行くと、全員の体が紫色になっていた。カリンは片っ端から
―― 毒じゃないのかしら?
よく見ると、カリンの服も所々紫色でボロボロになっていた。
着替えをするため、両親から送られた服を取り出し、荷車の後ろで裸になって自分の身体を確かめた。
―― 所々紫色の小さいアザがある……
昨晩食べたアレしか思い当たりはない。しかし耐性でもあるのか、特に体の不調は感じなかった。とりあえず
すると紫のアザが見るからに薄くなったので、念のため自分にもヒールをかけて、気合を入れるため新品のショーツを卸すことにした。
朝食を摂り、倒した魔物を確認。
魔物はやっぱりコボルトに似ていたが、黒っぽい緑色をしていた。コボルトは明るい緑、黄緑に近い色だ。別種族の何かだと仮定した。
野営地の周囲を警戒しながら確認。特に怪しい点はなかった。
ふと気づくと、意識が戻ったのか兵士7名全員が立っていた。
「みなさん大丈夫ですか?」
声を掛けて5メートル程まで近寄ると、どこか様子が変だった。兵士たちは立ったままボーとして、体が左右に揺れていた。
―― 明らかに変だわ!
カリンは、ゆっくりと後ずさった。しかし、たまたま振り向いた1人と目が合った。その姿は全身が紫色で、虚ろな表情には全く生気を感じなかった。
「あ、あの……」
返事がない! まるで
その兵士に目を奪われていると、ふと気付いた。いつの間にか全員がカリンを見ていたのだ。
―― えっ? なんなのこれ……
カリンは、魔物とは違う恐怖に足が震えた。
「パンティー!」
カリンはかなしばりの様に動けないでいたが、その言葉で力が抜けて体が動くようになった。
「えっ?」聞き間違いだろうか、カリンは自分の耳を疑った。
兵士たちは再度
「パンティー!」
いっそう大きく聞こえた『パンティー!』それが合図となり、一斉にカリンめがけて走りよってきた。
「キャァァァー」
カリンは一目散に逃げた。とにかく逃げた。
でも何処に逃げればいいのか検討もつかないので、とりあえず真っ直ぐ後ろに逃げた。
そして気づいた。ヤツらの動きは徒歩程度と鈍い。
少し余裕が生まれたカリンは、兵士が結界路を通るように逃げてみた。変化なし!
―― 魔法で攻撃は……だめね
もし兵士が錯乱しているだけだったら殺人になってしまう。
―― もしかしたら元に戻ってくれるかも……
カリンは自分のアザが、水壁で薄くなったのを思いだした。そこで、水壁を設置して兵士たちを突っ込ませる作戦を閃いた。
5度目くらいからだろうか、水壁に突っ込んでいた兵士の顔色が、徐々にであるが生気のある物に変わってきた。
「はあ、はあ、はあ」
カリンは設置した水壁に兵士を突っ込ませるため動き回っていたが、とうとうカリンの魔力と体力が限界に近付き、動きが鈍くなってしまった。
そして、動きは遅いが追い込み漁の如く囲まれて捕まってしまった。なんとか逃げようと試みたが、男7名の力で押さえ付けられては、か弱い女子にはどうすることもできなかった。
兵士の手が、スカートの中に侵入して上へ上へと伸びてきた。
優しく丁寧に、ゆっくりとパンティが下ろされていく。
カリンは恥ずかしさで、いっぱいいっぱいだった。
どうせなら一気に下ろしてくれればいいのに……と
しかしカリンの思惑とは反対に、じらす様にねっとりとパンティーを下ろす神聖な儀式は続けられた。
スカートの中からパンティが見え始めると、全員でパンティーコール。鳴りやまない止まらないパンティーコール
大事なときに身に着けようと思っていた卸したての高級ショーツ! それが、兵士の手によって剥ぎ取られてしまった。
―― くっ殺せ!
と、恥ずかしさで顔を隠していたカリンが、そんな事を考えていたのかは本人のみ知るところであったが
その隣ではカリンのパンティー奪い合う、壮絶で凄惨なバトルロイヤルが勃発していた。
カリンが顔から手をどけると、鼻から大量に血を流した兵士たちが、そこら辺に倒れていた。
意味の分からないカリンは、落ちている自分のショーツを発見。そのショーツは銀貨1枚もする高級ショーツで、もみくちゃにされて、ボロボロのぼろ雑巾にまで成りさがっていた。
全米が涙した!
カリンは収納スペースから、普段身に着けている銅貨2枚のショーツを取り出し身につけた。
「絶対に許さない!」と
実は兵士たち、意識もあって記憶もそのままの状態で体を寄生虫に支配されているだけだった。
水壁に突撃している間に寄生虫の力が弱まり、体の支配は解けていた。しかし隣の兵士もカリンのパンティーを狙っているのに気が付いた。
皆の憧れ、カリンのパンティーをゲットするまたとないチャンス。ならばこのまま支配されている振りをして、パンティーを我が物にしてやろうと
そして奪い合いの末、カリンの脱ぎたてホカホカ生パンティーに興奮し過ぎて、全員が自滅してしまったのだった。