※この作品はR-18です。

異世界生活 冒険譚~   作:すったふ

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王都を散策

 

 

 陽二は、カリンの案内で映画館にやって来た。入場料は、銅貨1枚と財布に優しい。さらに銅貨1枚プラスすることで、飲み物とお菓子が付いてくる。映画と言えば、ポップコーン。

 

「私、毎回この映画を見てるのよ。今回はどんなお話なのか、楽しみだわ」

「毎回この映画を見てるって事は、シリーズ物なの? 面白いの?」

「見てのお楽しみよ! 場所は早い者勝ちだけど、どこでも同じだしね」

 

 映画館の中に入ると、外見から想像できないほど広く、野球やサッカーが余裕でできるほど。

 しかし、スクリーンも客席もないただの広場。イスに座っている人もいるが、ほとんどの人は地ベタに座って、映画が始まるのを待っていた。

 

 ―――― えっ?

 

 イスの少なさに驚いた陽二は、カリンに問うた。すると、これが当たり前の光景だと言うではないか。

 陽二の常識で考えると、映画館で映画を見ると言うのは、座席の購入である。ひと昔、それこそ陽二が幼い頃は、満員の映画館で立ち見なども確かにあったが……

 

 そんな事を考えていると、ものすごい爆発音が鳴り響き、周囲が真っ暗になり主題歌だろうか、音楽が流れてきた。

 

 すると『始まったわ!』

 と、カリンが声を発したと同時に、中央の空間に巨人が3人現れた。

 

 ――――うわっ、でか! な、なんだ?

 

 と、驚いているうちに、周囲の風景がどこかの町並みに変わった。

 

 ―――― なるほど理解した。ここの空間全部がスクリーンなんだ。それにしても、すごい技術だ。まるで、映画の中に入ったみたいだ。

 

 未知の技術に驚く陽二は、周囲をキョロキョロ。そして、目の前に立ちつくす、等身大の女の子3人組に目を向けた。先程、巨人と勘違いした3人組のようだ。

 

 左側の10代後半と思われる女の子が、アスリー。

 青みがかった艶のある黒色の髪で、ふわふわ感のあるボブカット。少したれ目で、優しそうな感じが印象的。

 上着は黒のワンピースタイプで、足首まである長いスカートが特徴的なメイド服。肩口や袖(そで)、スカートの裾(すそ)の部分に、白色のフリルが付いている。

 

 胸元の開口部には、ボタンの代わりに白い紐(ひも)がディスプレイ結びされていて、かわいらしさを演出している。

 ちなみにメイドカチューシャはつけていない。

 関係ないが、胸がとても大きい。

 

 

 真ん中の小さい女の子は、サラリー。

 

 髪は薄い赤色のサラサラしたショートヘアー。黒い瞳で、とてもかわいらしい。小学校低学年くらいに見える。少しつり目で、イタズラっ子っぽい印象を受ける。

 ゴシックドレスとでも言えばいいのか、基色は黒。胸元に、髪色の大きなリボン。腰の下に広がるスカートは、細かなデザインの黒と白のレースが何重にも重なっている。

 他にも細かなデザインがちりばめられているのが、説明できない。

 腕には、肩まである黒いロンググローブに黒いエナメル質の靴。

 この少女が3人のリーダー。

 関係ないが、絶壁だ。

 

 右側に居るのが、少し大人っぽい女性でランリー。

 水色っぽい青髪で、腰近くまである長いポニーテールと青い瞳が特徴的。凛(りん)とした表情をしていて、勇ましく見える。

 服装はアスリーと同じメイド服だが、膝上のミニスカートが恥ずかしそうだ。

 アスリーは確認できないが、ランリーは白いストッキングを履いている。

 関係ないが、立派なおっぱいをお持ちだ。

 

 ―――― ツインタワー!

 

 △△△

 

 体に感じる振動や爆風の熱。目の前にあるリアルな人物映像と触れられそうな距離感に、あたかも映画の世界に入ってしまったかの様な錯覚(さっかく)を感じる。

 

 ―――― マジですげェ……その事に感動していると

 

「サラリーちゃんって、小さいのに胸が大きいのよね……ランリーさん……小さくてもガンバレ!」

 

 そんな内容の声が、カリンから聞こえた。

 

 ―――― サラリーちゃんの胸が大きい? ……いやいや、絶壁じゃん。それにランリーさんが小さい? ……立派なおっぱいを持ってるじゃないか!

 

 カリンの呟(つぶや)きに陽二は、『んっ?』と思いながら不思議に思うも、そんな事を話題にするわけにもいかず、映画に集中する

 

 △△△

 

 この3人は、ゼラニオンと言うヒーローだ。内容は、戦隊モノと魔法少女モノを足して2で割った感じ。

 

 悪の大王サターンが、人族の住んでいる国を手に入れるために、次々と魔物を送り込んでくる。魔物は人族の姿に化けて、窃盗や恐喝(きょうかつ)などの悪事を働く。

 それを見つけて退治するのが、彼女らゼラニオンのお仕事だ。

 

 今回の映画では、盗賊バージョン。

 商人の馬車が襲われ、馬車ごとさらわれたのだ。

 

 ゼラニオンは、盗賊たちのアジトを突き止めて潜入していたが、盗まれた馬車を発見したところで、運悪く盗賊に見つかってしまった。

 

 そう、お約束である。

 

「おまえら何者だ! それを見られたからには、生かしては返さんぞ!」 

「サラリー見つかってしまったぞ」

「サラリーちゃんが、馬車の中にあった物をつまみ食いしてるからですよ?」

「むぅ、気づかれてしまっては仕方があるまい。ぢゃが、証拠は見つけた。今さらコソコソする必要はないのぢゃ!」

 

 馬車から、颯爽(さっそう)と外に飛び出す3人。

 だが、そこに待ち構えていたのは盗賊の大集団

 

「ぐわーはっは! 引っかかったなゼラニオンどもめ! おまえらが来ると分かっていて、罠(わな)をはったのだ!」

 

 盗賊のボスだろうか、体長5メールはある爬虫類(はちゅうるい)の魔物に乗っている男が叫(さけ)んだ。

 

「なっ、なにぃ! 罠(わな)ぢゃと?」

 

 大げさに驚くサラリー。その姿をみて、ニヤッと笑みを浮かべたボスが叫(さけ)ぶ!

 

「てめえら、やってしまえ!」

「「「おお!!」」」

 

 なぜか盗賊たちは、黒い全身タイツを着た戦闘員に変わっている。総勢30名。目出しマスクを被り、額には『サ』の文字が書かれている。おそらく『サターンのサ』だと思われる。

 

「キー! キーキー! キーキー」

 

 突然、言葉を話せなくなった戦闘員たちは、3人に襲いかかる。

 その時だ! ゼラニオンの3人は、戦闘員の突撃を避けるようにジャンプ。そのまま、驚異的なジャンプ力で建物の上に着地をきめる。

 

「ふん。戦闘員と雑魚(ざこ)ボス風情(ふぜい)が! わらわは、ワザと罠(わな)にかかっておったのぢゃ!」

 

 腰に手を当て、ふんぞり返りすぎて後ろに倒れそうなサラリー。その後ろで、さり気なくアスリーが支えているのが見える。

 

「まあ、サラリーちゃん。ウソばっかり」

 

 サラリーの頭を、優しくなでるアスリー

 

「サラリー、ウソは駄目だ! 子供たちも見ているんだぞ?」

 

 サラリーのほっぺに指を食い込ませるランリー。2人してサラリーを弄(いじ)る

 

「ウ、ウソではないのぢゃ! つまみ食いをしておったのも、計算済みぢゃ!」

 

 2人の手を払いのけながら言うサラリー。顔は真っ赤だ。

 

 ―――― あいつリーダーじゃなくて、ボケ担当なのか?

 

 陽二には、コントにしか見えない。実際、周囲から大喝采が聞こえるので、いつもの事なのだろう。カリンや周囲の観客たちは

『さすがサラリーちゃん!』『かわいい!』などと黄色い声援を送っている。

 

 すると戦闘員とボスは、サラリーに指をさし野次(やじ)る

 

「ウソをつくな! ウソつきは泥棒の始まりだぞ!」

「キーキー!」

 

 戦闘員たちは、石を拾ってサラリーに投げつけるが、本気で当てる気はないらしく届いていない。

 

「うるさい、うるさい、うるさ~い! もうわらわは、おかんむり(・・・・・)ぢゃ。行くぞ! アスリー、ランリー」

「「はい!」」

 

 3人は左手の甲を向け同じポーズに構えると、左手首に付いている腕輪のスイッチを押し、声をあげた。

 

「乙女戦闘服召喚(ゼラニューム・ドレスアップ)!」

 

 ―――― あの変身道具は、魔道具なのだろうか? それとも特撮技術?

 

 眩(まぶ)しい光の中、うっすらとだが胸の前に玉が現れ戦闘服が装着されていくのが見える。

 

 ――――あの服は……カリンが、初日に着ていた服にどことなく似ているなぁ、出どころはここか! と言うことは、カリンは毎回映画を見てるくらいのファンって事で……あの服はコスプレ?

 

 光が玉に吸い込まれ、そのまま胸に装着される。変身が終わるまで、ボスと戦闘員たちは一歩も動かずジッと見ている。

 

 いつも思う『今、攻撃すればいいやん!』と

 

 △△△

 

「まだまだ幼い小さな蕾(つぼみ)! 花が咲くのはちょっとまってね! ゼラ・レッド!」

「幼い蕾(つぼみ)のお世話役! ゼラ・ブルー!」

「幼い蕾(つぼみ)の用心棒! 特攻突撃ゼラ・イェロー!」

 

「3人そろって!」

 タタン! 

「「「美少女戦隊ゼラニオン!」」」

 

 ゼラレッドが、左手を腰に当て右人差し指で敵を指差し

 ゼラブルーとゼライェローは、両隣で招き猫みたいなポーズをとっている。

 

 ゼライェローだけは、恥ずかしそうにモジモジしている。おそらく葛藤(かっとう)でもしているのだろう。

 

 ゼラレッドは、カリンの服と似たようなセーラー服を着ている。赤を基調とした某アイドルっぽい服装だ。

 ゼラブルーは青に白、ゼライェローは黄色に黒を基調としたメイド服っぽいのに変わっている。ゼラブルーのスカート丈は膝が見えるか見えないくらいなのに対して、ゼライェローはさらに短く、下着が見えそうなくらいミニだ。

 そしてなぜか、ゼライェローだけ猫耳カチューシャを装着している。おそらく恥ずかしそうにしているのは、ミニのスカート丈と猫耳カチューシャが原因なのかと想像できる。

 

 ―――― しかし……イェローって、発音が良いのな! 何だ、すごい面白いぞ。やるな、ゼラニオン!

 

 陽二はワクワクしてきた。

 

「行くぞ! トウ」

 

 サラリーのかけ声と共に、3人は建物からジャンプ! クルッと1回転して着地を決める。

 

 ―――― 子供の頃はカッコいいと思っていたが、なぜ回転する必要があるんだ?

 

 と思いながらもチャンス! と思い、目を細めたが、パンツは見えなかった。

 

 ―――― 見えそうで見えない。ギリギリのいい塩梅を攻めてきやがる……計算ずくなのか?

 

「ゼラニオン共をやってしまえ! いけ!」

「キーキー!」

 

 エロティクマン陽二をよそに話は進み、いつの間にか良い感じにバラけた3人に、戦闘員のたちが襲いかかる。

 

 ●ゼラレッド

 

「とう、とりゃー、えい、えい、えい」

 

 襲いくる戦闘員に左回し蹴り、そのまま軸足の右足でジャンプして後ろ回し蹴り。着地と同時に戦闘員3人に囲まれるが、右・左・右の3連突きで、戦闘員たちをぶっ飛ばす。

 

「キーキー!」

 

 しかし、5人の戦闘員が棍棒(こんぼう)を持ち、すぐさまゼラレッドを取り囲む。

 

 

 しかし、ゼラレッドは落ち着いて『ふっ。乙女戦闘棒召喚(ゼラステッキ、来い)!』と口にすると、足元(・・)に、都合よく落ちていた棒切れを拾い上げる。

 

『拾うんかい!』陽二は、思わずツッコミの声をあげた

 

「乙女百叩き(ゼラ・ハンドレッド)!」

 

 名前なんてどうでも良い。ただ、バシバシと叩(たた)いてるだけだ。あっという間に、戦闘員10人をやっつけてしまった。

 

 ●ゼラブルー

 

「はい、はい! はいはいはい!」

 

 襲いくる戦闘員5人の攻撃を、かわいらしい声と共に蝶(ちょう)の様に舞いながらよける。その間に戦闘員は5人増えて、10人に囲まれた。危うしアスリー!

 

「キーキーキーキー(ゼラブルー覚悟)!」

 

 アスリーは、戦闘員たちに素敵な笑顔を向けて『乙女のお仕置!(ヘルスパ)』と短く呟(つぶや)いた。

 

 一瞬の出来事だった。周囲の戦闘員たちは、バタバタと倒れてしまった。

 

 ―――― 魔法か? 少しだけ光が見えた気がした。それに無詠唱だった。ゼラブルーも、呼称発動のスキルを持っているのだろうか?

 

 ●ゼライェロー

 

「乙女大剣(エシャロット)!」

 

 ランリーは、自分の身長より大きな剣をどこからともなく取り出した。そのランリーと対峙するのは、体をすっぽり隠す大きな盾を装備し前衛で守りを固める5人と、弓を装備し後方から遠距離攻撃を狙う戦闘員たち。

 前の防御は強固だ! ランリーの攻撃は届かず、弓の戦闘員は攻撃を撃ち放題! ピンチだ、どうするランリー?

 

「くっ卑怯(ひきょう)な! 隠れて攻撃とは、おまえらそれでも騎士か!」

「キーキーキー(騎士じゃないから)」

 

 などと言っているあいだに、無数の矢がランリーにふり注ぐ!

 

「纏(まと)え! 風壁(ウィンドシールド)」

 

 ランリーは叫ぶ。そして、乙女大剣(エシャロット)に纏(まと)わり付くように竜巻状の渦が現れると、矢が飛んでくるのも構わず走りだした。

 危ない!

 しかし、渦を帯びた乙女大剣(エシャロット)によって、放たれた矢は全て弾かれる。

 

「乙女のお仕置!(ゼラ・ストーム)」

 

 ランリーは、目の前にある盾に向かって突撃! 大きな盾も後ろにいた戦闘員たちも、まとめて吹き飛ばした! 戦闘員は全滅だ。

 

 △△△

 

「おのれ、ゼラニオンどもめ!」

 

 ボスは、爬虫類(はちゅうるい)の魔物に命令する

 

「行け! ファイアーイグナス。ゼラニオンを食ってしまえ」

 

 ファイアーイグナスは、イグアナを大きくしたような魔物。口からは炎酸(えんさん)の玉を飛ばして、牙は大木をも噛み砕(くだ)く。皮膚は強固の鱗(うろこ)に覆われ、大爪は大地をえぐり裂く。

 

 このファイヤーイグナス、王都周辺の魔物の中では最強種。仮に人が戦うのならば100人単位で、それも動きを止める罠(わな)を駆使して、戦略的に挑まなければならない強大な魔物なのだ!

 

 グシュッギャアー!

 

 ファイアーイグナスは、ゼラニオンに向かって駆けてくる。素早い!

 

「ふむ、イグナス種か、ちと面倒ぢゃ」

「サラリーちゃん行きます?」

「いや、ランリー任せるのぢゃ」

「え? 私か? いいのか?」

 

 どうやらゼライェローが、無謀にも1人で相手をするようだ

 

 ●ファイアーイグナス vs ゼライェロー

 

 ゼライェローがファイヤーイグナスの正面に飛び出ると、レッドとブルーは、近くの建物の上にジャンプ。高みの見物を決めこむようだ。

 

 ゼライェローの先制攻撃!

 

 大きく振りかぶり斬りかかるが、それを予測していたファイヤーイグナスは、大爪をランリーに叩(たた)きつけた。

 ゼライェローは攻撃を止め、素早く防御姿勢。しかし、受け止めた乙女大剣ごと弾き飛ばされる。

 

 ドゴン! バリバリ、バーンと音をたて、建物の壁をぶち破り中まで吹っ飛ばされた。大丈夫なのか!?

 

 無傷! 無傷である。

 

『くっ、やるではないか!』そう口にし、建物の中から出てきたゼライェローは、元の位置(・・・・)に戻る。するとファイアーイグナスは間髪入れずに、炎酸(えんさん)を吐(は)きかけた。

 危ない! イェロー!

 炎酸(えんさん)をまともに受けると、骨一つ残らず溶け燃えてしまう。例え助かったとしても、重度のやけど(・・・)や酸による腐食で、後遺症が残る危険度の高い攻撃なのだ!

 

「はね返せ風壁(ウィンドシールド)!」

 

 炎酸(えんさん)は風壁に当たり、勢いを失った。そしてゼライェローが力を込めると、ファイヤーイグナスに炎酸(えんさん)がはね返り、前脚を掠(かす)めた。

 ――――!

 炎酸(えんさん)を弾き返されたファイアーイグナスは、大興奮。怪獣が火を出すように炎酸(えんさん)をはき出したまま、噛みつき攻撃。

 

 危ないぞ! この攻撃は、風壁で防ぐことはできない!

 

 ゼライェローは大地を蹴り、かみつき攻撃を躱(かわ)す。そのまま頭上まで跳び上がると、首筋めがけて攻撃だ!

 

「くらえ! 乙女大剣(エシャロット)大切断(ギロチン)!」

 

 無防備の首筋に攻撃。さすがのファイアーイグナスもこれで終わりか?

 

 ガキーン! しかし、イェローの攻撃はファイアーイグナスの強固な鱗(うろこ)で弾かれてしまった。

 

「さすがに固いな」

 

 口にしたその瞬間、ゼライェローは衝撃を受け吹き飛ばされてしまった。

 尻尾だ! 

 しかも尻尾の鱗(うろこ)は、鋭利な棘(とげ)の集合体。大丈夫かゼライェロー?

 

 たたみかけるファイアーイグナス! ゼライェローに向かって大爪をふりおろす。

 忘れていたが、この大爪にかすられでもしたら、傷口から猛毒が入り体を冒す!

 

「少し油断したな」

 

 吹き飛ばされたものの、尻尾の攻撃は乙女大剣で受け止めていたゼライェロー。反省の言葉を口にすると素早く立ち上がり、大爪を躱(かわ)す。

 

「神槍(ランスロット)!」

 

 ゼライェローは、神槍を呼び出す。神槍は長さ2メートルの円すい形

 

「遊びは終わりだ! 神槍の水斬(アクアニードル)」

 

 ゼライェローが神槍を軽く振るうと、レーザービームの様な水が、ファイアーイグナスの巨大な体を真っ二つにした。

 

「グギャー!!」

 

 断末魔を上げると、ファイアーイグナスの体は霧散していった。

 すると、肩で息をするゼライェローに、声がかかる。

 

「ランリーよ、まだまだ、だな!」

 

 ―――― 上から目線で、サラリーは言った。高みの見物だけに

 

「ランリーちゃん、お疲れさま!」

 

 ―――― うん。アスリーさんかわいい。小さいやつとは大違いだ

 

 ゼラニオンのやり取りに、陽二が心の中でツッコミを入れていると、降りてきたサラリーに、ランリーがあきれ顔で服を叩きながら呟いた。

 

「どうでも良いがサラリー、ボスが居ないぞ?」

「しまった! また逃がしてしまったのぢゃ!」

 

 ちゃんちゃん。と、エンディングテーマが流れだした。

 どうやらボスには、毎回逃げられるようだ。

 エンディングテーマが終わると、周囲はもとの映画館へと戻って行く。その間陽二は、考えていた。

 

 ―――― ランリーが最後に使った技は魔法だった。それも、俺が使えた水針の攻撃(アクアニードル)。武器のおかげなのか……ものすごい威力だった……

 

「陽二、面白かったわね」

「そうだね、振動やら視覚や聴覚。全身で体験できるのもすごいよね」

「そうだ! ゼラニオンや敵になって、体験する事もできるのよ!」

「体験!? なにそれ、想像以上だよ!」

 

 映画が終わるとカリンは、もう一つの楽しみ方を教えてくれた。

 その楽しみ方とは、フルフェイスみたいな魔道具を被ると、登場人物になりきって変身したり魔法を使ったりして、実際に映画の世界を体験できると言うもの。

 選べる登場人物は、ゼラニオンの3人とボスを含む悪役が数名。映画の話やオリジナルの話で遊んだりできる。

 

 当然、陽二はさっそく体験した。

 

 ―――― ものすごく面白い! 本当に自分が戦っているみたいだ。

 そして陽二は、この体験を通して『魔法を使う』という感覚を文字通り体験した。

 

 △△△

 

 いいだけ遊んだあと、町の案内に戻る

 

 まずは大通り。

 この大通りは、王宮を中心に東南西北へ町の外まで続いている。馬車が並んで、4台は走れる広い道。この通りには、映画館などの娯楽施設や、王都にしかない店舗がたくさん並んでいる。

 

 その中の1つにゲームセンターがあった。

 某ゲームセンター程は大きくないが、次々と人たちが中に入って行く。

 外から中をのぞいてみるが、中は見えない様になっている。

 中に入ると、元の世界でもなじみ深いゲームがたくさんあった。ちなみに、ゲームをプレイするのにお金は必要ない。お金の代わりに魔力で支払うのだ。

 

 カリンと陽二は、パンチングマシーンやカニキャッチャーなど、ふたりで楽しんだ。パンチングマシーンでは、陽二が的を蹴るという子どもみたいな行為に、カリンがあきれる一幕があったものの、楽しい時間を満喫した。

 

 その後ふたりは、ベンチシートでジュースを飲みながら次の予定を相談していた。その時、パンチングマシーンの周囲に人が集まり何やら騒いでいた。

 

 ―――― やばい。蹴ったから壊れたのかな? 

 

 陽二はその場を逃げるべく、気づかなかったフリをしてカリンに話しかけた。

 

「次はどこに行くの?」

「裏通りにある、商店街に行きましょう」

 

 ゲームセンターを出ると、大通りから一本入った商店街に向かうことにした。大通はどちらかと言えば、他の町の人が遊びに訪れる場所で、王都に住む人たちのほとんどは裏通りを利用する

 

 ちょうど服屋を見つけた陽二は、着替えや下着を購入。布地の種類は多い。綿や絹、毛糸・皮などのほか、魔物の素材から生産されるポリエステルに似た繊維もある。

 安い服を銀貨1枚で買えるだけ購入し、収納スペース(ギフト・闇)に突っ込む。

 

 △△△

 

 ●薬屋

 回復薬や毒消しなどのほか、一般的な常備薬も売っている。銀札1枚からとちょっと高値である。

 王都では、冒険者用の薬の需要は少ない。なので、一般市民向けの薬がほとんどである。当然のように風邪とかも普通にあり、病気は魔法で治療するよりも、薬で治療するのが一般的。

 陽二は『調合』目的でここの店主に尋ねる。

 残念ながら、販売のみで調合はできないと語る。だが、見習い用の器材セットが売っていたので、ワンセット購入した。

 

 ●武器屋

 木剣や鉄剣、防具などが売っている。しかし薬屋と同じ理由で、ナタや鎌などの農機具の販売・修理が主な仕事。

 武器よりも、防具の方が高値。

 この武器屋では、修理や手入れのみで武器の生産まではしていない。薬屋と同じく『鍛冶』目的で尋ねると、勉強がしたければ『鉱山都市スノーム』に行くのが通例とのこと

 

 ●道具屋

 農具・電池や生活雑貨が主流。魔弾などの冒険者用も、一応置いてある。

 電池は、元の世界の形とは違って親指ほどの丸い玉。原材料は魔石で、武具や薬もそうだが、出回っている製品のほとんどは『鉱山都市スノーム』で生産されている。

 電池は銀貨1枚から~で高価。ただし、規格が1つのため使い回しができて、汎用性が高い。

 ちなみに電池の中身は魔力だが、異世界人が開発して名付けたため、中身は魔力なのに電池。

 魔力が空になると、銅貨5枚で引き取って再利用される。

 

 生活用品として、炊飯器などの白物家電に照明器具も売っている。照明器具はスタンド型・懐中電灯型・吊(つ)り下げ式など種類も豊富。要電池。

 値段は、銀貨30枚以上と高級品。しかし照明器具だけは、各家庭に1つ、国から支給された器具がある。

 

 ●宿屋

 どこも似たような感じ。

 1階に、受付・食堂・風呂兼洗濯場で、2階に客室。

 食堂と宿屋を兼任している形がほとんど。風呂は別途。

 1泊素泊まりで、銀札2枚。朝食と夕食それぞれ銅貨5枚。

 つまり、1泊2食で銀札3枚(3000円)。

(王都は他の町に比べると、4割ほど安い)

 

 ―――― 安い、とは思うけど……1カ月で約銀貨9枚(9万円)。年間だと、金貨1枚(約100万円)ちょっとか……食費を考えると、悪くもないのかなぁ? 自炊は面倒だし……

 

 陽二は、お金に相談しながら考えることにした。

 

 ちなみに陽二の感覚だと、市内のアパート2DK、駐車場・共益費・町内会費込みで約9万。それに電気水道ガス代で1万。自炊なしで考えると……言わずもがな。

 

 ●冒険者協会

 

「次は、お待ちかねの協会に行きましょう!」

 

 カリンはとてもうれしそうだ

 3階建、横幅は武器屋の2倍くらいの大きさ。

 

 ―――― 思ったほど大きくない? 

 

 横開きのドアを開け中に入るが、シーンとしていて人はいない。

 正面に受付が2つ、右に依頼書が貼ってあるボード

 左側には食堂がある。

 

「人が、いないね……」

「王都じゃ仕方がないわ。他の町の協会は、たくさんの冒険者で賑わっているわよ」

「仕方がないって?」

「王都は、結界路の中心地でしょ? だから、魔物はまず出ないのよ。それに、ダンジョンもない。つまり、冒険者の仕事がないのよ」

「へえ~王都周辺って平和なんだね。ところで、結界路ってなに?」

「結界路ってのは――――」

 

 結界路とは、各町の間にある魔石を破壊する装置や、その動力である魔力の流れる道の総称。

 

「図に描くと分かるんだけど、えっとねぇ……」

「難しかったら簡単にでいいよ」

 

 簡単に説明してもらった。

 カリンは、王都を中心にして地図を書く

 王都の上に、北の砦ソラマン

 少し右上に、セナドウース

 少し左上に、鉱山都市スノーム

 左下に、シノフィール

 右下に、セナドウース

 

 そして、ソラマンからサラデインとシノフィールを直線で結び。次に、スノームからセナドゥースとサラデインを直線で結ぶ。最後にセナドゥースからシノフィールに直線を結ぶと……

 五芒星(☆)が出来上がる。その中心にあるのが王都だ。

 結んだ線が、結界路。

 

 結界路に囲まれた☆の中には、魔石持ちの魔物は侵入できない。さらに王都は、2重の結界路で囲まれている事になるので、まず魔物が出る事ない。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 ―――― なるほど……図にしてみるとよく分かるな。

 

 反対に、その外は魔物がいる危険地帯。

 そして、セナドゥースとサラデインの間にある森の中には、魔物を生みだし排出するダンジョンがあると言われている。

 

「じゃあ例えばだけどさ……シノフィールとサラデインの間も、結界路を作ればいいんじゃないの?」

「そうね。でも、結界路の外で町と町をつなぐ工事よ? 命がいくつあっても足りないわ!」

 

 陽二は、王様との会話で出た『ダンジョン攻略組』の話を思い出した。

 

「そうか! 結界路の外は危険だから『ダンジョン攻略組』の人たちが、森のダンジョンを攻略してるのか!」

 

 カリンは『?』と一瞬考えるしぐさを見せる。

 

「結界路の外で、ダンジョンを攻略? そんな話、聞いた事もないわ。その『ダンジョン攻略組』ってのは、町の中にあるダンジョンで、活動している冒険者たちの事よ」

「町の中にダンジョン!? って……魔物が出てきて危険じゃないの?」

「王都を囲む5つの町の中にはダンジョンがあるんだけど、今まで魔物が出てきた事は一度もないわ」

 

 カリンが自信満々に言い切るので

 ―――― 『魔物が出てくる!』誰でも想像する事だ! いろんな人たちが検証していて、確実に出てこない(・・・・・)と分かっているのだろう

 と考えた。

 

「それで、冒険者の人たちはダンジョンで何をしているの? 魔物退治?」

「魔物の素材や、魔石集めが主な仕事ね。でも危険な仕事なのよ」

 

 ―――― 冒険者、かぁ……

 

「カリンもダンジョンに入った事がある?」

「普通(・・)は冒険者じゃないと、ダンジョンには入れないの。でも、小さい頃に、ソラマンのダンジョンへ入ったことがあるわ……」

 

 どことなく悲しそうな顔になるカリン

 

「冒険者になりたいのと関係がある、とか?」

 

 ―――― あまり聞くべきじゃないかもしれないけど……訳がありそうだな

 

「それはない、わ……冒険者たちを見て育ったから、憧れがあるだけよ。あっ、私の町の協会にも冒険者がたくさんいるわよ」

「カリンの住んでた町かぁ。ソラマンに行く機会があったら、案内をお願いしようかな?」

「予定が合えばいいわよ」

 

 話題を変えたカリンに、陽二は話を合わせた。

 

 △△△

 

 話に夢中になりすぎて、ここに来た目的を忘れていた。受付を見ると、優しそうなおじいちゃんがこちらを見ていたので、話しかける。

 

「初めまして、陽二って言います。冒険者協会の事を教えてください」

「こんにちは。ワシは、ここの管理を任されておるモガレンと言う。モガでよいぞ」

「モガさんですね。それでは、何も分からないので教えてください」

「そうじゃのお」と言いモガレンは、簡潔に説明してくれた

 

 冒険者協会=協会で通じる。

 協会では、依頼を受けたり出したりできる。

 受ける場合は依頼書に条件が書いてあり、達成すれば報酬を得られる。

 依頼を出す場合の報酬は、自分で決める事ができる。むちゃくちゃでなければ何でも良い。

 冒険者の登録ができる。

 冒険者カードの発行(身分証にもなる)

 協会の主な仕事は、魔石・素材の買い取り及び卸売り。ダンジョン入口の管理、保険業務、買い取り時の税金徴収も兼務。国の管理下にあるが、運営は独立している。

 

 ●冒険者

 簡単に言えば、何でも屋。

 依頼を受け報酬を得るか、魔物を売って生活している。

 登録して協会からの依頼を受け達成すると『冒険者見習い』になる

 レベルを10まで上げると『見習い』が外れて冒険者になる。

 すべて自己責任だが、協会の保険あり。また、協会の設備を安く利用できる。

 ちなみに、他の職業も『〇〇見習』から始まる。

 

 ●メリット

 一獲千金も夢じゃない

 『見習い』が外れると、ダンジョンに入る資格を得られる。

 ●デメリット

 3K(危険・汚い・キツイ)

 生命、生活の保証なし。

 

 ―――― まあ、だいたい予想の範囲かな

 

「それじゃあ、冒険者の登録をしたいのですが良いですか?」

「ああ構わんよ。身分証と銅貨5枚じゃ」

「じゃあ2人分で。カリンも登録するよね?」

「えっ? えっ?」

「登録するだけなら大丈夫じゃない?」 

「そ、そうね……」

 

 陽二に言われ、カリンはおずおずと身分証を取り出した。

 

「ちょっと待っておれ」

 

 と言ってモガレンが奥に行ったので、陽二はカリンに声をかけた。

 

「何か問題でもあった?」

「私、魔法師見習い(まほうつかい)なのよ。先生に悪いかなって」

「ごめん! そりゃだめだ。でも登録だけしておいて、依頼を受けなければ良いだけだし」

「わ、私も、そう言おうと思っていたの。じゃあここは、陽二のおごりね?」

「ここは? 今日の支払い、全部出してるんですが……」

 

 とそこに、モガレンが戻って来た。

 

「ほい、じゃあコレを大切に保管しとくんじゃ」

 

 冒険者カードと身分証を受け取る。冒険者カードは、お金さえ払えば簡単に発行される。

 

「依頼を受けて、レベルを上げると見習い卒業じゃ。まあ頑張ってな。見習いがレベルを上げるのは大変じゃて。鉱山都市スノームにある練習用ダンジョンに行けば、鍛錬にもなっていいじゃろう」

 

 鉱山都市スノームには、初心者/練習用ダンジョンがある。

 

 ほとんどの冒険者見習いたちは、そこでレベルを上げながら戦闘技術を磨く。所謂(いわゆる)登竜門みたいな場所。

 そもそも、町のダンジョンへ見習いは入れない。

 そして、結界路の外は危険。

 結局、スノームの初心者/練習用ダンジョンで、レベルを上げるしか手はないのだ

 

「いろいろと、ありがとうございました」

 

 陽二とカリンは、お礼を言って外に出た。

 

 ―――― さて、見ておきたい場所は一応回ったし、泊まる場所を探そうかな。鉱山都市スノームまで行っちゃうって手もあるけど……さて、どうしようかなぁ

 

「そうだ! 夕食もごちそうするから、また魔法を見せてよ」

「ええ、別に良いわよ、それじゃあ、広い場所に行きましょうか」

 

 ―――― 魔法を使える広い場所ね……

 

 陽二とカリンは、結局、王宮にあるグラウンドに戻って来た。

 




すみません。画像の入れ方がわかりませんので
結界路の地図です。↓

○○○ps://24167.mitemin.net/userpageimage/top/t/a1/icode/i289122/

直リンはダメなきがしますので、○にhttと入れてください。

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