駆けるその顔、鬼神の
舞い散るその砂、風神の如く
過ぎし砂浜、凄惨の如く
ハヅキの元へ向かっていた唯は、伝令を受けた多勢のゴブリンと鉢合わせた。取るに足らない問題であるが、得た情報は大きかった。
『女』と『催し物』
その情報を得た唯は、ギアを最大限に上げ、猛スピードで走り出した。その後方には、地獄絵図のような光景が広がっていた。
スピードをアップしてから僅か数十秒で、彼女は、視界に標的を捉えた。すると彼女は、スピードを保ったまま2段蹴りの要領で軽くジャンプすると
シュッシュッ!
履いていたピンヒールを蹴り飛ばした。
その2つのピンヒールはスピードを落とすことなく、群れる標的の最後尾までを貫く事になり、その結果、最低でも500ゴブリン以上の命が、あっさり絶たれる事となった。
軽くジャンプした彼女は、そのスピードのまま、捕らえた人魚に意識を奪われ、襲撃を受けたと、まだ
彼女は、ライダーキックのような姿勢で、群がりの手前に着地。
ドッシャャャア!
その着地の勢いは、地面に着いても衰えることはなく、砂や地面、その上にいた標的のゴブリンたちもろとも、弾き飛ばしてしまった。
地形の変わったその場に残ったのは、地形を変えた張本人と、狙い通り垂直に舞い上げて、救助した人魚だけだった。
場所は変わって、その天変地異にも似た着地の余波は、別の人物も巻き込んでいた。
セイレーンのヴァイオレットだ。
彼女が決死の覚悟で『いざ、行かん』と、仲間の人魚を助けるため飛び込もうとした矢先だった。空中の彼女に向かって、砂やら土やら、ゴブリンが、もの凄い勢いで飛んできたのである。
その余波に巻き込まれた彼女も哀れ、犠牲者の1人になってしまった――――
「そんな間抜けじゃないけぇ!
この黄金鱗翼とは、翼の強度が格段に上昇するスキルであり、攻守の両面で役立つ。それを使った彼女は、翼で三角の形を作り頂点を前に向ける事によって、体を守りつつ衝撃を両側に逃がそうと考えた。
しかし、健闘むなしく勢いに負け、さらに上空へ押し上げられてしまった。
「じゃゃゃゃゃけぇぇぇぇ!」
ところが、踏ん張りの効かない空中に居たのが良かったのだろう。結果的に見れば、かすり傷程度のダメージを受け困惑しただけで済んだのだ。
気を取り直したヴァイオレットは、翼を広げると様子を確かめるように、浜辺へ降り立った。
△△
その頃、穴の中に居る地形を変形させた唯は、少し戸惑った表情で、救出した人魚を見つめていた。
ハヅキが襲われていると思って、勢いよく飛び込んできたのに、これいかに――――
「ハヅキはどこじゃ?」
「――あ……」
唯の問いかけに対して、救出された人魚は、まず礼を言おうと考えるも、全身に回った毒のせいで、体を動かすことも、喋ることもできなかった。
―― 取りあえず、海に投げ込んでみるかのう……
人魚と言えば、水じゃろう。
人魚の様子に不自然を感じ取った唯は、皿の乾いた河童と同じく、人魚も水を与えれば体調を取り戻すだろう。と、珍しく精彩を欠く、ズレた考えを導きだした。
なので、海に向かってジャンプ。
まさに時だった、穴の上に降り立ったヴァイオレットに、声をかけられたのは
「もしかして……唯殿か?」
ヴァイオレットに気づいた唯は、人魚をお姫さま抱っこしたまま、ヴァイオレットの前へジャンプした。
―― ん??
名前を呼ばれたと言うことは、知り合いの可能性が高い。そう考えヴァイオレットの姿を確認するも、全く見覚えがなかった。
ジー。
しかし、目に留まったブツを見て、ピーンと閃いた。
唯は、腕の中にいる人魚と、目の前のヴァイオレットを見比べると納得したのか『ほれっ』と、人魚を手渡しながら口を開いた。
「500年も経っておるのに、まだ生きておったか。それで、その姿はなんじゃ? 進化か? 相も変わらず
そう言いはなった唯は、少し目線の上にあるヴァイオレットと人魚の胸をキッと
唯とヴァイオレットは、顔見知りである。その昔、水の聖霊サラデインが、人魚たちに卵を授けに行った時、2人は顔を合わせていたのだ。
顔見知り程度ではあるものの、唯は個性豊かな同行者たちの中でも特に印象深く、ある程度やり取りした事もあって、ヴァイオレットはハッキリと覚えていたのだ。
唯の方はというと、
とんでもない記憶力は、顔よりも乳で覚えていたのだ。
「久しぶりじゃけぇのう。しかし、会うなりデブとは……
デブと刺激されたヴァイオレットは、あえて体を揺らし、ぷるんぷるんのおっぱいで唯を挑発した。すると、抱かれている人魚のおっぱいも、ぷるんぷるんと、まるでプリンのように揺れているではないか。
「ふんっ。デブのくせに
それを聞いたヴァイオレットは、取り乱しているように見える様子から、あの助けた女性は、唯と相当近しい間柄なのだと理解した。
「あの女性と知り合いだったのけぇ。それなら無事とは言えんが、保護しとるけぇ。しかしありゃあ相当ダメージが深かった……パールの魔法でも治せるかどうか――」
取りあえず唯は、保護されたと聞いて安心した。しかし、状況はすこぶる悪く、余談も許されない状態だ。
「今すぐに案内せい。と言いたい所じゃが……」
口を閉じた唯が、周囲を鋭い目で見回すと、その後をヴァイオレットが引き継いだ
「こいつらの始末が、先けぇ?」
唯とヴァイオレットは、ゴブリンたちに囲まれていた。その後ろには、恐るべし兵器である『筒』を構えたゴブリン将軍も控えていた。
当然、唯とヴァイオレットも大分前から気付いていて、知らんぷりをしていたのだが……準備を終えたゴブリンたちは、ぼちぼちしびれを切らしそうだった。そう言う訳だ。
とそこへ、海面の上を2つの物体が飛んできた。
そう、数多の血を吸ったであろう唯のピンヒールだった。
ゴブリンたちは不思議そうに、そのピンヒールが、彼らの仲間を襲った攻撃の正体とは気づかずに、唯の目の前に綺麗に並んで着陸するまでを眺めていたのだ。
その注目が集める中、唯はピンヒールに足を通した。
ズボッ
その瞬間、ヒール部分が砂に埋まってしまった。これでは、本来の役割を果たせないではないか。
「ふんっ」
その声とともに、ズポッとヒール部分が砂中から現れたが、見えない何かで支えられているのか、地面に触れていない。
まあ、別にいいだろう。これで足も綺麗に見えて、身長も高くなった。
さあ、戦闘準備OKだ。
「背伸びけぇ? 脱げばいいじゃろうが」
「デブには分からん。様式美というやつじゃ」
「それを様式美と言うかは置いといて、ワシは怪我人を抱えておる。1人で大丈夫けぇ?」
それを聞いた唯は、ビシッと、ヴァイオレットの下乳に指を差し込むと、親の敵を
「
―― あーそうそう。面倒な人じゃったけぇ……
遠い記憶を思い出したヴァイオレットは、呆れ顔だ。
「変わらんのぉ。はいはい唯姉さま、唯姉さま。じゃあ、あとは頼みますけぇ」
「おぬしに、その呼び方を許可した覚えは……」
「歳けぇ? ボケるのはっ……」
その瞬間ヴァイオレットは、殺気を感じて口を閉ざした。
少し調子に乗りすぎたようだ。唯の目が、ヤバイ方向でヤバかった。
「尊敬する唯姉さま。よろしく頼みますけぇ」
なので、すぐにヨイショして誤魔化した。
「まあ良い。ちゃっちゃっと済ますのでな、妾の華麗な後ろ姿でも眺めながら、砂粒でも数えておればよい」
「……」
―― 眺めながら? それは高度じゃけぇ……
ヴァイオレットは思った。
△△
「長らく待たせたのぉ。ハヅキに何をしたのか知らんが――――
その言葉を皮切りにして、
その瞬間ヴァイオレットは『砂粒でも――――』などと言われたが、なんの冗談じゃけぇと誰よりも早く動き、砂浜と宙を蹴って、海上に飛び立った。
棍棒片手に唯を攻撃するゴブリンたちの後ろから、筒持ちのゴブリン将軍は、照準を合わせていた。
その射線は訓練でもされているのか、うまいこと狙えるように空けられていた。そのゴブリンたちの間を縫うように、弾が飛ぶ。
―― ふむ。
唯は
両手でガチッと
回転する弾を押さえ込むのに、手の平にかすり傷を負ったくらいだろうか。
そこでふと、ゴブリンを蹴り飛ばしながら唯は思い出した。桜は、ジェームス隊の砲撃に熱心だったと。ならばあの筒は、いい土産になると。
その間にも、ゴブリンたちの棍棒は、唯を狙って振り回されている。前後左右、あらゆる角度から攻撃するさまは、よく訓練された、統率の良さを見せていた。
砲弾を収納した唯は、両手に指鉄砲を作ると、素早く全面発射でゴブリンを撃ち抜き、後方にジャンプ。
しかし、しつこく数も多いのですぐに囲まれてしまう。それでもゴブリンたちは、射線だけは維持していた。
辟易するほどのゴブリン棍棒と、間を抜けて来る弾のコンビネーション。
棍棒でダメージを受ける事はないだろうが、もし、弾が当たってしまったら……ダメージを受けるかもしれない。
そう考えた唯は、ゴブリンの動きに合わせて、筒が使えない位置取りを心掛けて動きだした。
その時だった。
「ショットガン・フォーメーション!」
その声と同時に、唯の蹴りを受けたゴブリンが
近づくゴブリンに攻撃すれば爆ぜて、その隙をつき特攻を決めるゴブリン。流石は数の暴力である。1ゴブリン、2ゴブリンと、足枷重りの如く、次々と唯の動きを阻害するのに成功していた。
もう唯の体は、まとわりつくゴブリンや、その体液や肉片でべっとりだった。
「たわけどもがっ! 妾に触れるでない!」
全身から魔力を放ち、周囲のゴブリン全てを、吹き飛ばそうと力を込めた。しかしその前に、周囲にいたゴブリンが連続して爆ぜた。
その隙を付かれてしまった。
ゴブリンにショットガン・フォーメーションを指示したゴブリン将軍は
ハンマー係。
素早い筒交換役のゴブリン将軍。
筒持ち&照準係。
弾を込めるゴブリン。
に分かれて、連続で撃つフォーメーションを敷いていた。
唯は、ゴブリンの自爆特攻&抱きつかれたショックで油断していた。その唯に、とうとう弾がヒット! またヒット! さらにヒット!
「よし、ドンドン撃てー!」
相手は、天変地異を起こし、ゴブリンたちを1撃で一蹴した相手だ。そんな相手を捕まえるとか、催し物の獲物にするとか考えられない。そんな危険な相手は、殺せるときに殺すのが鉄則だ。
「オラ! そりゃ」
被害は大きかったが、所詮は量産型の部下である。時間さえあれば補充は可能だし、自分たちが生き残るのが、最重要課題なのだ。
作戦が上手く運んだ事で、ゴブリン将軍たちは俄然楽しくなってきた。結局、女を殺すのも凌辱するのも、得られる愉悦と爽快感は同じなのだ。
「そりゃ! そりゃ!」
ハンマーで叩く、叩く、叩く!
筒を、セット、セット、セット!
弾を、込める、込める、込める!
照準を合わせて、持つ、持つ、持つ!
ドンッ! ドンッ! ドンッ!
ぐちゃ! ぶぢゃ!
「ん? ぶちゃ?」
「どうした、手を休めるな。はよう打たぬか」
「えっ………?」
ハンマー係だったゴブリン将軍は、調子に乗ってリズミカルにハンマーを振るっていたので、今頃気づいて己の目と耳を疑った、
筒かと思っていたのに……
今しがた打った感触と音は……
―― あそこに転がっている物は何だ?
仲間のゴブリン将軍の陥没した頭だった。その前のゴブリン将軍の頭は破裂したのか、存在を確認できなかった。
当然その犯人は唯だった。
素早くあの場を抜け出した彼女は、ここに来て弾係のゴブリンを瞬殺すると、筒の代わりに筒交換役ゴブリン将軍の頭をセット、2回目は、筒の置く場所に筒持ち係のゴブリン将軍の頭を押したのだ。
つまり、ハンマー係のゴブリン将軍を残して、全てのゴブリンが殺されていた。
ゴキッ、ベキッ
唯は、ハンマーを持つゴブリン将軍の腕をへし折ると、膝を正面から蹴り込んだ。
腕と膝が、ありえない方向に曲がっていた。これは痛い
「ぐぎゃぁぁぁぁー」
もがき苦しむゴブリン将軍をよそに、唯は3本の筒を見事に回収したのだ。
「ふむ。いい土産ができたのう」
そんな呟きを漏らす彼女の周囲には、首チョンパされたゴブリン将軍の死体を筆頭に、ゴブリンたちのバラバラになった、凄まじいスプラッターな光景が広がっていた。
その唯の全身にも、肉片やら訳の分からない物がベットリと付着していたのだ。
「まったく迷惑な奴らじゃ」
「ワシが、綺麗にしちゃるけぇ」
パールのところへ戻らず、どこかで唯の戦いを見ていたのだろう。人魚を抱いたままのヴァイオレットが、唯の元に降りてきて言った。
「ふむ、任せた」
「頑固な汚れには、泡が1番じゃけぇ」
むにゅむにゅっと、なにやらヴァイオレットが魔法を唱えると、唯の体を泡が包み込んだ。
△△
髪を乾かし終えた唯は、
捕まえたゴブリン将軍は、ヴァイオレットの手によって、ゴブリン特製の網で拘束済みだ。なので後始末は、浜辺に散らばる死体から腕輪の機能で魔石を回収して終わりだ。
ゴブリンの死体は、そのままでも大丈夫だろう。
脅威となる唯が居るので、出て来ることはないが、騒ぎを聞き付けた飢えた魔物が、森のあちらこちらから、ゴブリンの死体を狙っているのだから……
数日もしないうちに、死体ひとつない綺麗な浜辺に戻っているだろう。1カ所、深い池みたいになっているが、自然と砂が流れ込み、数日で元に戻るはずだ。
「ヴァイオレット!」
そこへ、様子を見に来た人魚が現れ、声をかけてきた。最悪を想定していただけに、その表情には嬉しさが溢れていた。
唯たちは、その人魚の案内で沖の岩陰へ場所を移した。そこに、パールたちが隠れていたのだ。
当然、拘束したゴブリン将軍も強制連行だ。彼からは、ゴブリンダンジョンの情報を引き出す必要があって、そのまま放置しておけば、魔物の餌になってしまうからだ。
なので現在は、近くの岩場に縛り付けてある。
ハヅキは人魚の休憩所の上に横たわっており、シャボン玉みたいな泡は解除されていた。どうやら起き上がるのは無理そうだが、なんとか会話ができる程度には回復していた。
その姿を見て、唯は胸を撫で下ろした。
その横では、唯が助けた人魚の治療が始まっていた。先に毒にやられた人魚もそうだが、毒の程度は低いらしく、あっさり治療は終了した。
それを見届けた唯は、パトリックが待っているので、ハヅキの運搬を依頼した。当然、パールたちは快く了承したのだ。
人魚の休憩所をもう2つ作って、その上に唯と、捕虜にしたゴブリン将軍を乗せて進む事になったのだが、唯はヴァイオレットに頼んだ。
「すまぬが、この娘と2人で話がしたい。妾を乗せる人魚の休憩所を操縦するのは、この娘1人で頼む」
という訳で、唯を乗せた人魚の休憩所は、1番最後。操縦するのはパールだ。
「おぬしがサラデインの娘。人魚姫じゃな?」
唯は、ハヅキを治療してくれたパールに、心からの感謝を伝えると、そう問いただした。
「そうなの。パールなの!」
なぜか唯は、カクッと力が抜けてしまった。
「そ、そうか、妾は唯じゃ。ハヅキを治療してくれた礼じゃ、妾の事は、唯姉さまと呼ぶがいい」
「分かった。唯ちんなの」
「な、なにを聞いておった。3枚におろされたいのか?」
キッと睨みを
そんな彼女の態度に、臆することなくパールは呟いた。
「きれいな髪。瞳も綺麗なの……」
パールは、睨みを利かす彼女の髪の毛や瞳の色に魅入っていた。完全に顔を出した月。その光が反射するパールの髪も、負けず劣らず美しいのだ。
「くっ、やはり胸に栄養を取られた
とは言え、自慢の髪や瞳を綺麗と言われて、唯もまんざらでもなかった。
唯は、パールの頬を、ペシペシと軽く叩いた。
「パールよ、妾の話を良く聞くのじゃ」
パールは、はっと我に返った。
「唯ちんの?」
「妾、唯姉さま」
唯は、自分を親指で指した。それを見たパールは、コクッと頷いた。
「唯ちん、ダメッ!」
ダメのところで腕をクロスして、バツ印を作り強調。
それを見たパールは、ウンウンと頷いた。
ちゃんと理解してくれたようだ。そう感じた唯は話を続ける。
「言うことを聞かない、3枚におろす。パール、食べられる」
パールを指差すと、手刀でシュッシュッと2回切る真似をした。次に、指をお箸に見立てて、刺身を掴み口に放り込むジェスチャー。それも自分の舌を、まるで、本当の刺身みたいに挟む細かい芸まで披露した。
「食べないで、なの」
それを見たパールは、涙ぐみそうになるが
ピーン!
陽二とのやり取りを思い出した。
「パールが、
「なんでやねん!」
バシッ
陽二が苦し紛れに出した言い訳
『かわいいから意地悪を言った』
を知るはずもなく、パールの言葉の意味が全く分からなかった唯は、思わずパールの頭に、切れのよい良い音を響かせる平手打ちを、してしまったのだった。
△△
その後、泣き出したパールを優しく
叩いてしまった後ろめたさも合わさり、色々と根負けして諦めた結果、話を続けた。
人魚姫パールは、この世界に初めて誕生した『水の聖霊』サラデインの卵から産まれた子どもだ。
ナーナの事もハッキリしていない今、司に繋がる可能性があるのなら、どんなに細くても情報収集すべきなのだ。
と言っても、契約者の本条司と聖霊サラデインが、チョメチョメしてできた卵ではなく、信頼関係の賜物だと、唯はサラデインから説明を受けていた。
聖霊の卵を簡単に言えば、サラデインの力が詰まった物だ。なので、例えばサラデインの現状とか、他の聖霊の事とか、何か知ってる、もしくは感じるのではないか?
唯は、司に繋がる情報があれば……そんな期待をもって、パールに問いただしたのだ。
ところが、人魚姫パールから得られた情報は、何ひとつ司や聖霊に関係する物はなかった。
要するに、パールはポンコツだった。
ただし、パールの口から意外な人物の名前が出た。陽ちんこと、陽二だ。
陽二がパールに何をしたのか、人魚たちと何をしたのか、出るわ出るわ。
唯は、怒りも呆れも通り越して、殺してしまおうかと本気で考えた。そして、ランスロットが陽二に向ける気持ちを考え、頭が痛くなった。
それは、パールがこう説明したからだ
人魚姫に種を授けること=人魚姫と結婚。
そして、その話を聞く前に『妾は、陽二の居場所を知っとる』とパールに教えており『会いたいの、唯姉さま!』その言葉に、思わず2つ返事で了承していたのだ。
なので、今さら約束事を覆す事はできない。
―― ふう……
心の中でため息を吐いた唯は、自身も巻き込まれた経験から、ハーレムと呼ばれる物は大の嫌いである。できれば、ランスロットには同じ目にあって欲しくはないが、すでにゾッコン。いくら言っても手遅れランデブーなのだ。
「ハヅキ!」
パトリックの待つ浜辺に到着したようだ。唯は、駆けつけるパトリックの姿を見ながら
―― 本人同士で、ケリを付けさせるしかないのう……
と、3人が会する場を設ける決意をして、深いため息をついた。