パワポケアブノーマルss集 作:艶 紫苑
和那×レッドなんて組み合わせを思い付いたのは黒○さんのおかげですね。パワポケ7で真央ちゃんのヒーロー像に影響を与えたのは黒○さん。
レッドvs謎の男の一打席勝負がメインになってますが、
野球もゴルフも詳しくないので、多分めちゃくちゃだと思います。
ヒーローとして活躍する風来坊と和那。
ある日、二人の前におどろおどろしい雰囲気をまとった男が現れた。
男は風来坊に野球勝負を申し込む。
風来坊はその勝負を受けた。
「大丈夫かな?あの人なんか怖いで」
「……ああ、そうだな。だが、逃げるわけにはいかない。」
「どういうこと?」
風来坊は何も語らず、男と向き合う。
一打席勝負。
風来坊がバッターボックスに立つ。
マウンドに立つ男を見据える。
男が一球目を投じる。
ストレート。
砂嵐を巻き起こさんばかりの一球。
キッチャーミットが小気味いい音を立てた。
あまりの速さに風来坊は目を見張った。
二球目もストレート。
鉄腕、そんな言葉がふさわしいほどの豪速球を続けざまに投げてくる。
風来坊はなんとか食らいついた。
ファールボール。
三球目。
これもストレート。
インコース。
一球目二球目よりノビがあった。
ヒーローの意地で風来坊はそれをカットする。
四球目。
さらにスピードが増した。
――しまった!!
なんとかバットに当てたものの後ろに打ち上げてしまう。
キャッチャーがマスクを外し、ボールに飛び付いた。
ボールがミットをかすめグラウンドに落ちた。
危ないところだった。
五球目。
膝元への豪速球。
ストライクかボールか微妙なところだ。
カウントに余裕があれば見てもいいかもしれない。
だが追い込まれた状況では見逃すことのできない絶妙な球。
風来坊は迷わず打ちに行った。
これもファールボール。
六球目。
インコース、ストレート。
なんとかついていく。
いくら速くても、これだけ連続で投げられれば段々と慣れてくる。
それでも男は構わず直球で勝負してきた。
快音が響く。
白球がスタンドへ飛んでいく。
男が弾かれたように振り返る。
ぎりぎりで切れてしまった。
あと少しでホームランだった。
マウンド上の男の目つきが変わった。
黒すら弾く、どろどろとしたオーラに包まれる。
「なんやねん、これ……めっちゃ寒気がする……」
オーラなど普通の人間には見えないだろう。
だが、まわりの人間にもそれとわかるほどの暗い感情が男から放たれる。
勝負を見守る和那の表情にも恐怖の色が見えた。
いくつもの死線を越えてきた彼女さえ恐怖させるほどの殺意。
次の一球、もしかしたらぶつけてくるかもしれない。
そんな危惧が風来坊の脳裏に浮かぶ。
男が投球モーションに入る。
大きく振りかぶって、感情のこもった一球を投じてくる。
ボールが風来坊めがけて飛んでくる。
「くっ!!」
慌てて身を低くした。
一瞬前まで頭があった場所を剛速球が貫いた。
危惧が現実となったのだろうか。
男の方を見る。
彼は目を丸くしていた。
帽子をとって頭をさげる。
目を丸くしていたあの表情の意味はどちらだろう。
すっぽ抜けたことに驚いていたのか、それとも……
――いや、疑うのはよくないな。彼を信じよう。ぶつけても構わないという気持ちで投げてくるかもしれないが、故意にぶつけてくることはないはずだ。
同じ野球を愛するものとして彼を信じることにする。
敵対するものに抱くには重い信頼。
それをもって男を見据える。
男の顔に一瞬動揺が表れた気がした。
次の一球。
敵ながら完璧、膝元。
追い込まれた状況では見逃すことはできない。
ここまでと違う点があった。
ここまで尻上がりに増していた球速がほんのわずかに落ちていた。
落ちたとはいえ、150キロは超えている。
ただ、ここまでそれ以上の速球を見せられたヒーローには十分打てる球。
風来坊は迷わずスイングに入る。
瞬間、目を見開く。
直球だと思っていた球が変化したのだ。
150キロオーバー。
その速度で急角度に落ちる球など脅威だ。
プロでも容易には対応できないだろう。
これがもし試合なら、打席を重ね光明も見えてくるかもしれない。
しかし、これは一打席勝負。
――くそっ…
風来坊は負けを覚悟した。
………
数日前。
和那は寝そべって雑誌をぱらぱらとめくっていた。
長い脚をぱたぱたと楽しそうに動かしながら目を通す。
「はぇ~」
「どうした?」
「これこれ!」
そばにいた風来坊と言葉を交わす。
雑誌をめくり、ある記事で手を止めた。
「ところでレッド様、――は好き?」
「そうだなぁ――」
微妙な返事。
「やってみたら野球の参考になるかもしれんよ」
「ならないと思うが……」
「たとえばこう、こんな感じで、ぴゅって♥」
棒状のものを握って操るしぐさを見せる。
意味深な笑顔に風来坊はどきりとする。
「効果音がおかしいな?まあ、参考になるかはともかく何事も経験してみるのはいいかもしれないな」
「せやろ?じゃあ、今度一緒にいこっ♥」
座っていた男の腕にしがみつく。
ぎゅううっと胸を押し付けて、甘えるように彼の顔をのぞきこんだ。
「キミはやったことあるのか?」
「いや、ないよ」
「ないのに誘うのか…」
彼女が読んでいる雑誌にちらりと視線を向ける。
ちょうどその競技の名前が出ていた。
競技名の頭になにやら不穏な単語もくっついて疑惑だのなんだのと書き立てられている。
「ええやん。ほらこれ楽しそうやで。賭け――、しよ♥」
「やっぱりその雑誌の影響か。ヒーローがそんなことをしたらダメだろ…」
彼女は人の話を聞かず雑誌に視線を戻す。
「それより、ここに書いてあるのってなんのこと?」
「ん?」
雑誌をのぞきこむ。
風来坊が無防備になった。
「隙あり♥」
「うおっ!?やめろ…そこを握るなっ!」
「握り、握り…握りってこういうことなんかなぁ♥」
「絶対違う!やめろぉ!!」
「やめたげるから、かわりに賭け――やろうな♥一打一打はらはらするやろな」
急所に手を添えたまま、にっこりと笑う。
断った瞬間握りつぶされそうだ。
彼女の握力ならガチガチのシャフトでもわけないだろう。
「くっ…負けたらまたひどい目にあわされるのか…」
「あんたなら夜のホールインワンもきっと決められるで♥ホールの方から迎えにいくから確実や♥ああ、あそこもハラハラするわぁ♥」
「夜のは余計じゃないか…?まるでオレが負ける前提で…」
「ああん?勝ったらウチにホールインワンせえへんのか!?じゃあどないするつもりやねん」
「勝ったら、そうだな…」
「それはそんとき考えるとして、とりあえず今は何も考えずに思い切りやろうか。たぶんOBになるやろうけど」
「ぬおっ!?ああっ!!」
びゅるっ
「あ…」
彼女の顔にぶっかけてしまった。
髪にまでへばりつき、でろっと垂れ落ちる。
「腹立つわぁ」
「す、すまない…」
無理やりされたのだし謝る義理もないような気がしないでもなかったが、ナイスガイは反射的に謝罪する。
「めっちゃ腹立つ」
ごごごっと怒気がふくれあがり彼女がまるで巨人のような迫力をまとう。
「悪かった…そんなに怒らないでくれ…」
「あんたに怒ってるわけやないよ。」
「え?」
「こんなひどいことされたのに腹が立たん自分に腹が立つの♥」
「どういうことだ?」
「察して♥」
――なんなんだ一体……
怒りだすのかとハラハラしたがそうではないらしい。
女心はよくわからない。
………
それから二人が何と何のスポーツをしたかはご想像にお任せするとして。
風来坊の体は無意識にその形に動いた。
彼女と一緒に汗を流したおかげと言っていい。
鬼狩りの刃、童子切のように切れ味鋭く落ちた変化球を見事に打ち砕く。
大空にはばたく鳥にも負けない勢いで打球がぐんぐんと伸びていく。
………
男は目を見開いた。
我が目を疑う。
完全に決まったと思った球を弾き飛ばされた。
その打球は月の兎も真顔で二度見、三度見するだろう。
誰も追えぬ特大のアーチを描き、場外へと消えていった。
「バカな……」
男は呆然と立ち尽くしていた。
コースは完璧だった。
プロでもあの球には対応できないだろう。
なのに場外へと運ばれてしまった。
風来坊が見事だったという他ない。
変化球を投げる前、どうするか迷っていた。
このまま直球で勝負するのか、変化をつけるか。
直球で制圧する。
そう決意して前を見据えた。
そのとき風来坊と目が合った。
風来坊の闘気にあてられてしまった。
魂を堅く縛られてしまった。
直前に力みすぎぶつけそうになったこと、その一球前、あわやホームランだった打球、力む原因となった打球も脳裏によみがえった。
ストレートを投げるのが怖くなった。
結果がこれだ。
まだ自身の最高速には到達していなかった。
戦いの中で限界を越える可能性だって0ではなかっただろう。
風来坊の闘気に気圧されずストレートを投げていれば結末は変わっただろうか。
「やった!さすがレッド様!」
ぴくりと反応する。
「その呼び方はやめろと言ってるだろ!?――おおおっ!?」
風来坊が振り返ると和那が走ってくるのが見えた。
彼女は地面を蹴り身を投げ出した。
両腕を開いて抱きつこうとしているのだろうが、勢いが強すぎる。
もはや攻撃。190センチの肉体がくりだす捨て身のタックル。
そこらの男ならなすすべも吹き飛ばされる。
風来坊はその攻撃をがしっと抱き止めた。
「あう♥」
「ぐぅっ!!危ないだろ……受けとめ損ねていたらオレはもちろん、キミだってただじゃすまなかったぞ…」
「アンタならちゃんと受け止めてくれるって信じてたよ♥」
「うわっ、よせっ、人前だぞ!?」
「ん?ってことは、人がおらんところだったらええっちゅうことか。二人きりになれる場所に行こか♥」
「うおおっ」
「待て!!」
早速移動し始めた二人を男が呼び止める。
「なぜ、最後の球に反応することができた?」
「そらあんた、レッドさ――」
「特訓の成果だ!」
レッド様のほにゃららと続けようとした和那を風来坊が慌てて遮る。
和那と男がぽかんとする。
和那が顔をぱあっと明るくした。
「そうやったら嬉しいなぁと思ってたんや、あのスイング♥ふたりでゴルフに行ったかいがあったなぁ♥」
「人前でくっつくなと言ってるだろう」
腕に抱きつかれ風来坊はたじたじになる。
「なんだと……」
確かにあのスイングは野球というよりゴルフのそれだった。
「賭けあとは、レッド様のドライバーをウチのカップにインして遺伝子をかけあわせ――」
「なにを言っている」
男はぽかんとしていた。
和那のおふざけに男のまとうおどろおどろしい雰囲気さえ霧散しかけていた。
男は仕切り直しとでも言うように首を振った。
咎める視線で風来坊を射抜く。
「さっきからレッド様レッド様と。お前はまたそんなことをやっているのか」
「違う、これは誤解だ…。この娘が勝手に言っているだけ。本当だぞ!?誓ってオレはやってない!」
「ん~?なんの話?」
「ややこしくなるからキミは黙っていてくれ」
「うっわ、ひっど!レッド様はいつもは優しいのに、たまに冷たくなるなぁ」
「レッド様はやめろって言ってるだろ!?」
「あー、そうやね。人前やからね。わかった。二人きりになってからたくさん言ったるわ。ちゅうわけで♥」
「いや、その呼び方は二人きりのときでもダメ――うわあああっ」
風来坊がずるずるとひっぱられていく。
「……確かにあれは違う、か?」
男は呆然とそれを見送った。
あれが洗脳だとすると風来坊は振り回されるのが好みになったということだろうか。
男は首を傾げた。
あとがき超短編
時事ネタで前回の「ヒーローが飲み会しちゃいかんのか」の続きです
※ヒーロー乱交ネタですので注意!!
このご時世に再度懇親会をひらこうとするヒーローたち。
うえから声がかかる。
「5人以上の飲み会は自粛せえって?」
5人以上って5人はアウトやったっけ?などと考えつつ和那はメンバーを見渡す。
レッド、ブラック、ピンク、自分。
「よし!」
「よしじゃないわよ!」
「ハンナは未成年やし、ピンクの彼氏は仕事」
「まあ、確かにそうだけど…」
「ほう、ピンクの彼氏は仕事なのか。そうか」
「…レッド?」
「なんでちょっと嬉しそうなのよ…まさか!?」
前回の宴を思い出す。
らっきょうの香り、酒池肉林、蜜に濡れた柔らかな肉と固い肉が一緒になり生み出す甘美な感触。
レッドは何度もうなずいた。
「ヒーローの絆を深めよう」
「おっ、ノリがようなったね。うれしいわぁ♥」
「…レッド、またキャラ変わった?」
「スケベの虫が理性をパリンと突き破ったのかもしれない」
「…」
レッドの言葉をブラックが訝る。
彼女の中である疑念がふくらんでいた。
そんな事とは露知らず顔を赤く染めたピンクが口を開く。
「絆を深める!?やりたいだけでしょ」
「絆を深める一番の方法だろう」
「はあ!?なに言ってんのよ!?」
「あんたこそなに言うてんねん。この前、レッドさま、レッドさまぁ♥彼氏よりいい♥ってメロメロになっとったくせに」
「うえぇ!?うそ!!そんなの知らない!」
「酔いすぎて覚えてないのか」
「確かに途中から記憶が怪しいけど…そんなこと、絶対に…」
「あれ?ウチもあんま覚えてないし夢で聞いた台詞を言うただけなんやけど…ほんまにそんなんやったの?夢やと思うたのに、夢じゃなかった的な?」
「ちょっ!?」
「ああ。彼氏に悪いと思ったが乱れるピンクに俺も燃えてしまった。はっきりと覚えている」
「あらー、彼氏を裏切ってもうたな、ピンク。まあ、レッド様相手じゃしゃーないけど」
「レッド様はやめろ」
「ウソ!絶対ウソよ!」
「バレへんかったら浮気はオッケーなんて言う人もおるしまだ大丈夫やろ♥」
「そうだな」
「…」
「ブラック、ウソよね!?あたしがそんな……ウソって言って!」
「…本当」
「ああああああああああ!!」
乱痴気騒ぎ。
ふくらんだ疑念も霧散してしまった。