「完全復活!」
わー、と言いながらパチパチとユーフォリアが手を叩いてくれる。
その顔は本当に復活を喜んでくれていて、見ているこちらも嬉しくなってしまうほど。
思わず撫でると、笑顔になるのでついついさらに撫でてしまう。
「えへー。もっとお願いします」
「はいはい」
もっともっととどんどんせがまれるので、撫で方も過激になっていき、最終的に彼女のことを抱きしめて撫でているあたりでようやく正気に戻った。
「あ……」
か細いが、はっきりと聞こえる残念そうな声。少し罪悪感に苛まれないといえば嘘にはなるが、さすがにここで時間を使いすぎるわけにはいかない。
他の人たちにも復活したことを伝えなければならないからだ。
「あとで時間の許す限り撫でてやるから、な?」
「えへへ……はいっ!」
そんな会話を交わしてから、食堂の方に向かう。
その最中、ふと思う。そういえば、と。本当に唐突にすぎる疑問。
この旅路が終わった後、ユーフォリアはどうするのか、と。そんな疑問。
次の世界が暁がいる世界らしいので、イコールで世刻たちの旅路の最後……つまりは久遠もそこで元の世界に戻るという事実と繋がれている。
そこから『魔法の世界』に戻って支えの塔に相対座標を出してもらって、と色々とあるらしいのだが、それでも明確に旅と呼べるのはこれが最後。
ならば、そのあとのことはどうなるのか。ユーフォリアは、記憶を失ってものベーに同行しているのだから。
「ユーフィーは、どうするんだ?」
「ほえ?」
だから、尋ねてみることにした。
彼女は何も考えていなかったのか、あるいは何を言っているのか理解できなかったのか。きょとんとしている。
「いや、だから。この旅は次の世界で暁を連れ戻したらそれで終わりだろ? そのあとユーフィーはどうするのか決まってるのか?」
「あう……決まってないです」
しょんぼりと肩を落とすユーフォリアに、あまりにも予想通りすぎて少し笑ってしまう。
けれど、それなら好都合、と思ってしまうのは悪いことなのだろうか。
「なら、ユーフィーの記憶が戻るまでの間、うちに来ないか?」
きっと、両親もこんなに可愛い娘ができるとなったら喜んでくれるだろう。
久遠としても、ユーフォリアと一緒に居られる時間が長くなれば嬉しい。
だからだろうか。今目の前でパチクリと大きな目で瞬きしているユーフォリアの返事に対して、わずかな怯えと期待が入り混じっているのは。
「えっと……お願いします」
「おう、任された」
ぺこりと下げられた頭。その姿にホッとしたが、さすがに兄としての矜持がある。そこはしっかりと隠して、ユーフォリアの頭を撫でる。
サラサラとした髪質。何度撫でても飽きは来ない。ふわりと漂うフローラルな匂い。同じシャンプーを使っているはずなのに、男子と女子では結果がはるかに違うなと疑問が出てきながらも、それを味わえるだけ味わい尽くす。
「それじゃ行くか」
「はいっ!」
皆に対して心配をかけたことを謝罪して、その後には最近幾ら何でも勉強から離れすぎているのではないかと不安がっている椿早苗先生を安心させるために勉強会が行われることになっている。
それに、俺も参加するのだ。幸いなことに先生は『現代国語』の先生である。当初から異世界人との間の意思疎通のために言語を教えてきた実績は伊達ではない。そうでなければ、
「あたしも、日本語は喋れるけど漢字? とかはまだ書けないので楽しみです!」
「そっか……」
ユーフォリアが来るということで、様々な人間がユーフォリアと一緒に勉強したい! と叫んで、当初の想定よりも多くの人間が参加することが決まったのだ。
さすがに教師の前で変質者なことをする連中がいないとは思うが、もしもの時のために俺も参加する。一応、こいつの兄貴分なので。
「ま、頑張れ。わからんところあったら俺も教えてやるから」
「はい! お願いしますね、おにーちゃん」
勉強会自体はそこまで大きな事件が起こることなく終わった。
せいぜいがいつものようにユーフォリアが膝上に座ってきたので一部
そんなこんなで肉体的には少し疲れた程度で済んだのだが、ユーフォリアはどうやら頭を使ったことで今までにない形での疲労を得たらしく、終わると同時に机に突っ伏す形で眠ってしまった。
「まったく……悩みなんて何もなさそうな顔してんなこいつは……」
ふにふにと柔らかい頬をつついてみる。
柔らかくて、もちもちとした弾力があって、押し込んだ指を押し返してくる。
ふにゅう、と声を漏らしながらユーフォリアが顔を動かす。
むずむずとするのか、顔をわずかにしかめるという、なかなかに見ない表情を広げて───
「あむっ!」
「え、ちょっ……!」
つついていた指を食われた。
彼女の口に含まれたのは第一関節のあたりまで。
はむはむと唇を動かしているので、なんとも言えないくすぐったさが体に走る。
「ユーフォリアちゃん、かわいー!」
「久永ぁ……!」
誰か、と助けを求めて周囲を見渡すと、微笑ましいものを見るような女子と、久遠に対しての殺意を漲らせる男子しかいない。
助けを求められそうな相手が誰もいないという現実に彼はショックを受けて、どうするべきかと悩み始めるが、くすぐったさが先行して考えがまとまらない。
「ほにーちゃぁん……」
寝言でも久遠の名前を呼ぶあたり、どれだけ懐いているのかよくわかるというもの。
久遠本人もその愛らしさに頬を緩めて、同時にこの状況をどうにかすることを諦めてユーフォリアの好きにさせる。
そんなこんなでちゅうちゅう吸われていると、生暖かい何かがちろりと指に触れた。
「っ!?」
ぴちゃ、くちゅ。
粘り気のある悩ましい音が響いている。
それが舌であることに気がついた時には、丁寧に指の腹、指の先、爪と舐め進めていて、ちゅぽんという音とともに指が解放された。
周囲に視線を向けてみると、はわわと顔を赤くしている女性陣、そしてユーフィーの微妙に色気のあるこの行動に前かがみになっている
柔らかい唇から離れた指は、もちろんのこと唾液にまみれていて、てらてらと照明の光を反射して淫靡に輝いている。
妖艶にすぎるユーフォリアのやらかしに、誰かがゴクリと息を飲んだ。
「ふにゅう……」
「お、起きた……?」
誰かが呟く。
ユーフォリアが体を起こし、眠たげな目をこすりながらその瞳に久遠のことを映している。
先ほどまでの所業をユーフォリア以外の誰もが覚えているからこそ、彼女が何をしでかすのかと恐れている。
「おにーちゃぁん……」
ごろごろと猫のように、久遠のことを呼びながら頭を擦り付けている。
寝ぼけていようといまいとやることは大して変わっていない。さすがに寝ぼけて指を食うのは今回が初めてだったが、それ以外ではいつものユーフォリアのまま。
ホッとため息をつく。
少ししてからユーフォリアの目ははっきりと覚めたが、何があったのかについては誰も語らなかった。
「ふにゃあ……」
おにーちゃんの胸板に頬を擦り付ける。あったかい。なんだかぽかぽかして眠くなる。
勉強会の後に寝ちゃったせいで、今日は眠くはないのだが、この調子だとすぐに眠れそうだ。
普段は、おにーちゃんよりも先に寝てしまうので、おにーちゃんの寝顔を見るのは朝、起こす直前だけなのだが、今日は珍しくおにーちゃんが寝るところに立ち会えた。
「…………」
頭がちゃんと働いていないからなのだろうか。
どうにも、おにーちゃんの唇に目が引き寄せられる。
「誰もいない、よね……?」
わかりきったことを呟く。
おにーちゃんも眠っている。
今からすることを咎める相手は誰もいない。ゆーくんも、やるならやっちゃえって言ってくれてるし。
ふらふらと、虫が灯に吸い寄せられるように、あたしもその一点を目指していく。
頭の中のどこかが、そんなことをしちゃダメだ、なんてことを言っているような気もするが、今は気にしないでもいい。
パパだって言っていた。やって後悔する方が、やらずに後悔するよりもいいって。……パパって誰だっけ?
うん、まあ今はそれはいい。それよりも───
ぼうっとしながら、その一点に狙いを定めて…………。
「旅が終わったら〜〜」
死亡フラグ構築! 死亡フラグ構築!
最年少(最年長)
それはそれとして指チュパってエロいですよね。今回は短かったですけど