陽二は、カリンの案内で映画館にやって来た。入場料は、銅貨1枚と財布に優しい。さらに銅貨1枚プラスすることで、飲み物とお菓子が付いてくる。映画と言えば、ポップコーン。
「私、毎回この映画を見てるのよ。今回はどんなお話なのか、楽しみだわ」
「毎回この映画を見てるって事は、シリーズ物なの? 面白いの?」
「見てのお楽しみよ! 場所は早い者勝ちだけど、どこでも同じだしね」
映画館の中に入ると、外見から想像できないほど広く、野球やサッカーが余裕でできるほど。
しかし、スクリーンも客席もないただの広場。イスに座っている人もいるが、ほとんどの人は地ベタに座って、映画が始まるのを待っていた。
―――― えっ?
イスの少なさに驚いた陽二は、カリンに問うた。すると、これが当たり前の光景だと言うではないか。
陽二の常識で考えると、映画館で映画を見ると言うのは、座席の購入である。ひと昔、それこそ陽二が幼い頃は、満員の映画館で立ち見なども確かにあったが……
そんな事を考えていると、ものすごい爆発音が鳴り響き、周囲が真っ暗になり主題歌だろうか、音楽が流れてきた。
すると『始まったわ!』
と、カリンが声を発したと同時に、中央の空間に巨人が3人現れた。
――――うわっ、でか! な、なんだ?
と、驚いているうちに、周囲の風景がどこかの町並みに変わった。
―――― なるほど理解した。ここの空間全部がスクリーンなんだ。それにしても、すごい技術だ。まるで、映画の中に入ったみたいだ。
未知の技術に驚く陽二は、周囲をキョロキョロ。そして、目の前に立ちつくす、等身大の女の子3人組に目を向けた。先程、巨人と勘違いした3人組のようだ。
左側の10代後半と思われる女の子が、アスリー。
青みがかった艶のある黒色の髪で、ふわふわ感のあるボブカット。少したれ目で、優しそうな感じが印象的。
上着は黒のワンピースタイプで、足首まである長いスカートが特徴的なメイド服。肩口や
胸元の開口部には、ボタンの代わりに白い
ちなみにメイドカチューシャはつけていない。
関係ないが、胸がとても大きい。
真ん中の小さい女の子は、サラリー。
髪は薄い赤色のサラサラしたショートヘアー。黒い瞳で、とてもかわいらしい。小学校低学年くらいに見える。少しつり目で、イタズラっ子っぽい印象を受ける。
ゴシックドレスとでも言えばいいのか、基色は黒。胸元に、髪色の大きなリボン。腰の下に広がるスカートは、細かなデザインの黒と白のレースが何重にも重なっている。
他にも細かなデザインがちりばめられているのが、説明できない。
腕には、肩まである黒いロンググローブに黒いエナメル質の靴。
この少女が3人のリーダー。
関係ないが、絶壁だ。
右側に居るのが、少し大人っぽい女性でランリー。
水色っぽい青髪で、腰近くまである長いポニーテールと青い瞳が特徴的。
服装はアスリーと同じメイド服だが、膝上のミニスカートが恥ずかしそうだ。
アスリーは確認できないが、ランリーは白いストッキングを履いている。
関係ないが、立派なおっぱいをお持ちだ。
―――― ツインタワー!
△△△
体に感じる振動や爆風の熱。目の前にあるリアルな人物映像と触れられそうな距離感に、あたかも映画の世界に入ってしまったかの様な
―――― マジですげェ……その事に感動していると
「サラリーちゃんって、小さいのに胸が大きいのよね……ランリーさん……小さくてもガンバレ!」
そんな内容の声が、カリンから聞こえた。
―――― サラリーちゃんの胸が大きい? ……いやいや、絶壁じゃん。それにランリーさんが小さい? ……立派なおっぱいを持ってるじゃないか!
カリンの
△△△
この3人は、ゼラニオンと言うヒーローだ。内容は、戦隊モノと魔法少女モノを足して2で割った感じ。
悪の大王サターンが、人族の住んでいる国を手に入れるために、次々と魔物を送り込んでくる。魔物は人族の姿に化けて、窃盗や
それを見つけて退治するのが、彼女らゼラニオンのお仕事だ。
今回の映画では、盗賊バージョン。
商人の馬車が襲われ、馬車ごとさらわれたのだ。
ゼラニオンは、盗賊たちのアジトを突き止めて潜入していたが、盗まれた馬車を発見したところで、運悪く盗賊に見つかってしまった。
そう、お約束である。
「おまえら何者だ! それを見られたからには、生かしては返さんぞ!」
「サラリー見つかってしまったぞ」
「サラリーちゃんが、馬車の中にあった物をつまみ食いしてるからですよ?」
「むぅ、気づかれてしまっては仕方があるまい。ぢゃが、証拠は見つけた。今さらコソコソする必要はないのぢゃ!」
馬車から、
だが、そこに待ち構えていたのは盗賊の大集団
「ぐわーはっは! 引っかかったなゼラニオンどもめ! おまえらが来ると分かっていて、
盗賊のボスだろうか、体長5メールはある
「なっ、なにぃ!
大げさに驚くサラリー。その姿をみて、ニヤッと笑みを浮かべたボスが
「てめえら、やってしまえ!」
「「「おお!!」」」
なぜか盗賊たちは、黒い全身タイツを着た戦闘員に変わっている。総勢30名。目出しマスクを被り、額には『サ』の文字が書かれている。おそらく『サターンのサ』だと思われる。
「キー! キーキー! キーキー」
突然、言葉を話せなくなった戦闘員たちは、3人に襲いかかる。
その時だ! ゼラニオンの3人は、戦闘員の突撃を避けるようにジャンプ。そのまま、驚異的なジャンプ力で建物の上に着地をきめる。
「ふん。戦闘員と
腰に手を当て、ふんぞり返りすぎて後ろに倒れそうなサラリー。その後ろで、さり気なくアスリーが支えているのが見える。
「まあ、サラリーちゃん。ウソばっかり」
サラリーの頭を、優しくなでるアスリー
「サラリー、ウソは駄目だ! 子供たちも見ているんだぞ?」
サラリーのほっぺに指を食い込ませるランリー。2人してサラリーを
「ウ、ウソではないのぢゃ! つまみ食いをしておったのも、計算済みぢゃ!」
2人の手を払いのけながら言うサラリー。顔は真っ赤だ。
―――― あいつリーダーじゃなくて、ボケ担当なのか?
陽二には、コントにしか見えない。実際、周囲から大喝采が聞こえるので、いつもの事なのだろう。カリンや周囲の観客たちは
『さすがサラリーちゃん!』『かわいい!』などと黄色い声援を送っている。
すると戦闘員とボスは、サラリーに指をさし
「ウソをつくな! ウソつきは泥棒の始まりだぞ!」
「キーキー!」
戦闘員たちは、石を拾ってサラリーに投げつけるが、本気で当てる気はないらしく届いていない。
「うるさい、うるさい、うるさ~い! もうわらわは、
「「はい!」」
3人は左手の甲を向け同じポーズに構えると、左手首に付いている腕輪のスイッチを押し、声をあげた。
「
―――― あの変身道具は、魔道具なのだろうか? それとも特撮技術?
――――あの服は……カリンが、初日に着ていた服にどことなく似ているなぁ、出どころはここか! と言うことは、カリンは毎回映画を見てるくらいのファンって事で……あの服はコスプレ?
光が玉に吸い込まれ、そのまま胸に装着される。変身が終わるまで、ボスと戦闘員たちは一歩も動かずジッと見ている。
いつも思う『今、攻撃すればいいやん!』と
△△△
「まだまだ幼い小さな
「幼い
「幼い
「3人そろって!」
タタン!
「「「美少女戦隊ゼラニオン!」」」
ゼラレッドが、左手を腰に当て右人差し指で敵を指差し
ゼラブルーとゼライェローは、両隣で招き猫みたいなポーズをとっている。
ゼライェローだけは、恥ずかしそうにモジモジしている。おそらく
ゼラレッドは、カリンの服と似たようなセーラー服を着ている。赤を基調とした某アイドルっぽい服装だ。
ゼラブルーは青に白、ゼライェローは黄色に黒を基調としたメイド服っぽいのに変わっている。ゼラブルーのスカート丈は膝が見えるか見えないくらいなのに対して、ゼライェローはさらに短く、下着が見えそうなくらいミニだ。
そしてなぜか、ゼライェローだけ猫耳カチューシャを装着している。おそらく恥ずかしそうにしているのは、ミニのスカート丈と猫耳カチューシャが原因なのかと想像できる。
―――― しかし……イェローって、発音が良いのな! 何だ、すごい面白いぞ。やるな、ゼラニオン!
陽二はワクワクしてきた。
「行くぞ! トウ」
サラリーのかけ声と共に、3人は建物からジャンプ! クルッと1回転して着地を決める。
―――― 子供の頃はカッコいいと思っていたが、なぜ回転する必要があるんだ?
と思いながらもチャンス! と思い、目を細めたが、パンツは見えなかった。
―――― 見えそうで見えない。ギリギリのいい塩梅を攻めてきやがる……計算ずくなのか?
「ゼラニオン共をやってしまえ! いけ!」
「キーキー!」
エロティクマン陽二をよそに話は進み、いつの間にか良い感じにバラけた3人に、戦闘員のたちが襲いかかる。
●ゼラレッド
「とう、とりゃー、えい、えい、えい」
襲いくる戦闘員に左回し蹴り、そのまま軸足の右足でジャンプして後ろ回し蹴り。着地と同時に戦闘員3人に囲まれるが、右・左・右の3連突きで、戦闘員たちをぶっ飛ばす。
「キーキー!」
しかし、5人の戦闘員が
しかし、ゼラレッドは落ち着いて『ふっ。
『拾うんかい!』陽二は、思わずツッコミの声をあげた
「
名前なんてどうでも良い。ただ、バシバシと
●ゼラブルー
「はい、はい! はいはいはい!」
襲いくる戦闘員5人の攻撃を、かわいらしい声と共に
「
アスリーは、戦闘員たちに素敵な笑顔を向けて『
一瞬の出来事だった。周囲の戦闘員たちは、バタバタと倒れてしまった。
―――― 魔法か? 少しだけ光が見えた気がした。それに無詠唱だった。ゼラブルーも、呼称発動のスキルを持っているのだろうか?
●ゼライェロー
「
ランリーは、自分の身長より大きな剣をどこからともなく取り出した。そのランリーと対峙するのは、体をすっぽり隠す大きな盾を装備し前衛で守りを固める5人と、弓を装備し後方から遠距離攻撃を狙う戦闘員たち。
前の防御は強固だ! ランリーの攻撃は届かず、弓の戦闘員は攻撃を撃ち放題! ピンチだ、どうするランリー?
「くっ
「
などと言っているあいだに、無数の矢がランリーにふり注ぐ!
「
ランリーは叫ぶ。そして、
危ない!
しかし、渦を帯びた
「
ランリーは、目の前にある盾に向かって突撃! 大きな盾も後ろにいた戦闘員たちも、まとめて吹き飛ばした! 戦闘員は全滅だ。
△△△
「おのれ、ゼラニオンどもめ!」
ボスは、
「行け! ファイアーイグナス。ゼラニオンを食ってしまえ」
ファイアーイグナスは、イグアナを大きくしたような魔物。口からは
このファイヤーイグナス、王都周辺の魔物の中では最強種。仮に人が戦うのならば100人単位で、それも動きを止める
グシュッギャアー!
ファイアーイグナスは、ゼラニオンに向かって駆けてくる。素早い!
「ふむ、イグナス種か、ちと面倒ぢゃ」
「サラリーちゃん行きます?」
「いや、ランリー任せるのぢゃ」
「え? 私か? いいのか?」
どうやらゼライェローが、無謀にも1人で相手をするようだ
●ファイアーイグナス vs ゼライェロー
ゼライェローがファイヤーイグナスの正面に飛び出ると、レッドとブルーは、近くの建物の上にジャンプ。高みの見物を決めこむようだ。
ゼライェローの先制攻撃!
大きく振りかぶり斬りかかるが、それを予測していたファイヤーイグナスは、大爪をランリーに
ゼライェローは攻撃を止め、素早く防御姿勢。しかし、受け止めた乙女大剣ごと弾き飛ばされる。
ドゴン! バリバリ、バーンと音をたて、建物の壁をぶち破り中まで吹っ飛ばされた。大丈夫なのか!?
無傷! 無傷である。
『くっ、やるではないか!』そう口にし、建物の中から出てきたゼライェローは、
危ない! イェロー!
「はね返せ
――――!
危ないぞ! この攻撃は、風壁で防ぐことはできない!
ゼライェローは大地を蹴り、かみつき攻撃を
「くらえ!
無防備の首筋に攻撃。さすがのファイアーイグナスもこれで終わりか?
ガキーン! しかし、イェローの攻撃はファイアーイグナスの強固な
「さすがに固いな」
口にしたその瞬間、ゼライェローは衝撃を受け吹き飛ばされてしまった。
尻尾だ!
しかも尻尾の
たたみかけるファイアーイグナス! ゼライェローに向かって大爪をふりおろす。
忘れていたが、この大爪にかすられでもしたら、傷口から猛毒が入り体を冒す!
「少し油断したな」
吹き飛ばされたものの、尻尾の攻撃は乙女大剣で受け止めていたゼライェロー。反省の言葉を口にすると素早く立ち上がり、大爪を
「
ゼライェローは、神槍を呼び出す。神槍は長さ2メートルの円すい形
「遊びは終わりだ!
ゼライェローが神槍を軽く振るうと、レーザービームの様な水が、ファイアーイグナスの巨大な体を真っ二つにした。
「グギャー!!」
断末魔を上げると、ファイアーイグナスの体は霧散していった。
すると、肩で息をするゼライェローに、声がかかる。
「ランリーよ、まだまだ、だな!」
―――― 上から目線で、サラリーは言った。高みの見物だけに
「ランリーちゃん、お疲れさま!」
―――― うん。アスリーさんかわいい。小さいやつとは大違いだ
ゼラニオンのやり取りに、陽二が心の中でツッコミを入れていると、降りてきたサラリーに、ランリーがあきれ顔で服を叩きながら呟いた。
「どうでも良いがサラリー、ボスが居ないぞ?」
「しまった! また逃がしてしまったのぢゃ!」
ちゃんちゃん。と、エンディングテーマが流れだした。
どうやらボスには、毎回逃げられるようだ。
エンディングテーマが終わると、周囲はもとの映画館へと戻って行く。その間陽二は、考えていた。
―――― ランリーが最後に使った技は魔法だった。それも、俺が使えた
「陽二、面白かったわね」
「そうだね、振動やら視覚や聴覚。全身で体験できるのもすごいよね」
「そうだ! ゼラニオンや敵になって、体験する事もできるのよ!」
「体験!? なにそれ、想像以上だよ!」
映画が終わるとカリンは、もう一つの楽しみ方を教えてくれた。
その楽しみ方とは、フルフェイスみたいな魔道具を被ると、登場人物になりきって変身したり魔法を使ったりして、実際に映画の世界を体験できると言うもの。
選べる登場人物は、ゼラニオンの3人とボスを含む悪役が数名。映画の話やオリジナルの話で遊んだりできる。
当然、陽二はさっそく体験した。
―――― ものすごく面白い! 本当に自分が戦っているみたいだ。
そして陽二は、この体験を通して『魔法を使う』という感覚を文字通り体験した。
△△△
いいだけ遊んだあと、町の案内に戻る
まずは大通り。
この大通りは、王宮を中心に東南西北へ町の外まで続いている。馬車が並んで、4台は走れる広い道。この通りには、映画館などの娯楽施設や、王都にしかない店舗がたくさん並んでいる。
その中の1つにゲームセンターがあった。
某ゲームセンター程は大きくないが、次々と人たちが中に入って行く。
外から中をのぞいてみるが、中は見えない様になっている。
中に入ると、元の世界でもなじみ深いゲームがたくさんあった。ちなみに、ゲームをプレイするのにお金は必要ない。お金の代わりに魔力で支払うのだ。
カリンと陽二は、パンチングマシーンやカニキャッチャーなど、ふたりで楽しんだ。パンチングマシーンでは、陽二が的を蹴るという子どもみたいな行為に、カリンがあきれる一幕があったものの、楽しい時間を満喫した。
その後ふたりは、ベンチシートでジュースを飲みながら次の予定を相談していた。その時、パンチングマシーンの周囲に人が集まり何やら騒いでいた。
―――― やばい。蹴ったから壊れたのかな?
陽二はその場を逃げるべく、気づかなかったフリをしてカリンに話しかけた。
「次はどこに行くの?」
「裏通りにある、商店街に行きましょう」
ゲームセンターを出ると、大通りから一本入った商店街に向かうことにした。大通はどちらかと言えば、他の町の人が遊びに訪れる場所で、王都に住む人たちのほとんどは裏通りを利用する
ちょうど服屋を見つけた陽二は、着替えや下着を購入。布地の種類は多い。綿や絹、毛糸・皮などのほか、魔物の素材から生産されるポリエステルに似た繊維もある。
安い服を銀貨1枚で買えるだけ購入し、
△△△
●薬屋
回復薬や毒消しなどのほか、一般的な常備薬も売っている。銀札1枚からとちょっと高値である。
王都では、冒険者用の薬の需要は少ない。なので、一般市民向けの薬がほとんどである。当然のように風邪とかも普通にあり、病気は魔法で治療するよりも、薬で治療するのが一般的。
陽二は『調合』目的でここの店主に尋ねる。
残念ながら、販売のみで調合はできないと語る。だが、見習い用の器材セットが売っていたので、ワンセット購入した。
●武器屋
木剣や鉄剣、防具などが売っている。しかし薬屋と同じ理由で、ナタや鎌などの農機具の販売・修理が主な仕事。
武器よりも、防具の方が高値。
この武器屋では、修理や手入れのみで武器の生産まではしていない。薬屋と同じく『鍛冶』目的で尋ねると、勉強がしたければ『鉱山都市スノーム』に行くのが通例とのこと
●道具屋
農具・電池や生活雑貨が主流。魔弾などの冒険者用も、一応置いてある。
電池は、元の世界の形とは違って親指ほどの丸い玉。原材料は魔石で、武具や薬もそうだが、出回っている製品のほとんどは『鉱山都市スノーム』で生産されている。
電池は銀貨1枚から~で高価。ただし、規格が1つのため使い回しができて、汎用性が高い。
ちなみに電池の中身は魔力だが、異世界人が開発して名付けたため、中身は魔力なのに電池。
魔力が空になると、銅貨5枚で引き取って再利用される。
生活用品として、炊飯器などの白物家電に照明器具も売っている。照明器具はスタンド型・懐中電灯型・
値段は、銀貨30枚以上と高級品。しかし照明器具だけは、各家庭に1つ、国から支給された器具がある。
●宿屋
どこも似たような感じ。
1階に、受付・食堂・風呂兼洗濯場で、2階に客室。
食堂と宿屋を兼任している形がほとんど。風呂は別途。
1泊素泊まりで、銀札2枚。朝食と夕食それぞれ銅貨5枚。
つまり、1泊2食で
(王都は他の町に比べると、4割ほど安い)
―――― 安い、とは思うけど……1カ月で約
陽二は、お金に相談しながら考えることにした。
ちなみに陽二の感覚だと、市内のアパート2DK、駐車場・共益費・町内会費込みで約9万。それに電気水道ガス代で1万。自炊なしで考えると……言わずもがな。
●冒険者協会
「次は、お待ちかねの協会に行きましょう!」
カリンはとてもうれしそうだ
3階建、横幅は武器屋の2倍くらいの大きさ。
―――― 思ったほど大きくない?
横開きのドアを開け中に入るが、シーンとしていて人はいない。
正面に受付が2つ、右に依頼書が貼ってあるボード
左側には食堂がある。
「人が、いないね……」
「王都じゃ仕方がないわ。他の町の協会は、たくさんの冒険者で賑わっているわよ」
「仕方がないって?」
「王都は、結界路の中心地でしょ? だから、魔物はまず出ないのよ。それに、ダンジョンもない。つまり、冒険者の仕事がないのよ」
「へえ~王都周辺って平和なんだね。ところで、結界路ってなに?」
「結界路ってのは――――」
結界路とは、各町の間にある魔石を破壊する装置や、その動力である魔力の流れる道の総称。
「図に描くと分かるんだけど、えっとねぇ……」
「難しかったら簡単にでいいよ」
簡単に説明してもらった。
カリンは、王都を中心にして地図を書く
王都の上に、北の砦ソラマン
少し右上に、セナドウース
少し左上に、鉱山都市スノーム
左下に、シノフィール
右下に、セナドウース
そして、ソラマンからサラデインとシノフィールを直線で結び。次に、スノームからセナドゥースとサラデインを直線で結ぶ。最後にセナドゥースからシノフィールに直線を結ぶと……
結んだ線が、結界路。
結界路に囲まれた☆の中には、魔石持ちの魔物は侵入できない。さらに王都は、2重の結界路で囲まれている事になるので、まず魔物が出る事ない。
―――― なるほど……図にしてみるとよく分かるな。
反対に、その外は魔物がいる危険地帯。
そして、セナドゥースとサラデインの間にある森の中には、魔物を生みだし排出するダンジョンがあると言われている。
「じゃあ例えばだけどさ……シノフィールとサラデインの間も、結界路を作ればいいんじゃないの?」
「そうね。でも、結界路の外で町と町をつなぐ工事よ? 命がいくつあっても足りないわ!」
陽二は、王様との会話で出た『ダンジョン攻略組』の話を思い出した。
「そうか! 結界路の外は危険だから『ダンジョン攻略組』の人たちが、森のダンジョンを攻略してるのか!」
カリンは『?』と一瞬考えるしぐさを見せる。
「結界路の外で、ダンジョンを攻略? そんな話、聞いた事もないわ。その『ダンジョン攻略組』ってのは、町の中にあるダンジョンで、活動している冒険者たちの事よ」
「町の中にダンジョン!? って……魔物が出てきて危険じゃないの?」
「王都を囲む5つの町の中にはダンジョンがあるんだけど、今まで魔物が出てきた事は一度もないわ」
カリンが自信満々に言い切るので
―――― 『魔物が出てくる!』誰でも想像する事だ! いろんな人たちが検証していて、確実に
と考えた。
「それで、冒険者の人たちはダンジョンで何をしているの? 魔物退治?」
「魔物の素材や、魔石集めが主な仕事ね。でも危険な仕事なのよ」
―――― 冒険者、かぁ……
「カリンもダンジョンに入った事がある?」
「
どことなく悲しそうな顔になるカリン
「冒険者になりたいのと関係がある、とか?」
―――― あまり聞くべきじゃないかもしれないけど……訳がありそうだな
「それはない、わ……冒険者たちを見て育ったから、憧れがあるだけよ。あっ、私の町の協会にも冒険者がたくさんいるわよ」
「カリンの住んでた町かぁ。ソラマンに行く機会があったら、案内をお願いしようかな?」
「予定が合えばいいわよ」
話題を変えたカリンに、陽二は話を合わせた。
△△△
話に夢中になりすぎて、ここに来た目的を忘れていた。受付を見ると、優しそうなおじいちゃんがこちらを見ていたので、話しかける。
「初めまして、陽二って言います。冒険者協会の事を教えてください」
「こんにちは。ワシは、ここの管理を任されておるモガレンと言う。モガでよいぞ」
「モガさんですね。それでは、何も分からないので教えてください」
「そうじゃのお」と言いモガレンは、簡潔に説明してくれた
冒険者協会=協会で通じる。
協会では、依頼を受けたり出したりできる。
受ける場合は依頼書に条件が書いてあり、達成すれば報酬を得られる。
依頼を出す場合の報酬は、自分で決める事ができる。むちゃくちゃでなければ何でも良い。
冒険者の登録ができる。
冒険者カードの発行(身分証にもなる)
協会の主な仕事は、魔石・素材の買い取り及び卸売り。ダンジョン入口の管理、保険業務、買い取り時の税金徴収も兼務。国の管理下にあるが、運営は独立している。
●冒険者
簡単に言えば、何でも屋。
依頼を受け報酬を得るか、魔物を売って生活している。
登録して協会からの依頼を受け達成すると『冒険者見習い』になる
レベルを10まで上げると『見習い』が外れて冒険者になる。
すべて自己責任だが、協会の保険あり。また、協会の設備を安く利用できる。
ちなみに、他の職業も『〇〇見習』から始まる。
●メリット
一獲千金も夢じゃない
『見習い』が外れると、ダンジョンに入る資格を得られる。
●デメリット
3K(危険・汚い・キツイ)
生命、生活の保証なし。
―――― まあ、だいたい予想の範囲かな
「それじゃあ、冒険者の登録をしたいのですが良いですか?」
「ああ構わんよ。身分証と銅貨5枚じゃ」
「じゃあ2人分で。カリンも登録するよね?」
「えっ? えっ?」
「登録するだけなら大丈夫じゃない?」
「そ、そうね……」
陽二に言われ、カリンはおずおずと身分証を取り出した。
「ちょっと待っておれ」
と言ってモガレンが奥に行ったので、陽二はカリンに声をかけた。
「何か問題でもあった?」
「私、
「ごめん! そりゃだめだ。でも登録だけしておいて、依頼を受けなければ良いだけだし」
「わ、私も、そう言おうと思っていたの。じゃあここは、陽二のおごりね?」
「ここは? 今日の支払い、全部出してるんですが……」
とそこに、モガレンが戻って来た。
「ほい、じゃあコレを大切に保管しとくんじゃ」
冒険者カードと身分証を受け取る。冒険者カードは、お金さえ払えば簡単に発行される。
「依頼を受けて、レベルを上げると見習い卒業じゃ。まあ頑張ってな。見習いがレベルを上げるのは大変じゃて。鉱山都市スノームにある練習用ダンジョンに行けば、鍛錬にもなっていいじゃろう」
鉱山都市スノームには、初心者/練習用ダンジョンがある。
ほとんどの冒険者見習いたちは、そこでレベルを上げながら戦闘技術を磨く。
そもそも、町のダンジョンへ見習いは入れない。
そして、結界路の外は危険。
結局、スノームの初心者/練習用ダンジョンで、レベルを上げるしか手はないのだ
「いろいろと、ありがとうございました」
陽二とカリンは、お礼を言って外に出た。
―――― さて、見ておきたい場所は一応回ったし、泊まる場所を探そうかな。鉱山都市スノームまで行っちゃうって手もあるけど……さて、どうしようかなぁ
「そうだ! 夕食もごちそうするから、また魔法を見せてよ」
「ええ、別に良いわよ、それじゃあ、広い場所に行きましょうか」
―――― 魔法を使える広い場所ね……
陽二とカリンは、結局、王宮にあるグラウンドに戻って来た。
すみません。画像の入れ方がわかりませんので
結界路の地図です。↓
○○○ps://24167.mitemin.net/userpageimage/top/t/a1/icode/i289122/
直リンはダメなきがしますので、○にhttと入れてください。
金貨の枚数を修正