四月。うららかな春の香りは、塩風によって打ち消される。
海軍の港には、その役目をほとんど奪われたイージス艦の出航していく姿が見えた。
北部の海域に進行している艦隊が敵の撃退に成功したという情報に歓喜した旧海軍。
彼らはまるでご馳走を目の前にして、我慢できなくなった犬のように海域調査へと赴いていく。
その護衛を務める艦娘が一人。
電。純白のセーラー服に身を包み、されど各部にはと海上滑走と対深海兵装である艤装が存在し、あどけない初々しい印象を少々損なっているかのようだった。
ちなみに呼び名は、彼女の本名ではない。電というのは彼女が艦娘であるときの呼称であり、本名はもっと別の、現代の少女らしい名前である。
だが、今の電にはその名を使うことも、思い出すことすらも許されない。
艦娘の適性が存在すると判明した少女たちは、本人の意志など無視されて、半ば強引に艦娘になるための施術を受けた。
その影響ゆえに、彼女は自分の本当の名前を思い出せない。仮に外部から情報を得ても、脳がその特定言語を視覚、聴覚で感じた際に、ノイズが走るように対応策まで施されている。
半ば人道主義に反していたが、それでも行うしかなった。艦娘になるためには、器である適合者たちの前情報を消さなくてはならない。
そうでもなければ、少女である彼女たちが艦娘の力である、軍艦の記憶など受け入れられないからだ。
だからと言って記憶が消えることはない。艦娘になる前のころ。それを電は思い出していた。
@@@@@@
『"いそかぜ"より電へ。こちらでは深海棲艦を補足することができない。
情けない話だが、君が頼りだ。よろしく頼む』
「電より"いそかぜ"へ。
了解なのです。現在のところ電探、ソナー共に問題ないので、ご心配はいらないのです」
電。それは電の今の名前。
昔の名前は思い出せない。思い出そうとしても、ノイズにかき消されておぼろげになり、消える。
電をお父さんとお母さんから引き離した元凶のお医者様は、電のために必要なことだと言ってくれたが、信じられない。
当たり前だ。強引に人から日常生活を奪った奴に、なんの信頼性があるのだろう?
口調も、なぜか語尾に「なのです」をつけてしまう。
注意しないと、なのです! なのです! が多くってしまい、やけに子供っぽく見られてしまうこともある。
いや、子供なのだ。姿形と声が。
今自分が思い出せていた記憶が真実なら、電は中学生の時から、身体的な成長が見られない。
おっぱいはいつまでもちっこいママで、五年以上も艦娘となって戦っているのに背丈もほとんど伸びていない。
それだけならいい。問題なのが、たまに心というか思考というか、そういうところまで中学生(悪く言えば小学生レベル)にまで低下することもある。
たまに、というのが、特定の条件下の時。
そう、例えば……。
恋人が近くにいる時だ。
『……すまん変わるよ……。
あーあー。聞こえるかい電。いや、____。気分はどんな調子だい?』
ノイズ。電ではない名詞が一文字も聞こえない。
それは置いといて、その通信士の声に、ハッとなって応える。
「最高なのです♪
……い、いや! そうじゃないのです! 全然、全く、最高じゃないのです!!
あなたがいるせいでとても最悪なのです!!」
意図せずでる猫なで声。
それを打ち消すように、電は大声で否定した。
その返答に楽しそうに笑う彼。
まるで電を子供のように扱う彼は、幼馴染みで、同年代のはずだ。
電が艦娘になったと聞いた彼は、真っ先に海軍に志願。
なぜか、電と同じ鎮守府の所属となった。
人事部の人たちにとってみれば粋な計らいというつもりだろうけど、同郷の人間という人と顔を合わせるのは、正直精神的にくるものがある。
何よりも、こんな口調でこんな姿なんだ。絶対に聞かれたくないし、見られたくない。
一度でも見られたら終わり。彼のようにみんな赤ん坊を甘やかす要領で可愛がってくる。
『それぐらい元気があれば十分だな。
よし、帰ったら色々と可愛がってやるよ。飴とチョコどっちがいい?』
中身は同年代だというのに、彼はとにかく甘い。
電は本来なら23ぐらいなのに。
「うるさいのです。軍用無線を変なことで使わないでくださいなのです」
『やっぱりあの喫茶店がいいな。明日は非番だし、久しぶりにデートしよう』
呆れたように返すと、まるで聞いていないように続ける。
幼馴染みというやつは厄介だ。プライバシーというものの配慮に欠ける。
しかし、なかなかに電の好みを分かっているのも幼馴染みというやつだ。
「……金額は全部そちら持ちなのです」
『もちろん。彼氏が全額払うのはデートの鉄則さ』
「は? 誰が彼氏ですか?」
『無論、俺さ』
そして、アホらしさと間抜けらしさを際限なく晒してくれるのも幼馴染みだ。
電よりも思考が鈍化というか、幼児化しているのは、普通の人間である彼ではないだろうか?
「……ついに脳みそが尽きたのですか」
『冷ややかな声で言ってくれてサンキュ。
その感じなら来てくれるよな。
いやぁ、やっぱりお前良いやつだ』
「……ふん」
あらゆる方法でいじってくる彼。電の彼氏。
認めたくないけど、それは事実なのだ。
そして、電の中で生きる、もう一つの意思が子供のように喜ぶのも事実だ。
すなわち、電は彼とのデートを楽しそうにしている。
これを見破られているのかどうか知らないが、彼は本当に絶妙なところで攻めてくる。
だから、拒否することができない。
仕事はやや速く終わったのも、その一環なのだろうか?
護衛といえども敵と遭遇することなく、その日の内に港へと帰港した。
@@@@@@
翌日。
彼とのデートは予定通り実行された。
「おはよう! 今日も可愛いよ電!」
駅前に集合という約束をして、時間より早く来ていた彼が、太陽も羨むような笑顔でそう言った。
いつもの海軍の士官用制服ではなく、どこか温和で穏やかな服に袖を通している彼は、ちょっとだけイケメンのようにも見えなくはない。
しかし冷静に見えれば、腐る程みて来た面が、なんだかいつもと違う雰囲気でいるのは鼻で笑うしかない。
「ありがとうなのです。
あえて聞くのですが、どの辺が可愛いのですか?」
「お、彼女を褒めるターンだね」
一言多いのです。
「そうだなぁ……まず、髪留めかな。いつものやつとは違うよね。赤もいいけど、花柄の可愛い系のやつのも似合っているよ。
次に服は、薄ピンクのワンピースに白色のケープ。春を思わせる組み合わせだよね。でもまだ寒いからケープはしっかり羽織ってね。
あ、靴も変えたんだ。久しぶりのデートだからね。色々と気をつかわ____」
「も、もういいのです!! 口を閉じてなのです!!」
試そうなんて考えなければよかった……こんな公共の場所でそんな惚気のような言葉を浴びせられるなんて……。
野次馬根性の激しいやつが、電達に向かって「いよっ! お似合いだねお二人さん!!」とか言ってくる始末。
うう……恥ずかしいよぉ……。
気を取り直して。東京の都内に広がるデートコースは、ここ何年も彼と通うお決まりのルートだ。
まずは、大好きな喫茶店に向かい、彼のお金で普段ではあまり食べない特製パフェを食べる。
砂糖の塊とでも言った方がいいようなそれは、アイスクリームに甘い生クリームをたっぷりとかけて、ウエハースやポッキーにコーンフレークやスイーツの数々を乗せられていた。
実に一つ1000円程度。あまりにも高価すぎる。"姉妹"とでも一緒には食べない。
「どうだ? 美味しいか?」
目の前にいるナポリタンを頼んだ彼が、フォークでスパゲッティをすくいながらそう問いかける。
ここですぐに喜んだ顔を出してやるとすぐにつけあがる。なので……。
「まあまあなのです。きっとあなたと一緒に来ているからなのです」
「はははは。手厳しいな電は。でも、そういうところも好きだよ」
使い古された言葉。それは電が艦娘になる前にも言ってくれた言葉。
薄れている記憶の中でも最善と残っているそれは、電の頬を少しだけ熱くさせてくれる。
でも、赤くなった顔なんて絶対に見せない。興味ないようにそっぽを向いた。
「口説き文句のボキャブラリーを増やすべきなのです。
そんな様では女の子をたくさんモノにできないのです」
「電がいるからなぁ……他の女の子に今の所興味ないし」
「うるさいのです」
「それとも、電は僕が他の女の子と一緒に歩いていた方がいい?」
「……知らないのです」
ちょっとだけ想像する彼が、違う女性と歩いている様子。
なんとなく、心にズキリとくる。
「冗談。僕は電以外の女性に興味ないさ」
「そうなのですか。電はあなたなんかよりもっといい彼氏が欲しいのです」
「僕以上ね……なら、僕ももっと精進しないと」
素直なのか、それとも天然なのか。
おそらくは後者であると思われる発言を返してくれた彼はナポリタンを食べた。
食事を終えて次に向かったのはショッピングモール。
特に欲しいものがあるわけでもない、冷やかしのような行為。これをあえてウインドショッピングと世のデート中のカップルはいうが、電達も例外なくそれに参列することになった。
対して必要を感じさせない電化製品店。買えるはずのない宝石のついた指輪を売っているジュエリーショップ。春物が充実している衣料販店。
しかし、彼は行く先々で惚気てくる。
電化製品店では、
「これぐらい大きな洗濯機が欲しいよね結婚した頃には。赤ん坊は何人ぐらいになるかな」
ジュエリーショップでは、
「結婚指輪はやっぱりいつもつけていて欲しいな……」
衣料販店では、
「うーん。やっぱり電は可愛い系が一番似合うよ。すごく可愛い。世界一可愛い」
以降、様々なお店で似たような惚気を聞かされる。
そして、それを赤裸裸に語るのだ。店の店員に。
「彼女に似合う服を探している。とても可愛いやつが欲しい。僕の彼女は可愛いから」とかやめてくれません?
ぶっちゃけ、電を悶え殺そうとしているのかお前、って言いたかった。
けれど、それがなぜか不快ではなかった。
むしろ居心地がいいというか、彼にそこまでされて拒否しようという思考は生まれて来なかった。
逆に、彼がそんな風に電を褒めてくれるたび、確かな喜びが電の中から湧き上がっていた。
幼馴染み。ただそれだけの関係。
相手はかつての記憶がほとんど消えた女。
言うなれば、関係なんて皆無と言っても問題ない女に対して、彼はなぜ愛情を見せつけるのかが理解できない。
自虐だろうか? 自分がまだ中学生ぐらいの姿であるという事実の。
違う。むしろこれは、苛立ち。
誰に対しての? 自分だ。電という存在。
もしも、普通に生活していたなら。
もしも、彼と普通のカップルだったなら。
もしも……。
IFのことばかりが頭を掻き巡る。
そう、彼が電を褒めてくれるたびに、そのことがリフレインする。
だから苦しい。彼が笑顔で私のことを褒めてくれるたびに。
何かが引っかかったように……。
ウインドショッピングをある程度堪能し、歩き疲れた頃合いをみて、ファミレスへと向かう。
都内ではかなりのチェーン店として名高い、某イタリアファミレスは、休日だということもあってかなりの人混みだ。
けれどタイミングいいのか、待ち時間は5分程度。
これぐらいなら問題はない。ある程度待っていると、店員が空いた席へと案内してくれる。
窓際近くの席で、歩く人たちの流れが眺めることができた。
「今日も電と一緒に入れて楽しいな」
また臆面もなくそういう。半ば諦めたようなため息をついたその時だった。
「あれ? 電?」
聞き覚えのある声に、ハッとなって振り返る。
そこにいたのは"姉達"の長女である、暁。
私同様艦娘だが、同列の姉妹艦という由来で、彼女は何かと姉というような振る舞いでいる。
プライベートでも、その"姉妹"関係を続ける必要性はないが、それでもいつものように対応してしまう。
「暁、お姉ちゃん……」
「プライベートだから普通に暁でいいわよ」
「いえ、暁お姉ちゃん。
なんでこんなところに……」
「決まっているでしょ。デート中なの」
暁の対面に座る帽子をかぶっている男性。
知的で、どこか押しの弱そうな印象。明らかに暁の尻に敷かれている感じだった。
彼女が「挨拶しなさいよ」というと、彼はもう訳なさそうに会釈する。
すると、こちらの彼も隣の席を覗き込み始めた。
「あれ? 暁さん?」
暁さん。だと?
電の場合は子供扱いで、彼女の場合はちゃんとした女性扱いなのか。
ほーう……いい度胸をしているな。
なんて思いながら、ジトリとした目で彼の様子を眺める。
暁は彼を品定めでもするかのように見て「ふーん」と一言。
「何よあんた達付き合っていたなら教えてなさいよ。なんだか蚊帳の外で気分が悪いわ」
「別に公言するべきことでもないのです」
「そう? 私は結構言っているけど」
そういうのは、色々と自信がある人の行動なのです。
「あははは。暁さんもなかなか可愛い格好をしているね。
黒を基調とした感じが、大人っぽいというか……」
「あら、なかなかお世辞上手じゃないの。どこかの誰かとは大違いね」
呆れ半分に聞き流していると、何か調子に乗っていたのか、暁がさらにとんでもないことを続けた。
「どう? あんた、私に乗り換えて見ない?
電よりも、夜とかすごーくサービスするよ」
まるで、小悪魔めいた笑み。誘惑するようなポーズもとって、彼女は電の彼にそう囁いた。
電に聞こえるよう、わざと大きめな囁きだったのかもしれない。
けれど、冷静な思考なんて、その瞬間できるわけがなかった。
気がついたら、暁が伸ばそうとしていた右腕を掴んで、彼女を睨んでいる電がいた。
「余計な御世話なのです。いい加減にその微妙な大人っぽさを出すのはやめて、とっとと自分たちのデートに戻るのです」
「……ねぇ電。一様私は暁として言っておくことがあるんだけど……。
あんまり、男は放置したらダメなのよ。それに、彼はちょっと私にくらっときたわ。目線が私のおっぱいに来てるもん」
「っ……」
確かに。なんだか最初から視線が下の方へと向いていたような……。
「中学生ぐらいにしても、電のおっぱいは小さいんだから……。
きちんと餌付けしないと____」
「う、うるさいのです! 暁お姉ちゃんには彼氏がいるのですから、その人を満足させればいいのです!!」
思わず大きな声を出してしまい、店内から注目を浴びる。
ああ……なんていう悪日なのでしょうか……。
そんな一騒動を終え、昼食を軽く済ませた電たちは、午後のルートを回り始めていた。
暁達のルートは別方向らしく、店先で別れた。
別れ際に「頑張って攻めないと」とかなんとか言って、暁からコンドームを隠し渡されるが、こんなものを使うことはないだろう。
いや、そもそも電から誘うなんてはしたないというか、恥ずかしいというか……。
誠実さの塊であるような彼にそんなことを頼めるはずがない。
「いやあそれにしても、暁さん。すごく色っぽかったね。
基地内だとなんだか可愛いらしいだけだったけど、恋人には結構尽くすんだね」
前言撤回。彼はかなり単純にメロメロにされていた。
それはそれで何だか悔しい。
幼馴染みが取られるというよりも、いつも電にメロメロしていたはずなのにと言った感じ。言うなれば嫉妬だ。
馬鹿馬鹿しい。この歳で嫉妬だなんて。
「なら、暁お姉ちゃんの彼氏かセフレにでもなればいいのです。どうせ電はおっぱいぺったんこなのですから。
どうせ、電は子供っぽいのです」
「……まあね。
確かに普通ならそうかもしれない」
ズキ……。刃物で胸が刺されたような感触。
彼に言われたくない言葉。電が一番気にしている言葉。
コンプレックスとして残ったそれは、電が彼に対し負い目を感じているものかもしれない。
だから、すごく傷ついた。涙目になるぐらいに。
でも、彼はそれをすぐに否定した。
背中からゆっくりと抱擁し、電の背丈に合わせて優しくけれども強くぎゅっとしてくれる。
「それでも、僕は君が好きだ、電。
あの____の時も、今の君も、これからの君も。ずっと、ずーっと……君と一緒に居たい。
最初に言ったじゃないか。僕は電以外の女の子に興味はない。電だけが好きなんだって」
「ッッ……そんなの、ただの方便なのです」
「信じられない?」
「なのです」
「じゃあ証拠を見せるよ」
そう言って、彼は突然回り込んで、電の唇にキスをした。
あまりにも唐突なそれは反応できず、驚いて目を丸くしてしまう。
キスなんて、何度かしたはず。なのに。とても気持ちいい。
心の中の傷を埋め尽くそうとする、何か暖かいものが送り込まれるかのようだった。
彼は軽くするつもりだったのだろうけど、電はそれを許さない。
強く、顔を押し付けて、乱暴なディープキスに変化させる。
舌を絡ませて、互いの唇と歯の味を楽しむ。
誰かの目につかないように、通路の端っこでのそれは、電の心をそっちの方面へと誘う。
離れた時、唇と唇の間に、糸引くほどの濃厚な印がそれを加速させたと言ってもいいかもしれない。
「……ちょっと早いけど、カラオケボックスに行くのです」
@@@@@@
休日のカラオケボックスはそこまで混雑しておらず、フリータイムで二人部屋を借りることができた。
ドリンクバーを頼み、あとは料理などの注文をしない限りは、絶対に店員が干渉してくることがない空間。
そのことを知覚し、部屋に入った瞬間、電は彼をソファの上に押し倒した。
「い、電……」
「もう、我慢も、見栄も張らないのです」
スカートの下から見える勝負下着を彼に見せ付けながら、それを脱いで行く。
徐々に、電の秘部が、彼に見られる。そのことが電を興奮させる。好きな相手に見られている。"私"の全部を……。
その行為自体は別に初めてじゃなくても、今日はなぜか興奮の度合いが違った。
好き。なんて単調で、チープで、短絡的な褒め言葉なんだろう。"私"はこの言葉が嫌いだ。でも、この言葉は便利だ。
電が"私"であると教えてくれる。
「電……僕も、我慢しないよ?」
彼も興奮する。ズボンはテントが張るようにパンパンとなっていて、いつでも望むものができる状態のようだ。
「いっぱい、してあげるのです。暁お姉ちゃんのことなんて絶対に思い出させないぐらいに」
「うん。電」
「なんですか?」
「愛してる」
「……電もです。大好きです、愛しています」
電達は唇を再び深く合わせながら、互いの秘部をさらけ出して、それを近づけた。
まるで、暴力の塊というような彼の淫棒が、電の中へと飲み込まれて行く。
「んっ、んん……んっぅ、うん、ん、ん……」
喘ぎ声が漏れる。我慢なんかできない。脈動するこの気持ちを抑えることは、たとえ神でも不可能だ。
「あ、ああぁ……電ぁ……ぼ、僕のを……」
「ん……相変わらず、ここは凶悪なのです」
未発達の中学生の性器に似つかわしくないそれは、電の性的快楽を満足させてくれる。
膣の中に埋め尽くされ、その中にあるヒダが、彼に快楽を与え続けていた。
全部は入りきらない。電の成長が未発達であることは明らかだ。
だが、それでも電は彼の竿をできる限り受け入れようと努力する。もっと深く、奥へと。
成長が中途半端でも、経験は積めてるものなんだ。
「電……電……くぅ……」
「はぁ、はあ、う……ん……まだ、なの、です……」
奥へ奥へ。
彼の亀頭が電の子宮の出入り口まで到達すると、突然頭に電極でも刺されて、電気を流されたかのような衝撃が走る。
「はぅッッ!!」
「ご、ごめん! ちょ、ちょっと強すぎたかな!?」
「んぅ、はぁ。
い、いいのです……それよりも……早く、動いて……」
「で、でも……今日の電は何か……」
「エッチな、電は嫌い、なのです?」
「そ、そういうわけじゃ____」
彼の言い訳に蓋をするように、またディープキス。
舌をからみ合わせて、先とは違い卑猥な水音を制限なく立てる。
ピチャピチャと、その音が鼓膜に響くたびに、電の膣がしまって行く。自分の意思じゃない、体の本能がそうさせる。
愛する人と繋がりたい。愛する人を気持ちよくさせたい。もっと、もっと"私"のことを好きになってほしい。
"私"だけを見てほしい。"私"のものになってほしい。"私"の虜になってほしい。
キスをしながら、腰も動かす。
彼のそれが、電の中で擦れる。
刺激を生む。それは快楽となって、"私"達を一つにするように誘う。
無論、痛みはある。けれど、それを塗りつぶすかのように、気持ち良さが溢れてくる。
肌を重ねあい、腰を打ち付けるその度に、星がチラつくような感覚に電は虜になった。
彼が好き。彼のことが好きで好きでたまらない。ただ肌を重ねる以上に、彼を気持ちよくさせてあげたい。
気がつけば、ケープとワンピースを床に脱ぎ捨て、一糸まとわぬ姿になっていた。いつの間に脱いだのだろうか。
そんなこと、どうでもよくなるぐらい、電は腰を動かす。快楽を求めて、彼を満足させるように。
「あっ、ああ、あん、あん、んうう……」
喘ぎ声が響く。カラオケボックスという特殊な部屋は、音を反響させ、彼に全方位から電の声を聞かせる。
次第に、彼も腰を浮かせ、動かす。互いに行われるピストん運動は、激しくも、快楽の波を強めさせた。
「ふあ! ああ、あっ、あっ! い、いく、いく」
「う、あ、い、イキそう?」
「あ、あっ、あん、あ、あ、うん。いく、いくのです……電、いきたい……」
「うん、っ、イっていいよ。僕が受け止めるから」
腰の動きは早まり、電達の結合部からは、先走り汁やら何やらでグジュグジュになっていた。
まるでお湯でふやけたかのようなそこは、我慢を知らない獣のように、貪欲に彼のペニスを舐める。
脳みそが弾け飛ぶ快楽の波。あともう少しで、すごく大きなものに乗れる。それを求めて電達の動きは早くなる。
絶頂を求め、激しく動き、そして来る。
「あっあっあっ、いく、いくいくっ、ああっ、あ、ああん、あ、あ、あぁっ! いく、いく!」
「……電っ……____!!!!」
「あ、あっ、ああ! ああ、ああああぁぁぁぁッッッ!!!!!!!」
ぎゅっと、抱きしめてくれる彼。同時に全てが解放されたような、快楽の波がどっと押し寄せた。
麻薬にかかったような幻惑の連続。腰は壊れたかのように跳ね上がり、秘部からは愛液が噴水のように吹き出た。
絶頂。愛するものにイカされた事実が、さらにその絶頂を長くさせる。イキすぎて死んでしまうかもしれない。思考などまともにできなくなっている。いわゆる真っ白になるというものだ。
視界がホワイトアウトし、連続的に、まるでお酒でも入ったかのように狂わせる。
「はぁ、はぁ、イッたね。電」
「んぅ……ぁ、ぁあ……いく、の、気持ちいい、なのです……」
「うん……僕も、電がイって嬉しいよ」
笑顔でつぶやき、キス。彼はこういうところが気が利く。まだ火照った感情は収まりがつかない。
もっとしたい。もっと感じたい。もっと彼を味わいたい。
性欲は止まること知らず、愛液まみれの性器に彼を挿れる。
ズブズブと、挿れるだけでももうチカチカする。気持ちいい。
「今度は、あなたを、いかせたい……」
「で、でも……避妊」
「……はいなのです」
コンドーム。それを彼の前に見せびらかしながら、電は腰を動かした。
快楽を与えながら、開封し、それを彼のペニスに素早くつけた。
もう、億劫だろうがなんだろうが関係ない。セックスが早くしたいのだ。
「電、き、君は……」
「はぁ、は、ん、いん、らん、って……思わない、で……。ふああ!!」
「くっ……電……電!」
彼ももう止まらない。騎乗位から正常位に切り替わり、彼は激しく電にペニスで刺激する。
秘部の快楽はわけがわからない。気持ちいいの連続で、何が気持ちいいのかすらわからなくなりそうで、全部が溶けてしまいそうなそれはもう止まらない。
ピストン運動によって生じる衝撃と水音。彼の息遣い。自分の喘ぎ声。全てが性欲へと繋がる。
求めれば求めるほど、それは強くなっていく。
「気持ちいいっすごいいいよ電!」
「あん、あ、あ、あう、ん、ん、よか、たぁ……。ふあ、あんっあ、あ、あ……」
「結婚したら、たくさん子供を作ろう!」
「う、うん! あ、あ!」
「たくさん、たくさんだ! 僕は、電と結婚するんだ!!」
夢のような一時。愛する人の言葉は幻想であることに変わりない。
艦娘という兵器として使われる電は、いつ死んでも不思議ではない。
だからこそ、今という時間を大事にする。好きな人との愛を強く確かめにいく。当然だった。
でも、夢を見ることがいけないわけじゃない。
"私"も電も夢があるのだから。
「電っ! 電っ! でる、出るよ!」
「あ、あ、あ!! 電も、いく! いく、いく! いくぅ!!」
「電っ電ぁぁッッッ!!」
「いくっ、いっちゃうぅ! うああああぁぁぁぁッッッ!!!!!!」
互いに絶頂し、性のへの臨界に身を委ね、ただ一つになっていく。
ゴムの中に吐き出される精液。今はそれをこの体に受け入れることができずに残念だけど、いつか平和な時が来たら……それを願いながら快楽の中へと沈む。
入り乱れた意識がようやく戻ると、愛しい人が、目の前にいる。
乱れた息を整えるよりも先に、その人とキスがしたかった。
深い、深いキスを。
「……電」
「……ん?」
「愛してる……誰よりもずっと、君のことを」
「……電も、なのです……あなたのことを、愛しているのです……」
盛る気持ちを抑えながら、電はそのまましばらくの間つながり続けていた。
この気持ちを、忘れないように。
いつかは消えるなんて、思わないのだから。