王都にある地下施設。そこに転移門専用の大きな部屋というか空間がある。副領主ヨーシンと共に陽二がその施設にある転移門へ登場すると、ひとりの女性が待っていた。
「ヨーシン殿、お待ちしておりましたわ」
「これはカリン様。お久しぶりです」
その女性は、身長160センチくらいの細身で色白。腰まである長い黒髪が特徴的な女性。しかし幼さも残っており、陽二の目から見ても十代後半に思えた。そして、今まで目にした女性の中でも、間違いなくトップ5に躍り出るであろう美しさだった。
しかしながら。それよりも陽二が注目した点は、着ている服装。水色を基調とした、どこぞのアイドルが着ていそうなセーラー服で、布地に厚みがあるのか薄くヒラヒラとした感じは全くしない。その代わり、着ている人物も相まってどこか神秘的モノに感じた。
そんな服装に目を奪われていると、陽二の不躾な目が気に触ったのか『ん、んん!』と女性は咳払い。
――失礼だったか?
すぐさま女性の顔に目を移す陽二。初っ端からやらかしてしまったらしい。
「初めまして異世界人様。本日から、あなたのお世話係りに任命されたましたカリン=レットイルですわ。お名前を伺ってもよろしいかしら?」
目を向けた陽二に自己紹介を済ませたカリンは、まぶしい笑顔と共に握手を求めてきた。早くもボディタッチのチャンス到来か?
「初めましてカリン様。中山陽二と申します、陽二とお呼び下さい。以後、お見知り置きお願いします。とてもすてきな方でしたので、思わず目を奪われてしまいました」
「ふふ、ありがとうございます。お上手な方ですわね。私の事はカリンで結構ですわ。陽二様、分からない事がありましたら、何でもおっしゃってくださいね? よろしくお願いしますわ」
飛び付くように握手をした陽二は『様』付けで呼ばれた事もあってか、口から思うままに自己紹介をした。あとから思い出したら赤面必死だろう。
しかし慣れているのか、カリンは軽く返す。
「それでは私は、大臣に報告しに行きますので、陽二君をお願いしますよ」
「わかりましたわヨーシン殿。では陽二様、私について来てくださるかしら?」
と、カリンは陽二の手を引いてきた
「ヨーシンさんありがとうございました」
「それじゃあの」
陽二はヨーシンにお礼をして、カリンと一緒に歩きだした。
*
転移門の部屋を出て、カリンに手を引かれながら石造りの階段を上ると、カーペットが敷いてある廊下まで出た。
廊下には等間隔に花瓶が置かれ、壁には剣やオノが飾られていた。窓の外には中庭があり、木や花などの植物が見える。高さから3階くらいだろう。
反対側にはドアが等間隔で並んでおり、ドアには文字が書いてあるが、陽二には読めなかった。
その道中、カリンに服装のことを尋ねる。
「その服、学校の制服ですか?」
「違いますわ。私の家にこの服と似たデザインの服がありまして、それを元に作られた特別な服なんですわ」
「そう、なんですか……とても似合っていますよ」
「ありがとうございます。あら? 先ほど目を奪われていたのは、私じゃなくて服の事だったのかしら?」
「正直、両方です」
――まあ、見知っている制服と似ているからって、どうでもいい事か……
「こちらが、お部屋になります」
部屋には高価なダブルサイズのベッドと、丸テーブルに椅子が2脚。風呂トイレなしのシンプルなワンルームで、窓の外には兵士が訓練する広場や町の風景が見える。
陽二は部屋に入り軽く見回すと、あらためて自己紹介をして『様』付けは勘弁してほしいとカリンに頼む。するとカリンは快く了承してくれて、普段の口調で話すことになった。
カリン=レットイル17歳。
王都から北にある町、ソラマン領主の娘。
王都には魔法の勉強に来ていて、お客の世話役も大切な勉強とのこと。
カリンの事を聞きながら、メイドさんが運んでくれたお昼ご飯を一緒に食べる。メニューはパンとサラダとスープ。
「次は、今後の予定を説明するわね」
「うん、よろしく」
カリンは紅茶をすすり、口を
「まず最初は
「謁見って作法とかあるのかな? 何も分からないんだけど」
「なんとも言えないけど、陽二の謁見は会議室で行うらしいわね。先に入室して、王が許可を出されるまでは口を開かずに、質問にだけ答えればいいんじゃない」
「分かった」
「そのあとは自由よ、王宮を案内してあげるわ」
「頼むよ」
「明日なんだけど……午前中は各室長とのお話。この部屋に来てくださるから、待っていればいいわ。午後からは自由時間になるわね。私と一緒なら王宮の外に出てもいいわよ」
「それなら、町を見てみたいな」
「一緒ならいいわよ?」
「デート!?」
「ち、違うわ。何を言ってるのかしら、あくまで世話係としてよ」
「ですよねー」
「へぇ~、ずいぶん雰囲気が変わったじゃない」
「お互いさまじゃない?」
「そうね。そう言えば陽二って、歳はいくつなの?」
「よ……17歳だ」
――あぶねぇ、今は17歳だった。別にアレコレ狙ってるわけでもない事はないけど……年上に見られてかしこまられても面倒だしねぇ
「同い歳なのね。良いお友だちになれそうだわ、よろしくね!」
そう言って笑う彼女は、キャラでも作っていたのか初めて見た印象とは違い、きれいなんだけど、とてもかわいらしい少女に見えた。
「もちろん。こちらこそよろしく」
早速お友だちをゲットした陽二。それも、こんなにかわいい女性である。テンションは爆上がりだ。
そこで、カリンが何を勉強しているのか思い出した
「カリンは魔法を習ってるんだよね?」
「そうよ、私は水魔法が使えるわ」
「おお! 見せてもらってもいい?」
「いいわよ。何にしようかしら?」
カリンは立ち上がり、窓に向いて指を伸ばすと、なにやら聞き取れない言語で
「****.*****.******
すると、右手人差し指から10センチ程の細長い水の塊が『ブシュッ』と音を立て、ものすごい勢いで窓の外に飛んでいった。
―― ほとんど見えなかった……
「今のすごいね。アクアニードル?」
「そう、水系レベル1の攻撃魔法よ」
―― どうして水が出るのか、その原理は全く理解できないけど、殺傷力高そうだな……すごいな魔法かぁ……ん?
「そう言えば『イガネオ』も魔法なんだよね?」
「勇者からの
「パレット?」
「魔法が使えない人でも魔法が撃てる道具よ。あらかじめ魔法をこめた弾、
「いいな、それ欲しい」
「
なるほど、機会があれば見に行こう
「スノームってどこにあるの?」
「王都から北東にあるわ、魔車ですぐよ」
「魔車?」
「馬の代わりに魔力で動く荷車のことよ、馬車の3倍のスピードで走るからスノームなんてあっと言うまよ。その代わり慣れていない人だと大変なことになるわね……でも本当に、こちらの常識がわかっていないのね。あきれるわ……」
「異世界人なんだからあたり前じゃない?」
「ここに来るまで、何を見ていたのかしら?」
カリンの視線が痛い。だが、分からないことがあったらその都度聞く姿勢は変えない。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥だ。ちなみに、教えるは一時の優越感。教えぬは一生の優越感ってのも何かの本で読んだ。
「最後にこの国のお金のことを教えてよ」
この国のお金は4種類。いろいろな物の値段をカリンに聞いた結果、日本円に換算すると
銅貨100円
銀券1000円
銀貨10000円
銀貨100枚で金貨1枚、で決定した。