※この作品はR-18です。

異世界生活 冒険譚~   作:すったふ

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胸のエンジンに火をつけろ

 

 

 

 喧騒を聞きつけた桜と唯。到着すると、丁度カリンが、変身する言葉を叫んだ場面だった。

 桜は、すぐさま撮影を開始(ヒーロータイム)。

 小さな事からコツコツと、おいしいネタはどこに転がっているのか分からない。

 

 その場に遅れて到着した陽二たちは、桜に促(うなが)されその様子を見た。

 

「スマイルセーラー!」

 と、熱烈なファンである王妃マナリシアが呟(つぶや)き、パトリシアやナーナもキラキラした少女の目になっていた。

 

 ―― あれって……カリンだよなぁ

 

 騒ぎの中心、ピンク髪の少女を見て陽二はすぐに正体を見破った。

 

「アレがスマイルセーラーという者なのか?」

 

 ランスロットは、可憐(かれん)ウィッチを知らないようだ。

 

「何故ここにスマイルが? 桜ちゃん、楓(かえで)なのですか?」

「いや、楓ではない。誰かは分からぬが……あれは、正真正銘本物のスマイルぢゃ」

 

 カリンと見破った陽二は、ここぞとばかりに割って入った

 

「あの子はソラマン領主の娘で、俺の面倒役になっている子だ。名前は、カリン・レットイル」

「そう言えば、あの時にいた娘だな」

 と、ランスロットも相づちを打った。

 

「ソラマン領主の娘? そう言う事か! 奴め、なんておいしいシチュエーションを……むかつくのぢゃ!」

 

 どうやら桜は、母親である楓からスマイルセーラーを受け継いだと確信したようだ。ドラマチックである。相当悔しかったのか、何度も『くそぢゃ!』を連呼していた。

 

 ―― おい幼女、言葉には気をつけろよ?

 陽二は思ったが、当然口には出さなかった。

 

「カリンってスマイルだったんだぁ……」

 

 陽二の言葉で正体を知ったパトリシアは、カリンの事を母親に説明しながら呟(つぶや)いていた。

 当の王妃は説明を聞きながらも、その目はスマイルセーラーをロックオン。興奮しっぱなしだった。

 

 ―― シアの母ちゃん、めっちゃガチファンじゃん……

 

「じゃが、あの魔物に勝つのは、ちと難しいじゃろうな」

 

 そんな不安を煽(あお)るような事を唯が言うので「それなら早く助けに行きましょう」と陽二が提案するも、桜が待ったをかけた。

 

「まあ、待つのぢゃ。すぐにどう、という訳でもないぢゃろうし、しばらく様子を見る。母様とアスモは、いつでも飛び出せる準備を」

 

 2人とも笑顔で頷(うなず)いた。

 

 陽二は、どうしてすぐにでも助けに行かないのか理解できなかった。間違いがあったらどうするつもりなのか! それを察したのか

 

「大丈夫ぢゃ陽二。2人に任せておけば、死なせるような事は絶対にない!」

 

 桜の強い言葉に、陽二は何も言えなくなった。

 そもそも力のない彼には、言う資格すらないのだ。なので、心の中で応援することしかできなかった。

 

 ―― くそ、強くなりたい!

 

 陽二はそう願いながら、カリンの戦いを見守っていた。

 心配をよそに、彼女は将軍と良い勝負をしていた。

 ―― もしかしたら勝てるか?

 そんな事を思っていると、彼女は『超変身《スマイルアップ》』した。すると、あれよあれよと言う間に将軍を斬り捨て、本当に勝ってしまったではないか!

 

 ―― よっしゃー! 凄いよカリン! 

 

 陽二は、自分の事のように喜んだ。しかしなんと! ゴブリン将軍は立ち上がると、変身したのだ!

 

「あ、あれは……!? 素晴らしい!」

 

 なにが彼女の琴線に触れたのか、桜は大興奮。その横を、2つの影が飛び出した。

 

 

 △△

 

 ガシッ。

 

 力を使い果たしたカリンを連れ帰ろうと、首筋に延びた将軍ゼブラの手首(・)を、素早く飛び出した唯が掴んで止めた。

『ベキッ』と、部分強化した握力で握り潰す。

 

 次の瞬間、将軍ゼブラは腹部に衝撃を受け尻餅をついた。アスモデウスが蹴込んだのだ。

「お、お前は……」

 アスモデウスの姿を見た将軍ゼブラは、たちまち絶望の表情を浮かべると、手首を押さえ蹲(うずくま)ってしまった。

 

 逃げたときは本能で逃げだしたが、将軍ゼブラになってゴブリンキングに手が届く力を手にした今、目の前の2人から、歯向かうのも馬鹿らしくなる程の力の差を感じて観念した。

 ―― ここまでか……

 

「カリン大丈夫?」

 

 そこに、唯たちの後を追い桜たちもやって来た。陽二は、カリンに声をかけると同時に恵み(ヒール)を発動。

 

「どうしてここに陽二が? パトリシア様までぇぇぇって、王妃様(オバケ)!?」

 

 カリンが王妃の姿に驚くのは仕方がない事だ。そんな騒ぎを尻目に、桜は将軍ゼブラに近づくとバシバシ肩を叩きながら話しかけた。

 

「おぬし、変身とはなかなかやるのお!」

 

 顔を上げた将軍ゼブラは、桜に目を向けるも

 ―― 変身とは何の事だ? それよりも偉そうに俺の肩を叩く、この絶壁は誰だ?

 と思っていた。しかし桜のすぐ後ろには、睨みを効かせる唯とアスモデウスが居る。下手な事は口に出せず、黙(だんま)りを決め込んだ。

 

 すると、桜が思いがけない事を告げた。

「妾(わらわ)の名は桜ぢゃ。良き物を見せてもらった礼として、チャンスをやろう。もう1度スマイルと戦え。勝利すれば、見逃してやるのぢゃ」

 

 ―― 俺にチャンスをくれるのか?

 

 後ろの2人、唯とアスモデウスが苦笑しながら頷(うなず)いた。彼女たちは、桜には甘々なのだ。

 そして、問われた将軍ゼブラに断る理由はない。虫の力で骨折を治療すると、大きく頷(うなず)いて見せた。

 

 桜は満足顔で、ルールの説明を始めた。

 

 将軍ゼブラの勝利で見逃す。ただし、スマイルには助っ人が加わり1対2の勝負だ。

 勝利の条件は、戦いを止めざるを得なくなるまで、スマイルたちを追い込めばいい。負けは、当然死を意味する。

 

 さて、その助っ人とは誰なのか? 桜から助っ人が任命されると、将軍ゼブラは内心『勝った』とほくそ笑んだ。

 

「えっ? シア? 無理、むりむり!」

 

 任命されたのはパトリシアだった。正に青天の霹靂。彼女は、両手を最速のワイパーのように振りながら断った。

 当然である。

 獅子は我が子を千尋の谷に落とす。とは言うものの、将軍ゼブラ相手では無謀としか思えない。

 母親である王妃も、目を見開き驚愕しているではないか。

 その隣に居るカリンに至っては、知らない人が出てきて音頭を取り始めたのだ。ポカーンとしている。

 

 そのカリンにアスモデウスが近づき声をかけた

 

「魔力を補充いたしますので、炎賜玉(サラマン)をお貸しください」

 

 彼女に言われ、素直に差し出してしまった。そして、その笑顔に思わず照れてしまった。

 

 ―― この人、すごく可愛い。断れる訳ないじゃない

 

 その傍らで桜は、取り出した細かな意匠のペンダントを無理と言うパトリシアの首にかけ、嵐賜玉(アラシ)をセットした。

 

「おめでとうパトリシア=クルシュナイン。2代目ピュアセーラーの誕生ぢゃ!」

「ええっ!?」

 

 強引かつスムーズに。有無を言わせぬ初代からのバトンタッチ。畳み掛けられる驚きの連続で、とうとうパトリシアは黙り込み、鳩が豆鉄砲を食ったような顔になってしまった。

 

「キャーー! 凄いわパトリシアぁぁー!」

 

 先程の驚愕は何処へ行ってしまったのだろうか? パトリシアの戸惑いをよそに王妃は誰よりも早く声を上げ、喜びのあまり大好きなスマイルセーラーと並び立つであろう娘に抱きついた。

 谷に落とした瞬間である。

 

 ―― くっくっくっ。見たか楓め! 初代から2代目へのバトンタッチ。それも直接ぢゃ! こちらの方が劇的ドラマチックぢゃろうて!

 

「わーはっは! わーはっは!」

「どうしたんだ急に笑い出して……大丈夫か?」

 

 言っても無駄なのは分かっているので、陽二は静観の構えでパトリシアとのやり取りを様子見していたが、突然笑い出されれば突っ込まずにはいられない。

 その陽二に、同じく静観の構えを見せていたランスロットが声をかけた。

 

「陽二いつもの事だ。気にしたらそこで試合終了だ!」

「それ、使いどころ間違ってるから!」

 

 すると、桜の笑い声で再起動したパトリシアは、ペンダントを握りしめながら弱気の発言。

 

「桜ちゃん、シアには無理だよ」

「シア、諦めたらそこで試合終了ぢゃ!」

「おまえらいい加減にしやがれ! それは、軽々しく使っていい言葉じゃ――」

 

 しかし陽二の言葉は

「大丈夫、シアならきっと出来るわよ。だって、私とダグの娘だもの『胸のエンジンに火を付けろ』よ!」

 と力説する王妃の言葉で打ち消された。

 

 

 △△

 

 

「ねぇ陽二」

 

 やっぱり言っても無駄だった。王妃まで桜の味方になってしまっては、陽二に出来ることはない。そんな陽二の服を手持ち無沙汰なのか、カリンがくいくいと引っ張り声をかけてきた。

 

「なに? あっそう言えば見事な戦いぶり、めちゃくちゃカッコよかったよ。でも、どんな経緯で可憐ウィッチに?」

「可憐ウィッチ? は知らないけど、スマイルセーラーの事なら成り行きよ。本当に私ってカッコよかった? ゼラニオンみたいに強くなれたかしら?」

「ゼラニオンより強いんじゃない? 間違いなく、ゼラブラックには圧勝だよ」

「ゼラブラック? そんな仲間はいないわよ。そんな事より……あの子たちは何者なの?」

 

 陽二は、桜の耳がぴくっと動いたのを見逃さなかった。彼女が盗み聞きをしている可能性は高いだろう。なので、下手な事は口にしない方がベターだ。

 

「俺からは話せないけど、悪い人たちではないよ。ものすごく頼りになるのは間違いないし、王妃様を助けてくれたのも彼女たちだから」

「そうなのね。生きていたのは嬉しいけど……間違いなく大混乱になるわね」

 

 

 ぼけーっと、唯に見張られ待っている将軍ゼブラは、桜を見ていた

 

「思いっきりやればよいのぢゃ、母様とアスモも見ておるし心配ない」

「そうよシア。こんなチャンス2度とないわよ! 憧れのピュアセーラーなのよ」

 

 何が『なのよ!』なのか説得力に欠ける王妃の言葉だ。なにはともあれ、桜と王妃は怒涛(どとう)のラッシュでパトリシアを説得。

 

「お母様……シア、頑張ってみる!」

「よく言ったのぢゃ! 基本的にピュアは昔のままぢゃが……」

「がんばってね」

 

 桜は、魔力操作が上手な彼女に、アレコレと手ほどきをした。

 

 △△

 

 

「待たせたの! 体調は万全か?」

「大丈夫だ。それより、約束は本当に守ってくれるんだろうな」

「モチのロンぢゃ」

「ランス! アレをこやつに渡してやるのぢゃ」

「アレとは何だ?」

「売るために拾ってきたのぢゃろう? 母様に聞いて知っておる」

 

 ピーンときたランスロットは

「断る! アレの所有権は、既に私だ!」

 と突っぱねた。すると桜は、何かが映っている玉をランスロットの目の前に取り出す

 

「こ、これは……」

「次の映画にコレを使ってみるのも面白そうぢゃ」

 

 陽二を勧誘したときに使った玉のオリジナルだ。こちらはもっとハレンチングでノーカット。ランスロットの全てが写ってると言っても過言ではない。

 

「こ、これは……卑怯(ひきょう)だぞ! プライバシーの侵害だ!」

 

 言うだけ無駄なのは分かっている。がしかし抗議はする。

 そのあとランスロットは土下座をして自分から懇願。無事、将軍ハンマーと交換してもらえた。もちろん、玉を粉々に破壊した。

 

 ―― 危なかった。これを陽二に見られでもしたら……

 ランスロットは知らない。既に彼の手には編集した玉が渡っていることを、映像を見たあとだということを……

 

「いいのか? これがあれば、将軍に金棒だぞ?」

「構わん。本気でやるのぢゃ」

 

 △△

 

「スマイルセーラー召喚(ドレスアップ)!」

「ピュアセーラー召喚(ドレスアップ)!」

 

 ピュアセーラーの魔法少女衣装(ウィッチドレス)は、スマイルセーラーとデザインは同じだが、基本色は緑。ブーツに羽根はついておらず、空中を蹴ることはできない。

 髪形も変化して、耳の後ろでまとめた薄緑のツインテールになっていた。

 

「超変身(スマイルアップ)! 全力全開(マックスハート)よ。炎剣スマイルハート!」

 

 カリンは、初っぱなから全力だ。いきなり切り札を出した。

 

「ピュアスター!」

 

 パトリシアが出した武器は、先端に正12面体がくるくると浮いている杖。単純に鈍器として使っても威力がある。

 お互いの準備が終わったところで桜が合図を出した。

 

「行くわよ!」

「来い」

 

 まずはカリンが戦う。

 将軍ゼブラのハンマーは自身と同じくらいの長さで、先端にはドラム缶大の塊がついている。

 対してカリンの剣は、剣身がピンク色の両手剣だ。

 

「たぁぁー」

 

 カリンは、素早く立体的な攻撃を繰り出した。

 スピード対決は、将軍ゼブラがやや有利。なので、挙動の定まらない立体的な攻撃で翻弄し、五分五分に持ちこもうとしていた。

 しかし1撃の強さは、体の大きな将軍ゼブラが圧倒的に有利だ。

 

 カリンは、将軍ゼブラのハンマーを上手に流し、的確に攻撃していた。だが、パワーアップした体を前にしては火力、正確に言えば踏み込みが、あと1歩足りないようである。それを見ていたパトリシアは援護を始めた。

 

「火塊の攻撃(ファイボール)ダブル!」

 

 1発はハンマーで防御され、もう1発は腕に当たり火をまき散らした。しかし火が燃え移ることはなく霧散、ダメージは小さい。

 将軍ゼブラは矛先を変え、パトリシアにあっという間に詰めるとハンマーを振り下ろした。それを、横から現れたカリンが防ぐ、と同時に避けていたパトリシアは魔法を唱える

 

「火土の攻撃(ファースドリル)!」

 

 火の着いた30センチくらいの細長い岩で将軍の足を狙った。

 太股に突き刺さり、貫通すると同時に内部を焼いた。

 

「ふんっ」

 

 気にした様子も見せず、追撃に出たカリンをパンチで吹き飛ばすと、そのままパトリシア目がけて蹴りを出した。

 

 チッ

 パトリシアは、必死に避けたものの左腕をかすった。

 

 たったそれだけで弾き飛ばされ、動きが止まってしまった。

『シア、危ない!』陽二は叫んだ。だが将軍ゼブラは、膝を着いて次の攻撃はできなかった。

 パトリシアの魔法が、思いの外大きなダメージを与えていたのだ。

 

 カリンは蹲(うずくま)っているパトリシアに、通常なら魔法陣が必要なレベル3の水の祝福(アクアヒール)を、無詠唱で唱えていた。

 

「くっくっく。(無詠唱は)ドレスのおかげぢゃ。ちなみにパトリシアの左腕……折れとるのお」

「マジかよ……怖くて見てられない」

「しっかり見ておけ。あの2人は、陽二の持っておらぬモノを持っておる。それに、魔法少女衣装(ウィッチドレス)を着ておるし、アスモも居るのでな、大怪我はないぢゃろう」

「腕が折れてるっつーの」

 

 △△

 

 将軍ゼブラは将軍散弾(ジェネラッシュ)を繰り出した。兵士のハンマーより、3倍は大きくなった将軍ハンマーから弾き出される土砂は、先程と比べ物にならない。

 

 陽二たちは、アスモデウスが張った結界に守られているので安心だが、戦っている2人はどうか……

 

「カリン任せて! 嵐の防壁(ストームバリアー)!」

 

 パトリシアが持つ杖の先から竜巻の壁が現れ、飛んでくる石や岩を風で切り裂いた。それはそのまま嵐の防壁に飲み込まれる。

 それを見た将軍ゼブラだが、なおも将軍散弾を繰り出した。

 

「お返し!暴風(ハイウィンド)!」

 

 嵐の防壁を暴風で将軍に押し飛ばした。

 嵐の防壁には将軍散弾の攻撃によって、大量の土砂が含まれている。見た目はただの竜巻だが実際は違う。大量の土砂が圧縮(・・)されていて、質量や硬さは相当の物だ

 

「将軍大攻撃(ビッグインパクト)!」

 

 それでも将軍ゼブラの攻撃で、飛ばした嵐の防壁は粉々に砕かれた。だが、破片が体に当たりダメージは与えている

 

「たわけ者が、正面から当たるからぢゃ!」

 

 桜の呟(つぶや)きは、どちらを応援しているのかわからない。

 

 将軍ゼブラはハンマーを回転させると、2人へ突っ込んだ。

 その回転は早くて、まるで球体に見えた

 

「炎刃(ファイヤーブレイド)!」

 

 カリンが炎刃を飛ばすと、弾かれずに将軍ゼブラにまとわり付いた。だが、回転を上げて遠心力で炎を吹き飛ばすと、パトリシアへ突っ込んだ。

 あの回転に巻き込まれでもしたら、骨折どころの話ではない。

 

「土壁(アースシールド)!」

 

 パトリシアは落ち着いていた。

 土の壁で坂道を作り上げると、将軍はそのまま登りきりジャンプ。空中では引っ掛ける場所がないため、回転は上がるが方向転換ができず回転は1方向。無防備な場所が生まれてしまった。

 

 1度痛い目を見たカリンが、それを見逃すはずがない!

 

「パトリシア様、力を貸して!」

「任せて、嵐(ストーム)!」

 

 炎剣スマイルハートの剣身に嵐が宿った。それに合わせカリンも魔法を使う

 

「炎嵐剣(ファイヤーストームソード)!」

 

 ジャンプ1番。空中を蹴り加速をつけると将軍ゼブラへ一直線

 

「炎嵐(ファイヤーストーム)やおい突き!」

 

 将軍ゼブラのお尻に剣を突き刺さし、体内に炎嵐を解放。

 

「うぎゃーーー!」

 

 体内に炎嵐を放たれた将軍ゼブラはピクピクと空中で震えると、体から煙を出しながら落下。地面にたたきつけられ動かなくなってしまった。

 

「カリン達が勝ったのか?」

「勝ちぢゃ!」

 

 カリンとパトリシアは、抱きつきピョンピョンと跳ねながら喜んでいた。

 あっという間の出来事だった。カリン達が勝利して嬉しい事は嬉しいのだが、陽二の中にはモヤモヤとした嫉妬(もの)が産まれていた。

 

 ランスロットは将軍ゼブラに近づくと、ボロボロになった将軍ハンマーと魔石を回収して、土に還した。

 

「シア、ステキだったわ!」

「ナーナ!」

 

 王妃とナーナは、2人に称賛を投げ掛けていた。

 

 その2人

 パトリシアは桜との魔力操作の特訓で、基本4属性の全てを使えるようになっていた。さらに変身中は、嵐属性も扱えるようになった。

 カリンは火属性と火魔法を身につけ、変身中は炎属性も操ることが可能になった。

 嵐と炎は、風と火の上位属性である。

 

 △△

 

 兵士たちを回収、寄生虫の駆除も終えた。すると

 

「ところで、パトリックはどこかしら?」

「まだ、修行(レベル上げ)からまだ帰ってきていません」

 

 そんな話を王妃とカリンがしていた

 

「これからどうしますか?」

「そうぢゃな、撮り高も申し分ないしのう……」

 

 カリン、王妃、パトリシア、ついでにナーナは、パトリックの事で話し合いをしていた。

 桜、アスモデウスは、これからの行動について話をしていた。

 唯だけは森の向こう側の町、セナドゥースの方向を見つめていた。

 

 陽二はランスロットの隣に座り、時間(スキル)を使いながら、桜に教わった魔力操作の練習をしながら考え事をしていた。

 

 ――カリンもシアも強くて格好よかったなぁ。アスモさんや唯さんは当然として………桜やランスロットは、見た目もいいし実力もある……正直うらやましい。

 俺の持ち駒は『時間』と一応『魔法と魔技』か、頑張ろう!

 

 彼女たちの戦いに魅せられ、陽二にやる気が生まれていた。嫉妬は、他人に向ければ毒となるが、自分に向ければカンフル剤になるようだ。

 

 すると桜は、ずっーと森の方ばかり見ている唯に気付いた。

 

「母様どうしたのぢゃ?」

「今、森の向こうで、何かが飛んでいくのが見えた」

「唯、どうしたのですか?」

 

 唯が何を見たのか、アスモデウスの問いかけに『様子を見に行くべきじゃ』と告げた。

『面白そうぢゃ』と桜も興味が出たようだ。

 

「んーそうですね。では、念のため様子を見に行きましょうか」

 

 彼女らにしてみれば、ちょっと駆け足で散歩に出るようなものだ。そのあと王妃やパトリシア、兵士たちを王都に送ればいいだろう。

 

 そんな話をする彼女たちに、カリンが話しかけてきた。

 

「ちょっと待ってください。もし良ろしければ、森に入ったパトリック王子を探してもらえないでしょうか?」

 

 王妃とカリンたちが話し合いをした結果、待つよりもパトリックを探しに行った方がいいと判断したようだ。

 だが、王妃を置いて行く事はできないし、連れていくなどもってのほかである。それにカリンは、変身できるからといって、森に入る自信はなかった。

 そこで、ゴブリン将軍が恐れていた桜たちに依頼しようと、パトリシアが提案したのだ。

 

「桜ちゃん、お願いできる?」

「2代目に頼まれれば、断れんのぢゃ!」

 

 ここに、ピュアな絆が生まれた。となれば決断は早い。

 

「よし、作戦名の発表ぢゃ!『母様は見た!ついでに王子を捜索』ぢゃ!」

 

 王子をついで扱いにしちゃ駄目だろう。しかしパトリシアたちは、全く気にしていなかった。

 

「ありがとう桜ちゃん! 流石はゼラニオンだね!」

 

 その言葉に大きく反応したのはカリンである。彼女は勢いよくガバッと立ち上がると大興奮。

「誰です? 誰がゼラニオンなのですか!」

 その姿を見た王妃は『ごめんねぇ』そんな感じで、アスモデウスに手を合わせていた。

 

 △△

 

 パトリシアの失言で、ゼラニオンの正体がバレてしまった。

 陽二からしたらどうでもいい話であるが、興奮して一歩も引かないカリンは、なかなか見物(みもの)である。

 

 これに気を良くしたのが桜。カリンはスマイルセーラー。言わば同業者なので、隠す必要がどこにあるだろうか。なので結局、目の前で変身するはこびとなった。

 

「ヒーロータイム!」

「乙女戦闘服召還(ゼラニューム・ドレスアップ)!」×4

「えっ?」

 

 カリンは、変身シーンを生で拝めると喜んでいた。

 しかしどうして、彼が憧れのその場に居るのか。変身が終わり女の子になった姿よりも、ゼラニオンへと変身(・・)した事に疑問と羨望を感じた。

 

「どうして陽二が変身できるのよ! ゼラニオンなのよ!」

「ゼラニオンなのよって言われてもさぁ……メンバーだし」

 

 何が面白いのか、桜は口元をニマニマしながら陽二たちのやり取りを見ていた。

 

「でも変ねぇ。サラリーちゃんって、もっと胸が大きいはず……それに、残念無念のランリーさんの胸が……何か詰めてる?」

 

 陽二はピーンときて、映画館でカリンが呟いた言葉が過った。

 

 ―― ははーん読めたぞ! 俺に偽乳特戦隊は通用しないから気付かなかったけど

 

「おい桜。おまえ加工(いじって)るだろ?」

「な、な、何の話ぢゃ」

 

 桜は『ひゅーひゅー』と、お約束の鳴らない口笛で誤魔化し始めた。それを見た陽二は

 ―― 小生意気な幼女をギャフンと言わせるチャンス!

 意気揚々と追撃の一手を繰り出そうとしたが

 ドンッ

「ちょっと、あんた邪魔」

 と、カリンに突き飛ばされた。

 

「サ、サイン下さい!」

「ふむ。よかろう」

 

 助けられた形になった桜は、陽二を横目でニヤリ。気分よくサインを書くと、ランスロットやアスモデウスにも書くように勧めた。

 

 ―― えっ!? カリンって、色紙とペンを持ち歩いてんの?

 

 水を差され追撃を諦めた陽二は、カリンの準備のよさに驚いたものの、サインを書くため『仕方ないなぁ』的なノリで桜の横に並んだ。

 

「ありがとうございました。大切にします!」

 

 はち切れんばかりの笑顔でお礼をしたカリンは、色紙を収納スペースへしまった。

 次は俺の番だと、伸ばしていた陽二の手に哀愁が漂った。

 

「あ、あれ? 俺のはいいの?」

「あら、あなたは誰だったかしら……女装マン?」

「ゼラ・ブラックなんですけど……」

「ふーん。別にいいわ」

「なっ! 期待の新人よ? 貰っとかないと後悔するよ?」

「お気持ちだけで結構です!」

 

『つーん』とそっぽを向かれてしまった。

 ―― まっ、まあ、まだ実績もないしね……

 ひとり落ち込む陽二に

「わーはっは! 300年早いわ!」

 と桜がヤジを飛ばした。

「うるせーよ偽乳。死んでるっつーの!」

 

 何はともあれ期待の新人はそっちのけで話は進み、王妃含むパトリシアたちは、兵士たちの容態もあってここで待機だ。可憐ウィッチ2人の魔力も補充済みなので、戦力は十分。守りは固い。

 

「よし! 最短距離で突っ切るのぢゃ。ランス、よしこを任せた」

「無論だ、任せろ!」

「では、私と唯が先頭で露払いをしますね」

「とうとう、よしこ呼ばわりかよ! せめて陽子だろ?」

「よしこ、ゼラニオンの邪魔だけはしないでよね」

「カリンまでよしこ呼ばわり……」

 

 




ちょっと忙しく、執筆する時間がとれなくなってきました。
という訳で、しばらくお休みします。
再開を気長にお待ち下さい
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